※本メールは「楽天証券ニュース」の配信を希望なさっているお客様を対象にお送りしております。
配信先の変更・停止は巻末をご覧ください。

楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2012年3月12日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

3月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(3/9終値)
前週末比
(3/2比)
日経平均 9,929.74 +152.71 +1.56%
NYダウ 12,922.02 -55.55 -0.43%
金利・為替 週末終値
(3/9終値)
前週末比
(3/2比)
長期金利 0.985% -0.050%
ドル/円 82.47  
ユーロ/円 108.23  

絶滅危惧種の弱気派ですが…

前週の総括

■日本市場は上昇した

 この一週間の各市場の動きは上記の表のとおりです。東日本大震災からおおよそ1年目となる先週末3月9日、日経平均株価は取引時間中に約7ヵ月半ぶりとなる10,000円台を回復、高値10,007.62円を付ける展開となりました。その値動きを日足のローソク足チャートで見ると明らかなとおり、最後の3日間は窓開けしながらも9,500円から3段跳びのように陽線が跳ね、そして上髭が10,000円を超えていることが確認できます。指数に勢いがつくと凄いなというのが正直な印象ですが、いくつかの好条件が重なり、弱気筋がほぼ揃って諦めたからだと見ています。先週後半からはほとんだのメディアの市場コメントから弱気や慎重論が消え去り、強気見通しのオンパレードとなりました。こうした市場センチメントを反映した動き、つまり週末のSQに向かって先物主導で買戻しと裁定買いが大量に入ったということです。売買代金も先物とオプションの同時メジャーSQ取引日ということもあり2兆4,000億円台まで膨らみ、これは昨年震災後に急変動を演じていた頃の3月17日にまで遡る水準に膨らんでいます。これだけ流動性も出れば、超低金利でかつジャブついた資金が裁定取引用のポジションとして振り向けられるのはきわめて理の当然であり、堪え切れなくなったショート筋の先物買い戻しでスプレッドが開けば、すかさずそこに裁定買いが入るという好循環となったようです。もちろん、円安傾向や「ギリシャの民間債務削減 9割参加」の報道、あるいは事前予想で好調が期待された米国2月の雇用統計など、上昇要因として取り上げる材料に事欠かなくなったところに週末要因(ポジションを減らしておきたいという心理的要因)が重なったということも重要な要素と言えます。


(出典:Bloomberg.)

<日経平均株価の2011年1月からの推移です。----------震災後の推移で見ると、5月のGWの谷間、7月上旬、そして先週末と3度目の正直になるかの10,000円超え挑戦。>

■NYダウは下落、S&P500とナスダックは横ばい

 日本株市場を強気に転換させたファンダメンタルズのひとつの背景としては、好転している米国経済の状況がありますが、そのマクロデータとは裏腹に米国株式市場はNYダウの13,000ドルを目前に足踏み状況がひと月近く続いています。NYダウは2月初めには12,862ドルとほぼほぼ現状と変わらない水準に到達していますが、本家本元の足踏みをよそに日経平均株価は1,000円以上上昇したことになります。

 週末金曜日は注目の2月の雇用統計の発表があり、失業率は予想どおりの前月比変わらず8.3%でしたが、非農業者部門の雇用者数の増加は市場予想の21万人を上回る22万7,000人増となり市場を好感させる材料となりました。これを受けてNYダウはいったんは12,970ドルまで跳ね上がりましたが(それでも13,000ドルには届いていません)、その後はダラダラと値を消していき12,922ドルまで押し戻されています。週を通じて見ると、6日には前週末対比で約240ドル安い12,735ドルまで売られる場面があり、それが何とか前週末対比55ドル安まで押し返したという状況です。日米株式市場のセンチメントは、同じ米国の景気回復というストーリーに期待を持ちながらも、やや表現のトーンは違っているようです。これはS&P500ナスダック総合の指数の動きで見てもほぼ同様なことが言えます。


(出典:Bloomberg.)

<ユーロの対ドルでの1週間の動きです。----------時差の関係もあり、9日の欧州市場が立ち上がる頃から再びユーロが売られたことが解ります。>

■ギリシャ債務削減に生じた小さな、でも大きな誤解

 先週末9日の日本市場、朝方から話題になったのは現地時間8日で締め切りとなったギリシャの民間債務削減にどの程度の参加が実際にあるのかということでした。最初の報は「ギリシャの民間債務削減 9割参加」というようなものでした。市場は前日から民間債務削減への参加表明が未充足となって第2次支援策が上手くいかないことはないだろうと想定してはいましたが、実際に約9割が参加と報じされて安堵したのは事実です。日経平均株価はSQを無事通過した安堵感も手伝ってか、上げ幅を拡大していきますが、その一方で為替市場では静かにユーロが再び売られ始めました。

 先週のユーロの対ドルでのNY市場終値は1.3123です。前週3月2日の1.3198よりもじつは安い水準にまで売り込まれています。週央7日には1.3096と1.31台を割れるところまで売られています。もちろん、米国景気が強いから「ドルが買われた」という見立てはできなくはないですが、このところの動きでは、ギリシャ問題が落ち着くことは投資家がリスクオンとなって「ユーロが買い戻される」というのが流れでしたから、やや違和感があります。

 週末、ユーロが売られたのはギリシャの民間債務削減に自発的に参加したのはじつは83.5%に過ぎなかったという事実が明らかになった頃からです。つまり事態の進展認識に小さいながら大きな相違があったということです。もちろん、最終的にはギリシャ政府が9日夜の閣議で同意しない債権者にも参加を強制する「集団行動条項」の発動を決定したので95.7%に達し、当初報じられた内容と見た目の数値は同等以上になりましたが、当初の報道の印象(自発的な投資家対応で完了する)というものからすると、強制カット発動はやはり随分と違う感覚になります。そしてこの強制カット決定を受けて、国際スワップ・デリバティブズ協会(ISDA)は同日、ギリシャ国債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)がデフォルトに伴う損失補填の対象になるとの判断を発表しました。問題はこの強制カットです。

今週のポイント

■ギリシャ問題、「集団行動条項」の発動決定の問題点

 ギリシャ政府は債務削減への自発的参加率83.5%では満足せず、同意しない債権者にも参加を強制する「集団行動条項」の発動を決定し、12.2%に相当する債権者が保有する持ち分についても強制カットを強い、最終的には95.7%の債権者に債権を放棄させることに成功しました。これで今月20日の国債大量償還は乗り切れる見込みとなり、同国が無秩序なデフォルトに陥る事態は当面回避されたかもしれません。ただこれでハッピー・エンディングと捉えるとしたらあまりに楽観的だと考えています。

 同意しない債権者にも参加を強制する「集団行動条項」の発動をしたことで削減されるギリシャの債務は約1,000億ユーロ(約11兆円)に過ぎず、これにギリシャが拘ったことによる波及効果は今後の欧州債務問題解決に大きな障害となる可能性をはらんでいます。たしかにCDSが発動されること自体は、金額的にも金融システムを揺るがすようなものではないので、リーマンショック後のような大きな問題点は起こらないかもしれません。

 またメルケル独首相や欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は「ギリシャは特例」と強調していますが、政治家の発言が信用されていないのは万国共通とも言え、この流れの中で強制カットが債務国の意思で行われることが許される事実を知らされた金融市場の動揺は今後徐々に拡がっていくだろうと思われます。保有する国債がギリシャほどではないにしても、リスクが高いと思われている国の債券保有者に債券売却のインセンティブが働かない保証は何処にもないからです。83.5%を95.7%に引き上げるのに必要なのは12.2%に過ぎないという判断があったから強制カットが発動されたのか、仮にそれが50%であっても発動されたのかの判断は闇の中であり、確実なのは今回の一連の流れの中で、強制カットという選択肢が採用されるということが明らかになったということです。日本の取引時間を離れて、欧州、米国と地球を回る段階でユーロが売られたということは、日本で受け取られているトーンとは随分違う可能性を示唆しています。少なくとも、欧米メディアは批判的であると映ります。

■震災から1年、何が変わったか?

 早いもので、あの東日本大震災からもう1年が経過しました。ある人たちにとってはそれはもう過去の記憶になった場合もあると思いますが、被災地をはじめ多くの人たちにとってそれはまだまだ記憶にするにはあまりに生々しい現実であることが、週末の多くの報道番組などであらためて認識されたものと思われます。私も福島に親戚があり、それを過去の記憶とはできない者の一人ですが、震災後のこの1年間で何が変わったのか、何をこの国は変えないとならないのかをあらためて考えるにはいいタイミングだと思われます。

 日本の産業構造は強くなったのでしょうか? 財務省が8日に発表した1月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は4,373億円と赤字幅は比較可能な1985年以降で最大のものとなりました。貿易収支は震災前の昨年1月はまだ3,994億円でしたが、今年はそれよりも9,822億円も増加して1兆3,816億円となりました。まず輸出が減っています。これは欧州債務危機の影響や円高に伴うものだけなのでしょうか? 気掛かりなのは、10-12月期決算の発表の時に確認できたような日本企業の競争力低下と空洞化に起因するそれです。そして輸入が増えています。内需が旺盛で国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費が多くの輸入物を必要とする状況になってのそれならば全然心配いりませんが、増加分のほとんどが原子力発電所の停止の影響で、液化天然ガス(LNG)や原油など燃料輸入が増加していることが原因です。数量効果だけでなく、今後は円安がさらにそこに影響してくるはずです。ちなみに、円高ならば安く買える輸入製品が魅力的に映るはずですが、足元の状況は円安であり、日本の内需はそれほどまでに強いでしょうか? もし燃料輸入の分だけ輸入が増えているのだとしたら、これも恐ろしい話です。少なくとも原子力発電所の停止に伴い、当面は電力不足を解決する有効な手段は火力発電依存しかあり得ないのですから。今回の単月経常収支の赤字が多くのエコノミストが論評されるように、季節要因による一時的なものであることを願うばかりです。

 日本の原油価格に一番影響すると言われるドバイ産原油価格ですが、現在はおおよそ120ドル台を超えています。昨年の震災前はと言えば110ドル前後なのですが、これは「アラブの春」と呼ばれた中東情勢の緊張を受けて上昇した段階での価格です。昨年1月はじつは90ドル台前半の取引となっています。これを円ベースに引き直すと、現在は10,000円を超えていますが、震災前は9,000円前後、年明け1月からしばらくは7,000円台後半という状況です。

 永田町の状態についてはあえてここで言及するのは控えたいと思います。震災前に比べて良くなったのか、悪くなったのか、変わらないのか。少なくとも震災後、復旧復興の為に政治が強いリーダーシップを発揮して、この国がひとつにまとまり、今は厳しいながらも被災地の人たちに明るい明日の兆しが見えているとは言い難いだろうと思います。少なくとも阪神大震災から1年後の状況と比べて、私はそう思っています。だからこそ、今の強気相場が「根拠なき熱狂」でないことを願うばかりです。

 東日本大震災から丸1年、あらためてあの大震災でお亡くなりになられた方々に深く哀悼の意を表すると共に、心よりのご冥福をお祈りいたします。また今なお被災地でご苦労なさっている多くの方々に対し、衷心より敬意を表したいと思います。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪相場が動けば収益のチャンス≫

■日経平均の3倍の値動きを目指す!

楽天日本株トリプル・ブルの詳細はこちら
楽天日本株トリプル・ブル

日本の株価指数先物取引および日本の短期公社債を主要投資対象とする。日本の株価指数を対象とした先物取引を積極的に活用することで、日々の基準価額の値動きが日本の株式市場の値動きに対して概ね3倍程度となることを目指して運用を行う。なお、日本の株式を組入れる場合がある。

ファンドの詳細・注文はこちら

楽天日本株トリプル・ベアの詳細はこちら
楽天日本株トリプル・ベア

日本の株価指数先物取引および日本の短期公社債を主要投資対象とする。日本の株価指数を対象とした先物取引を積極的に活用することで、日々の基準価額の値動きが日本の株式市場の値動きに対して概ね3倍程度反対となることを目指して運用を行う。

ファンドの詳細・注文はこちら

 

PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

免責事項

本メールマガジンに掲載している内容はお客様への情報提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。最終的な投資決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、掲載している内容は予告なしに変更または廃止される場合がございます。必ず楽天証券のホームページなどで最新の情報をご確認のうえ、各サービスをご利用くださいますよう、お願いいたします。
また、法人口座でお取引なさっているお客様におかれましては、本メールに記載している金融商品やキャンペーンが対象外となる場合がございます。対象となる金融商品やキャンペーンについての情報は、楽天証券ホームページの各金融商品の説明ページやキャンペーン詳細画面に記載がございます。あらかじめご了承くださいますようお願いいたします。

リスクと費用について

投資信託は、商品によりその投資対象や投資方針、申込手数料等の費用が異なり、多岐にわたりますので、詳細につきましては、それぞれの投資信託の「目論見書」「目論見書補完書面」を必ずご覧ください。また、一部の投資信託には、原則として換金できない期間(クローズド期間)が設けられている場合があります。

■投資信託の取引にかかるリスク

■投資信託の取引にかかる費用

■金融商品取引法に係る表示弊社の取扱商品等にご投資いただく際には、各商品等に所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失を生じるおそれがあります。各商品等へのご投資にかかる手数料等およびリスクについては、楽天証券ホームページの「リスク説明」ページに記載の当該商品等の契約締結前交付書面等をよくお読みになり、内容について十分にご理解ください。

商号等:楽天証券株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号、商品先物取引業者
加入協会:日本証券業協会、社団法人金融先物取引業協会、日本商品先物取引協会

■楽天証券ホームページ
http://www.rakuten-sec.co.jp/

東京都品川区東品川4-12-3 品川シーサイド楽天タワー
カスタマーサービスセンター(平日8時-18時)
お手続き専用ダイヤル
0120-885-687(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3322(通話料有料)
各種商品に関するお問い合わせダイヤル
0120-41-1004(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3333(通話料有料)

Copyright © 2012 Rakuten Securities, Inc. All rights reserved.