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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年6月6日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

6月第1週

マーケット概況

株式 週末終値
(6/3終値)
前週末比
(5/27比)
日経平均 9,492.21 -29.73 -0.31%
NYダウ 12,151.26 -290.32 -2.33%
金利・為替 週末終値
(6/3終値)
前週末比
(5/27比)
長期金利 1.125% +0.005%
ドル/円 80.27  
ユーロ/円 117.48  

永田町茶番劇、不信任案否決はネガティブ

前週の総括

■市場は冷静に(永田町ではなく)米国経済を見ていた

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。この1週間の市場の動きをチャートで見ると、6月2日の寄付に急落しているように見えもしますが、実際の値幅は上下にほぼ200円程度と非常に動きの小さい展開となっています。売買代金の方も5月31日はさすがに月末取引でもあり1兆5,000億円近くまで膨らみましたが、週初月曜日は9,000億円をわずかに超えただけ、週末金曜日の6月3日も1兆1,000億円と極めて低調な状況が続いています。

 日本市場を取り巻く環境としては、野党による現民主党菅内閣への不信任案提出という大イベントがあり、世論も「東日本大震災の復旧・復興を急がないとならないこの時に政局争いとは何事だ」という論と、「だからこそ、敢えて仕方なく強いリーダーシップを発揮できる首相に変えるべきだ」という論との両論がありましたが、その結果自体もさることながら、市場は極めて冷静にこの問題は“横目で見ていただけ”という印象です。この点は先日実施した月例の「楽天証券個人投資家サーベイ『楽天DI』」の結果でも顕著に表れており、個人投資家を含め、市場関係者は永田町劇場の演目は立ち止まらずに見ていたことがわかります。そして今週の市場を一番大きく動かした話題は、我が国の問題ではなく、米国の経済ファンダメンタルズのスローダウンでした。2日の急落は米国市場がその朝、昨年6月以来、最大の下げ幅となる勢いでNYダウが急落したことを受けての反応であり、国内要因ではありません。


(出典:Bloomberg.)

日経平均株価のこの5営業日です。-----------チャートで見ると 6月に入った途端に急落しているように見えますが、じつは、値幅はたいしたものではありません。>

■米国ADPと週末の雇用統計が予想外に悪化

 その2日の米国市場の急落を招いた最大の理由は、週末の正式な雇用統計の発表前に、まず市場に広まる民間の給与明細計算会社ADP(オートマチック・データ・プロセッシング)が発表する雇用環境のデータです。これが市場の想定外な水準に悪化していました。これを受けて先月来続いている米国経済マクロの減速感がより強まり、週末米国労働省から発表される雇用統計がやはり予想以上に悪いものになるのではないかという考えを想起させました。

 そして週末金曜日には正式な雇用統計が発表になりましたが、それによると非農業部門の雇用者数(季節調整済み)は前月に比べ5万4,000人増えて8カ月連続のプラス、増加幅は直近の8カ月の中で最も小さく、市場予測の平均(約17万人増)を大きく下回り失望感を誘いました。失業率の方も9.1%と前月から0.1ポイント悪化、市場予想では逆に8.9%に改善することが見込まれていたので、これも市場をがっかりさせたと言えます。内容は“民間部門”の雇用増が昨年6月以来の低水準となる前月比8万3,000人増に留まったことが大きく、民間需要の弱さをあらためて露呈した形です。

 これらを受けて米国株式市場は軟化、昨年秋からの上昇トレンドの中で、東日本大震災の時を除いて下値抵抗線となっていた75日移動平均線も下回る状況となってしまいました。これは最近米国マクロ指標の悪化傾向が続いていますので、市場環境としてはあまり褒められたものではないと言えます。


(出典:Bloomberg.)

<NYダウのこの1年間の動きです。-----------黄色の線が75日移動平均線。明確に割り込んでしまいました。>

■低下を続ける米国金利

 すでに5月23日配信号でご案内した通り、米国の政府債務残高が法定上限である14兆2,940億ドル(約1,155兆円)に達し、借り換えができなくなって破綻する可能性が騒がれていることはご承知の通りですが、残念ながら現時点においてはこの問題に進展は見られません。むしろ前述の通り、米国の雇用統計などが悪化したことも手伝って、現状「AAA」を維持している米国債格付けの引き下げの可能性について大手格付け機関が言及するなどの動きが広まっています。主としてこれらは債券市場と為替市場に大きく影響しており、この週末はユーロが対ドルで買い戻され、週末の水準は1.4635とひと月ぶりの水準にまで戻しています。これを受けて、円も対ドルでは80円前半に買い進まれていますが、対ユーロではむしろ117円台とやや売られる状況となっています。

 しかし一方で、米国債券の利回り水準は、週末2.9859%と3%を割り込んで終わっており、これは昨年12月以来の低水準になっています。債券の利回りが低下するということは、すなわち債券が投資家に買われているということであり、米国の政府債務残高が法定上限に達したことで米国債のデフォルトが騒がれる中、一方でそうした米国債を安心して買っている投資家がたくさんいるということを示しているという皮肉な結果にもなっています。つまり、『アメリカ株式会社』の損益計算書の状況については失望を抱きつつも、バランスシート(貸借対照表)に対しての信認はあまり論調として騒がれるほどには市場は疑っていないということです。

■日本の格下げはシリアスな話

 一方、先週は米国の大手格付け機関であるムーディーズ・インベスターズ・サービス社が日本国債の格付けを引き下げの方向で見直すということを発表しました。これにより、東日本大震災以降、主要な格付け機関のほとんどが日本国債の先々について否定的な見通しを示していることが明確になりました。同社は記者会見で「東日本大震災の日本経済や財政への影響が思ったより大きく、財政再建に向けた改革を実現するための政治情勢も不透明」とその発表理由を説明しています。日本国内の債券市場は格下げによる影響はほとんどないと平静を装っていますが、少なくともグローバルに取引が拡がる為替市場はこれに対して敏感に円安方向に反応しています。

 過去10年余りのこれら格付け機関による日本国債への評価を時系列で調べると、現在の状況は2003年にりそな銀行(8308)に公的資金が注入され日本の金融システムへの不安が極めて高まった頃の状況と同じであり、またさらに言えば、ムーディーズが今回の発表に至った状況については、改善の目途すら立っていないという状況ということがポイントです。すなわち、まだあと何段階格下げがあるのか解らない状況であり、この状況が続くようだと日本国債の叩き売りからハイパー・インフレーションという図式すら、簡単には可能性を否定できない方向へ向かっていると言えます。

主要格付け機関による日本国債の状況
(作成:楽天投信投資顧問)

今週のポイント

■赤字国債が発行できない限り、震災復興もできない

 野党が提出した内閣不信任案は、土壇場の菅首相の退陣表明が与党内の足並みの乱れを修復し、いったんは否決ということになりましたが、その退陣表明も数時間後には菅首相自らの「退陣表明などしていない」という年明け以降までの続投表明などにより早くも覆り、永田町の状況は以前よりも混沌としてしまっています。従来はそれでも「与党 VS 野党」という通常の政治的対立軸でしたが、今では与党民主党内に明らかに亀裂が生じてしまっています。これでは余程個々の政治家が“狸おやじ”ぶりでも発揮しない限り、まとまるものもまとまらないと考えた方が良さそうです。

 前述の通り、じつは日本は米国国債のデフォルト問題と同様の問題を抱えています。苦肉の策としての第一次補正予算案は可決されていますが、肝心のその財源手当てである赤字国債の発行についてはその目途がついていません。早晩、日本も米国で騒がれているのと同様に金庫のお金が底を尽きます。一時的にはFB政府短期証券(日本政府が一時的に生じる資金不足を補うために発行する国債の一種で期間は60日と短い)の繰り回しなどで何とか凌ぐというのが現場の理解ですが、まず与党が一枚岩になって衆院で可決したものを、野党の協力を得て参院でも可決しないと赤字国債の発行に必要な「特例公債法案」が成立せず、すなわち日本国債も借り換え不能という事態に陥ることになります。

 政府は社会保障と税制の一体改革案を取りまとめ、6月下旬に2015年度に消費税を10%にまで引き上げるという話を持ち出す予定でいますが、じつはそれ以前に前述の問題に道筋をつけて行かないと、事態はとんでもない方向へ向かい始める可能性があります。国民世論はある程度の増税議論は避けて通れないとのコンセンサスを醸成しつつあると認識していますが、残念ながら現状で見えている政府の社会保障と税制の一体改革案の内容は、痛みを伴う歳出カットの項目には相変わらず踏み込むことなく、「バラ撒く代わりに増税もする」という安直な方向に向かっています。消費税にしても、所得税にしても、税率の引き上げによる歳入増は景気が現状維持からさらなる上向きの絵が描ける場合において有効であり、税率を引き上げた分だけ個人消費や所得が落ち込むようなことがあれば元も子もありません。すなわち、景気刺激策、少なくとも景気が落ち込まないような施策とセットでなければ目先の予算帳簿上だけの帳尻合わせにしかならないということです。

 現状では赤字国債発行のための特例公債法案が成立していませんから、残念ながら被災地の復興費用の財源は確保できていません。首相は「国が責任を持って支援する」と再三発言されていますが、現実は予算がなく、また永田町茶番劇の二転三転のどんでん返しはますます震災復興を遅らせる状況しか導いていないということができます。被災地の一日も早い復興のためにも、今政治がどうあるべきか明白です。理想論ではなく、現実的な“べき論”で早く対応策を考えて欲しいものと考えています。民間企業は凄まじい努力で震災対応を行っているのですから、永田町も歩調を合わせて欲しいものです。

 今週も頑張りましょう。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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