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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年11月7日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

11月第1週

マーケット概況

株式 週末終値
(11/4終値)
前週末比
(10/28比)
日経平均 8,801.40 -249.07 -2.75%
NYダウ 11,983.24 -247.87 -2.03%
金利・為替 週末終値
(11/4終値)
前週末比
(10/28比)
長期金利 0.985% -0.055%
ドル/円 78.24  
ユーロ/円 107.88  

ギリシャは小康状態、でもイタリアに飛び火?

前週の総括

■そして振り出しに戻る

 この一週間の各市場の動きは上記の表の通りです。前週末、欧州債務危機解決に向けたギリシャへの包括的な支援策決定による安堵感から、いったんは全世界的に楽観的な資本市場の動きになったのも束の間、ギリシャ・パパンドレウ首相の「包括支援策を受け入れるか否かを国民投票にかける」という余計な一言が一気に物語を振り出しに戻す爆弾となってしまいました。このパパンドレウ首相の発言を受けたNY市場は、前日にMFグローバル・ホールディングス破綻の影響によりすでに276ドルも急落していましたが、さらに前日比で297ドルもの下落を演じることとなり、2日間合わせての下落幅は573ドルにも達してしまいました。

 日本市場は週初月曜日こそ織り込むべき欧米市場の動きがなかったこともあり、動きの鈍い展開となりましたが、このところの欧米市場の動きに連動する流れの通り、翌火曜日からはNY市場の下落を受けて連日下落、2日の日経平均株価は前週末終値に比べて410円安い8,640.42円まで下落しました。ただ売買代金の方は3週間ぶりに週を通じて一度も1兆円台を割り込むことなく終わり、祝日の谷間となった4日金曜日でさえ1兆1,531億円となりました。売買代金が多少なりとも膨らんできたことは朗報の一つではあります。


(出典:Bloomberg.)

<ドル円の一目均衡表です。----------分厚い雲を介入により強引に突き抜けたという感じがあります。11月17日以降、また急速に雲がなくなります。>

■過去最高規模の為替介入が実施されたが

 先週は円相場が大きく動いたにもかかわらず、これに株式市場は全く反応しなかったと言えます。逆にいえばこのところの日経平均株価の動きは、ほとんどが欧米市場の動きにより説明がついてしまうということなのですが、週明けの月曜日、政府・日銀は8月に行った為替介入の約1.8倍規模となるおよそ8兆円の資金を投じて円売り・ドル買い介入を単独で実施しました。これを受けて戦後最高値を更新し75円台前半にまで上昇していた円は一気に79円台にまで引き戻される展開となりましたが、この動きを横目で見ながら株式市場はほぼ反応していません。円高による企業収益への悪影響が株価下落要因のひとつであったと仮定するならば、この円安の流れの中で株価が上伸できなかったのは、1.為替介入による効果は極めて短期限定的であると市場が捉えているのか、2.為替変動による損益インパクトよりも欧州債務危機の方が遥かに大きな問題であると考えているかのどちらかの理由によると思われます。そしてどちらも正しいのですが、恐らく現状では後者2.のウェイトの方が高かったと見ることができます。

■欧州の債務問題の余波が米金融界へ

 この1週間の市場の動きをみていると、やはり引続き当面の市場参加者の関心事のほぼ8割は欧州債務危機の動向に集中しているかに思われます。為替介入によって円相場がどう動こうが、企業決算が良かろうが悪かろうが、あるいはソニー(6758)パナソニック(6752)といった日本を代表する電機メーカーがその主力ビジネスのひとつであるテレビ事業の大構造改革を発表したりしようが、そうした株価材料には目立って何も反応することなく、夜間に欧米市場で起こった動きを日本市場が織り込むという度合いの方が強い状況が続いているということです。朝方に寄り付いた値段からの値幅が出ないのは、国内要因はほとんど無視されているからです。

 そんな中で市場が嫌気した欧米のイベントのひとつに米金融大手MFグローバル・ホールディングスの31日付米国連邦破産法11条の適用申請があります。同社はゴールドマン・サックスの元最高経営責任者(CEO)で前ニュージャージー州知事のジョン・コーザイン氏が率いて拡大しつつあった米国の大手金融機関の1社ですが、同氏が昨年3月に会長兼CEOに就任して以降、経営再建に向け自己資金を活用した欧州国債への投資に傾注したことが仇となり、9月末現在の負債総額が396億ドル(約3兆900億円)に膨らんで今回の破綻へと向かいました。

 じつは欧州債務危機問題が拡がる中で、市場の懸念は欧州系金融機関よりも米国系金融機関の先々の見通しに移っていたという事情をここでは理解しないとなりません。つまり、欧州問題は当然にして欧州系金融機関の痛手の方が圧倒的に大きいはずですが、リーマン・ショックの時がそうであったように、恐らく何らかの手で公的な支援が金融安定化のためにそれらには差し伸べられるだろうと想像される一方で、米国系金融機関については今回は米国政府も何もできないであろうと読みが拡がっているからです。その端的な状況説明がウォール街で行われているデモと、来年に再選選挙を控えたオバマ大統領の現在置かれた立場で説明できてしまいます。今、足元の状況では米国系金融機関に何が起きても、その救済目的で公的資金を使ってウォール街の富裕層を救うかに見える政策は、来年の再選を目指すオバマ政権にはできないだろうという読みがあります。そしてそんな状況下、図らずもMFグローバルの破綻が市場に伝えられたということです。ジョン・コーザイン氏の輝かしい経歴や人脈を持ってしても、破綻しか選択肢がなかったということです。

■米国雇用情勢は緩やかに改善傾向を示す

 米労働省が4日に発表した10月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比8万人増となり、事前のエコノミストの予想中央値9万5,000人増をわずかに下回りました。ただ一方で失業率は前月の9.1%から9%に若干低下、また8月の雇用増は10万4,000人、9月は15万8,000人にそれぞれ上方修正され、両月を合わせると10万2,000人分の上方修正となりました。市場は発表直後に非農業部門雇用者数の増加が事前予想ほどに伸びなかったことにやや失望した感じもありましたが、失業率が低下したことや、8月と9月分の上方修正などを聞くにつれてトーンが改善、最終的には「米国雇用情勢は緩やかながら改善している」という結論へと変わって行きました。そもそも現時点で見る限りは、このところ極端に悲観するようなマクロデータは米国経済については発表されておらず、とりわけ、雇用関連や消費関連については、むしろやや改善傾向の発表が続いていると言えます。

■タイの洪水被害が拡がり続ける

 1日の新聞報道にありましたが、タイの洪水被害が上場企業の業績を圧迫していることが、決算発表などを通じて徐々に具体的になり始めました。まさに洪水当初からお伝えしてきた通りではあるのですが、楽観的な見通しを立てていた市場関係者にも下方修正の動きが見られます。最大の問題は何かと言えば、現時点においても被害の具体的な規模の把握が企業側でさえもできていないということです。潜って状況確認するための“ダイバー急募”などという記事もありましたが、今現在の現地の混乱ぶりをまざまざと伝えてくれる話です。それでも恐らくあと1〜2週間の間には被害の全容把握と、織り込むべき数値(生産調整や代替計画による損益インパクト)の確定が進むと期待されますが、現時点においては全損を前提に考えざるを得ないところも多く、まだ安易な見切り発車をすべき時とは思われません。

今週のポイント

■ギリシャ問題の行方次第

 週末金曜日の夜に伝わってきたニュースは「ギリシャが欧州連合(EU)などからの包括的な支援策を受け入れる見通しになった。野党が容認に転じたためで、パパンドレウ首相が宣言した国民投票は見送ることとなった。」というものです。これを聞いて思わず口から出た言葉は正直「ふざけんなよ」でした。このパパンドレウ首相の唐突で無責任な発言によりどれだけ市場が振り回されたかを考えると、私のみならず多くの市場関係者の口から恐らく同様な毒舌が洩れたであろうと思われます。もちろん、当初「国民投票をする」と言い出した時の方がよほどショッキングで、ため息の混ざるものだったと思われますが、(日本も同様)政治家はその発言にもっと責任を持って欲しいと強く思います。

 そしてこの原稿を書いている土曜日の朝に聞こえてきたのは「ギリシャ議会は5日未明(日本時間同日午前)、パパンドレウ内閣の信任投票を実施し、賛成多数で内閣を信任した。」というものです。これで欧州連合(EU)など国際社会からの金融支援受け入れを主張するパパンドレウ首相が政治的窮地を乗り切り、首相退任、そして解散・総選挙へという最悪のシナリオは回避されたことになります。これで当面ギリシャが破綻する危機は回避される可能性は強くなりましたが、抜本的な財政再建に取り組む「救国内閣」の成立が遅れれば、金融市場の不安が再燃する可能性はまだ引続き残っています。パパンドレウ首相は辞任カードをちらつかせながら、野党との大連立を模索しているようですが、話が長引けばまだ80億ユーロの支援は棚上げのままであり、年内にギリシャが突然破綻するという最悪シナリオがまだ燻り続けています。

 弱り目に祟り目、もうひとつ嫌な材料を取り上げてしまうと、それはイタリアの財政再建の進み具合をIMF(国際通貨基金)が直接監視をすることになったという問題です。これは欧州連合(EU)のファンロンパイ大統領が4日の記者会見で発表した話ですが、ギリシャ問題の行方次第によってはこの問題も火を吹き始めるかもしれません。


(出典:Bloomberg.)

<ギリシャの2年債金利です。----------100を超えて終値は97.972です。これは債券価格ではなく、債券利回りです。つまり単位は%。異常な状態は続いたままです。>

■一枚岩になれない与党が混乱を招く

 市場を取り巻く環境がギリシャ問題を中心とした欧州債務危機にあるので、やや注目度が落ちているようにも思われますが、日本の政治情勢もとても褒められた状況にないままに時が流れています。今回の20カ国・地域(G20)首脳会議で、野田首相は消費税率引き上げを事実上の国際公約として表明した模様です。世界中で最悪な公的債務の対GDP比率を誇る我が国としては、その労働人口の年齢構成(人口動態ピラミッド)などから考えても所得税増税による財源確保、あるいは産業空洞化議論を加速させる法人税増税による財源確保には自ずと限界があり、幅広く全世代から徴税することができる消費税を増税することは理に適った話なのですが、問題は与党・民主党内さえもまとめきらない状況で、首相が国際公約として表明してしまったことの是非は多くの議論を残すものと思われます。国内世論をまとめきる前に、外交舞台で国際公約として既成事実化しようという考えならば、ギリシャ国会の混乱と同じ結果になりかねません。

 本来2大政党政治と言えば、与党と野党が異なる意見をぶつけ合うのがあるべき姿であり、その政党見解の傾向値を捉えて国民はどちらの政党に投票すべきかを選挙で考えます。しかし、現状の民主党のあり方をみると、増税に関する考え方も、TPP参加に対する考え方を見ても、どの問題ひとつとして「ひとつの政党としての統一感」がありません。野党と議論する前に、公然と与党内が分裂してしまっているのですから、いかがなものかと思われます。もともと民主党自体が寄り合い所帯だから仕方がないと諦められる話ならば良いのですが、増税問題にしても、TPP問題にしても、今後の我が国の行く末を占う大事な問題であることは事実であり、一歩間違えれば日本がギリシャ化することだってかなり高い確率である話です。永田町の論理から早く離れて「救国内閣」化して欲しいものです。

 社会保険制度の改革論議にしても、たとえば年金一元化議論や専業主婦ら「第3号被保険者」の年収基準見直しなど、国民的な議論が充分なされないままに、与党内調整のための駆け引き材料として話がどんどん進んでいるような気がしてなりません。そもそも民主党誕生時に「ミスター年金」などと囃されていた国会議員に期待されていたことは、社会保険庁のずさんな年金管理と国民年金の高過ぎる未納率の是正にあったと思われるのですが、その話も宙に浮いたままに今や厚生労働大臣は別の方がされています。そして安易に取れるところから徴収額を引き上げ、また人気取りにばら撒けるところに支給額を引き上げようとしています。多くの議論がすり替えられていますが、あまりメディアも突っ込んで問題としていません。ただ我が国の将来に禍根を残すことだけは確かです。

 ギリシャで国民投票が回避され、また賛成多数で内閣が信任されたことは市場関係者として喜ばしい限りですが、我が国においても「国民投票が不要だ」という同様なことが言えるのかと言えば答えは「NO」だと言わざるを得ないように思われます。少なくとも、政党内で意見統一ができない状態の集団が「与党」という括りの中で一国の政治を担うという状態は早く是正して貰いたいものです。少なくとも、株式市場が海外要因を中心に日経平均株価の値位を決めているこの間、注目目線が内なる問題に向き切る前に、間に合うように。

 今週も頑張りましょう。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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