大量保有報告制度における課徴金制度の開始について
平成20年12月12日より施行される金融商品取引法改正法により、大量保有報告制度において大量保有報告書を提出しない場合や、虚偽の記載を行った場合に対し、新たに課徴金が課されることになります。
大量保有報告書の提出義務者
保有株式数の割合が発行済株式総数の5%を超えますと、大量保有報告書を提出する義務が生じます。
なお、共同保有者がいる場合には、共同保有者の株券等の保有分を合算し株券等保有割合を計算します。
- (1) 実質共同保有者(金融商品取引法第27条の23第5項)
共同して株券等を取得し、譲渡し、又は議決権その他の権利の行使等を行うことを合意している者をいいます
(書面での合意の有無等、合意の形態の如何にかかわらない)。
- (2) みなし共同保有者(金融商品取引法第27条の23第6項、金融商品取引法施行令第14条の7)
(1)の合意がない場合でも、下記の関係にある場合においては、共同保有者とみなします。
ただし、内国法人の発行する株券等については、単体株券等保有割合が0.1%となる株券等の数以下である場合等には、みなし共同保有者から除外されます(株券等の大量保有の状況の開示に関する内閣府令第6条)。
共同保有者の具体例
- 夫婦の関係
- 支配株主(50%超の議決権を有している者)と被支配会社の関係
- 支配株主を同じくする被支配会社同士の関係
- 財務諸表等規則第8条第3項に規定する子会社(組合に限る)と親会社の関係
- その他(金融商品取引法施行令第14条の7)
大量保有報告書の提出義期限
- 上場株券等の保有割合が5%超となった者は、その日から5営業日以内に大量保有報告書を提出
- その後、保有割合が1%以上増減した場合には、5営業日以内に変更報告書を提出
具体的な対象
- (1) 大量保有報告書又は大量保有報告書の変更報告書(以下、「大量保有変更報告書」といいます。)を提出期限までに提出しない場合
(金融商品取引法第172条の7)
- (2) 重要な事項につき虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項の記載が欠けている
- 大量保有報告書
- 大量保有変更報告書
- 大量保有報告書・大量保有変更報告書の訂正報告書
を提出した場合(金融商品取引法第172条の8)
- 該当した場合の課徴金の額は、大量保有報告対象株券等の発行者が発行する株券等の時価総額の10万分の1となります。
- 上記(1)の場合として、当局による報告・資料の提出命令又は検査が開始される前に、提出義務者が証券取引等監視委員会に対し、上記(1)の場合に該当していることを自ら報告した場合には、直近の違反事実に係る課徴金額を半額にする減算制度が設けられています。
(金融商品取引法第185条の7第12項)
- 違反行為を繰り返した者に対しては、課徴金を加算する制度も設けられております。
(金融商品取引法第185条の7第13項)
【参考】これまでの、大量保有報告書制度における不提出事例
(例1)ある上場会社の発行済株式総数の5%を超える株券を取得していたが、大量保有報告書の提出期限までに提出をせず、提出期限経過後に提出した。
(例2)大量保有報告書を提出していたところ、その後、株券の買い増しにより株券等保有割合が1%以上増加したが、大量保有変更報告書の提出期限までに提出をせず、提出期限経過後に提出した。
(例3)大量保有報告書を提出していたところ、共同保有者が増えたことから、共同での株券等保有割合が1%以上増加したが、大量保有変更報告書の提出期限までに提出をせず、提出期限経過後に提出した。