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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年7月11日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

7月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(7/8終値)
前週末比
(7/1比)
日経平均 10,137.73 +269.66 +2.73%
NYダウ 12,657.20 +74.43 +0.60%
金利・為替 週末終値
(7/8終値)
前週末比
(7/1比)
長期金利 1.175% +0.030%
ドル/円 80.65  
ユーロ/円 115.04  

投資家としては“君子危うきに近寄らず”は不変

前週の総括

■“想定外”の10,000円台回復

 この一週間の各市場の動きは上記の表の通りです。先週、日経平均株価は10,000円の大台を回復しました。これは正直にまさに“想定外”の動きだったのですが、週末の米国市場を見る限り、レンジ想定は心理的大台である10,000円をわずかに超えたということでは「外れた」とも言えるのですが、大きくはファンダメンタルズの想定を外してはいなかったと考え、状況判断は基本的に変えていません。つまり引き続き強気にはなれないということです。先週の動きの中で注目されたのは、週末に米国労働省が正式に発表した6月の雇用統計(後述)に先立ち、民間のADP(オート・データ・プロセッシング)社という企業の給与計算関連を引き受けるサービスを提供している企業が発表した雇用関連指標が市場の想定以上に大きく改善しており、これを受けて週末の本番発表を前に雇用統計へ向けた期待が高まったことが背景にあります。NYダウはこれを受けていったんは12,750ドル台まで急騰しています。この流れを受けて日本市場でも米国景気の回復は雇用関連を中心に市場の悲観度合いよりはもう少し力強く回復していると考えられて上昇したと思われているようですが、実際にはいくつかのテクニカルな需給要因が働いたと考えています。

 そのひとつが「債券先物売り+株先買い」という取引と、「アジア新興市場売り+日本株買戻し」、そして週末の日経平均オプションのSQ向けの裁定取引です。市場が上昇した局面においても東証一部の売買代金が1兆2,000億円をわずかに上回っただけということがそれを証明しているように思われます。つまり、実弾はあまり撃たれておらず、先物を中心に市場が動いたということです。


(出典:Bloomberg.)

<NYダウの先週の動きです。-----------ADPの発表を受けて加速し、本番の雇用統計を受けて急落、ただ底が抜けた感じはしません。>

■失望感大きい米国6月の雇用統計

 米労働省が8日発表した6月の雇用統計によると、非農業部門の雇用者数(季節調整済み)は前月比1万8,000人増にとどまり、9カ月連続プラスではある一方で増加幅は市場予測の平均(10万人程度)を大きく下回りました。ADPの発表数値で雇用回復への期待感が大きく膨らんでいた矢先だったので、この失望感は案外大きかったといえます。失業率自体も9.2%と前月を0.1ポイント上回り3カ月連続での悪化となっています。市場予想の平均は9.1%の「変わらず」と考えていただけにこれもマイナス要因です。水準としては昨年12月の9.4%以来6カ月ぶりの高水準です。

 これを受けてまず大きく反応したのが米国債券市場です。このところ6月末のQE2終了を受けて米国金利はにわかに回復傾向(債券が売られる)にあったがゆえに、再び債券市場は一気に債券の買戻し(金利低下)に動いています。米国10年国債の水準で言えば、雇用統計発表直前には3.18%台まで上昇していたものが、一気に再び3%を割れるまで1bpの糊代もないところまで買い進まれています。この流れを受けて、金利差縮小の考えから再びドルが売られ、対ユーロでも1.42台、対円でも80円台半ばまで押し戻されています。

 ただ救いをあげるとすれば、米国株式市場が一時的にはこの内容を受けて150ドル近い下落を演じたものの、その後買戻しが進み、結局は前日比マイナス62ドル程度で終了している点です。すなわち従来から申し上げている通り、速度は緩やかながらも回復の流れの中にあるということについてまでは否定されていないということです。これは今後の為替の流れなどを見ていくうえでも重要なポイントだと考えています。


(出典:Bloomberg.)

<米国10年国債の先週の動きです。-----------雇用統計の発表を受けて慌ててトレーダー達が債券を買い戻している姿が目に浮かぶようなチャートです。>

■ギリシャに次いでポルトガルも投機的に格下げ

 信用不安の問題が尽きない南欧ですが、ギリシャ問題についてちょっと一息入れた矢先、今度はポルトガルをMoody’sが投機的格付けまで一気に引き下げるという展開になりました。当初ギリシャ問題が起こった時、多くの市場関係者の間でも「欧州連合(EU)圏におけるギリシャの国内総生産(GDP)はわずか3%に過ぎず、大きな問題にはならない」というものが一般的でしたが、それは全然見当違いだったといえます。これは産業構造も国家財政状況も、そして民族意識もすべての面で異なる国々が統一の通貨で、統一の金融政策で運営される“ユーロ”という考え方の根底に対する疑問符の証であり、玉突き現象の行く末には大きな不安がさらに広がりつつあります。思い出されるのは、サブプライム・ローン問題が米国で起こった時、やはり多くの市場関係者などが「ごく一部のたいした問題ではない話」と取り合わなかった時のことです。それがどの程度誤った判断であったかは、あらためてここで申し上げる必要もありません。この問題はギリシャとか、南欧といったレベルの問題ではなく、もっと大きな問題に発展する可能性を秘めている話です。ただ救いなのは、すでに欧州中央銀行(ECB)などの中央銀行がこの問題に取り組んでいることです。でも逆に言えば、大変な問題だからこそ、取り組んでいるともいえなくはありません。

今週のポイント

■米国の時限爆弾タイマーはまだ止まらない

 5月16日に法律で定めた債務上限額にまで国の借金が膨らみ、8月2日までにこの法定債務上限を引き上げる法案が可決しないとデフォルト(債務不履行)に陥ると言われながらも、それでも「最後は何とか議会は妥協点を見つけて決着し、最悪の事態にはならないだろう」とたかを括ってきた米国の問題ですが、7月初旬を終わろうという現時点においてもまだ有効な解決策が見える段階にはなっていません。

 Bloomberg社が伝えるところによれば「ベイナー米下院議長(共和、オハイオ州)は、債務削減をめぐるオバマ大統領との交渉では依然として「深刻な意見の相違」があるとした上で、「近く合意が成立することはない」と述べた。下院議長は、「密室の合意も公の合意も存在しない。われわれの意見はこれだけかけ離れている」と両腕を大きく広げる仕草を見せた。ベイナー議長は記者団に対し、「意見の差が縮まったとは考えていない」とし、債務上限を引き上げる計画の一環としての増税には下院共和党は同意しないとあらためて表明した。さらに、「この非常に重大な問題への対応をめぐっては、深刻な意見の相違がある」と続けた。」とのことで、日本と同様、ねじれ国会に悩むオバマ民主党政権はかなり窮地に追い詰められている感じになってきました。

 ただこうした事態になってもなお、市場が極端な動揺(巷でもて囃されるようなドル暴落のような事態)を起こさないでいる最大の理由は、やはりドルが基軸通貨という特殊な存在であり、また第2の基軸通貨と目されていたユーロがそれよりも大変なことになっているからということが背景にあります。米国の著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏は「たとえ米国債がデフォルトになったとしても、米国はドルを印刷する権利を持つ特殊な存在だ」という本質を指摘しています。これは日本円にもユーロにも、基本的にできない芸当であり、また市場が忘れがちな問題でもあります。

 ただしかしながら、このままの状態が続くと7月中旬にはS&Pが米国債の格下げを行わなければならないということを表明してもおり、事態は予断を許さない状況であることは事実です。8月2日に向けてカウントダウンを進める米国債デフォルト・タイマーは、引き続きカウントダウンをとめていません。

■日本はどうなるのでしょうか?

 財政問題でいえば日本も変わらない状況にあるというのは何度かお伝えしてきました。延長された今国会の会期末である8月末までに特例公債法案が可決されないと、9月以降、行政サービスが止まる可能性をついに財務大臣までが指摘し始めました。にもかかわらず国会審議は進むどころかより混迷の度合いを深めているというのが現実であり、何もいい話は聞こえてきません。

 さらに悪いことに、梅雨明けが例年よりも早いことも手伝って、この夏の電力事情については予断を許さない状況になってきました。以前お伝えした通り、今年は多くの企業で本社機能の一部や生産機能の再配置が東京電力管内から全国へという流れで行われましたが、再稼動する目途が立たない原子力発電所の状況は、決してこの夏だけ歯を食いしばれば大丈夫という状況にはならない方向へ向かわせています。つまり、このまま行くと来夏も引き続き状況は同じであり、全原子力発電所がストップする来年に向けてはよりシリアスな状況にならざるを得ないかも知れません。実際、東北電力(9506)管内や四国電力(9507)管内においては、この冬にも電力が不足するという事態に成り兼ねない様相を呈してきました。関西電力(9503)管内の来夏は完全に不足するとも言われています。

 これらの数値が原発推進派の誇張や出任せなのか、電力各社による情報隠ぺいなのか、実際には何が真実なのか、現時点ではっきりと言えることは「誰が本当のことを言っているのかさえわからない」ということだけです。首相と経産相の意見が突然すれ違うのが今のこの国の状態なのですから。もし企業の本社機能や生産設備が遊牧民やジプシーのそれのように電力余力のあるところを自由に季節ごとに移動することができるのならば何とかなるかも知れませんが、この状況が長引くようだと多くの企業経営者の事業継続プランの中では国外脱出という選択肢の重要性が日に日に高まってきているともいえます。

 その先にあるのは国内空洞化であり、個人消費の停滞であり、景気のスローダウンという決して日本の株式市場にとっては好ましいとはいえない流れです。税収が上がらなければ、ますます国家財政は危機に瀕します。繰り返しになりますが、電力供給は元より、今の国家財政は、歳出予定の予算の約40%を確保しないままに見切り発車した予算であり、その歳出予定の中には震災復興予算は含まれていません。がれきの撤去費用も、原発被害補償費用も含まれていないということです。どうやって捻り出すのでしょうか?

 節電のためにLED照明機器関連などの一部家電品に特需が起こっているのは事実であり、鉱工業生産などを見ても、サプライチェーンの急回復などもあり、確かに震災後の急落からのV字型反転は確認できました。しかし前述の状況の中で、このまま引き続き景気のV字型回復が続き、震災前の水準を超えるかどうか確信を持てません。本来市場関係者としてはこうした状況を元に楽観的なシナリオを描きたいのは山々ですが、現時点においてはやはり投資判断はアンクリアな問題・課題が多すぎる以上、「君子危うきに近寄らず」としたままでいたいと思います。ここで慌てずとも、もう少し視界良好になった時に、投資収益を上げるチャンスはいくらでも生まれるのですから。震災前の日経平均株価の水準は10,500円前後です。それよりもわずかにマイナスなのが今の水準であり、それを上回るには、震災前の我が国の置かれた状態よりも明るい未来が描けないとならないというのが投資判断の前提にあります。

 今週も頑張りましょう。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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