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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年11月14日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

11月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(11/11終値)
前週末比
(11/4比)
日経平均 8,514.47 -286.93 -3.26%
NYダウ 12,153.68 +170.44 +1.42%
金利・為替 週末終値
(11/11終値)
前週末比
(11/4比)
長期金利 0.965% -0.020%
ドル/円 77.17  
ユーロ/円 106.07  

一歩ずつ前進、でも楽観するには早過ぎる

前週の総括

■歌劇“欧州債務危機”は第何幕まであるのか?

 この一週間の各市場の動きは上記の表の通りです。日本市場が対前週比でマイナスにもかかわらずNY市場はプラスで終わって違う方向感を示している最大の理由は、日本市場の取引時間帯と米国市場のそれの間に欧州市場があるからです。つまり時差の問題があるだけで、欧州時間を中心に考えるとプラスマイナスは揃います。つまりベクトルの向きは一緒だということです。ただ地球の自転の関係上「欧州で問題発生→米国市場がそれを咀嚼→日本市場はそれにつれる」という流れになっているので、日本時間で区切って集計すると表のような誤差が生まれるということ、恐らく週明けの日本市場は高く始まるはずです。

 先週の週の前半は、ギリシャに向けての包括支援策の受け入れ可否を巡っての国民投票回避からむしろ今度はギリシャ政局が不安定化、しかし包括支援策受け入れを条件にパパンドレウ首相が辞任、パパデモス新首相の下に大連立内閣が誕生して政局安定という流れを世界の資本市場が好感するところから始まりました。ただこのストーリー、何度もどんでん返しや同じようなことの繰り返し蒸し返しが続いている通り、やはり案の定、先週も舞台を今度はイタリアに変えて新しい幕が切って落とされました。歌劇「欧州債務危機」自体、すでに第何幕なのかを数えることさえできない感じですが、メインステージを取り敢えずは「アテネからローマへ」移してしばらく物語は進みそうな気配です。総監督が何を考えているのかは神のみぞ知るというところですが、一説によれば、すでにフランスに次の幕の舞台設定が始まっており、観客はこのままローマに留まるのか、早めにパリの良い席を取りに行くべきなのかを考えているとも漏れ伝わってきております。ヨーロッパの出来事は、大西洋を隔てたニューヨークではほぼリアルタイムで観ることができるため、ウォール街ではライブ配信にくぎ付けで、米国内で起きている出来事などそっちのけで盛り上がったり、溜め息をついたりしているようです。先週に限ったことではないですが、このところの世界の市場動向を要約するとこんな感じだと思われます。


(出典:Bloomberg.)

<NYダウの一週間の動きです。----------前半はギリシャの安定に好感したものの、イタリアに再度怯え、でもやや安心して週末を迎えた…。>

■イタリア情勢

 ギリシャ問題に取って代わったイタリア問題は、ベルルスコーニ首相が12日夜(日本時間13日未明)、ナポリターノ大統領のもとを訪れ辞表を提出、大統領は解散・総選挙を回避するためすぐに新内閣発足に向けた手続きを開始し、欧州連合(EU)欧州委員会のモンティ元委員を新首相に指名し暫定内閣の発足を目指すことで幕が下りました。週明けには暫定内閣が発足しているかも知れません。

 事の発端は前回お伝えした「イタリアの財政再建の進み具合を国際通貨基金(IMF)が直接監視をすることになった」ことにあります。この事態を境にイタリア国債の利回りが市場で急騰、前週、すでにに危険水域と言われた6.3%台を超えてきたイタリア国債暴落の流れが一気に加速、週央にはついに7%台にまで急騰(債券価格は大きく下落)する場面を迎え、ギリシャ問題ひと段落の安堵感があっという間に吹き飛びました。イタリア自体の財政赤字は現段階においては約5%程度と優秀な状況にあるのですが、公的債務の対GDP(国内総生産)比率が約120%に達するほどに大きく(日本は200%を超えていますが…)、国債金利の上昇は即座に財政を圧迫するという連想が働いたからです。市場は「だからIMFが直接監視することになったのではないか」と悪い方に悪い方に勘ぐるようにもなり、折からのベルルスコーニ首相の人気剥落がさらに財政関連法案可決に向けた足かせになるのではと危惧しました。この流れの結末は、ひとまず11日にイタリア議会上院で財政関連法案が可決、前述のように早ければ14日頃にも新内閣発足見通しということでいったんの落ち着きを見せています。これを受けてNY市場は、株価は買い戻されて終わり、これを知らない日本市場は下落したまま週末取引を終えているということです。


(出典:Bloomberg.)

<イタリア10年国債のこの一年間の利回り推移です。----------直近、一気に駆け上がって7%台をつけるところまで上昇しました。>

■TPP交渉参加表明は歓迎する

 報道によると野田佳彦首相は12日昼(日本時間13日午前)、ホノルル市内でオバマ大統領と会談し、環太平洋経済連携協定(TPP)について「交渉参加に向けて関係国との対話に入る」との意向を伝え、これを受けてオバマ大統領は「決断を歓迎する。協議を通じて日米で協力していきたい」と返答されたようです。明治維新前に国論を二分した開国論にもたとえられる今回のTPP交渉参加問題ですが、市場関係者の立場で言えば、やはり交渉参加の意思表明は大いに歓迎したいところです。むしろ、もし交渉参加見送りとなっていた場合に何が起こったかを想像する方が余程怖いです。この問題は交渉参加によってポジティブ材料が増えたというよりも、ネガティブ懸念がひとつ消えたと考える方が無難でしょう。

■オリンパス問題は根が深い

 「飛ばし」を伴う不正経理処理というのがオリンパス(7733)問題の実態であったことが判明しましたが、これは日本株式市場にとっては根深い問題になる可能性を否定しません。ひとまずは過去5年分の決算を訂正するということになりましたが、問題は日本企業の財務諸表に対する信頼性が著しく損なわれたということです。同社については1969年から2009年3月期まであずさ監査法人、10年3月期から新日本監査法人が監査し、財務諸表についての適法性などを確認してきたわけですが、まさに日本の4大監査法人のうちの2社が関わってもなお、その不正経理を発見、発覚できなかったという点にあります。巧妙に、意図的に企業側が仕組んだら監査法人では発見できないというロジックがあるのかも知れませんが、残念ながらそれでは投資家、取り分け外国人投資家は納得しないだろうと思います。

 それこそインターネットで「あずさ監査法人」あるいは「新日本監査法人」とキーワードをいれて検索すれば、どれだけ多くの日本の上場企業がそのクライアントであるかは一目瞭然ですが、逆に言えば、それらのどの企業でオリンパス事件が起きたとしても監査法人では見抜けないという意地悪な見方ができてしまいます。この信頼性を回復することができるのかどうか、どうすればいいのか、今回のオリンパス問題の根は同社一社がどうこうなることで終了する問題ではないということができます。

■タイの洪水被害、さすがトヨタ自動車

 8日に発表されたトヨタ自動車(7203)の4〜9月期の決算は、連結営業損益は325億円の赤字だったということよりも、タイの洪水の影響で通期予想の見通しを取り下げたことが最大の気掛かり材料でした。それはあの東日本大震災後のサプライチェーン(供給体制)の混乱でさえいち早く乗り越え「前倒し、前倒し」で操業回復した同社であるにもかかわらずタイ洪水の影響が見極められないということだったからです。

 しかしやはり週末、同社は21日より国内生産をほぼ正常化させると発表してくれました。為替によるインパクト計算もあると思いますが、これにより早晩同社は見送っていた通期見通しの発表なども行ってくれると思います。ポイントは、被害想定がどうにも適わない状況であったものが、代替部品の調達などにより、少なくともコントロール下には置けるようになってきたということです。こうした不確実が確実になることこそ、株式市場の安定化にとっては最も大切なことだと考えます。

今週のポイント

■日本市場にして、日本にあらず

 欧州債務危機問題について、市場参加者の気持ちを代弁したら「もういい加減にしてくれ」なのだろうと思います。安堵感が拡がって市場が楽観に数日傾いたかと思えば、また何かしら問題点が見つかり、そして懸念がリスク回避へとつながり、再び市場が下落することの繰り返しだからです。日経平均株価のチャートを眺めてみれば一目瞭然ですが、もうすでに半年程度、ローソク足の其々が前後のそれと上手く重ならない日々が続いています。そしてそのローソク自体も短いものばかり。

 これが意味するところは、市場取引の連続性が国内要因ではなく、海外要因ばかりだということです。すなわち国内市場が取引をしている時間帯では見極めきれない要因を市場は一番気にしており、欧米市場の取引時間帯を通じてその結果が出るのを待ち、朝一番の寄り付きでそれを織り込むと、あとはわずかな値幅の中で国内要因の関心事を時価に反映させていくということです。だからこそ、前日の大引け値段と乖離したところで取引が始まってしまうので、日々のローソクが上手く重なりません。そして値幅が狭いからローソク自体も長くなりません。この悪循環をどこかで断ち切らないと、この状態はまだ当分続きます。1日の売買代金も1兆円を大きく超えることのない日々が続くでしょう。


(出典:Bloomberg.)

<日経平均株価のこの1年間のローソク足です。----------今年の前半は震災直後のショック状態を除いて、それでもチャートは連続しています。6月以降、チャートが繋がりません。>

■アテネからローマへ

 やっとギリシャ問題が一段落しそうだと胸を撫で下ろしたのも束の間、冒頭で申し上げた通り、問題はドイツ、フランスに次いで経済規模が大きいイタリアに飛び火しました。週末は何とか火消しが成功したかに見えますが、その裏側に見え隠れするのはフランスへの飛び火の可能性です。もし本当にフランスへ飛び火するようなことになれば、これは市場が大混乱することになると危惧します。イタリアに飛び火した流れも、このまま鎮火できなければ事態はかなりシリアスな展開を迎える可能性を孕んでいると思われます。

 最大の問題点は、13日付の日本経済新聞の朝刊社説にも記載がありましたが、何より「イタリアの国債発行残高は約1兆8,000億ユーロ(約190兆円)で、日米に次いで世界で3番目に大きい。欧州域内だけでなく世界中の投資家が買い、日本の銀行や投資信託の保有額も大きい」ことにあります。金融市場へのインパクト、という意味だけで捉えたら、欧州圏でイタリア以上に経済規模の大きいドイツやフランスが信用不安を起こすことよりも直接的な被害は大きいかも知れないとも言えます。

 イタリアでは11日に議会上院で財政関連法案が可決し、市場はひとまずこれを好感しています。しかし課された命題は財政再建です。年金改革や歳出削減を思い切って推し進めなければなりません。果たしてこれが可能なのかどうか、市場はイタリア政治家の胆力を、少なくともベルルスコーニ首相に代わって登板するモンティ新首相のそれを注意深くこれからは見守ることになります。すでにイタリア北部を地盤とする北部同盟は大連立には否定的で年金改革にも反対の立場だと伝えられています。このあたりの政局混迷が伝われば、恐らく市場は簡単にまたイタリア国債を売る方向に傾くでしょう。

 では財政再建、すなわち年金改革や歳出削減が一国の政治家にとって簡単なことか考えてみましょう。身近なところで日本にそれをあてはめてみれば答えは瞬時に解ります。債務残高の対GDP比率で言ったら、イタリアのそれなど日本のそれに比べて可愛いものです。その現実の前でも日本の政治情勢がどうなっているかを考えたら、今のイタリア情勢がどの程度金融市場に対してシリアスなものであり、安易な楽観を公言できる状況ではないかお分かり頂けると思います。無駄に不必要な不安を煽りたてるつもりも毛頭ありません。ただ現実は週明けの市場が先週末のNY市場の流れを汲んで楽観に傾いて始まったとしても、簡単に「もう大丈夫ですよ」と言えるほど生易しい状況ではないとお伝えしておきたいと思います。

 今週も頑張りましょう。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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