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2016年5月2日

第115回 他人や平均と投資の成績を比較することはほとんど意味がない理由

他人の運用成績は気になるものだ

他人の運用の成績や平均的な実績、というのは誰もが気になるものです。しかしなかなか知人と成績について語りあうことはできません。

相対的に運用実績の比較がやりやすく、個人が情報が手に入れやすい投資条件としては確定拠出年金があります。確定拠出年金では、「我が社の社員の平均運用利回りは○%!あなたはどうですか?」とか「運用利回りの分布図を大公開。あなたはどこにランキングされていますか?」といった情報が公開され、投資教育の素材とされることがしばしばあります。

例えば全社員の平均運用利回りが年率2.5%であったとき、自分の手元資料が年5.0%と書かれていれば安心しますし、年1.0%と書かれていれば不安になってしまいます。

これは確定拠出年金に限りません。国の年金運用を行うGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用利回りと自分を比較して一喜一憂したり、投資ブログに開陳されている運用成績を比較し、自分が勝ったと悦に入る人もいるはずです。

「なんとなく投資」をしていると、こういう比較ゲームに巻き込まれがちなのですが、こういう「他人や平均との投資成績の比較」はあまり意味がありません。むしろ害が多いかもしれません。少し考えてみましょう。

成績比較が無意味な理由をいくつかあげよう

運用成績の単純比較が無意味な理由をいくつかあげてみましょう。

投資時期が異なる

まず「投資時期が違う」場合、比較はほとんど意味をなしません。アベノミクス初期に勢いよく株価が上がった時期の投資武勇伝を現下の成績と比較するのが無意味だ、と指摘されれば誰でも頷くはずですが、しばしば異なる投資時期の比較をしてしまいがちです。これはそもそも意味がありません。

年率換算で揃えて比較することは原則ですが、それでも異なる時期の比較は要注意です。先ほどの確定拠出年金の例でいえば「2015年入社のA氏(運用期間1年)」と「2002年の確定拠出年金スタート時点から投資しているB氏(運用期間14年)」の両者について年率換算利回りの比較が無意味なのは明らかです。(この意味では、社員間の運用成績比較はほとんど意味がないといえる)

投資金額が異なる

「投資金額が違う」場合、運用成績の比較をしてもこれまた意味がありません。100万円未満で投資をする人と、億円単位の資産を売買する人との間では同一条件の投資は行えません(基本的に少額の投資家が取り得る選択肢は少なくなり、高額投資をしたほうが手数料等の条件は有利になる)。

異なる投資金額であることを伏せつつ「今月の利益は○万円でした」とアピールする投資指南ガイドなどもこの比較問題で整理できます。高額の利益であると思ったら、そもそも高額の投資資金から生み出されており、リターン(利回り)はそれほど高くない可能性もあるからです。

投資対象が異なる

「投資対象が異なる」場合も成績比較はあまり意味がありません。一見すると「日本株を買うか、この時期は外国株を買うか」という判断があるので、投資対象が異なろうと運用成績比較をすべきと思うかもしれません。しかし、それは運用計画の問題であって、成績の評価に混ぜ込むべきではないからです。

異なる投資対象を混ぜて勝ち負けを競い始めると、「ある期間の成績が悪い投資対象を切り捨て、成績が良かった投資対象の持ち分を増やす」という行動を取ることになりますが、特定の投資対象が高い運用成績を続ける(=低い運用成績にとどまり続ける)ことはあまりなく、「損をするたび売り、買うものは高値づかみでその後下落」という投資を行う羽目になります。

リスク許容度が異なる

そもそも論でさらに考えれば「個々人がそれぞれ取っているリスクが違う」という点も見逃せません。

A氏とB氏がいて、A氏が株式投資比率4割、B氏が8割にしていたとして、運用成績が異なるのは当然です。しかしA氏がそのままB氏のポートフォリオをまねるべきかといわれればこれは明らかにNOです。

A氏とB氏のポートフォリオ決定の背景は、それぞれの取り得るリスクを検討するプロセス、リスク許容度の検討であるはずで、2人いれば必ずリスク許容度は異なります。

A氏がもし、投資経験は浅くて保有する現預金額も少ないのであれば、もしかして4割の投資比率でも高すぎかもしれません。B氏が、投資経験は豊かであり保有する現預金額が生活の半年分に達するのであれば、投資比率8割には何の問題もないかもしれません。

こうした背景を抜きに比較は無意味です。ここでA氏がポートフォリオだけB氏の真似をすれば、リターンも真似ることができますが、リスクも真似ることになります。その資産配分はリスク過剰ということになり、市場の急落時には許容範囲を超える下落を受け入れる必要がでてきます。要するに、比較が誤った投資判断を招いたことになります。

GPIFとの比較でも、「GPIFに勝った」という人は単にGPIFよりリスクを高く取った、というだけのことであったりします。そうであればGPIFに勝ったことは当然の帰結になるでしょう。また、個人が投資資金を自由に売買できるという条件があるという条件の差であったりします。GPIFは「ちょっと全額現金化して市場が落ち着くまで待とう」ということはできないからです。

いずれにせよ、違う主体の投資を比較し、優劣を論じることはあまり有意義な結論を見いださないと思います(自己満足とオーバーコンフィディンスは招きやすいでしょうが)。

平均に負けているからと落ち込む必要はまったくない

いくつかポイントをあげてみましたが、要するに「他人との投資成績比較」はほとんど意味がないと考えるべきです。

特によろしくないのは平均との比較で自分が負けている場合です。平均に勝っている場合、優越感を得られますし、その投資方針に自信を持つ効果があるかもしれません。しかし、平均に負けている人はそうはいきません。

平均に負けていた、ということで自分の投資方針が誤っていたのではないかと考えてしまいます。実のところ、リスク許容度の低い人が期待リターンの低いポートフォリオを組んだため成績は平均以下であることは当然かもしれません。

本来これは平均に負けても問題がないケースですが、「平均に負けた」という呪縛が投資判断に影響を及ぼすことになります。

よく分からないけど投資比率を上げてみるというような判断になるのは最悪です。自分の取るべきリスク上限を超えることで、投資利回りを高めるべきではなく、少なくとも投資理解度の向上という要素が投資ウエートを高める要因となるべきでしょう。

(ちなみに、市場が低迷しているときは単にリスクを取らなかった人が運用成績上位ということもあり、リスクを取った人はバカだったと誤解するケースもあります)。

そもそも母数によってその意味はまったく異なります。未経験者を含めた母数の平均(例えば一般会社員の運用成績)か、投資経験の豊富な母数の平均(例えば証券口座保有者の運用成績)かでも意味がまったく違ってきます。「平均」なのですから、平均上位者と平均以下の者があるのも当然で、全員が運用改善すれば、結局誰かは平均以下になってしまうという事実も忘れるべきではありません。

確定拠出年金では投資教育という難しい課題が企業には課せられており、その悩みの中心は無関心層への関心惹起です。しかし「平均との背比べ」という煽りが、平均に負けている人の投資を強制することにならないように注意するべきでしょう。

他人ではなく自分を見よう

私は投資教育の場に立つとき、運用成果については「自分の納得」を判断軸としようと言います。勝っても負けても、自分が納得できる運用成果と感じられるのならば、それは自分が選択した運用方針を受け入れることができている、ということだからです。

自分が納得できるかどうかは、自分のリスク許容度や自分の運用方針を再考することにもつながります。これは自分がほとんどコントロール不可能な運用成績の背比べに拘泥することに比べればずっと有意義なことです。

自分自身はコントロール可能ですし、自分自身の投資理解度等は自分が改善させていくこともできます。リスクと向き合ってさらに投資比率を高めるような選択も、自分自身が受け入れるしかないのです。

他人ではなく、自分をみよう。

というのが運用成績比較についてのアドバイスです。

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山崎俊輔

『なんとなく』から卒業!実践・資産形成術

誰にとっても重要で大切な「年金」と「老後資金準備」について、「漠然とした不安」から卒業しよう! これからの人生のマネープランを、主体的にかつ前向きに組み立てるためのヒントを、ファイナンシャル・プランナーであり年金の専門家である山崎俊輔氏がやさしく解説していきます。

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