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2016年9月29日

第470回 「日銀の長期金利固定策はデフレのうちは緩和縮小だが、インフレになるとヘリコプターマネーになる」

日銀の総括的検証は「日銀文学」だが、長期金利ターゲットは事実上の緩和縮小か?

9月21日の日銀の金融政策決定会合は追加の緩和策を打ち出せなかったものの、以下の3点の政策変更があった。

  • 長期金利ターゲット(長期金利の固定)=長期金利(10年国債金利)がほぼ0%で推移し続けるよう、長期国債の売買を行なってコントロールする
  • 株式ETFの買い入れについてTOPIX型の買い入れ比率を高める(日経平均型は買い入れ比率を下げる)
  • オーバーシュート型コミットメント(インフレ目標2%を達成したあとも国債を買い続ける)

現在、国債相場の下落を防ぐために、日銀は短期金利をマイナスにしているが、マイナス金利によって経営難となった銀行から強い批判を受けている。この批判に応え、長短金利差を拡げて金融機関の利ざやを拡大するというのが長期金利ターゲットだ。

デフレのうちは緩和縮小だが、インフレになるとヘリコプターマネーに・・

今回の日銀の政策は非常にわかりにくいという声が多い。日銀の長期金利ターゲット政策については、「中央銀行の金融政策は通常、短期金利を操作する。日銀はこれまで金融機関が預け入れる当座預金残高の一部に適用する金利をマイナス0.1%に設定し、短期金利をマイナスに押し下げてきた。日銀は今回、長期金利の指標である10年物国債の流通利回りを0%に誘導する枠組みを新たに設けた。中銀が長期金利を操作するのは世界的にも異例だ」と時事通信が報じたように、長期金利を操作するのは困難である。

金融自由化が行われたのが米国では1970年代、日本では1980年代で、それ以前は今の中国と同じで政治が全ての金利をコントロールしていた。しかし、金融自由化以降は金融当局がコントロールできるのは短期金利だけであり、長期金利のコントロールはできないというのが金融のイロハである。

「長期金利は、その時点の金融政策の影響も受けはしますが、それとは別の次元で、長期資金の需要・供給の市場メカニズムの中で決まるという色合いが強く、その際、将来の物価変動(インフレ、デフレ)や将来の短期金利の推移(やこれに大きな影響を及ぼす将来の金融政策)などについての予想が大切な役割を演ずるという特徴があります」と、日銀のホームページにも書いてある。

日銀は長期金利を制御しつつ少しずつ上昇させるのは危険でないと考えているのだろう。だが、制御するつもりが、制御不能な急上昇に発展するのが市場の常であり、今後、日本の長期金利がおかしな上昇をすれば、テーパー・タントラム(市場のかんしゃく)を引き起こしかねないのはないと警戒する声も聞かれている。いかなる価格操作も長期的には成功しないからだ。

日銀による長期金利の固定は、デフレのうちは緩和縮小(テーパリング)だが、インフレになるとヘリコプターマネーになる。そして、オーバーシュート型コミットメントというのは、インフレ目標2%を達成したあとも緩和を続けるという意思表明である。「いけるところまでいく」という宣言をしているわけだ。

日銀の政策変更を受けてある株式運用者は、「日銀は金融市場が暴落して市場介入が効かなくなるまで緩和を続けるということだろう」と、感想を語っていた。しかし、日銀が2013年4月にQE(量的緩和)を導入してから、日銀が保有する保有国債は含み損が拡大を続けており、FRBと同規模に膨らんだポートフォリオを持つ日銀はいずれ債務超過に陥る可能性が高い。十数兆円規模の劣後債を発行して自己資本の増強を図る必要があるだろう。

日銀はデフレのうちは(インフレにならない限り)、長期金利の制御は可能だと考えているのだろうし、日銀にとっては都合の良いグローバルデフレという環境にある。しかしこれほど規模を拡大した量的緩和を出口に向けてソフトランディングさせるのは難しい。グローバルデフレ不況のなかで金融緩和は手詰まりとなり(歴史的に見るとデフレは戦争でしか解消していない)、今後、各国の政策は財政出動へと舵を切っている。これは金利上昇のトリガーとなり得る。また、スタグフレーション(不景気の物価高)が起きる可能性も否定できない。いずれにせよ、現在の中央銀行バブル相場はインフレになったらなす術がない。

以前から陰鬱博士マーク・ファーバーは「エコノミストもファンドマネジャーも当局が介入するほど良い政策であると常に考えている。財政・金融政策によるあらゆる実験と介入に、過誤がある可能性、副作用がある可能性、さらなる介入で過誤を招く可能性があることを、つい忘れしまう。この教訓を旧ソ連や毛沢東時代の中国にあった中央計画当局から学んでいるはずなのに・・。経済政策の決定権者はまずは市場と資本主義制度に危害を加えないことからというお題目を何度も唱えているにもかかわらず、ほとんど何も処置をしないこと、ましてや何もしないことに抵抗を感じてしまう。さらなる量的緩和・政府の消費景気・公的資金援助・新しい規制・移転支出・マイナス金利によるあからさまな富の没収をしたいという気持ちを抑え難いのだ」と指摘している。日銀はこれまでさんざん相場を吊り上げてきたが、今やその後始末に困っている。出口のない中でホテル・カリフォルニア的金融政策(一度入ったら出られなくなる)から抜けられないようだ。

FRBを揺さぶるレイ・ダリオの警鐘

新債券の帝王ジェフリー・ガンドラックは、「9月のFOMCでFRBはタカ派のコメントで年内利上げを織り込ませるが、利上げは見送るだろう」と述べていた。これは市場のコンセンサスでもあったが、9月21日のFOMCは予想通り利上げが見送られた。FOMC後の米国株市場は利上げ後ずれを好感して上昇している。

NYダウ(日足) 転換点売買のシグナル(買い=赤 売り=青)
マイナス金利下のハイリスク・ローリターン相場だが、運用難の資金は米国株に流入中
上段:18日エンベロープ±1%(青)・±3%(赤)
下段:3日修正平均ADX(青)

(出所:石原順)

世界最大のヘッジファンドを率いるレイ・ダリオは、「FRBは短期的な景気サイクルにばかり目をとられている。しかし、長期債務サイクルに目を向けるべきであろう。世界経済の現状は、格差やポピュリズムの台頭といった点で、1930~40年代と似ている。日本や欧州の金融政策は経済刺激の限界に近く、米国や中国はまだ余裕がある。しかし、世界経済が減速しそうなのは間違いない。現在、リスクは圧倒的にダウンサイドにあり、混乱の引き金を引きかねない利上げをすべきではない」と、警鐘を鳴らしている。

レイ・ダリオは30年以上の長期にわたって最も顧客に利益を与えたヘッジファンド史上最高の運用者といってもよいだろう。レイ・ダリオの旗艦ファンドである<ピュア・アルファ>(690億ドル相当の運用額)の今年これまでのリターンはマイナス9.4%だが、1991年以降のリターンは年率プラス約12%で、年間ベースではこの15年間、マイナスを経験していない。

レイ・ダリオは昨年、米国の利上げが金融危機の引き金を引くことを懸念していたが、2015年12月16日にイエレンは利上げに踏み切った。そして、1月~2月の相場急落を招いた。

レイ・ダリオの意見はFRBの政策決定に影響を与えていると言われ、イエレンがなかなか利上げしないのは、リーマンショックと年初の相場急落のトラウマが影響しているようである。

30分で判る 経済の仕組み Ray Dalio Bridgewater
FRBは長期債務サイクルに目を向けるべき・・

(出所:30分で判る 経済の仕組み Ray Dalio 日本語版)

ドル/円は上値抵抗線の攻防、投機筋はストップを置いて保合離れ相場に参戦姿勢

先週のレポートに、「200EMAの下の相場での戻り売りシグナルの利食いポイントは、ストキャスティクス5.3.3の買いシグナル、あるいはトレール注文のいずれかを使っている。今年の円相場は、ここまでは戻り売り相場が継続している」と書いたが、現在ドル/円の日足はストキャスティクス5.3.3の短期的な売られ過ぎ感から少し戻す動きとなっている。

ドル/円(日足)のフィルター付き逆張り売買シグナル
上段:200日EMA(緑)・52日ボリンジャーバンド±2シグマ(赤)
下段:ストキャスティクス5.3.3

(出所:石原順)

ここで投機筋が注目しているのは、ドル/円(日足)相場の三角保合離れだ。ダマシとなることも多い<トレンドラインのブレイク>だが、それでも上値抵抗線のブレイクが起きれば、運用者の多くはストップを置いて保合離れ相場に参戦する姿勢をみせている。上値抵抗線をブレイクできるかに注目したい。

ドル/円(日足) トレンドライン(上値抵抗線)のブレイクはあるか?
上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)・±2シグマ(赤)

(出所:石原順)

ドル/円(日足) 転換点売買のシグナル(買い=赤 売り=青)
上段:13日エンベロープ±2%(青)・±3%(赤)
下段:3日修正平均ADX

(出所:石原順)

ドル/円(日足)とフィボナッチのリトレースメント

(出所:石原順)

このレポートで取り上げた売買手法の詳細はDVD『相場で道をひらく7つの戦略-短期売買実践編』(石原順)で取り上げております。興味のある方はご参照ください。

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日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。

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石原順

「外為市場アウトルック」

海外のヘッジファンドを運用する現役のファンドマネジャーが、相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークを利用した「生」の情報を提供いたします。

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