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2014年7月24日

第357回 のるか、そるかの胸突き八丁相場、あなたならどうする?

日本市場はなぜ日本人主導にならないのか?米系ファンドが指摘する日本のデフレと少子化の正体

1990年のバブル崩壊以降、日本の地価はかなり下落したが、それでも東京近郊のマンションは70平米程度で4,000万円程度はする。これをドルに換算(1ドル=100円で計算)すると、40万ドルになる。一方で、200平米くらいの住居に500平米程の庭が付いた米国の平均的な一軒家の価格は10万ドル程度である。海外から見ると日本の不動産はまだまだ高い。

年収400万円の日本の庶民が4,000万円の家を買うとすると、家の価格は年収の10倍になる。一方、米国では、年収4万ドルの庶民が10万ドルの家を買えば、家の価格は年収の2.5倍である。

少子化問題の改善やデフレ脱却が声高に叫ばれているが、そもそも少子化やデフレは、日本の不動産価格が年収に対して高すぎることの結果であり、住宅ローンや家賃で可処分所得が小さい日本の家計の現状では、消費も投資も盛り上がらないだろう。

日本人が米国人のように年収の2.5倍で家を買うには、日本の庶民の年収を1,600万円(4,000万円÷2.5)にする必要がある。一方、為替レートで調整すると、日本の年収1600万円が米国の年収4万ドルと等価である必要があるが、1ドル=400円が均衡レートとなる。

不動産価格だけでの単純な比較は出来ないが、あるファンドのストラテジストは、「日本の不動産価格が十分に下がっていないので、いつまでたっても日本はバブル崩壊から立ち直れない」と述べている。

現在の1ドル=101円という円高はやはり何かがおかしいし、ドルベースでみた人件費やインフラコストの高さを考えると、法人税を多少下げたところで海外企業は日本に進出してこないだろう。

消費増税10%実施まではバラマキによる腕力相場になるか?

日本の家計の現状で消費増税が行われていることは、日本経済に暗い影を落としそうだが、海外投資家はあまり悲観していない。安倍首相が年末に決断するという消費税10%決定までは、ありとあらゆるPKOが用意されているし、2015年10月に消費増税10%が決まれば、日本経済への悪影響を軽減するために追加の財政刺激策が打たれることは必至とみているからである。2015年10月あたりまでは財政支出が増えて日本の景気は回復するだろうが、おそらくそこがアベノミクス相場の賞味期限であろう。

バブル相場の賞味期限をめぐる相場観の対立

直近のバブル相場を振り返ってみよう。「りそな銀行危機」をきっかけに福井日銀は2003年3月から2006円3月まで量的緩和政策を継続した。このときの日銀マネーで世界中が株バブルとなり、このバブル相場はリーマン危機でバブルが崩壊するまで4年ほど続いた。したがって、一部のファンドは「2012年11月から始まった安倍政権の黒田日銀バブルも2015年10月あたりまで続いてもなんらおかしくない」と主張する。

日経平均(月足) 福井バブルと黒田バブル

塩川=溝口コンビで2003年初めから2004年にかけて35兆円規模の円売りドル買い介入が行なわれたが、この資金は全部米国債に化けて、日本は海外勢の米国債保有総額の4割を占める猛烈な米国債買いを行なった実績がある。

(出所:石原順)

ジャパンマネーによるNYダウの過剰流動性相場とVIX指数 2003年~2007年の米国株の上昇はジャパンマネーによるバブル相場である

(出所:石原順)

一方で、「米国株はもう賞味期限切れ」との見方も多い。米国株の上昇は概ね60カ月であり、2009年3月9日に始まった今回の米国株の上昇相場は既に64カ月が経過している。また10月にはQE3が終了する。過去の相場ではQE1・QE2が終了すると、NYダウは素直に下げており、「こんな危ない局面は相場に入りたくない」という声も聞かれる。

米S&P500株価指数月足の対数(LOG)チャート

上昇6年目のハードルは高い?バブルはどこまで延命するか?

(出所:石原順)

NYダウ(週足) 米国の量的緩和政策とNYダウの推移 QE3の終了で秋相場は波乱含み

(出所:石原順)

イエレンのバブル容認でファンドは焦っているが、のるか、そるかの胸突き八丁相場

上記に書いたようなバブル相場の賞味期限をめぐる相場観の対立がみられる中で、イエレンFRB議長は7月2日、ワシントンで開催されたIMF主催のイベントで、「バブルを制御するのは連銀の仕事でない」という意味の発言をした。イエレンがバブル膨張を容認していると受け取られ、米国株式市場はその後最高値更新相場を演じている。

「金融政策を変える必要性を感じない。金利修正による金融安定促進はインフレと雇用を不安定にする」と主張するイエレンに対して、ウォールストリートジャーナルは、「FRBが金融リスクに対処するために利上げすべきとの主張をイエレン議長が退けた」、フィナンシャルタイムズは「FRBは金融システムの安定を重視し、バブルが形成されることにさほど関心を持っていない。イエレン議長のコメントは、金融システムが安全である限り、資産インフレやバブル崩壊を容認することを意味している」、ワシントンポストは「バブルを抑えるために政策金利を引き上げることは正しい政策ではないとの考えをイエレン議長が示した。政策金利を引き上げると失業者が増え、多くの人が借金を返せずに破たんすることになるとイエレン議長は語った」と報道している。

5月にFRB理事を退任し、ハーバード大学の教授職に復帰したスタインは「資産バブルが生まれつつあり、政策金利を見直すべきである」と主張していたが、「イエレンは強い態度でスタインの主張に反論した」と報道されている。スタインはバブルに依存して景気を引っ張ろうとするイエレンの政策に対して警告したが、意見が合わず任期途中で辞めていった。

6月下旬に発表されたBIS(国際決済銀行)の年次報告書は中央銀行バブルへの警告だったが、それに対するイエレンの答えはバブル容認である。「イエレンはQE縮小のダメージを相殺するために、バブルを放置することでカバーしようとしている」との見方がファンド勢に拡がり、焦ったファンドは再び株価連動型のETFなどを買い、リスク・テイクに動いているのが今の状況だ。

米国株に強気のファンドからは、早くも来年の米株高を囃すレポートが送られてきているが、「中間選挙翌年の相場は高い」「5の年は上がる」といったアノマリーが紹介されている。「来年上がるという予想はいいが、今年どこかで調整が入るのがむしろ望ましい。今の環境で米国株を買うという行為は、いずれにせよ、のるか、そるかのバブル相場であり、胸突き八丁相場と言えよう」と運用者が語るように、上げと下げの両方のリスクがある高リスクのバブル相場と言えそうだ。個人投資家は無理をして、肝試し相場に参入する必要はないだろう。

米中間選挙翌年のNYダウの年間騰落率(%) 18連勝中

(出所:石原順)

1905年からの「5」の年のNYダウ

(出所:石原順)

金融抑圧で当局の意図する相場が展開されている

「株はジリ高バブルだからまだいい。為替市場は水浸しだ」と通貨ファンドが音を上げているように、米・日の10年国債金利は上がらず、米・日の当局の思惑(金融抑圧=株はジリ高・長期金利は上がらず・為替は動かず)通りの展開が続いている。米国と日本の国債の交換レートであるドル/円は狭いレンジでしか動かなくなってしまった。

米10年国債金利(日足) 金融抑圧相場が続く・・

(出所:石原順)

ドル/円(日足)と底値買いのシグナル

上段:21日ボリンジャーバンド
下段:ストキャスティクス5.3.3

(出所:石原順)

ニュージーランドは3.5%に利上げも通貨高牽制、投機筋はユーロ相場に参入

本日6時にRBNZ(ニュージーランド銀)が政策金利を0.25%引き上げた。4回連続の利上げで、政策金利は3.5%と5年半ぶりの高水準となった。ところが、RBNZは今年3月以降の利上げの効果を見極めると利上げ休止を表明。「現在のニュージーランドドルの水準は持続不可能」との通貨高牽制を行ったことからNZドルは急落している。

7月10日高値89円67銭からNZドル/円は下げ傾向にあるが、目先の焦点は本日のNYクローズで87円を維持できるか否か、もう少し大きく見ると、レンジの下限と目される86円を維持できるかどうかが焦点となろう。26日標準偏差ボラティリティやや14日ADXが上昇してきたが、大きな売りトレンドに発展しないためには、早期に88円への戻りを試す必要があるだろう。

NZドル/円(日足) 底値買いのシグナル ダブルループ相場にも一応注意が必要

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ
中段:21日ボリンジャーバンド
下段:ストキャスティクス5.3.3

(出所:石原順)

現在、順張り系の通貨ファンドの商いは、ユーロ絡みの2つの通貨ペアに集中しているようだ。動かない相場の中で、動き出したユーロ相場に投機筋が群がっているが、ブローカーの話では、短期取引者主体の取引であるらしい。

ユーロ/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド

(出所:石原順)

ユーロ/豪ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド

(出所:石原順)

日本経済の命綱は長期金利の超低金利

何かのきっかけで長期金利が急騰すれば、日本の財政破綻の話が浮上する。そうならないように、物価目標達成後も日銀はゼロ金利政策や国債の大量購入政策を続けざるを得ない。これが、海外ファンドのみている<日本の金融抑圧シナリオ>であるが、日本の当局の意思に反して日本の長期金利が急騰すれば、海外投資家は真っ先に日本から投資を引き上げるであろう。

日本10年国債金利(日足) 物価上昇率以下の金融抑圧相場が続く・・

(出所:石原順)

アベノミクスの目的は「デフレ脱却」ではなく「財政再建」だが、インフレにもかかわらず長期金利を低く抑える<金融抑圧政策>は、預金者を目に見えないインフレで犠牲にすることで公的債務の圧縮を図る紳士的な方法である。

現在、街の声を聞くと、公共料金の値上げ・年金カット・ガソリン料金の高等・社会保険料の値上がりに対する不満が充満している。だが、今の日本では中央銀行ファイナンスによる追加財政(公共事業のバラマキ)が行われていて、好景気を演出する報道が相次いでいるので、そうした声はかき消されている。静かに進行する金融抑圧に多くの人は気づいていない。相場も静かに金融抑圧相場が続いている。

日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。

本資料は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。お客様ご自身で投資の最終決定をおこなってください。本資料の内容は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手・編集したものですが、その情報源の確実性まで保証するものではありません。なお、本資料の内容は、予告なしに変更することがあります。

石原順

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