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2017年7月14日

6か月間のOPEC減産を振り返り、向こう9か月間の行方を想像する

今日の見出し

  • 徐々に増加したOPECの原油生産量。かろうじて13か国の生産目標は順守され6月が終了。
  • 減産している国にも減産余地はある。減産開始直後の1月に生産量を減少させた減産の意思がある国でも減産目標を順守できていない国がある。減産と別の文脈で生産量が減少しているとみられる長期自然減の国の短期的な生産増加に注意。
  • 増産可能・増産凍結状態の3か国は、合計で6月比40万バレル/日量程度の減産は可能か?新ルール策定が報じられる中、ロシアの増産の可能性を加味すればOPEC全体で60万バレル/日量程度の減産は痛みを伴っても実施することが必要か?

当所予定されていた半年間の減産が終了しました。5月の総会で来年3月まで減産の延長が決まりましたが、今週公表されたOPEC月報をもとに、当初予定されていた半年間(2017年1月から6月)を振り返って、OPEC全体において、さらには個別国においてどのような負荷がかかっていたかを見てみたいと思いました。

今後の減産についてルール変更が検討されていると報じられていますが(7月17日(月)にOPECの会合があると報じられており、その会合で何らかのルール変更があるかもしれません)、どのような変更が考えられるのか?あるいは変更がなされた場合その変更が機能するのか?などを考えていく上で、この半年間の振り返りがヒントの一つになるのではないか?と考えております。

徐々に増加したOPECの原油生産量。かろうじて13か国の生産目標は順守され6月が終了。

この6ヶ月間のOPEC全体の生産量の動向としては、以下のようになると思われます。

  • 減産初月である1月の生産量は12月から急減し、昨年11月に合意した13か国で“3,250万バレル/日量”という減産目標の上限を下回り、合意内容の順守状態に入る。
  • 3月以降、徐々に生産量が増加。順守状態は継続。
  • 生産量の増加傾向は継続。当初予定されていた減産の最終月である6月時点で、順守状態であるものの、減産開始以降、生産量は最大となる。

図:OPEC(赤道ギニアを除いた13か国)の原油生産量 単位:千バレル/日量

出所:OPECのデータより筆者作成

極端な言い方をすれば、最初は順守する意思を持った複数の国が積極的に減産して順守状態に入ったものの、増産できる例外国が増産傾向を強めたことや、減産した国の生産量の減少幅が縮小したことなどにより、時間の経過とともに順守状態にほころびが生じはじめた、ということであるように見えます。

その背景には原油価格の下落があるものと思われます。“米国の増産”が原油価格の下落の発端となったと考えられますが、その原油価格の下落が順守状態のほころび、いわば“OPECの結束力の緩み”に拍車をかけたのではないか思います。

以上のような流れで6月までの減産は終了し、現在は来年3月までの延長期間に入っている訳ですが、ここまでの流れの中に今後のOPECの歩む方向についてのヒントがあるものと思います。

※本レポートでは生産シェアがOPEC全体の合計でおよそ93%となる9つの国の個別の動向をみていきたいと考えております。(9か国の生産量はいずれも日量100万バレル超)残りのおよそ7%のシェアとなるリビア、カタール、エクアドル、ガボン、赤道ギニア5か国を除いています。(シェアは2017年6月時点)

減産している国にも減産余地はある。減産開始直後の1月に生産量を減少させた減産の意思がある国でも減産目標を順守できていない国がある。減産と別の文脈で生産量が減少しているとみられる長期自然減の国の短期的な生産増加に注意。

1月以降、急激に生産量を減少させた国は、(生産目標を順守しているかどうかを別として)ある程度、減産を遂行する意思がある国であると考えられます。

このような国は9か国中、クウェート、UAE、サウジアラビア、イラク、アルジェリアの5か国が該当すると考えられます。

図:クウェート・UAEの原油生産量  2017年1月を100

出所:OPECのデータより筆者作成

中でもこの2か国は、生産量が大きく減少し、かつ半年が経過した6月でも1月の水準を下回っている国です。以下のサウジアラビア、イラク、アルジェリアに比べれば、今後も1月以下の生産量の水準を保つことは容易であるように思われます。

図:サウジアラビア、イラク、アルジェリアの原油生産量 2017年1月を100

出所:OPECのデータより筆者作成

この3か国は、減産開始に向けて生産量を減少させた国の中で、徐々に生産量が増加してきた国です。減産する意思はあるものの、“減産を継続することが困難な国”である可能性があります。

また、以下はこれらの1月に生産量が減少した5か国のそれぞれが負う減産目標の上限と6月の生産量を比べたものです。

表:減産目標上限と6月の生産量およびその差
単位:千バレル/日量

出所:OPECのデータより筆者作成

この表からわかることは、1月に生産量を減らし減産を実施する意思がある国であったとしても、昨年11月の総会で合意した減産を順守している国はサウジアラビアのみであるということです。(6月時点)

意思があることと減産目標の上限を守っていることは別の話であり、まずはサウジアラビア以外の4か国は合意した上限を守ることが必要であると思われます。

つまり、これらの減産実施へ意思のある国においては、来年3月まで続く減産において、減産のルールの変更などではなく、まずはそれぞれの減産目標の上限を下回る生産活動を行うことが求められることになると考えられます。

サウジアラビアが6月と同じ生産量だったとして、同国を除く4か国がそれぞれ減産目標を順守すれば、6月比合計で19万8千バレル/日量、この5か国のグループで生産量の削減が行われる計算になります。

一見すると減産開始直後、急に生産量が減っており減産が履行されているように見えますが、サウジアラビアを除く4か国においてはまだ減産余地がある、ということであると思われます。

また、以下はもともと長期的に生産量が減少傾向にあるとみられる国です。このような国は9か国中、アンゴラ・ベネズエラの2か国が該当すると考えられます。

上記の5か国と異なり、長期的に減産開始以前から生産量の減少傾向が続いています。これら国々の政情や生産施設の老朽化の具合等がその要因であると考えられます。

図:アンゴラ・ベネズエラの原油生産量 2017年1月を100

出所:OPECのデータより筆者作成

ベネズエラの生産量の長期減少傾向はより鮮明で、今後も減産とは別の文脈で減少し続けていくものと思われます。また、長期的な減少傾向とはいえアンゴラについては数か月単位で増減幅が大きくなることがあります。2017年3月から4月、5月から6月のように生産量が増加した例がありますが、今後もこのような数ヶ月単位での生産量の増加がOPEC全体の生産量を押し上げる要因になることも想定されます。

表:減産目標上限と6月の生産量およびその差
単位:千バレル/日量

出所:OPECのデータより筆者作成

この表からわかることは、2国とも減産目標の上限を守っていることです(6月時点)。数か月単位の増減幅が大きくなることがあるアンゴラにおいても6月のレベルであれば目標を順守していることになります。

また、長期の減少傾向をたどるベネズエラについてはその傾向が継続すれば、さらに目標との差が拡大していくことが考えられます。

この2か国については目標を順守しているとはいえ、減産への前向きな取り組みによるものではないことが考えられるため、今後、減産のルール変更時にこれらの国の減産目標の上限を引き下げる議論がなされる可能性はあるかもしれません。

増産可能・増産凍結状態の3か国は、合計で6月比40万バレル/日量程度の減産は可能か?新ルール策定が報じられる中、ロシアの増産の可能性を加味すればOPEC全体で60万バレル/日量程度の減産は痛みを伴っても実施することが必要か?

以下は長期的に生産量が増加傾向にあるとみられる国です。このような国は9か国中、ナイジェリア・イランの2か国が該当すると考えられます。

図:ナイジェリア・イランの原油生産量  2017年1月を100

出所:OPECのデータより筆者作成

ナイジェリアは(OPEC全体の生産シェア2.6%のリビアとともに)、増産ができる国であります。政情不安からの回復過程である点が考慮されていることから減産実施国となっていません。

イランについては減産の責を負う国でありますが、減産目標の上限が昨年の生産量を上回るような水準に設定されているため、イランは実質、生産量を減らす減産ではなく、それ以上増やさない増産凍結状態にあると言えます。2016年初頭に欧米の制裁が解除され、回復過程であることが考慮されてのことと報じられています。

表:減産目標上限と6月の生産量およびその差
単位:千バレル/日量

出所:OPECのデータより筆者作成

イランはわずかに減産目標を守っていることが分かります(6月時点)。しかし、これは先述のとおり、増産凍結によるものであり減産によるものではありません。

今後、減産目標を持たず、増産できるナイジェリア・リビア、そして増産凍結状態にあるイランにおいては、増産できる2か国については減産目標の設置、イランについては減産目標の上限の下方修正、というルールの変更が行われる可能性があると思います。

この3か国のルール変更なくして、OPECの減産が世界の原油供給、引いては在庫、そして原油価格に影響することはなかなか考えにくいと思われます。

ただ、減産のルール変更という話題において筆者が最も気にしている点は、ナイジェリア・リビアに減産目標の上限を設置したとしても、それが現在のイランのように、増産凍結となる設置では効果が格段に下がる可能性があるということです。

あくまでもこれらの3か国の“減産”が必要なのであり、増産凍結を実施することが必要なのではないということです。

具体的には、仮に、ナイジェリアとリビアの2017年1月から6月までの原油生産量の平均を、両国の減産目標の上限とした場合、ナイジェリアは16万3千バレル/日量、リビアは16万9千バレル/日量、合計33万2千バレル/日量の減産という計算となります。

図:ナイジェリアとリビアの原油生産量 単位:千バレル/日量

出所:OPECのデータより筆者作成

また、イランについては生産量を急増させた昨年後半の平均を生産目標の上限とした場合、10万8千バレル/日量の減産という計算になります。

図:イランの原油生産量 単位:千バレル/日量

出所:OPECのデータより筆者作成

OPEC加盟国は各国、諸事情はあるにせよ、多くが厳しい条件を飲まなければならないため、筆者は少なくとも、ナイジェリア・リビア・イランの3か国で6月比、44万バレル/日量程度の減産は行って然るべきと考えます。

また、以下のロシアの原油生産量の推移のとおり、ここ数年、夏前から冬にかけて生産量が増加していることがわかります。

図:ロシアの原油生産量の推移 単位:千バレル/日量

出所:EIAのデータより筆者作成

減産を実施しているOPEC・ロシアを含む非OPECの合計24か国において、ロシアの生産量の増加分を補うことができるのはOPEC以外にないと思われます。

上述のとおり、減産の意思がある国の中で目標を守れていない国が生産目標を順守することで19万8千バレル/日量、自然減の国がさらに減産量を増やし、増産国で44万バレル/日量程度の減産目標の設置・実施、シェア7%の5か国の動向等を加味すればOPEC合計で6月比60万バレル/日量程度の減産は可能なのではないか?というよりは必要なのではないか?と感じています。

17日(月)にOPECの会合があると報じられており、減産のルール変更など、何か決まり事がある可能性はあるのかもしれません。

延長された減産はまだ始まったばかりと言えます。1月から6月までに実施された減産の反省を活かし、来年3月までの期間の中で、OPECの存在感を高めてほしい、それができるのは自らの減産のルールの厳格化とそれを順守すること以外にないと筆者は考えています。

本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。

吉田哲

週刊コモディティマーケット

コモディティ(商品)をお取引いただく上でのコメント・アイディアを提供するレポートです。これからコモディティ(商品)の取引を始めてみようとご検討になられている方にも、すでにお取引をされている方にもお役立ていただけましたら幸いです。

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