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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年5月23日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

5月第4週

マーケット概況

株式 週末終値
(5/20終値)
前週末比
(5/13比)
日経平均 9,607.08 -41.69 -0.43%
NYダウ 12,512.04 -83.71 -0.66%
金利・為替 週末終値
(5/20終値)
前週末比
(5/13比)
長期金利 1.125% +0.010%
ドル/円 81.71  
ユーロ/円 115.70  

ミクロとマクロが乖離し始めた

前週の総括

■動きようがない日々

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。長いこと市場関係者としてマーケットに関わって来ましたが、自分の20余年のキャリアに照らしても、数え上げたら5本の指に入るほど稀な「動きようがない」状況が続いた一週間だったと思います。「不透明」とか「材料難」といったこととは違い、「動きようがない」です。それは「仮に○○だったら」とか「もし××ならば」という前提を置いて考えざるを得ない要因を重層構造で抱えているのが現在の市場環境だからです。残念ながら、この状況は今週も大きくはまだ変わりそうもありません。

 まったくもって、事の内容も、重要性も、そのイメージも違う話ですが、同じように「動きようがない」状況に感じたのは昭和天皇ご崩御の直前ぐらいかも知れません。阪神大震災も、911同時テロもダメージ自体の発生は過去のものとして、その被害把握とリカバリーの評価に集中することができました。2度の湾岸戦争なども、おおよその方向性は把握することができました。リーマン・ショックでさえそうです。しかし今回は震災の被害さえ未だ把握し切らない中で、原発問題は早くも工程表の実現可能性が疑われるような状況になり、さらに一番厄介なのは“政治的パフォーマンス”の次元とは異なる、政治のルール無視が始まろうとしているからです。統制経済社会でない限り、資本市場には根拠となる法を遵守しますという約束があり、その大前提で収益予想も投資価値判断も行われていますが、もしその前提が覆されるのならば、日本市場に理詰めの計算は意味を為さなくなるからです。資本市場は鎖国されておらず、最もグローバリゼーションの風に晒されている場所、ということは共通の認識だと思われます。今の市場が外国人投資家に見放されたらどうなるか、その結果は火を見るよりも明らかです。

■“GDP実質3.7%減 大震災が影響”の問題点

 内閣府が19日発表した2011年1〜3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%減、年率換算で3.7%減となりました。2期連続のマイナス成長で東日本大震災の影響で消費や投資が落ち込んだことが要因とされ、与謝野馨経済財政担当相は同日の記者会見で「世界需要が蒸発したリーマン・ショックとは状況がまったく異なる」とコメントされました。しかし問題点は全然違うところにあります。それはコンセンサス(民間予測の中央値はマイナス1.8%)との乖離です。一見するとマイナス3.7%と同1.8%の1.9%程度の誤差ですからよくある話とも言えるのですが、2011年1〜3月期の90日間のうち、実際に震災の影響があったのは最後の20日間だけです。わずかその期間の震災影響を全体に均した1四半期分の数値誤差が1.9%、それも多くのエコノミストが真剣に集中して考えた四半期の終わり側の時期の問題ですから、20日間の実質的な予測誤差はもっと大きいと疑われます。そのずれた予測の上に現状の足元以降の予測が連続性を持ってコンセンサスとして形成されていますが、状況はより厳しいものと考えるべきだということです。例えば、年の後半から急回復するといった想定はかなり甘いのではと思わざるを得ません。

■2010年度決算発表はほぼ終了した

 一方、前述のマクロの話に比べるとミクロの話はさらにやや複雑です。2010年度の決算発表はほぼ終了したと言えますが、トヨタ自動車(7203)東京電力(9501)など、今期ガイダンスを発表しないところが相次ぐ一方で、日立製作所(6501)東芝(6502)のように過去最高益を更新したり、コマツ(6301)のように過去最高の売上高を更新したり、終わった期である2011年3月期の内容は「もし震災さえなかったら」と思わせるところがかなりありました。その印象が慣性で引きずられ、一方で震災の影響をもろに受けたような企業はガイダンス発表していませんから、自ずと印象は「そんなに悪くなった」というポジティブ・バイアスが掛かったものになっています。ただ日本のGDPがそうであったように、あるいは4月の米国鉱工業生産指数が日本の震災影響で軟化したことから類推できるように、日本経済の状況は決して安穏と見ていられる状況ではないようです。生産拠点のシフトが行われている中で、原子力発電所の稼働が減れば電力需給のミスマッチは今後どこでどう起こるかわかりません。中部地域ならば自動車関連産業に影響が大きいですし、九州地方ならば半導体生産などに影響が拡がります。日銀の白川総裁が20日の金融政策決定会合後の記者会見で、東日本大震災の影響などから「景気下振れリスクを意識する必要がある」と言った意図はここにあると思います。マクロとミクロの乖離が拡がってきています。

■ギリシャの債務再編は不可避か

 いよいよギリシャ問題が風雲急を告げる状況になりつつあるようです。格付け会社フィッチ・レーティングスは20日、ギリシャが既発の国債の償還期限を延長した場合、それを「デフォルト(債務不履行)イベント」と見なすと表明し、ギリシャの格付けを「B+(シングルB+)」と、従来の「BB+(ダブルB+)」から3段階も一気に引き下げました。さらに、一段の引き下げ方向で見直す「ウォッチネガティブ」にもしています。この意図はギリシャ国債が期限延長を意味する「ソフトリストラクチャリング」の対象とならないことを想定したもののようですが、もし債務再編という流れになると欧州系金融機関のバランスシートが毀損することは避けられず、また仮に債務再編となった場合でも、“ユーロ”という大実験自体の結果を問う声が大きくなることは不可避だと思われます。週末、これを受けてユーロは全通貨に対して売られ、対円でも117円台から115円台にまで売られています。


(出典:Bloomberg.)

<日経平均株価のこの1年間です。----------- 各移動平均線が上値を抑えるように下を向いているのがこの先を暗示していると思われます。>

今週のポイント

■米国債がデフォルトするとも言われるが…

 かねてから米国の財政状況がドル暴落説の論拠になったり、米国がデフォルトしたりするなどという話がまことしやかに囁かれますが、その論拠のひとつは米国の政府債務残高が法定上限である14兆2,940億ドル(約1,155兆円)に達し、借り換えができなくなって破綻するというものです。実際、米国財務省は16日に政府債務残高がその上限に達したことを発表しました。8月2日までは政府の手元資金などの取り崩しで対応しますが、それ以降は回避策がなくなるようです。米国債券が償還できずにデフォルトするなんてことになったら、市場は大混乱になることは必定ですが、米国でも民主党と共和党の与野党の捻じれが生じており、現状ではまだ折り合いが付くとは言えません。ただギリシャ問題のように市場が、すでにその可能性を織り込むためにギリシャ国債の金利は上昇し、売買もほとんどできない状況が続くのとは一線を画し、米国債券は買われています。

 ただ問題は他人事ではありません。いえ、むしろ法律で政府債務残高の上限規制があるだけ日本よりも「まし」だとも言えます。経済協力開発機構(OECD)のデータによれば、公的債務の対GDP比率が2011年、米国は98.5%になりますが日本はその2倍以上の204.2%です。ちなみにギリシャで136.8%、イタリアが132.7%、アイルランドが112.7%、ポルトガルが98.7%、そしてスペインは78.2%とPIIGSでもこんな水準です。ちなみに、これはOECDが2011年4月1日アップデートしたデータですが、東日本大震災に伴う復興費用や東京電力(9501)の補償支援などは当然含まれていません。どれだけ日本が悪いのかという話だと思うのですが、95%が国内投資家に買われているから大丈夫だというのが一般的な“常識”のようです。


(出典:US Treasury(米国財務省))

<米国公的債務残高の推移です。----------- 法的上限につきあたり、これが「米国債がデフォルトする」と言われている最大の根拠です。>

■中国『iPad』主力工場で爆発 2人死亡、生産停止

 週末に飛び込んできた材料のひとつですが、米アップル(AAPL)の多機能携帯端末『iPad(アイパッド)』を生産している台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の中国子会社、富士康科技集団(フォックスコン)の成都工場で大規模な爆発があった模様です。現時点(21日15時現在)で原因やその後の影響などはまだ何も発表されていませんが、『iPad』の主力工場であることは確かです。大規模な生産調整があれば、現在の『iPad2』を欲している購入予定者が単純に『Android』に流れるとは思えませんので、少なくとも関連セクターには影響がでるはずです。また単純な事故による火災ではなかったとした場合、同工場での問題は過去にも度々取り沙汰されており、中国生産のビジネス・リスクが中国の生活水準の向上とともに望まざる方向で表面化したことにもなり、注視する必要があります。

■東京電力の決算を踏まえて

 東京電力(9501)の決算自体はある意味では予想の範囲内だったと言えるでしょう。発表当日の朝刊に掲載された見込み記事の数値とそう大差なく、正式発表前とはいえ前日比プラス9円の367円で大引けを迎えたということは、市場も予想していた範囲内ということができるからです。ただ、問題は今後の補償費用は見込まれていないことであり、火力発電にシフトすることによる燃料コストの上昇で、単年度ベースでの営業利益が計上できないこともあり得るということです。すなわちそれは補償費用分だけすぐに赤字が資本を毀損するという意味であり、2010年度末での純資産1兆5,581億円を上回る補償費用が発生すれば、事実上今期中に同社が債務超過に陥ることを意味しています。燃油価格の上昇を打ち消す分の円高が進めば幸いですが、円安に振れればその分もコストアップに繋がり、ますますその時期は早まるということです。

 また12年3月期は社債と長期借入金の返済に7,500億円、復旧費用や燃料費を合わせると総額2兆円が必要ですが、すでに従来のような社債発行による調達方法は(クレジット低下により)事実上不可能であり、銀行借り入れができるか否かに掛かっています。しかし、その一方で政府からは、すでに銀行に債権放棄の要請があります。もし銀行が債権放棄や金利減免を行った場合、超法規的な措置でもない限り、銀行は追加貸し出しなどできません。すでに債務超過になって東京電力(9501)向け債権は不良債権化するという狼煙が上がってしまった以上、本来、銀行は銀行の株主の為に債権を回収する義務が当然に生じます。引当金も積まないとなりません。もちろん、そんな貸出先に追加で資金を投入することは、銀行側が株主代表訴訟の対象になってしまいますので、通常はあり得ません。東京電力(9501)の株主や社債保有者は保護される一方で、融資をしている銀行の株主の財産権が侵されていい理屈がありません。

 人件費カットなどの努力も多少はまだ上乗せがあるのかも知れませんが、それにも限界があり、また現役世代だけに負担を強いることは良質な人材の流出を招きかねません。電力業界については詳しくありませんが、少なくとも金融業界の場合、待遇悪化は転職の促進剤という側面があり、人材の流動化は日常茶飯事です。今週はこのパズルを解くだけでも、市場は政治の動向に興味を払い続けると思います。とてもまだまだ楽観できる状況とは思えません。

 今週も頑張りましょう。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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