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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年9月20日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

9月第3週

マーケット概況

株式 週末終値
(9/16終値)
前週末比
(9/9比)
日経平均 8,864.16 +126.50 +1.45%
NYダウ 11,509.09 +516.96 +4.70%
金利・為替 週末終値
(9/16終値)
前週末比
(9/9比)
長期金利 1.005% +0.005%
ドル/円 76.79  
ユーロ/円 105.96  

連休の谷間とFOMCでは動けない

前週の総括

■所信表明演説は具体性に欠き、当面は欧米主導

 この1週間の各市場の動きは上記の表のとおりです。13日午後、衆参両院本会議で野田新内閣総理大臣が就任後初の所信表明演説を行いましたが、いかに日本の証券市場が新内閣に期待をしていないかを示すかのごとく、その翌日14日には日経平均株価は下落、一時節目と思われていた8,500円をも下回る状況も示現し、その具体性を欠く所信表明の内容に対して静かに駄目出しを行ったという感じです。結果、永田町で首相官邸の主がかわったにもかかわらず、市場は欧米の状況に一喜一憂する状況が続くというのが目下の状況です。週末金曜日の夜、たまたま市場関係者の集まりがありましたが、記憶の限りでは日本の政治が話題になった瞬間はなく、また日本経済新聞の14日(演説の翌日)朝刊の一面トップは「商品先物、買い増し制限」という文字が並びます。この国の首相交代に伴う所信表明演説の重さは、この程度のものなのでしょうか?


(出典:Bloomberg.)

<日経平均株価のこの一週間の動きです。-----------13日の所信表明演説前には僅かに期待があり、14日には剥げ落ちたことが一目瞭然とも言えます。>

■無制限のドル流動性供給

 一方、前週末から極端な水準にまで高まったギリシャに対するデフォルト懸念は、一向に収まる気配を示しません。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)や長期金利の水準は多少下がったとはいえ、ほぼギリシャの破綻を完全に織り込む水準で推移しており、14日には米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが多くのギリシャ向け投融資を抱える仏大手銀行の損失拡大を懸念しソシエテ・ジェネラルとクレディ・アグリコルの長期債務格付けを1段階引き下げました。ムーディーズは6月、BNPパリバを含む仏大手銀3行の格付けを見直すと発表していましたが、今回はBNPパリバについては結論を出さず、見直し期間を延長しています。

 こうした債務危機に直面するギリシャ国債を抱える欧州の銀行に経営不安が飛び火している現状を踏まえ、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁が12日「ユーロ圏の銀行に固定金利で無限に流動性を供給する能力がある」と銀行への資金供給を無制限に実施する方針を表明していますので、逆に欧州発の金融不安がどれだけシリアスな状況にあるかを浮き彫りにしているように思われます。

■欧州銀格下げ相次ぐ

 こんな時に弱り目に祟り目ではありませんが、15日にはスイス金融大手UBSがトレーダーの不正取引により20億ドルの損失が発生したと発表しました。これを受けて早くも16日には米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)とムーディーズ・インベスターズ・サービス(MCO)がUBSの格付けを引き下げ方向で見直し対象にしたことを発表、さらに問題は拡散しそうな勢いです。この問題、損失の20億ドルという規模だけで言うならばたいした問題ではないのですが、その事態発生を許したリスク管理体制の甘さ、およびそれらが今後波及する同行の評判回復への影響ということが問題視されています。

■ギリシャ破綻はほぼ確実

 こうしたドタバタの背景にあったギリシャの状況はどうかというと、前回すでにCDSや債券利回りが異常な水準にまで上昇しているとお伝えしましたが、実はその時の水準などまだまだ平時と思えるほどにこの1週間で急騰しました。CDSについては前回10年債を対象としたものが3,624.855ptsにまで急騰しているとお伝えしましたが、週明け12日には何と6,179.625ptsにまでロケットのように上昇、週末はやや改善しましたがそれでも4,764.120ptsというソブリン債としては見たことがない水準にまで急騰しています。これを受けて、ギリシャの10年国債利回りは週明けに23%台で始まったかと思うと、14日には25.680%という異常な状況になり、週末は21.191%で終了しています。ちなみに、冒頭の表にありますが、日本国債は同期間でほぼ1.0%というレベルです。

 もっと極端な例をあげるとギリシャ国債2年物の利回りは14日一度84.52%となっています。ほぼ現状ギリシャ国債については実質的な商いはなく、業者間の理論値ベースのインディケーションだけと言われていますが、たとえそうだとしてもこの値はもうギリシャが100%破綻することを前提としていると言っても過言ではないと思います。


(出典:Bloomberg.)

<ギリシャ10年国債利回りのCDSの1年間の動きです。-----------前回と見比べて欲しいのですが、週明けには6179.625にまで急騰、やや緩和されて週末はそれでも4764.120です。>


(出典:Bloomberg.)

<ギリシャ10年国債利回りのこの1年間の動きです。-----------14日には25.68%まで急騰し、週末は21.191%です。>

■救いは米国市場

 そんな中、唯一の光明はやはり米国市場に見ることができると思われます。今週行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)への期待値が高いからということもできますが、少なくともこの最中においてNYダウが516ドル(+4.70%)もの週を通じた上昇基調を示してくれたことはひとつの安心材料となります。

 16日に発表されたミシガン大学の9月米消費者信頼感指数(速報値)は57.8となり、前月の55.7から改善しました。エコノミスト予想はブルームバーグのまとめた数値で57、ロイター(TRI)が集計したもので56.5ですから、共に市場予想を上回る結果となりました。また景気現況指数は前月の68.7から74.5に改善しています。こちらもエコノミスト予想の68.0を上回っており、いろいろと悲観的な取り方はできなくもないようですが、逆に市場がいかに負の方向にバイアスをかけているかを確認することはできると思います。そうでなければ、株価は上がりませんから。

今週のポイント

■それでも欧州の足並みは揃っていない

 前述のように、ECBを中心に米連邦準備理事会(FRB)や日銀も加わって各国中央銀行は欧州危機の克服に躍起になる構えを示していますが、16日にポーランドのウロツワフで開かれた欧州財務相会合は追加景気刺激策の可能性を排除し、金融機関への追加支援の可能性も示唆しませんでした。これを受けてニューヨーク外国為替市場ではユーロが対ドルで3日ぶりに下落、せっかくの流れにきっちりと水を注いでくれました。中央銀行と財務省レベルでの足並みが揃っていなければ、金融政策と財政政策が上手く歩調を合わせてこの問題を克服できるわけがありません。

 そもそも、今回なぜギリシャ問題が起こったか、なぜ南欧諸国はPIIGSなどと呼ばれるような問題ある状況になったかと言えば、ユーロという統一通貨が、各国に財政政策は自由にさせながら、金融政策だけを統一するといういびつな統合だったからです。財政規律についてはある程度のルールを決めていたものの、それでも罰則規定は無く、結果として「蟻とキリギリス」と揶揄される南北の性格の違いが明確に表れてしまったということです。

 かねてから最高の品質といわれるドイツ製自動車と、昼休み時に生産されたそれは買わない方が良いと冗談を言われるイタリア製自動車、そうしたものが端的に今回の問題の本質を表しているように思われます。ギリシャのパパンドレウ首相は緊縮財政を徹底して財政規律を回復させるとデフォルト騒ぎの火消しに躍起ですが、その目の前で国民は暴動を起こしており、ドイツのメルケル首相は「ギリシャのユーロ圏離脱はあり得ない」と力説しますが、ドイツ議会はギリシャ支援にはそっぽを向いているというのが実情です。

■日本だって同じこと

 日本だって同じことが言えます。今現在、東日本大震災の復興のために国を挙げて全力を尽くすべきだという方針に異を唱える人は皆無だと思いますが、では実際にその復興財源をどこに求めるかということになる議論百出になります。所得税、法人税、消費税、国債発行などなど、多くの意見が噴出、いざ自分の懐に降りかかる話となると理想論が現実論に置き換わるということなのだと思います。問題はリーダーシップを誰が、いつ、どんな風に発揮できるかの一言に尽きるのですが、損得論が絡むと話をまとめるのは難しいことです。自国内の問題でさえこの有様ですから、欧州問題のように国を超えての話となると、それがいかに容易ならざるものであるかは想像に難くありません。すなわち、欧州問題がどの方向に向かうかは、明らかに答えは誰もがわかっているということなのだと思います。あとは何時それが示現するのかです。再びまたギリシャ支援の融資は一度は実行されるかも知れません。しかし、それは誰から見ても単なる延命策、先送りでしかないと言えるだろうと思います。

■エルピーダが示した日本の未来

 新聞報道によれば、半導体DRAM大手、エルピーダメモリ(6665)が日本から台湾に生産能力の4割を移転するようです。国内唯一の拠点である広島工場(広島県東広島市)の製造設備を台湾子会社に移し、日台の生産能力を逆転させます。台湾では汎用品を量産し、広島工場はスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)向けなど先端技術を使う製品に特化するということですが、背景にあるのは長引く円高、高い法人税、電力コストの上昇、高い人件費などかと思われます。同社が競争相手とするのはサムスン電子(世界第1位)やハイニックス半導体(世界第2位)といった韓国企業です。

 韓国では国策としてウォン安を進め、また法人税を引き下げ、研究開発費は非課税にするなどの企業支援を行って産業育成を進めています。その一方で、日本はと言えば円高対策はほぼ無策ともいえる状況であり、また震災前から高まっていた法人税引き下げの話は逆に引き上げの方向に向かいつつあります。また経産相は否定していますが、東京電力(9501)は燃料コストの増加を理由に、今でもすでに国際比較で高い電気代をさらに15%も引き上げるというような話をしています。こうした状況が本来日本の強みであった産業の海外移管をどんどん加速する状況にあるのは間違いなく、その先陣を切るかのようにエルピーダがまず海外移転に舵を切りました。

 大手の工場がひとつなくなれば、どれだけ雇用が減るのでしょうか? 周辺産業も含めて、どれだけの経済的な影響が出るのでしょうか? 今こそ、政治が明確なビジョンを示してくれないと事態は益々憂慮する方向に向かいます。欧州問題に市場の目が奪われている間に、永田町の人たちもそれに気付いて欲しいと思うのですが、残念ながら所得税軸に復興増税というような発想を見る限り、期待は持てないように思われます。勤労世帯は人口動態ピラミッドから考えても、どんどん減っていきます。所得税を取れるのは現役で働いている層がメインです。復興増税期間が10年間だとすれば、その後半8年間を支える現在18歳の若者には2年先まで、半分を支える現在15歳の子供たちにはあと5年も選挙権はありません。首相はその所信表明で「次世代につけを回さない」と精神論は語りましたが、すでに具体策ではつけを回す指示を下したようです。国力を衰えさせて、円安を誘うという高度な作戦でも考えられていることを願います。

 今週も頑張りましょう。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪FOMCへの期待から、NYダウが516ドル(+4.70%)の週中の上昇基調≫

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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