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2016年1月4日

第29回 2016年の株式相場見通し

インデックスには勝てない?

チャールズ・エリスの『敗者のゲーム』やバートン・マルキールの『ウォール街のランダムウォーク』が指摘しているように、アクティブ運用の投信やファンドの4分の3はインデックス運用に負けている。これは世界的な傾向で、時期によって多少の上下はあっても平均するとそうなる。一概には言えないが、株式投信の主流であるアクティブ投信は、質の悪い、高コスト低パフォーマンスの投信が多い。

ファンドが株を運用する場合、大きくはアクティブ運用とパッシブ運用に区別される。アクティブ運用とは、定められた株価指数(SP500やTOPIXなどのいわゆるインデックス)のベンチマーク(投資パフォーマンス)を上回る運用成績を目指す運用だ。一方、パッシブ運用とは定められた株価指数のベンチマークから乖離することがないように運用する手法である。

アクティブ運用は、個別銘柄の投資判断を運用者が判断するが、パッシブ運用は運用者が銘柄を決めるのではなく、株価指数に沿うような銘柄を組み入れて運用を行う。早い話が、パッシブ運用を行うには、株価指数を買えばよい。

苦労して企業評価という個別銘柄の分析を行ってアクティブ運用を行っても、アクティブ運用がパッシブ運用に勝つ確率は4分の1である。「プロもインデックスには勝てない」とよく言われるが、4分の3の運用者はパッシブ運用に勝てないのである。

その結果、個人投資家が一発勝負で将来性のある個別株を買うのはともかく、ファンドや年金などの長期の株式運用では、アクティブ運用はいらないという話になる。

まったく夢もロマンもない無味乾燥の世界だが、筆者はある株式ファンドの幹部に「夢やロマンで運用していては、カネがいくらあっても足りないよ!」と、戒められたことがある。これがファンドの株式運用の実態である。

したがって、一般論として言えば、株式投資の王道は、ETF(NIKKEI225 ETF(1321)・TOPIX ETF (1306)・NYダウETF(1546)・・など)や日経225先物ミニなどに投資することになる。

海外のファンド勢は、先物やNY市場の日経225連動ETF NKY(NYSE)、NYダウ連動型ETF DIA(NYSE)、DAX連動型ETF EWG(NYSE)を買っている。

ETFも投信の一種だが、取引所に上場されており、株式と同じようにリアルタイムで売買できるし、信託報酬がインデックス投信の3分の1から10分の1と安い。

株価指数先物の売買を行ったことがある人であれば、インデックス投信やETFに投資する代わりに株価指数先物を買って、3か月毎にロールオーバーしていけば、更に有利にインデックス通りの株式運用が行える(最初に先物を買って、その後ロールオーバーするコストは、年間でインデックス投信の信託報酬の10分の1程度)。

何よりも先物でインデックス運用を行うことのメリットは、運用資金の3%から10%程度の証拠金(株式市場のボラティリティによって変わる)を差し入れるだけで取引を行えることで、残りの9割近い資金を金利での運用などに別途運用出来る。「買い」だけでなく、「売り」から取引することもできるため、株価指数の上昇局面でも下降局面でも利益を狙うことが可能である

株式投資の答えはもう出ている

さて、筆者の独断と偏見では、株式投資の「答え」はもう出ているのである。

  • 日経平均はボラティリティ上昇時に下落、ボラティリティ低下時に上昇しやすい
  • 10月末から1月末のボラティリティは低下傾向
  • 株が下がりやすい月は「5月」・「9月」・「10月」
  • 「5月」・「9月」・「10月」が逆張りの買い場となるが、半年程度保有する場合、「5月の買い」は9月・10月の下げ相場に巻き込まれてしまう

したがって、運用成績の落ち込み(ドローダウン)を避けて投資するには「10月末買いの4月末の売り」が消去法で残ることになる。

自由主義計画経済と呼ばれる日本の2016年相場は選挙相場か?

過去の申(さる)年の日経平均は6月までゆっくり上昇するようだ、また、西暦の末尾が6の年(丙=ひのえ)は年前半が堅調になる傾向があるという。2015年の日経平均は4年連続高となった。過去の相場で日経平均が4年連続高した1950~1956年・1974~1980年・1982~1988年の3回のケースでは、いずれも7年連続高となっている。今回は2018年まで上げるパターンとなるが、そううまくはいかないだろう。

「1950年1月から2015年9月までの日経平均の月別のリターンをもとに、株価が1年間でどのように推移するかを調べると、1~4月末に値上がりした後、10月末にかけてほぼ横ばいで推移し、11~12月末に再び値上がりするパターンが読み取れる。年間値上がり率11.40%のうち9.52%を10月末から翌年4月末までに稼ぐというのが過去65年間の平均像である」(日経新聞 前田昌孝編集委員)ならば、確率論からは今年もとりあえず4月までが買いで勝負する期間と言えよう。

「12月の日銀の補完措置は黒田バズーカ3への布石(地ならし)であり、参議院選挙前の黒田バズーカ3は必至だろう」とみるファンドは多い。今回発表された長期国債買い入れの平均残存期間の長期化で、日銀は買い入れの平均残存期間を現行の7~10年程度から2016年には7~12年程度に伸ばすことが出来る。黒田総裁は現行の縛りではもう国債の買い入れ余地がないため、「国債を買える範囲を拡げた」のである。

いくら日銀が金融緩和をしようが、そのお金は日銀の当座預金にブタ積みになるだけで、マイナス金利にでもしない限りお金は金融村のなかに留まり、お金は市中に出ていかない。日銀は<見せかけの金融緩和>を続けているのだ。それでも、現在の金融政策は麻薬のような依存性を発揮しており、それが破綻するまで出口はないのである。だが、物価目標2%を達成するまでは金融緩和環境が継続されるため、バブル環境は維持される。

2017年4月の消費増税シナリオがうまく進めば、安倍首相は2016年の年末に衆議院選挙をやるかもしれない。消費増税の前に選挙をやっておきたいからだ。7月の衆参同時選挙の観測も多いが、同時選挙は公明党の協力を得にくいので、年末の衆議院選挙シナリオが有力視されている。

アベノミクス経済は統制経済に向かっている。株高・円安傾向を選挙のために維持しようとするだろう。となれば、選挙前は株高・円安となりやすい。ただし、消費増税が延期されるような不景気となれば、このシナリオは崩れてしまう。

上がり過ぎの相場に対する懸念

さて、今年の相場が悩ましいのは、深い調整を入れずに米国株がもう7年間も上がってきたことである。近年の米国株式市場はバブル(ITバブル・住宅バブル・中央銀行バブル)とその崩壊の繰り返しで、7年~10年に1度暴落している。2009年をボトムに急上昇した米国株は今年から3年間のどの時点かで大幅な調整をみるだろう。バブル崩壊に巻き込まれない方法は、ストップロス注文を置いておくことである。

NYダウ(月足)と米国の景気後退期(水色のゾーン)
元米財務長官のローレンス・サマーズは、「1997年、1998年、2007年、そして2008年のように、私たちは非常に深刻な状況の始まりにいる可能性がある」と2015年8月25日にツイート。ジム・ロジャースは「米国の歴史を振り返ると、経済の減速が4年または7年おきに起きている。株式市場に問題が起きてから既に6、7年経つから、そろそろ問題が起きる頃だ」と述べている。

(出所:石原順)

NYダウ(週足)と米国の金融政策
2016年は利上げサイクルに入る。年4回も利上げできるのか?

(出所:石原順)

S&P500とFRBの保有資産(2008年~2015年)
世界は人為的につくられた流動性で溢れている。この流動性の恩恵を受けることができた人たちは笑いが止まらない状態だが、流動性がストップしてしまうと悲惨な状況に襲われることになる。

(出所:The Gloom, Boom & Doom Report ファーバー・レポート)

世界の流動性供給(年変化率・1988年~2015年)
長期停滞でゼロ金利、債務危機回避が困難なことから、資産市場では「終わりの予感」が感じにくい。理性的な投資家は、リーマン危機再来とは言わないまでも、中央銀行バブルの終わりの予感を感じている。

(出所:The Gloom, Boom & Doom Report ファーバー・レポート)

FRBは米国だけ金融政策を正常化(健全化)しようと、利上げや保有債券の縮小を画策しているが、利上げするかどうかでなく、逆にマイナス金利やQE4を開始するかどうかを検討しなければならない状態である。昨年、格付け機関のS&Pが9月までに米国企業297社も格下げしたが、これはリーマンショック以来の多さである。2015年の米国株式市場では150兆円もの自社株買いが出た。しかし、米国株はそれほど上がらなかった。この状態で米国が連続利上げすると、社債市場の金利が上がり自社株買いも減って、2016年は米国景気も減速しかねない。

気になるのは、「S&P500 のPSR (株価売上倍率) が記録的水準にある一方で、実際の収益は低下している。そこで企業収益について考えてみよう。用心すべき理由がそこにある。まず米国の国民所得に占める労働分配率だ。現在これは記録的に低い水準にある。労働分配率は2000年以降、低下の一途であった。これは企業が収益力を増強するため、社員を一時解雇(レイオフ)し、代わりに安価な従業員(派遣社員など)を雇ったからだ。しかし現在、賃金の伸びが加速しており、やがていくらか改善しそうである。そして、企業収益にとって同じくらい重要なのが、金利の低下だ。フェデラルファンド(FF)金利が実質的に低下(赤色の線が上昇)するたびに、企業収益の対GDP比が急速に拡大(青色の点線が上昇)しているのだ。つまり、労働分配率がもはや低下しない(上昇しそうだ)、そして金利がもはや低下しない(いくらか上昇する)とすれば、企業収益にとっての強力な追い風が止むことになる」(ファーバー・レポート2015年12月号)というマーク・ファーバーの指摘であろう。利上げは米国の企業収益に逆風であり、2016年の米国株市場は上値が重い展開が想定される。

政策金利低下に伴う企業収益の拡大
米国は利上げで企業収益にとっての強力な追い風が止むことになる。

(出所:The Gloom, Boom & Doom Report ファーバー・レポート)

コモディティと株式の推移(1913年~1932年)
ドル高とコモディティ安が2016年の世界経済にどのような影響を与えるのか、投資家が警戒を強めている。また、じりじりと人民元安が進行している。人民元安が進行すると中国の輸入が減少するだろう。原油や銅の下落と並んで世界経済の不景気を暗示する現象として、ファンドも警戒し始めている。

(出所:The Gloom, Boom & Doom Report ファーバー・レポート)

CRBコモディティ指数(週足)
商品安めぐる成長懸念再燃で世界株安の懸念が高まっている。
上段:26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21週ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)

(出所:石原順)

日本株のリスク要因は円高か?

ファンドの運用者たちに今年の日経平均についてのレンジ予測を聞いてみたが、22000円~17000円がメインのレンジで、コアレンジは21000円~18000円となっている。ドル/円が110円レベルまで下げると、日経平均は16000円まで下げる可能性があるという意見も多い。

2016年の相場は予断を許さない状況にある。ボラティリティが上がりそうだが、どうなるかわからない。筆者はよりテクニカル指標を重視したトレーディングベースで臨む予定だ。

筆者は「相場の転機のシグナル」としてADXというテクニカル指標を使っている。ADX(Average Directional Movement Index)は Wilderによって開発されたトレンド系の指標で、「トレンドの強さ」を測定するものだ。テクニカル指標DMIのDI+,DI-を使ってDXを計算し、そのX日間のアベレージ(移動平均)を取ったものがADXである。

ここで問題なのは、ADXといってもいろいろなバージョンがあって、移動平均に単純移動平均(SMA)を取るものと指数平滑移動平均(EMA)を取るものがある。筆者は単純移動平均で計算しているが、どちらが良いという話ではなく、計算式が違うのである。同じ3日ADXでも、数値は業者やチャートソフトによって異なるので、注意していただきたい。

日経平均やNYダウは3日ADXが70以上や30以下になった時が相場転換の領域で、相場は間もなく反転する確率が高くなる。最近のドル/円相場では3日ADXが60以上や40以下になった時が相場転換の領域となっている。読者の皆さんの短期から中期のトレードの参考になるのではないかと思われる。

日経平均(日足) 3日ADX(赤)が70以上あるいは30以下が相場の転換領域
上段:3日単純移動平均ADX(赤)
下段:25日エンベロープ±5%(緑)と9日RSI40-70の売買シグナル

(出所:石原順)

NYダウ(日足) 3日ADX(赤)が70以上あるいは30以下が相場の転換領域
上段:3日単純移動平均ADX(赤)
下段:18日エンベロープ±1%(青)・±3%(緑)と9日RSI40-70の売買シグナル

(出所:石原順)

日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。

本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。

石原順

海外先物レポート

海外のヘッジファンドを運用する現役のファンドマネジャーが提供するレポート。日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍してきた筆者が、独自の視点で海外先物を分析いたします。

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