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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2012年3月5日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

3月第1週

マーケット概況

株式 週末終値
(3/2終値)
前週末比
(2/24比)
日経平均 9,777.03 +129.65 +1.34%
NYダウ 12,977.57 -5.38 -0.04%
金利・為替 週末終値
(3/2終値)
前週末比
(2/24比)
長期金利 0.990% +0.020%
ドル/円 81.89  
ユーロ/円 107.99  

注意! ボラティリティが急低下中

前週の総括

■上値の重さと、裁定買い

 この一週間の各市場の動きは上記の表のとおりです。日経平均株価は2月29日からの3日間、取引時間中の高値としては9,800円台を超えたものの、終値では一度も9,800円を超えることなくこの1週間の取引を終えました。前回、NYダウが13,000ドルをやはり終値では超えることができないとお伝えしましたが、同様な上値の重さが日本市場でも感じられます。ただNYダウの方は、ようやく先週2月28日に13,005.12ドルと一度だけわずかに13,000ドルを超えて終わることができました。ただ取引時間中で見ると週末金曜日3月2日を除いて連日13,000ドルを超える状況となっており、やや“幻の13,000ドル”的な印象を持っています。欧州債務危機について、ギリシャ向け第2次支援策が決定したことの安心感で市場には「リスク・オン」のセンチメントが強くなっているように見えますが、上値の重さは日毎に増している感じです。ただ指数が上昇してしまうために、ベンチマークとの乖離を抑えたい投資資金により先物が買われるため、これにより裁定取引が誘発され、その結果また指数が上昇するという好循環が続いているのではないでしょうか。事実、裁定の買残は11カ月ぶりの水準に達しています。


(出典:Bloomberg.)

<日経平均株価のこの一週間の推移です。----------終値で9,800円台を超えることはできませんでした。>

■ボラティリティが低下

 そうした推測を裏付けるかのように、日経平均株価のヒストリカル・ボラティリティは急速に低下しています。私がかねてから参考にしているそれは10日間のヒストリカル・ボラティリティですが、この数値が10を割れて1桁台に入ってくると市場が裁定取引などの指数投資だけで上昇している傾向を見ることができ、やがて低下し切ったボラティリティが回復するために原資産である日経平均株価が下落するという傾向を認めることができます。すなわち、原資産とボラティリティの間には負の相関関係があるという理屈なのですが、週末金曜日の終値までで計算されるそれは7.696と経験則的にすでに決して高い数値ではなくなっています。ただ、一方ではいまだNT倍率の方が極端な上昇傾向を示してはいませんので、これだけをもって強いALERTを鳴らすことはできませんが、きわめて居心地が悪いと感じられる状況です。目下のところ、引続き慎重な姿勢で市場動向には対峙しているつもりです。


(出典:Bloomberg.)

<日経平均株価と10日間のヒストリカル・ボラティリティの推移です。----------チャートで見ると、負の相関関係が明らかです。>

■為替市場の動きは株式市場とやや違う

 週末3月2日のNY市場では1ドルは81.89円で取引を終えましたが、1ユーロは107.99円となっています。先々週の2月24日の終値は1ドルが81.19円、1ユーロが109.21円です。ギリシャ向け第2次支援策の決定以降、強気がひろがった株式市場ですが、為替市場においては再びドルを買って、ユーロを売る動きとなっています。先週末の1ユーロは1.3198ドルですが、先々週末は1.3449ドルとなっていました。つまり、いったんはユーロを買い戻す状況になったものの、再びユーロを売りだしているということです。円は対ドルでは売られているため円安になっていますが、対ユーロではこの影響もあってやや円高に押し戻されています。すなわち、米国マクロに対する安心感はあるものの、やはりまだ欧州債務危機は終わっていないと為替市場は考えているように思われます。

 欧州債務危機については色々な見方ができるかと思いますが、EU首脳の間でも見方が分かれているというのが実情です。2日に開かれた欧州連合(EU)首脳会議では財政規律を強化する新条約が署名される一方で、早くもスペインのラホイ首相は「12年の財政赤字は国内総生産(GDP)の5.8%にしかならない」などとEUと合意した4.4%の達成は困難だと明言したり、ユーロ圏財務相会合のユンケル議長がギリシャに関し第2の案を用意していると発言したことをフィンランドのカタイネン首相が否定したりと、明らかに足並みは揃っていません。ギリシャ危機から17回目となるEU首脳会議では、とりあえずギリシャ発の域内債務危機の転換点を宣言し、成長へと軸足を移すことが宣言されたという感じですが、為替市場ではこうした状況を踏まえた動きを演じているように思われます。


(出典:Bloomberg.)

<ユーロの対ドルでの推移です。----------2月の終わりまでのユーロを買い戻す動きが反転しています。>

今週のポイント

■エルピーダの破綻に強い危機感を持ちます

 パソコンなどに使う半導体のDRAMで世界第3位のエルピーダメモリ(6665)が27日、会社更生法の適用を東京地裁に申請し受理されました。負債額は製造業で過去最大となる約4,480億円(2011年3月末時点)におよび、09年に行われた公的資金300億円による政府支援も虚しく水泡に帰しました。

 その最大の敗因は何だったのかと言えば、現在半導体DRAMでNo.1を突き進む韓国サムソン電子などとの競争に敗れたからです。問題は「日の丸半導体」とまで90年代に言われ、またエルピーダ自身も誕生後に一度は世界No.1となったにも関わらずに、なぜ今日を迎えてしまったのかということでしょう。何がエルピーダとサムソン電子で違ったのかということですが、ここに現在の日本の製造業の危うさをはっきりと確認することができます。それは多少の技術優位性が仮にあったとしても、コモディティ化して価格競争をせざるを得ない製品分野においては、日本の製造業の競争力は極端に落ちてしまっているということではないでしょうか? これこそ1月に発表された日本企業の2011年10-12月期の決算からもまざまざと見て取れた事実です。

 半導体DRAMにおいて、現在サムソン電子に次ぐシェアはやはり韓国のハイニックスが占めます。1位と2位を韓国勢に奪われ、その後塵をエルピーダが拝するようになったのはリーマン・ショックの前後からです。エルピーダの株価はショックが始まる前の2008年6月にはまだ4,000円台でしたが、そこからつるべ落としのように下落して同年10月には400円台にまで下落します。じつはこの動きは韓国ウォンの対円での動きとほぼ同じだということがチャートを見るとよくわかります。というより、同社の2004年11月東証1部上場以降の株価推移は、じつは韓国ウォンのその動きに大変近似していると言えます。

 エルピーダが上場した当時の1ウォンはおおよそ10円です。そこから2007年年央に13円半ばにまでウォンは対円で強くなりますが、ちょうどフランスの大手銀行BNPパリバ傘下のヘッジファンドが新規募集と解約を凍結すると発表した頃から一転して円高が始まります。まさにここからリーマンショックに向かって金融市場は混乱の一途となるのですが、結局2008年10月には1ウォンは高値の半分以下となる6円すれすれまで下落します。

<エルピーダメモリー(6665)の上場来の株価運びです。>


(出典:Bloomberg.)

<エルピーダメモリー(6665)上場後の韓国ウォンの対円の動きです。>


(出典:Bloomberg.)

 もちろんエルピーダの企業努力なども色々と株価に反映されていると思いますが、皮肉な話ですが、エルピーダの株を買うというのは韓国ウォンを買っているのとほとんど同じリスク特性だったことがわかります。2004年11月に10円で買って、一度は13円まで行きますが、結局は6円になってしまったという流れです。ただこれは韓国の典型的な輸出企業であるサムスン電子にとっては朗報です。2007年に向かって価格競争力はいったん失いエルピーダに引き離されますが、その後のリーマンショックによるウォン安は、かつて円安を利用して日本車が米国市場を席巻したのと同様に、強い価格競争力となって韓国サムスンを後押しました。そして韓国政府はウォン安を容認しました。日本政府は円高の前に為す術がなかったのでしょう。また実効税率約40%と世界で最も高い法人税率を維持する日本と、24%程度の韓国とでは、そもそもコストが違ってきます。これらが相俟って、半導体DRAMという、最早完全にコモディティ化し、価格競争力こそすべてとなってしまった製品分野でエルピーダは韓国勢の後塵を拝することになりました。最早民間の一企業の努力が実る次元ではなくなっているのです。

 それが証拠に、エルピーダ自身も、NEC(6701)日立(6501)、一足遅れて三菱電機(6503)といった日の丸半導体の寄せ集め部隊には違いありませんが、第2位の韓国ハイニックスも現代電子とLG電子の半導体部門の寄せ集め部隊です。さらに言えば、その元はエルピーダの前身の方が大手ばかりです。だから決して寄せ集めたことが悪かったというロジックは成り立ちません。もちろん坂本社長の経営手腕のせいにすることもできますが、これら以外の事実を確認しても、今回のエルピーダメモリーの更生法適用申請は決して同社固有の問題ではなく、まさに日の丸半導体ならぬ「日の丸製造業」全体の未来の鏡に思えてなりません。

■半導体DRAM以外は大丈夫か?

 日本の家電メーカーはほとんど揃って薄型テレビ向け液晶パネルの生産から撤退しました。膨大な費用を生産設備建設の為に注ぎ込んで、結局は収益化できずに撤退です。その理由は簡単です。液晶パネルのビジネスモデルが基本的に半導体DRAMと一緒だからです。初期のものはたしかに動画の残像などが気になるものがありましたが、しかしそれでも大きなブラウン管のものが薄いパネルの大きなテレビになるという刺激は、消費者にとっては充分な効用でした。今となってはその差も、多少黒がはっきりするとか、高速な動きについていく能力などは、並べてパネルを比較しないと素人にはわからないレベルとも言えます。そうなると後はもうコモディティ化した価格競争モデルに突入です。恐らくスマートフォン用の小型の物もすでにその次元に到達していると思います。なぜなら、基本的にコンテンツの精彩さなどがすでに通常の眼が欲する水準を超えているからです。もしテレビもDVDからBlu-ray Discに一気に変更されていたら結果は違ったのでしょうが、一般の消費者はDVDの画像品質でほぼ満足してしまっているからです。

 米国ではトヨタ(7203)のカムリとホンダ(7267)のアコードがベストセラーでした。でもその牙城に今では韓国ヒュンダイ自動車のソナタがグングンと食い込んできています。いえ、むしろすでにかなり浸食されています。西海岸側でも東海岸側でも、いろんな肌の人がいるエリアにおいては、車も「どこ(の国)製?」ということよりも、純粋に「品質÷価格」で勝負が決まっています。そしてすでにソナタのそれはまったくカムリやアコードのそれと遜色がありません。さらに米国市場に向けては、韓国は米国とFTAを締結しました。

 こうした現実に今後各企業や日本政府がどう対応していくのか、きわめて強い関心を抱いています。また政府の対応には強い危惧を感じています。4月からは法人契約の電力料金が17%も引き上がります。これも製造原価にのしかかります。ただ昨今のイラン情勢に伴う原油価格の上昇は、為替を円安に誘導すればいいという単純な絵面を描かせなくしています。原油高と円安が合わされば、その国内流通価格は掛け算で引き上げざるを得ないからです。ガソリン価格の足元の上昇で皆さんもそれを実感されていることでしょう。

 米国オバマ政権は今までは日本と同程度の39%程度であった法人税を25%にまで引き下げることを先日決めました。会社更生法を申請したエルピーダは頑張るのでしょうが、半導体DRAM第4位のマイクロン(MU)は、この恩恵をも受けながら、さらに最近は対円ではドル安の恩恵も受けることになります。こうしたことから、日本の輸出企業にとってはまだまだ向かい風が続きそうだと思うのは、決して弱気の慎重論だけではないと思います。

 今週も頑張りましょう。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪韓国をはじめとした、アジアの成長に期待≫

■株価の成長と為替差益を狙う!

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イーストスプリング韓国株式オープン

韓国籍外国投資信託「イーストスプリング・インベストメンツ・インダストリー・リーダース・セキュリティーズ・インベストメント・トラスト[エクイティ]」受益証券および日本の証券投資信託「イーストスプリング国内債券ファンド(国債)追加型 I (適格機関投資家向け)」受益証券を主要投資対象とする。投資信託証券への投資を通じて、割安と考える韓国株式に分散投資すると日本の債券に投資する。投資割合は「イーストスプリング・インベストメンツ・インダストリー・リーダース・セキュリティーズ・インベストメント・トラスト[エクイティ]」に原則として90%以上投資する。原則として、為替ヘッジを行わない。信託財産の成長を目指して運用を行う。

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アジア製造業ファンド

「アジア製造業マザーファンド」受益証券を主要投資対象とする。マザーファンドを通じて、アジア各国(日本を除く)の証券取引所に上場(これに準ずるものを含む)されている製造業の株式を主要投資対象とする。銘柄選択にあたっては、収益成長、経営体質、研究開発投資、含み資産という個別ファンダメンタルズに加え、株価水準とその成長性を勘案して、割安かつ成長性があると判断される銘柄に投資する。原則として、為替ヘッジを行わない。信託財産の成長を図ることを目標として、積極的な運用を行う。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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