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2017年1月4日

第30回 「2017年の株式相場見通し【アニマル・スピリットに火はつくか?】」

「債券相場は過去30年のピークが過ぎた可能性が著しく高い」というレイ・ダリオの見方

大統領選挙前後の相場を静観していた世界最大のヘッジファンド<ブリッジウォーター・アソシエイツ>を率いるレイ・ダリオは、トランプ勝利で相場を取り巻く環境が大転換したとみて、<株買い・債券売り・ドル買い>を大量に持ち込んだと噂されている。そして、その戦術転換は決して短期的なものではないようだ。

<ブリッジウォーター・アソシエイツ>のレイ・ダリオは、30年以上の長期にわたって最も顧客に利益を与えたファンド史上最高の運用者といってもよいだろう。レイ・ダリオが作成した「30分で判る 経済の仕組み Ray Dalio」

https://www.youtube.com/watch?v=NRUiD94aBwI

は、投資家にとって必見の動画である。

これまでレイ・ダリオは、「FEDの利上げペースが速過ぎる場合、1937年と同じような相場の大幅下落を引き起こすリスクがある」と指摘していた。1937年は金融緩和の環境で米国経済が回復し、FRBが利上げに動いた。その結果、国債は売られ(金利上昇)、株価は1937年3月高値194ドルから1938年3月にかけて50%以上急落した。これを受けてFRBは再び金融緩和に動いたが、この後もNYダウは1942年4月28日に92ドルまで下落し、1937年高値の194ドルを回復したのは1945年12月8日までかかっている。

レイ・ダリオはローレンス・サマーズの主張する「長期停滞論」の支持者であったが、グローバリゼーションの終焉で経済見通しを大きく転換させたように思える。レイ・ダリオは「これまでの長期間慣れてきた投資環境が大きくシフトする可能性が高い。それは、これまでの時代とは大きく違ったものになるだろう」と述べている。

【ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者であるレイ・ダリオは、ドナルド・トランプ次期米大統領には強気だが、債券相場には弱気だ。債券相場については過去30年のピークに既に達した可能性が高いとの認識を示した。ダリオ氏は15日にリンクトインのページで、「債券相場は過去30年のピークが過ぎた可能性が著しく高いとわれわれは考えている。インフレ、そしてインフレと比較した債券利回りの両方について、長期サイクルの最低水準に恐らく達した」とコメントした。一方、5000億ドル(約54兆5600億円)余りのインフラ支出と減税、輸入制限を公約に掲げるトランプ次期政権をめぐっては、レーガン政権そっくりの右旋回の動きになると予想。グローバリゼーションの後退と米経済成長およびインフレの加速が、新政権を特徴付けることになりそうだとの見方を示した。ダリオ氏は「あらゆる意味でレーガン政権の右旋回に類似し、しかも大規模な大統領主導の徹底したイデオロギー転換が起きると確信している。ドナルド・トランプ氏は伝統的な国内製造業の浮揚を何よりも重視する政策を力強く推進するだろう。はるかに企業寄りで保護主義的な色彩が強いものだ」と指摘した。さらにトランプ氏の初期の評価は「おおむね肯定的だ」とした上で、政権入りが検討されている候補者らは経済マシンがどのように動くか十分理解し、政策シフトに伴う影響の合理的な計算が可能な人々であり、経済を苦境に陥れるような愚かで軽率なまねは恐らくしないだろう」と記述した】(2016年11月16日「トランプ氏はレーガン政権の右旋回に酷似、インフレ加速へ-ダリオ氏」ウォールストリートジャーナル)

2017年はアニマル・スピリットに火がつく?現金をリスクの高い資産に移す投資家の動きが非常に顕著になる可能性が・・

【ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者であるレイ・ダリオ氏は、トランプ次期米政権の下では、1979年から82年にかけて米国と英国、ドイツが経験した「社会主義者から資本主義者」への政権シフトよりも著しい経済的な変化が起きる可能性があると指摘した。ダリオ氏は19日のリンクトインへの投稿で、トランプ次期米大統領をサッチャー元英首相やレーガン元米大統領、コール元独首相になぞらえ、次期米政権は税制改正や財政支出で測れるよりもはるかに大きな影響を米経済に与えかねないと主張。トランプ時代は「アニマル・スピリット」に火を付け、生産資本を呼び込むことができるだろうとの見方を示した。ダリオ氏は「全体として見れば、ディールメーカーのビジネスマンが政権を運営することになる。彼らの大胆さは、新たな4年間を信じ難いほど面白くすると同時にわれわれ全員を気が抜けない状態に置くことはほぼ間違いない」と予想した。さらに次期政権の主要ポストに指名された人々は、60年代以降の大部分の政権よりも政治経験に乏しいが、ビジネス経験は圧倒的に豊富だと分析。利益を生む人々は、今のような「力が制限された悪役」ではなく「著しい力を持つヒーロー」になる公算が大きく、そのような環境の下では、現金をリスクの高い資産に移す投資家の動きが非常に顕著になる可能性があると予測した】(2016年12月20日ブルームバーグ「アニマル・スピリットに火が付くとダリオ氏-気の抜けない時代の到来か」)

これまではグローバリゼーションの進展で世界経済はグローバルデフレに向かっていた。グローバリゼーション(失業の輸出)がもたらしたデフレ不況と格差社会は、トランプ大統領の誕生や英国のEU離脱を促した。現在起こっているのは、反グローバリズムの流れである。グローバリゼーションの巻き戻し(アンワインド・後退)が始まっているのだ。この流れは当分止まらないだろう。そうであれば、2017年の相場のテーマは「インフレ(トランプフレーション)」になる。グローバリゼーションが促した「緊縮財政・低成長・低インフレ、低金利」が、その巻き戻しによって「積極財政・高成長・高インフレ、高金利」に向けて動き出しているのだ。

レイ・ダリオは、「30年も続いた金利低下という大きなトレンドが転換する時、大きくバイアスの掛かったポジションを抱えた投資家のポジションは、相場反転の勢いによって市場から退場させられることになる。金利低下というバイアスがかかった投資家が市場から完全に退場させられるまでは、金利上昇という自己強化プロセスが続く」と述べているが、現在の金利の反転はトレンド転換となりそうだ。

陰鬱博士と呼ばれるマーク・ファーバーは「これまで米国債の買い主力であった海外勢が現在は正味で売り方になっている。まず、2011 年にBRICS 諸国が米国債の購入をやめた。これはBLICS諸国(ベルギー、ルクセンブルク、アイルランド、ケイマン諸島、スイス)からの買い急増で相殺されたとはいえ、QE3が終了して以降、急増する米国債に対して外国勢は食指を動かさなくなった。しかも、個人投資家は今年、債券市場で大きな含み損を抱えている。正味で売り方になる可能性が高い。必然的な米国債の供給増(財政出動)に対し、どこに買い余力があるだろうか」と、米国金利の上昇に警鐘を鳴らしている。

米10年国債金利(月足) 米長期金利は金利安の大底を打ったのか?
レイ・ダリオは「債券相場は過去30年のピークが過ぎた可能性が著しく高いとわれわれは考えている。インフレ、そしてインフレと比較した債券利回りの両方について、長期サイクルの最低水準に恐らく達した」とコメント。グローバリゼーションで30年超続いた金利の低下は、その巻き戻しによって金利安のボトムを昨年に付けたのか・・?

(出所:石原順)

原油価格の上昇が米国株高を支える

インフレといえば、原油市場ではサウジアラビアとシェールオイル企業の我慢比べ、即ち、サウジアラビアによる<シェールオイル関連ジャンク債潰し>の動きに決着がついた。この戦いはシェールオイル企業の勝利に終わったのである。シェール関連の企業が発行した高利回り債(ジャンク債)の償還は2016年4月に集中していたが、借り換えがうまくいったようだ。2016年4月の社債の償還に絡んで、NY原油先物市場が操作されたのではないかと噂されている。真偽は定かでないが、いずれにせよ原油価格の上昇で2016年の1~2月に出た大量のオイルマネー系ソブリンファンドの株式売却が止まったのは間違いないだろう。また、原油価格の上昇やトランプのエネルギー重視策で資源・エネルギー株が上昇し、米国株高を支える格好となっている。

NY原油先物(月足)
サウジアラビアとシェールオイル企業の我慢比べはシェールオイル企業が勝利?

(出所:石原順)

<株高=金利高=ドル高>という図式がいつ壊れ始めるか?

上記のようにレイ・ダリオはトランプ政権の極めて景気刺激的な財政政策や減税がアニマル・スピリットを刺激するとして高く評価している。しかし、一方では「FEDや一部の中央銀行は金融引き締めに動く可能性が高い。そうすれば金融政策と財政政策が経済のなかで反対方向に作用することになる。問題は、<株高=金利高=ドル高>という図式がいつ壊れ始めるか、インフレ率と経済成長率の上昇がどの程度許容されるのか・・」と警戒感も持っている。我々は中央銀行バブルの象徴である量的緩和政策にどっぷりつかってきたが、トランプ政権では金融引き締め政策に転換しそうだ。金融引き締めが株式市場に影響を与えないわけがない。

ファンダメンタルズ分析に基づいたAI(人工知能)運用を行っているレイ・ダリオが一番気にしていたのが金利の上昇である。レイ・ダリオはこれまで、「具体的にどの程度の引き締めが行われれば混乱を引き起こすかは、われわれも金融当局にも分からないと指摘した上で、連邦準備制度は通常よりも遅く、用心深く臨むことに越したことはない」(2015年3月18日 ブルームバーグ)と述べていたが、2015年8月26日のリンクトインへの投稿で、「25-50ベーシスポイントの引き締めであれば、われわれは大きな引き締めとは考えない」と述べている。

米利上げ3回目までは基本的にリスクオンか?

金利上昇の初期相場は、利上げ3回目まで株高と金利高が連動することが多い。トランプ政権で株高が続く条件は長期金利が3%を超えないことだろう。中央銀行バブル相場は言いかえるとゼロ金利バブルであり、ゼロと比べたら何でも買える(運用難の消去法投資)という姿勢で投資が行われてきた。

中央銀行バブル相場の価格構造は、米国の短期金利0%・長期金利1.5%を土台にしている。金利が急激に上がればその構造が崩れ、市場が癇癪を起す可能性がでてくる。金利上昇が<速い>ものになれば、株式は耐えきれず弱含みの展開になる。新債券の帝王ジェフリー・ガンドラックは、「目先の米国長期金利は2.35%を超えてくると経済が悪化する。今後の5年間では、米国長期金利は6%まで上昇する可能性がある」と述べている。

財政出動・減税・ボルカールールの廃止・本国投資法などの政策が功を奏し、金利の上昇(FRBの利上げペース)が緩慢になるなら、株式市場の5波動目の上げ相場が延長(5波動目の相場は短縮や延長がよく起こる。株とコモディティは最後の相場が一番上がることが多い)し、1~2年バブルが延長する可能性がある。報道されているように、トランプ政権で人々は自信を深め、収益率の低い現金や債券から株式などリスクの高い資産に資金をシフトするかもしれない。

NYダウ(週足)と米国の金融政策
株式市場は、「トランプは不動産屋。自分の事業が損をするような政策をするはずがない」という思惑でバブル相場がスタートしている。米利上げ3回目までは基本的にリスクオンか?

(出所:石原順)

CME FEDWATCH 2017年6月の利上げ見通し(FF金利先物の FOMC 予想確率)

(出所:CME)

7の年は金融危機が起こるが、バブルはどうにか延命して8の年に急落が起こる?

7の年の相場は1勝5敗である。1987年のブラックマンデー、1997年のアジア通貨危機、2007年のサブプライム危機と、7の年には金融危機が起こると言われている。2017年もなんらかの金融危機が顕在化しそうだ。しかし、「7の年に金融危機が顕在化しても(相場は下がるが)暴落は起こらず、実際に市場の暴落が起きるのは8の年である」という確率の方が高い。新債券の帝王ジェフリー・ガンドラックも、「市場の崩壊は2018年である」という見通しを語っており、あと1年程度、現在のバブル相場はなんとか持ちこたえるのかもしれない。中央銀行バブルは金利が大きく上昇すれば終わりである。筆者の周辺では昨年からインフレ連動債を買うファンドが増えている。トランプ次期大統領の唱える政策がどれだけの実現性・効果を持つものなのかは不確実であり、2017年の相場は上にも下にも注意が必要だ。

いずれにせよ、2017年は米国市場が相場を牽引し、日本株市場は米国株市場と円安に連動するだろう。2017年のマーケット・テーマは、トランプノミクス(財政出動・減税・ボルカールールの廃止・エネルギー産業重視など経済成長重視の戦略)VSトランプフレーション(インフレ・金利上昇)であり、「インフレと金利の上昇に株式市場がどう反応するか?」が焦点となる。

ドル/円(月足) 20か月移動平均線と相場の転換
2017年の円安=株高相場の鍵を握るのはドル/円の20か月移動平均線か・・

(出所:石原順)

ドル/円(月足) 支持・抵抗線

(出所:石原順)

日経平均(月足) 支持・抵抗線

(出所:石原順)

新しい年が素晴しい一年になりますよう皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。

日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。

本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。

石原順

海外先物レポート

海外のヘッジファンドを運用する現役のファンドマネジャーが提供するレポート。日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍してきた筆者が、独自の視点で海外先物を分析いたします。

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