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2015年1月5日

第28回 2015年は石油戦略と株式市場のバブルで大変動相場に?

2015年も金融バブル相場が続く?

筆者が見るところ、2015年も金融バブル相場が続くと思われる。特に日本は黒田日銀の先進国らしからぬ財政ファイナンス的金融政策やGPIFや日銀を使った意図的な官製バブルを国策としており、資産バブルが膨張することになろう。

ただし、日本のGDPが2期連続のマイナスとなっているように、今年も実体経済の改善は期待しにくいだろう。2014年末の総選挙で安倍政権が大勝したことで、2015年のアベノミクスは第二の矢、即ち、公共事業による財政支出の拡大が中心となりそうだ。

公共事業のバラマキをいくらやっても短期的な経済効果しかなく、財政赤字が増えるだけなのは90年代に答えが出ている。日本の財政出動には、経済逆の教科書に載っている乗数効果がないからだ。それでも地方創生を大義名分に財政出動をおこなえばその分だけは有効需要が増えるので、不景気の地方経済や自民党内の反安倍勢力を黙らせるのに都合がよい。

海外勢が日本に期待するのは2015年も日銀の追加緩和である。アベノミクスの中心政策はあくまで量的緩和策であり、英FT紙が指摘するように最初から一本の矢なのである。10月末に日銀はバズーカ2を実施しており追加緩和はしばらくやりにくいという事情があるが、「早ければ2015年4月、遅くとも2015年7月の日銀金融政策決定会合でETFと国債買い入れ額の増額が決定されるだろう」と観ているファンドは多い。黒田日銀が掲げる「物価目標を2年で2%にする」というインフレ目標を達成するには、追加緩和は必至とみているからである。

円安というコストプッシュ・インフレで物価が上がったところで、日本国民の生活には何のメリットもないことは言うまでもない。それはスタブフレーションだ。それでも、日銀が追加緩和を実施する背景には、意図的にやっているかどうかは別として、財政ファイナンス(円の増刷で財政赤字の拡大を支える)と、金融抑圧(国民の財産を実質的に目減りさせ、政府債務を圧縮する)という2つの政策が横たわっているからである。

世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオは、「日本で実施されている金融政策は、『インフレ率プラス経済成長率』の数値を金利の水準よりも上回るようにするために、紙幣を印刷している。つまりデフレ対策のためだ。失われた20年を経た日本は、現在の政策がかなり遅い段階に実施されたため、負債の水準は大きく膨れ上がった。その負債は日本国民の貯蓄で支えられている。高齢化により、国民が老後の生活のために貯蓄をとり崩せば、日本の財政赤字を解消するための能力は縮小する。国民の日本国債への需要低下に対応して、日銀による国債購入を増やす必要がある。政府が消費税を引き上げるなら、同時に日銀による量的緩和の規模も引き上げるべきだ。政府がいかに強力に政策を推し進めるか次第だ。もしそれが可能なら3年程度で目標に達することができるかもしれない。それには一段の円安が必要だ。円相場は現在の水準から年間10%程度の下落が必要だ」(日経ヴェリタス2014年10月19日号『経済の仕組み理解し、投資の武器に 世界最大のヘッジファンドが見通す経済』)とアベノミクスを肯定している。

都合の良いことに、今の50ドル台という原油価格では、為替が125円~130円になっても物価目標2%に到達するのは難しい状況だ。黒田日銀には追加の緩和をおこなう大義名分があるのである。日銀が追加緩和を行うと金融バブルがさらに膨張し、短期的には株価を押し上げるだろう。しかし、株や資産価格の急騰は資産を持っていない人にはなんの恩恵もない。

アベノミクスで株価が上昇し景気が回復しているという報道の裏で、多くの国民の生活は実質的に苦しくなっている。日本経済の見方について悲観的すぎると思われるかもしれないが、OECDの2015年のGDP見通しでは日本の成長率は0.8%とユーロ圏の1.1%を下回っている。日本の景気がよくならないという見方は、グローバル・スタンダードといえよう。

日本の消費が増えないのは、年収に対して不動産や家賃が高すぎるからである。日本は家計貯蓄率がマイナス1.3%となっており、可処分所得がない状況にある。日本国民はすでに限界まで消費しているのである。家計貯蓄率は1973年の23%をピークに下がりっぱなしだ。少子高齢化のなか、今後も家計所得の伸びは期待できないなかで税金や保険などの社会保障費だけがどんどん上がっていく。

日本の家計貯蓄率(1994年~2013年)

(出所:石原順)

もう、答えは出ているのだ。結局、アベノミクスとは国家が意図的にインフレを起こすという政策であり、景気はよくならないが株だけは上がるという資産バブルなのである。日本国民は格差社会の中で、株を買うか外貨を買うか、なんらかのインフレヘッジをしなければならないという状況に追い込まれている。

黒田日銀総裁は2014年10月8日、エコノミック・クラブNYにおける『日本経済:慎重論に答える』という講演で、「日本の潜在成長率は0.5%前後と推計される」と発言している。潜在成長率が0.5%で家計貯蓄率がマイナスで消費の伸びが期待できない以上、日本株がどこまで上がるかは円安次第であろう。

アベノミクスによる株高は、円安によって日本企業の業績そのものがバブルしているということである。これだけ円安になっても輸出量はあまり増えていないが、日本企業が海外で得た利益は、円に換算すると円安の分多くなる。海外移転の進んでいる日本企業は、帳簿(バランスシート)上は円安で利益がかさ上げされる。

世界的な景気の低迷が指摘される中、日本株を上げようと思ったら、円安にして帳簿上の利益をかさ上げするしかないのである。それをスマートに実施するために、日本の株式市場では過去に欧米で流行ったReturn On Equity(株主資本利益率)が周回遅れでブームになっている。自社株買いで自己資本を減らし、為替が円安になればROEは上がる。したがって、2015年の日本株がどこまで上がるかは、円安がどこまで進むかにかかっている。

長期期停滞のなか、ポストQEはバブルの温存

昨年、ドイツ銀行のアナリストが「The Bubble Must Go On To Sustain The "Current Global Financial System"(現在の金融システムを維持するためにはバブルが欠かせない)」と述べていたが、こうした認識が広まった背景には、中央銀行バブルのドンとして君臨するスタンレー・フィッシャーFRB副議長が、ローレンス・サマーズの指摘する「長期停滞」がMITコンセンサスであることを表明したからだ。

2014年8月11日のスタンレー・フィッシャーFRB副議長のストックホルム講演は衝撃的な内容であった。

「FRBのフィッシャー副議長は11日、これまでの米国と世界の景気回復について<期待外れ>と述べた上で、潜在成長率の永久的な下方シフトを示唆する可能性があるとの見方を示した。副議長は、生産性の鈍化や労働参加率の低下などの要因によって、経済成長を生み出す米国の力が損なわれている可能性がある、と指摘。世界経済のより構造的、より長期的なシフトを反映しているとも考えられる。欧州や主要新興国でも同様のことが起きている可能性があるとし、中銀はインフレや雇用、成長全般の認識修正を迫られている、と述べた」(ロイター報道 抜粋)

サマーズが主張する「長期停滞」仮説は、世界金融危機以前に供給力が膨張していたため、危機後に減退した需要を恒常的に上回る状態となって投資を抑え、成長力が低下したという考え方だ。

『私は頭がおかしいと思われるかもしれませんし、実際、間違ったことを言っているのかもしれません。しかし、金融危機が収まって4年も経過したのに、成長が復活して雇用が戻るという兆候が見られない以上、金融政策をこれまでよりも控えめにしろとか、以前よりも貸し出しも借り入れも減少させ、資産価格を低めに保つことが目的の政策を行えとかいう、現在の数々の政策提言につき、懸念せざるを得ません』(ローレンス・サマーズ 2013年11月 IMFでのスピーチ)

ポストQEはバブルの温存である。市場を驚かせたのはフィッシャーFRB副議長が、教え子のサマーズと同じく米国経済が「停滞構造」へのプロセスに嵌まり込んだとの認識を持っていたことである。このことに気づいていないファンド勢は、2014年のQE終了相場で金利上昇のポジションに賭けて討ち死にしていった。

サマーズが主張するデフレギャップによる米国の「長期停滞」は、日本の失われた20年と同じ現象を指す。「現在の米国経済は一人勝ちだ。米国が日本と同じ長期停滞などばかばかしい話だ」という意見もあろう。しかし、米国経済は好調で株価も史上最高値を更新しているにもかかわらず、オバマ大統領は人気がなく中間選挙でも大敗している。米国も日本も景気は表面上良いがその恩恵に浴しているのは富裕層だけである。もっと簡単に言えば、米国も家計所得は減少しており、株が上がっているだけなのである。

GDPの成長や株価の上昇が国民の家計と一致しないなかで、我々はとりあえず株のETF(株式インデックス)を買うしか術がない。それが格差社会の到来という現実の問題に対処する唯一の手段だろう。ただし、バブルの生成は必然的にバブルの崩壊をもたらす。そこから身を守るにはストップロス注文を置いておくしかない。

2015年はFRBのアリバイ作り的な利上げ(FRBの信認維持のための利上げ)が実施される一方で、米国の代わりにドラギECBと黒田日銀がバブルリレーを展開することが予想されている。

中央銀行の総資産 日銀(左)・ECB(中央)・FRB(右)

2015年は米国の代わりにECBと日銀がバブルリレー

(出所:石原順)

FOMCメンバーの金利予測を観て、米国の金利は順調に上がっていくという見方をすると、今年も相場を間違うかもしれない。下のドットチャートの意味するところは、「セントラルバンカーが想定するあるべき金利水準」という理想である。

米国の長期金利の上がり方が緩慢なのは、そうした背景や金融規制(BIS規制)およびMITコンセンサスから低インフレ局面は長期化する(利上げや緩和縮小のスピードは緩慢)と投資家が思っているからである。現在の原油安は当面続くとみる見方が多いが、これによって米国の利上げも後ズレする可能性が高い。

FOMCメンバーによる政策金利予測

(出所:FRB)

米10年国債金利(月足)

(出所:石原順)

米国では今後10年間で、65歳以上の人口が20歳~64歳人口の3倍以上も増加すると言われている。過剰と言われてきた米国の個人消費も頭打ちとなろう。また、ネット社会の本格化でインターネット以前のような大規模な生産設備は必要がないため、ITによる技術革新は労働力の余剰しか生まない。人がいらないのである。こうした背景から、バブルなしでは完全雇用が達成できないとイエレンFRB議長は考えている。したがって、長期金利が大幅に上がらない限り、資産バブルを容認するだろう。

2015年の日本株と米国株

2015年のNYダウ、日経平均相場は、以下のチャートの「黄色の部分をコアレンジ」とした上下の緑色の部分までの変動を予想している。黄色のコアレンジをブレイクすると、緑色のレンジに相場の方向が移りやすい。

NYダウ(日足)18日エンベロープ(移動平均乖離)-3%(赤)水準でいったん下げ止まりこれまでのNYダウの相場は、18日エンベロープ-3%乖離(移動平均線-3%乖離)のバンドにタッチすると大きく戻す傾向が見て取れる

(出所:石原順)

日経平均(日足)と25日エンベロープ

2015年の相場も基本的に25日移動平均線±10%の範囲での反動となりそう?

(出所:石原順)

NYダウ(月足)「10月末買い・4月末売り」(赤は失敗の年)

(過去15年で12勝3敗、117年で79勝38敗)

(出所:石原順)

日経平均(月足)「10月末買い・4月末売り」(赤は失敗の年)

(過去15年間で11勝4敗、65年間で48勝17敗)

(出所:石原順)

米中間選挙翌年のNYダウの年間騰落率(%)

中間選挙翌年のNYダウは高い?

(出所:石原順)

金融バブルを崩壊させるかもしれないリスク要因は原油安か?

2015年の相場で 金融バブルを崩壊させるかもしれないリスク要因は原油安であろう。OPECは2014年11月27日の総会で、日量3,000万バレルとする現行生産枠を維持する方針で合意した。現在の原油安は石油メジャーとOPECが画策する<シェール業者潰し>や<ロシア・イラン包囲網>によるものと言われている。

原油先物(月足)

(出所:石原順)

基本的に原油価格の急落は日本や米国の経済にとってプラスの要因である。問題はエネルギー関連のジャンク債がジャンク債市場の2割弱(2,972億ドル)を占めていることだ。投機筋の一部で、「シェールオイル業界の業績悪化からコベナンツライトローン(財務制限などの緩い融資)やハイイールド(ジャンク)債市場にも影響がおよび、米国の債券バブル金融が崩壊する」という観測が出ている。原油安で通貨危機に見舞われているロシアのプーチン大統領も、シェールオイル潰しと米国の債券バブル潰し(第二のサブプライム危機)を狙っているのだという。

こうした金融戦争のなかで、「原油価格の急落」→「ジャンク債バブルの崩壊」→「米株式市場の急落」→「世界的な景気後退」という負のスパイラルが起こる可能性には注意したい。ハイイールド社債ETFの動きを注視しておく必要があるだろう。

iシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETF(週足)

バブル相場の指標銘柄=「炭鉱のカナリア」か?

(出所:石原順)

日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。

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石原順

海外先物レポート

海外のヘッジファンドを運用する現役のファンドマネジャーが提供するレポート。日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍してきた筆者が、独自の視点で海外先物を分析いたします。

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