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2015年2月5日

第385回 円相場・株式相場・ゴールド相場・国債相場をファンド勢はどうみているのか?

ゴールドは安全資産か?

1月は欧州がQE、カナダ・インド・ルーマニア・エジプト・ペルー・トルコ・パキスタン・デンマーク(連続3回)・ シンガポールが利下げを行い、2月4日には中国人民銀行が約2年半ぶりとなる預金準備率引き下げ(50ベーシス)に動いた。中央銀行の利下げは<通貨安>が目的であり、まさに通貨安戦争の様相を呈している。

これだけ利下げラッシュが続けば、株式市場や不動産市場のバブル相場が一気に走りそうなものだが、そうなっていないのは、グローバルデフレの恐怖、地政学リスクの高まり、米国の利上げへの警戒など不安心理が市場に横たわっているからである。

3月5日の全国人民代表大会を控えた中国景気への警戒、需要減と供給過剰によるコモディティ価格の下落などの景気要因に加えて、ギリシャ問題、ロシアのウクライナ東部への軍事展開、原油安戦争、イスラム国のテロなど、市場には多くの地雷が埋まっている。

こうした生煮えのバブル相場の中で、金融機関はリスクフリーの自国国債買いを続けている。10年国債の金利はスイスがマイナス0.098%、ドイツが0.367%、フランスが0.594%、スペインが1.414%、日本が0.385%と、冗談のような金利が並んでいるが、バーゼルⅢの規制(BIS規制)がある以上、金融機関にとっての安全資産は金利がゼロであっても自国国債なのである。マイナス金利の世界で国債市場は史上最大のバブルとなっているが、このグローバルデフレの波は簡単に終わりそうにない。

金融機関はともかく、ファンドは顧客から2%~3%の固定フィー(手数料)を取っていることもあり、国債を買って運用していても話にならない。そうしたなか、通貨安とゼロ金利の時代にゴールドが再び安全資産として注目され、ファンドもゴールドの買いに動いているという報道が多くなっている。

しかし、ファンドの間ではゴールドに対する見方は分かれている。

ゴールドに強気なファンドからは、

  • ゴールドは究極の無国籍通貨(グリーンスパン元FRB議長も買い推奨)
  • 通貨安戦争で通貨価値が劣化しているのでゴールドは買い
  • ゼロ金利で金利がつかないのでゴールドも悪くない
  • 富裕層にとってゴールドは価値の保全や保管に便利
  • ドイツが米国からゴールドを回収中

などの声が聞こえてくるが、一方、ゴールド上昇に懐疑的なファンドは、

  • グローバルデフレのなかでゴールドは上がりにくい(ゴールドはインフレ期に上がるもの)
  • ドル独歩高の環境では上がりにくい
  • 中国景気の減速でコモディティ市場には下押し圧力がかかり続ける
  • 2011年の1920ドルという高値は原油とおなじくバブルのピーク
  • そもそも金に本質的価値があるのか?(原油や穀物には価値がある)

という見方を取っている。

ゴールド先物(日足) 現在は買いトレンドがピークアウトし調整相場に・・
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

ブローカーの話では、「ファンドの<原油買い・ゴールド売り>のポジションの巻き戻しが出ている」というのがゴールド上昇の理由だという。ファンドの中にはドルで資金調達してリスク商品の運用を行っているところがあるが、米国の利上げ観測でこうしたドル・キャリートレードのポジション解消が出ているらしい。ファンドは米国の利上げ観測からドルで借り入れた短期資金の借り換えに動かず、ポジションの手仕舞いに動いているという。そうした行動を促しているのは、ブラード・セントルイス連銀総裁である。

年央の米利上げはあるのか?

ブラード・セントルイス連銀総裁は1月31日のブルームバーグのインタビュー記事で、「6月か7月の利上げ予想は妥当。原油価格の下落は米国経済にとってプラスである。失業率は第3四半期に5%を下回る見通し」と語り、市場で話題になっている(解釈が分かれている)「海外情勢を考慮する」という声明については、「特別な意味はない」という見解を示した。

一昨年、米国のテーパリング時期を正確に予想したブラード・セントルイス連銀総裁は、日和見主義というか、権力者の顔色を見ながら風見鳥のように意見を変えるのが特徴と言われている。市場に最も影響力を持つブラード・セントルイス連銀総裁発言で、「やはり米利上げは年央にある」とみる運用者が増えている。ブラード・セントルイス連銀総裁だけでなく、イエレンの息がかかったウィリアムズ・サンフランシスコ総裁も、CNBCとのインタビューで「年央に米金利が引き上げられる可能性がある」と発言している。

先週のレポートで、『ダボス会議が終わってファンド運用者とミーティングをしたが、「米国の自然利子率が大きく低下しているなか、MIT学派のバブル必要論で異常低金利が長期化すれば、米国の株や不動産のさらなる資産バブルが走る可能性がある。一方で、サマーズが懸念する米国の利上げ(政策転換)が早めに行われるようだと、株や不動産が大幅に調整するというリスクが浮上するだろう」と運用者は警戒している』と述べたが、バブル延命観測に黄信号が点滅していると言えよう。

米利上げ観測で米国株の上値が重くなっている

米国株の時価総額は昨年来、名目GDPの140%に達している。こうした中で、バリュー投資家は株式の新規買いから撤退している。米国株に強気のファンドは、ゼロ金利からみたら米国株はまだまだ割安で、米金利との裁定(株式配当利回りとの比較)で見ると米国株は買いだという。しかし、ゼロ金利と比較すればなんでも割安となり、そもそもゼロ金利と比較するのが妥当かどうか疑わしい。仮に、「米国株はゼロ金利と比較して割安である」という見方が正しいとしても、米国の政策金利が上がれば米国株の調整は避けられないだろう。

こうした環境の中で、「株の高いところを買っても儲からない」という見方にファンドの多くが傾いてきているのは当然だろう。1月15日のレポート『逆張りポイントまで下がったドル/円とNYダウ、今年の相場は逆張り手法が有効か?』で米国株の逆張り(押し目買い)手法を取り上げたのは、上記のような背景があるからだ。2月2日にはNYダウが再び逆張りポイントである18日移動平均線-3乖離水準まで下落したが、ここでの押し目買いもうまくワークした。

逆張りポイントで買ったポジションは、18日移動平均線か18日移動平均線+1%乖離水準を目処にして分散して利食いを入れていく。これが筆者の手法であるが、逆張りは相場のトレンドに逆らってポジションを持つ(相場の転換点を当てる)という危険な行為であり、ストップロス注文は必須の売買手法である。

NYダウ(日足)NYダウの押し目買いポイント(黄)と利食いゾーン(緑)
上段:18日エンベロープ(18日移動平均線乖離)±3%(赤)・+1%(青)
下段:ストキャスティクス5.3.3

(出所:石原順)

筆者は今後もこうした逆張りを毎年10月から4月期は続けていく方針であるが、それは「最高の半年間投資」(年間の変動パターンと6カ月投資のリターン)のアノマリーを重視しているからだ。昨日、このアノマリーの分析を続けている日経新聞の前田編集委員からNYダウと日経平均の「年間の変動パターンと6カ月投資のリターン」のグラフを頂いたので、以下に紹介しておく。

NYダウの年間変動パターンと6カ月投資のリターン
(1945年1月から2015年1月までのNYダウの月末値をもとに日経新聞前田昌孝編集委員作成)

(出所:石原順)

日経平均の年間変動パターンと6カ月投資のリターン
(1950年1月から2015年1月までの日経平均の月末値をもとに日経新聞前田昌孝編集委員作成)

(出所:石原順)

NYダウ(月足)「10月末買い・4月末売り」

(出所:石原順)

日経平均(月足)「10月末買い・4月末売り」

(出所:石原順)

ドル/円・クロス円の「10月末買い・4月末売り」は?

2012年7月26日のレポート「過去62年の相場の王道」で取り上げたドル/円・クロス円の「10月末買い・4月末売り」の売買手法は、過去2年の相場でうまくワークした。今年も10月末の黒田バズーカ2を受けて、12月までは大幅な円安相場が展開されたが、羊辛抱の2015年に入ってクロス円相場が急落している。

2015年相場の波乱は<急激な円の売られすぎ感>からある程度想定できたので、筆者は昨年12月4日のレポートで『バブル相場にロジックはない。ドル/円相場は「イケイケドンドン!」というノリと勢いの相場になりつつある。相場にオーバーシュート(行き過ぎ)はつきものだが、そこはスイング売買で対処し、筆者は「ドル/円の120円超の相場では、中期的なポジションのとりあえず半分は利食っておこう」と思っている』と利食いを推奨した。しかし、ブローカーによると、「イケイケドンドンで昨年の12月に円売りポジションを大幅に増やしたファンドが多い」のだと言う。そうしたファンドの<投げ>が出ているのが2015年1月以降の相場である。

ドル/円(月足)「10月末買い・4月末売り」

(出所:石原順)

ユーロ/円(月足)「10月末買い・4月末売り」

(出所:石原順)

NZドル/円(月足)「10月末買い・4月末売り」

(出所:石原順)

クロス円の下落は通貨安戦争(利下げラッシュ)が原因だが、為替市場ではドラギのユーロ安誘導によるユーロ売りが円売りを上回り、ユーロ主導の円高を主導している。クロス円相場の下落がどこで止まるかはユーロ円相場が鍵を握っているのである。

ギリシャ問題は落としどころが難しく、NATOの一員であるギリシャはロシアのウクライナ問題を交渉カードに使っており、ユーロ相場はまだ予断を許さない。しかし、スイス中銀のユーロ買いスイスフラン売りの影響で、ユーロ/スイス相場がスイス中銀の非公式に設定している目標変動幅1ユーロ=1.05~1.10のバンドに入ってきたことから、ユーロ売りも一服している。

ユーロ/スイス(日足) スイス中銀が非公式に設定している目標変動幅1ユーロ=1.05~1.10

(出所:石原順)

テクニカル的には26日標準偏差がピークアウトし、相場が21日ボリンジャーバンドの-1シグマの内側に入ってきたので、強いユーロ売りトレンドはいったん終了した格好だ。ここからは調整相場(ジグザグのランダム相場)に移行する可能性が高い。

ユーロ/ドル(日足) 強い売りトレンドがピークアウト
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

ユーロ/円(日足) 強い売りトレンドがピークアウト
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

ある通貨ファンドの運用者にクロス円の見通しを聞くと、「ユーロ/円や豪ドル/円の押し目買いのターゲットプライスはない。我々は現在のドル/円相場のコアレンジを概ね118円50銭~115円円80銭と観ており、ドル/円がレンジの下限に接近した時にクロス円も買い妙味があると考えている。君の言っている13日移動平均線の-2%乖離水準でもよいが、いずれにせよ、高いところや相場の真ん中(移動平均線付近)では買わない」と述べている。

ドル/円(日足)逆張りポイントは13日移動平均線-2%乖離水準
上段:13日エンベロープ±2%(青)
下段:ストキャスティクス5.3.3

(出所:石原順)

相場は科学ではないので、データやテクニカルを過信してはいけない。上のチャートを見ればわかるように、「10月末買い・4月末売り」の成功確率は高いが、大きな損が出ている年もある。株は4年~7年に1回は急落や暴落が起きる可能性がある商品であり、クロス円もそれに巻き込まれる格好で急落する可能性がある。加えて、現在は通貨安戦争の最中だ。相場の急落から身を守るには、くどいようだがストップロス注文をあらかじめ置いておくしかない。相場は攻めだけでは勝てない。守りもまた必要なのである。

日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。

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