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2015年8月13日

第412回 「中国が人民元切り下げ、株価の下落確率が高い9月にFRBは利上げできるのか?」

中国が人民元切り下げ

8月11日、中国人民銀行はドルに対する事実上の人民元切り下げを発表した。景気が低迷する中、現在、事実上のQE政策(中国人民銀行が金融機関に対して地方債の購入を通じて資金を供給し、その資金で政府系のファンドが株価PKOに動いている)を行っている中国は通貨安にもっていきたくて仕方がなかったのだろう。人民元切り下げが不意打ち気味に発表されたこともあって、市場は混乱している。中国人民銀行(中央銀行)は本日も人民元の対ドルレートを3日連続で切り下げた。

ドル/人民元(日足) 中国人民銀行は8月11日に人民元切り下げを発表

(出所:石原順)

なりふりかまわない中国なので、「どこまで通貨安誘導をするかわからない」という不安が市場を覆っているようだ。本日の中国人民銀行の記者会見では、「人民元は長期的に強い通貨だ。市場にゆがみが生じれば介入する。人民元の10%下落を望むという報道はナンセンス」というコメントが出ているが、真に受ける運用者はいない。習近平の訪米にむけて、米国を刺激しないコメントを発しているのだろう。そもそも、中国人民銀行は11日に「人民元の基準値算出変更は1回限り」と発表していたが、連日の切り下げを行っている。

「中国が通貨安誘導を始めたとなると最低10%くらいの誘導を行うだろう。株価PKOや通貨安誘導は日本の真似だが、アベノミクスのように50%(80円→120円の円安)もの通貨安誘導はしないだろう」というのが、筆者の周辺のファンドの見方である。

市場の混乱に拍車をかけたのは、中国が人民元安を誘導しながら、昨日は下がり過ぎた人民元をコントロールするために人民元買い・ドル売りを行うなど予想外の行動に出たことである。中国の予想外のドル売り介入を受けて昨日は円高の動きとなったが、ブローカーの話では中国関連の報道で、外為市場は投げ(損切り)と踏み(買戻し)の応酬になっているという。

筆者は今年の相場で1時間足でのトレードを頻繁に行っている。<1時間足>でみると、通貨の変動は概ね13時間移動平均線の±0.6%乖離の範疇で動くといわれている。

0.6%まで動くのはトレンドが発生した場合で、低変動率相場、すなわち、ノーマル相場の動く範囲は、概ね13時間移動平均線の±0.6%乖離(赤のバンド)の半分である13時間移動平均線の±0.3%乖離(緑のバンド)の範囲に収まっている。

エンベロープ(移動平均線乖離)は決して万能な指標ではないが、自律的な相場の運動範囲で注目すべきことは、「長期にトレンドが発生するような大きな材料が出ない限り、相場が移動平均の乖離の限度を大きく飛び出しても、バンドの中で収斂することが多い」ということだ。

昨日のドル/円(1時間足)は久しぶりに13時間エンベロープの-0.6%まで下落した。筆者はここでドルを買ったが、ドル/円は-0.6%のラインで下げ止まらず、バンドに沿いながらの円高推移となった。筆者のポジションは当然評価損が膨らんだが、筆者は急落相場のなかで、26時間標準偏差ボラティリティがピークアウトするのを待っていた。そして、26時間標準偏差ボラティリティがピークアウトしたのを見て買い増しに動いている。

急落相場がいつ終わるのか、それは26時間標準偏差ボラティリティの動きで判断している。26時間標準偏差ボラティリティがピークアウトしても、すぐにまた下げトレンドが発生して、さらに相場が下げることも珍しくない。急落・暴落への究極の対処はストップロス注文を置くしかない。

このレポートを書いている8月13日14時の時点では、26時間の標準偏差ボラティリティはピークアウトし、124円40銭台までリバウンドしている。

ドル/円(1時間足) 13時間エンベロープ
上段:14時間ADX(赤)・26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13時間エンベロープ±0.3%(青) ±0.6%(赤)・9時間RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場

(出所:DVD 『相場で道をひらく ~標準偏差ボラティリティトレード~』石原順 トレードツール)

ドル/円(日足) 13日エンベロープ
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日エンベロープ±1%(青) ±2%(赤)・9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場

(出所:DVD 『相場で道をひらく ~標準偏差ボラティリティトレード~』石原順 トレードツール)

ジャンク債が上がらないと、株式市場はバブルしない

米国の利上げが現実味を帯びてきて、PKO主導の日本を除いた世界の株式市場参加者の不安心理が高まってきている。「過去3回の事例を振り返ると、いずれ上昇するかどうかは別として、とりあえず利上げ初期に米国株の7~8%の下落はありそうだ」(日経ヴェリタス前田編集委員)という見方が運用者を慎重にさせており、NYダウは軟調な展開となっている。

直近のNYダウの下落局面では、ストキャスティクス(5.3.3)の30%割れ水準や、18日エンベロープ(移動平均線乖離)-3%水準でファンド筋からのカウンターの買いが入っているが、米国株は利上げ観測が騒がしくなってきた4月以降、軟調な相場展開から脱しきれない状況が続いている。

NYダウ(日足) 18日移動平均線-3%乖離水準が逆張りポイントだが、最近はストキャスティクス(5.3.3)の30%以下で買うファンドが増えている
上段:18日エンベロープ±3%(赤)・±1%(青)
下段:ストキャスティクス5.3.3(赤)

(出所:石原順)

米国の金融緩和の出口では、常識的に考えれば債券と株式の下落が起きるだろう。異常低金利が米国の金融資産を支えているが、1兆ドルに及ぶ米企業の自社株買いも、金利が上がればその影響を受けるだろう。人為的につくられた中央銀行バブルの恩恵を過去7年間受けてきたが、そろそろ流動性危機に注意が必要な時期だ。

NYダウ(週足)と米国の金融政策

(出所:石原順)

『ジャンク債で進む選別-相場下落でエネルギー・鉱業には逆風 』という8月3日のブルームバーグの報道によると、「ジャンク債(高利回り債)市場で最も格付けの低い債券を手放す動きが広がりつつある。約10年ぶりの低水準にある商品相場 がエネルギー・鉱業部門の借り手に逆風となっている。ジャンク債の中で高格付け債と低格付け債の利回り格差は約3年ぶりの水準に拡大している」という。バブル相場の危機の案内銘柄(炭鉱のカナリア)と言われているハイイールド債ETF(HYG)も上昇基調に陰りが見えてきた。ジャンク債が上がらないと、株式市場はバブルしない。

ハイイールド債ETF(日足) 炭鉱のカナリアか?

(出所:石原順)

NY原油先物(日足)

(出所:石原順)

株価の下落確率が高い9月にFRBは利上げできるのか?

世界規模で景気が低迷しているなかで、米利上げの後ずれによるバブル温存を主張しているご都合主義のIMFは、中国の人民元切り下げを歓迎している。米国も中国経済にひっくりかえってもらっては困るのだが、人民元安誘導が10%を超えればドル独歩高は困る米国から牽制が出てくるだろう。

人民元切り下げを受け、米国の9月利上げ説は微妙な状況になってきた。米国が9月に利上げに動けばドル高がさらに加速し、米国の輸出企業の競争力が失われてしまう可能性が生じる。人民元安で中国経済が持ち直せばよいが、うまくいかなければ人民元安は中国がデフレと失業を輸出することになりかねない。

9月利上げ観測が高まっているのに、米国の10年国債金利は一向に上がってこない。米国の金融政策を敏感に反映する米2年国債金利も動きがあやしくなってきた。はたして、米国は9月に利上げできるのだろうか?

米10年国債金利(日足)

(出所:石原順)

米2年国債金利(日足)

(出所:石原順)

当局の声の代弁者と言われるセントルイス連銀のブラード総裁が「FRBが9月に利上げを行う確率は50%以上」と発言し、イエレンFRB議長の腹心であるサンフランシスコ連銀のウイリアムズ総裁が利上げに前のめりになってきたことで、9月利上げ観測がくすぶっていた。先週、中立的なスタンスだったアトランタ連銀のロックハート総裁が「米経済は用意が整っており、変更を起こすのに妥当な時期だと考えている」と発言してからは、急激に9月利上げ説が現実味を帯びてきた。

先週末に発表された7月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比+21万5000人と、市場予想の22万3000人増には届かなかったものの、5月と6月の雇用者数は上方修正され、失業率は5.3%と市場予想と同じだった。まずまずの雇用統計の内容を受けて、「プライマリーディーラー19社中、9月利上げを予想する向きは13社」(8月7日 ロイター)と、9月利上げ観測が高まっている。

米国の雇用の増減と失業率

(出所:石原順)

しかし、現在、筆者の周辺のファンドで議論になっているのは、「株価の下落確率が高い9月にFRBは利上げできるのか?」ということだ。株は9月10月に下げやすく、1月~4月に最も上がる商品である。筆者がFRB議長なら、わざわざ株の下がりやすい9月に利上げなどせずに、12月を選択するだろう。

NYダウの年間変動パターンと6カ月投資のリターン
(1945年1月から2015年1月までのNYダウの月末値をもとに日経ヴェリタス前田昌孝編集委員作成)

(出所:石原順)

これまで、このレポートで取り上げてきたように、長期停滞論を主張しているローレンス・サマーズ元米財務長官は、1月のダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)で、「今年利上げをしようとする米当局は、困難に直面するだろう。海外の経済の弱さと米国内のインフレの鈍さが理由だ。脅威がはっきりするまではインフレとの闘いを始めるべきではないし、それはまだまだ先のことだ。圧力が差し引きでデフレの方にかかっている限り、行動を考えるべきではない」と発言し、2月9日の英フィナンシャル・タイムズに「インフレの兆候がハッキリするまで米利上げは急がずに」という論文を寄稿した。

また、史上最高のファンドマネージャーと言われるブリッジウォーター・アソシエーツのレイ・ダリオは、「私たちの考えでは、金融緩和する余地がなくなったときに起き得る市況悪化のリスクに十分な注意が払われていない。なにか確証があるわけではないが、特に今は『買い』は控えたい」と述べ、「米連邦準備制度の利上げペースが速過ぎる場合、1937年と同じような相場の大幅下落を引き起こすリスクがある」と警告している。

「新債券王」と呼ばれるダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラックは、「FRBの年内利上げはない」と述べている。利上げに敏感に反応する米2年国債金利はある程度上昇しているが、米10年国債金利が上がらないのは、利上げによる次の危機を市場が警戒しているせいかもしれない。

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石原順

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