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2016年12月8日

第480回 「なぜ、買っていない!?大相場に乗る方法」

相場が速すぎてついていけない

読者の皆さんは、現在のドル/円やNYダウの上昇相場にうまく乗ることができただろうか?「この相場に乗り遅れた」、「上げが速すぎてついていけない」、「値頃感で円買いをして損をしている」という声が多いという。今週のレポートではあらためて、「今の動きの速い相場にどう乗ってよいか分からない」という方に向けて、筆者が見ている<テクニカルツール>と、<乗り遅れた場合の対処法>について書いておきたい。相場に絶対の法則などないので、あくまで、「筆者はこう思う」という話である。

相場は酔っぱらいの千鳥足のような動きをする局面が多く、よくランダム・ウォーク(無秩序なふるまい)だといわれるが、相場にも"例外的局面"というのがある。その例外的な局面を、筆者は「トレンド(方向感のある)相場」と呼んでいる。トレンド相場とは、リスクをとっても相場に参入する価値がある相場のことを言う。

この世の誰もが「"正確に"相場を予測することが出来ない」ということは、はっきりしている。では、相場に対しどのようなアプローチをすればよいのだろうか? 試行錯誤をしても明確な答えはない。しかし、逆説的には1つの取引手法が浮上してくる。

それは、相場を予測することをやめて、ひたすら相場についていくことだ。ただし、年中相場についていくと、非常に非効率で、かつ損失が大きくなる。なんらかの形でトレンド相場(相場に方向性がある時期)と、もちあい相場(相場に方向性のないレンジ相場)の認識をしないと、収益を上げることは困難だ。

トレンドラインのブレイク

もちあい(レンジ)を離れた相場につくのは順張り取引(相場についていく取引)の基本形である。そして、これを最もアナログかつ原始的な形で認識する方法が「トレンドライン」のブレイクであろう。

上昇相場であれば、安値と安値を結んだ支持線、下降相場であれば高値と高値を結んだ抵抗線をトレンドラインと呼んでいる。相場を始めた比較的初期段階で、誰もが取り組む行為が、このトレンドラインを引くという行為である。最も原始的なトレンドの認識方法と言ってよいだろう。

相場に有効なトレンドラインを引くためには、3つ以上の安値や高値を結ぶことが重要で、統計的には2ヵ月以上の時間が経過したトレンドラインのブレイクでないと、信頼性は低いと言われている。

ドル/円(日足)のトレンドライン
上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

NYダウ(日足)のトレンドライン
上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)

(出所:石原順)

トレンドラインのブレイクはいわゆる"ダマシ"も多く、トレンドラインのブレイクが相場のトレンド(方向性)の発生を意味するのかどうかもはっきりしない。トレンドの有無を認識しながら、相場のもちあい(レンジ)離れについていくには、他の手法を使って相場に方向性のある時期とない時期を分ける必要がある。

トレンドの有無を判定するテクニカルツールは?

筆者の独断と偏見でいえば、トレンドの有無を判定するという相場認識のテクニカル・ツール(道具)で最も優れているのは、「標準偏差ボラティリティ」と「ADX」という指標である。

相場に方向性が出てくると、標準偏差ボラティリティは上昇する。標準偏差ボラティリティが低い位置から上昇する場合は、相場が保ち合いを離れ、強い方向性をもつシグナルとなる。相場に大きなトレンドが発生する可能性のある局面は、標準偏差ボラティリティが上昇し、ボリンジャーバンドの±1シグマをブレイクしたときだ。

当然"ダマシ"もあり、筆者は1年を通した相場で何度も痛い目にあっているが、だまされても±1シグマラインで決済(損切り)するので、壊滅的な損はしていない。何度か痛い目にあってもこの手法を使うのは、年に2回程度は大きなトレンドに発展する確率が高いからである。

筆者は「大相場になるかも?」という期待値から、標準偏差ボラティリティが上昇し、相場がボリンジャーバンドの±1シグマをブレイクした局面ではリスクを取っているのである。一方、標準偏差ボラティリティがピークアウト(天井をつけ下落)すると、トレンド期とはやや逆方向にバイアスがかかった「横這いレンジ内での乱高下相場」となりやすい。

「標準偏差ボラティリティ」と同じような動きをする指標に、「ADX」(平均方向性指数)がある。ADX(Average Directional Movement Index)は、相場のトレンド(方向性)の強さを測定する指標だ。ADXはRSIやピボット、パラボリックと同じく、J・W・ワイルダーが考案したテクニカル指標DMIの中のトレンド判定指標で、通常はDMIと合わせて使われている。 RSIやストキャスティクスなどのいわゆる逆張り系指標がトレンド相場になると機能しない事から、ワイルダーはトレンドの強さをはかるための指標(ADX)を作った。

「標準偏差ボラティリティ」と「ADX」が一緒に上昇する局面は、相場が強力なトレンドを持っている。日足にも週足にもトレンドが出ているときは、相場が<ビッグ・トレンド相場>となることが多い。大相場になるかどうかの示唆は、週足のADXや標準偏差ボラティリティの動きに依るところが大きい。

相場の美味しいところは、標準偏差ボラティリティやADXが低い位置から上がっていく局面で、これを相場用語では「保ち合い放れ」・「レンジ・ブレイク」・「ボラティリティ・ブレイクアウト」などと呼んでいる。

順張り取引の「基本形」

  • トレンドの発生(保ち合い離れの判定方法

26日標準偏差と14日ADXが共に上昇しはじめた時

  • 新規建玉のポイント

エントリー(新規注文)は相場が21日ボリンジャーバンド±1シグマの外に飛び出した時

  • 損失を限定しつつ利益を伸ばす手仕舞いのポイント

手仕舞い(エグジット)は相場が21日ボリンジャーバンド±1シグマの内側に入った時

これが、筆者の順張り取引の「基本形」である。

実際の相場を見てみよう。下のチャートはポンド/ドルの日足とドル/円の週足である。オレンジの帯の部分がトレンド相場の部分である。

トレンドの発生と消滅 ポンド/ドル(日足)上段:14日修正平均ADX(赤)・
26日標準偏差ボラティリティ(青)下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

トレンドの発生と消滅 ドル/円(週足)上段:14週修正平均ADX(赤)・
26週標準偏差ボラティリティ(青)下段:21週ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

「日足ベースの相場に乗り遅れた場合の対処法」は、より短いタイムフレーム(時間枠)を使って、相場についていくという手法も一考であろう。日足でも週足でもトレンドが出ている相場では、1時間、4時間といった比較的短期の取引でも、収益機会が多くなっている。1時間足の相場でも4時間足の相場でも、筆者が使っているパラメータは標準偏差が「26」、ADXが「14」である。

「損小利大」を実現するには?

「損小利大」という言葉をよく耳にするが、「損小利大」は順張り(トレンドフォロー)取引の目的である。しかし、どうやったら利益が大きくなり、損が小さくなるのかが、具体的に説明してあることはほとんどない。

「損小利大」を実現するには、トレンドを具体的かつ的確に認識し、それに乗っていく必要がある。しかし、大きなトレンドはそう頻繁に発生するものではないので、トレードの勝率は低くなる。勝率の低い手法に耐えられる市場参加者は少ないので、「順張り(トレンドフォロー)取引」で相場にエントリーする人は、実は非常に少ないのが実情である。

相場の損益の決定的な要因は勝率ではない。勝ちトレードと負けトレードの値幅の差こそ重要なのである。もちあい期とトレンド期が区別できなければ、順張りも逆張りも儲かる確率は低くなる。

大相場に乗れない最大の理由はストップロス注文を置かないことによる心理的抵抗

人間の心理は相場で儲ける邪魔をする。「高すぎて買えない」、「安すぎて売れない」という値頃感である。相場のトレンドは、いつも逆張りポイントの先に発生する。つまり、トレンド相場とは、売られすぎ・買われすぎの先に発生するものなのだ。売られすぎ・買われすぎの状況から相場に参入するのは心理的抵抗が大きく、なんらかの準備(テクニカル分析)が出来ていないと、ポジションをとることは極めて困難である。

もっと大きな視点でみると、相場に乗れない最大の原因はストップロス注文を置いてないからだ。「110円のドル/円を買って103円まで下がったらどうしよう」という不安は筆者ももっている。しかし、110円00銭でドル買って109円50銭にストップロス注文を置いておけば、損失は50銭に限定(週明け相場の窓開けリスクを除く)される。だから、ストップロス注文さえおいておけば、ドル/円が110円であろうと、130円であろうと値段はあまり関係ない。

ストップロス注文を置かない限り、どのような相場局面でも不安は解消されないし、マネーマネージメント(資産管理)は放棄された状態にある。ストップロス注文を置くことは、相場の損失から身を守る唯一の手段である。そのことを多くの人が理解するのは、たいていお金がなくなってからである。人間の心理は損失に耐えられるようにはできていない。だから、ストップロス注文を置いてから、相場に挑戦するしかない。自戒を込めて、ことさらに、そう書いておく。

NYダウはトランプ就任までに20,000ドルを目指す?

11月17日のレポート『トランプラリー(株高)とトランプフレーション(金利上昇)の賞味期限は?』で、<筆者の周辺の株式運用者は、「市場はトランプリスクに対して警戒を解いていない(構えている)。そうした警戒感があるうちは、株式相場は上昇する。皆が強気になっていないからだ。NYダウが19,000ドルを超えてくると、トランプ大統領就任までに20,000ドルの大台を試す可能性が大きくなる。彼が大統領に就任するまでは、悪材料が出てきても相場はさほど下げないだろう。しかし、相場が思惑通り上昇したら、1月はいったん利食いしたい」と述べたうえで、「現在の相場は非常に難しい。相場は上げの最終波動である5波動目に位置していると思われるが、トランプの財政出動や減税が行われれば現在のバブルが1~2年延命する可能性は十分ある」と述べている>と書いた。

12月7日の米国株式相場の主要株価指数は1か月ぶりの大幅上昇となり、S&P500とNYダウはいずれも過去最高値を更新した。期待相場の内が花といわれるトランプラリーだが、ここからトランプ就任までにNYダウは20,000ドルに到達する可能性が高くなっている。

12月14日のFOMCで米国の利上げは確実視されているが、波乱があるとしたら、FOMCだろう。ただ、より長期的な視点でみると、日経新聞の前田編集委員の指摘のように、「株式市場は3回目の利上げまでは上げ基調を維持する」という経験則があり、2回目の12月14日の利上げは株式市場に嫌気されても大波乱とはならないという見方は多い。

NYダウ(週足)と米国の金融政策 利上げ3回までは基本的に株高基調か?

(出所:石原順)

日米金利差でドル/円は大相場になるのか?

ドル/円相場の大局を決めるのは20か月移動平均線である。月足のNY終値が20か月移動平均線を上抜けば円売り、下回れば円買いで、下のチャートは20か月移動平均線と売買シグナルである。

11月の月足終値でドル/円相場は20か月移動平均線を上抜いたことから、相場が月の終値で20か月移動平均線維持している限り、61.8%戻しの115円56銭や将来的に120円トライがあってもおかしくない。

ドル/円(月足) 20か月移動平均線と売買シグナル

(出所:石原順)

プリンシパル・グローバル・インベスターズのチーフエコノミストであるボブ・バウアは、「10年物国債の利回りをゼロ付近に維持する日銀の政策が少なくともあと2年続くと予想。一方で米当局は今から17年末までの間に最大4回利上げをして米10年債利回りは3%を超える公算があり、これが対円でのドル相場上昇を促す見込みだという。日銀は利回りをゼロに維持するために大量の日本国債を買わなければならないだろう。また大規模なバランスシートを長期にわたって維持しなければならないかもしれない。これは本質的に、ミルトン・フリードマン氏がヘリコプターマネーと呼んだものだ」(12月8日 ブルームバーグ「ドルは14年ぶり高値更新も、日銀の債券大量購入継続で-プリンシパル」)と語ったという。

「日銀はデフレのうちは(インフレにならない限り)、長期金利の制御は可能だと考えているのだろうし、日銀にとっては都合の良いグローバルデフレという環境にある。しかし、トランプ新大統領の誕生でそうしたシナリオが怪しくなってきた。日銀による長期金利の固定は、デフレのうちは緩和縮小(テーパリング)だが、インフレになるとヘリコプターマネーになる」と筆者も述べてきたが、問題はそうした不公平や円安=ドル高をトランプ(米国)が許すかということである。

FRBは高圧経済政策から断続的な利上げへ転換するのか?

ニューヨーク連銀のダドリー総裁は、「財政政策がさらに景気拡張的となり、経済活動を支援するとしたら、恐らく金融当局は長期的に緩和の度合いを弱めるペースを若干加速させるだろう」と発言している。

トランプの経済政策とその期待がもたらすであろう“トランプフレーション“に、FRBがどう対応するのかは不透明だ。市場はイエレンの高圧経済政策発言から、「イエレンの利上げペースは緩慢でバブル温存的なものになる」と高を括ってきたが、FRBのスタンスが「2017年の利上げピッチは年3回以上」に変わってくれば、株式市場は癇癪を起しかねない。

新債券の帝王ジェフリー・ガンドラックは、「目先の米国長期金利は2.35%で上げ止り、仮にそれを超えてくると経済が悪化する。今後の5年間では、米国長期金利は6%まで上昇する可能性がある」と述べている。イエレンの発言と12月14日以降の相場の動きに注目したい。

注意すべきは1月のドル/円相場の反転か?

昨年の12月10日に「1月は相場が反転しやすい月」というレポートを書いた。「1月相場は特にドル/円のトレンドが反転しやすい。2000年以降はこの傾向が薄れつつあるが、ドル/円は2年連続で年初に急落しているので警戒は怠れないだろう」と書いたが、案の定、2016年の相場は1月~2月にかけて、強烈な円高・株安に見舞われた。2017年の1月はトランプラリーが期待から現実に変わる月である。日本株の上昇は円安と連動しており、1月の相場反転には注意したい。

ドル/円(月足)1月相場と相場の転換 円高転換=赤・円安転換=青

(出所:石原順)

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日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。

本資料は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。お客様ご自身で投資の最終決定をおこなってください。本資料の内容は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手・編集したものですが、その情報源の確実性まで保証するものではありません。なお、本資料の内容は、予告なしに変更することがあります。

石原順

「外為市場アウトルック」

海外のヘッジファンドを運用する現役のファンドマネジャーが、相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークを利用した「生」の情報を提供いたします。

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