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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年5月16日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

5月第3週

マーケット概況

株式 週末終値
(5/13終値)
前週末比
(5/6比)
日経平均 9,648.77 -210.43 -2.13%
NYダウ 12,595.75 -42.99 -0.34%
金利・為替 週末終値
(5/13終値)
前週末比
(5/6比)
長期金利 1.115% -0.025%
ドル/円 80.80  
ユーロ/円 114.07  

どうなる? 日本の資本市場

前週の総括

■政治リスクが市場直撃

  この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。週を通じてギリシャの債務再編問題や商品市場の軟調な展開など、株式市場にとっては外部要因とも取れる材料で市場は動いたとも言えますが、週末の下落要因は明らかに日本の政治リスクを株式市場が強く意識した結果です。13日午後に枝野官房長官が「金融機関に東京電力(9501)に対する債権放棄を期待する」と発言したことがそのきっかけです。「東京電力には株式や社債を保有する個人投資家がたくさんあり、その方々を保護するためには銀行融資なら政治判断で焦げ付かせる事も是」とするのが現政府の見解と受け取れる内容だったからです。恐らく市場関係者ならばほとんどの人が耳を疑ったと思われますが、それは正式に官房長官の会見で公言された発表でした。

 浜岡原発の原子炉停止作業が粛々と進み始めたことを市場が認識している状況での官房長官のこの発言は非常に重いです。わずか40分前の官邸からの電話通告だけで、民間企業の長年の(国策としての)中核事業が方針転換をさせられる政治的強権発動があることを知った日本の資本市場にとって、「期待する」「求める」という要請的な言い方であったとしても、それは命令に等しいと受け止められるからです。もし今回これを断ったら「そのツケがどう波及するかわからない」と企業経営者ならば誰もがそう思うでしょう。取り分け認可業種なのですからなおさらです。これを受けてパニック的な売りが銀行株に拡がり、株式市場は一気に値を消しました。

■トヨタ自動車、決算で12/3月期業績予想を発表せず

  トヨタ自動車(7203)が11日発表した2011年3月期の連結決算(米国会計基準)は新興国の販売増などで純利益が4,081億円と前の期に比べ95%も増えました。連結販売台数も国内は12%の減少、北米も3%の減少となりましたが、アジアが28%増の125万台と過去最高を更新し、中近東や中南米でも販売台数が伸びた結果、営業利益は4,682億円と3倍強になっています。震災の影響は1,100億円のマイナス要因となっていますが、原価低減や合理化で吸収したとされ、もし震災がなかったらと思わざるを得ません。市場はひとまずこの発表を好感し前週末終値3,210円から先週末は3,400円へと値を戻して終了しています。

■すなわち日本のサプライチェーンはまだかなり傷んだまま

 しかし、今回の決算発表に私は失望感を抱きました。それは12年3月期の業績見通しについては、震災の影響で生産販売計画の精査に時間がかかるとして公表を見送らざるを得なかったからです。この失望感の矛先はトヨタ自動車という個社へ向かっているのではなく、あらためて東日本大震災の日本経済へのマイナス影響を痛感させられました。「トヨタ式生産方式」と呼ばれるやり方は世界の製造業の教科書にもなる徹底したもので、だからこそ同社の決算発表は通常かなり精緻に数字の積み重ねがされていました。それは時々他社で見られる「だいたいこんなものだろう」という“目方でドン”といったアバウトなものではありません。だからこそ他社のそれとは違った重みで、日本のサプライチェーンの現状を正しく評価するという意味で、同社が今期業績予想を開示できるのかと期待を膨らませていたのですが、残念ながらやはりこの段階では無理だったようです。6月になるようです。

 同社は『プリウスα(アルファ)』というワゴンを先週発表しましたが、それを裏付けるかのように、直前に得た情報によるとすでに納車は来年とのことです。これは同車の人気が高いという好意的な見方もできなくはないですが、実際は生産量確保にかなり問題があるからと聞いています。またトヨタ車には『G-BOOK』という通信モジュールを使ったサービスが搭載されている車種が『レクサス』を中心に数多あり、地デジ放送開始に伴う利用周波数帯域の問題で、それ用の『DCM』という通信機器の交換が既存車種で必要になっているのですが、例えばこうしたことのユーザー向け対応に目途が立っていません。部品が入荷しないからです。決算発表第1ラウンドでは今期業績予想を開示したところが多く、市場に安心感を与えたようですが、それがどれだけ確度をもったものなのか疑わしくなったと考えます。

■ソニー問題、収束どころか…

 今回の東日本大震災が株式市場に与えたインパクトの中で、何か前向きなものはないか、災い転じて福となすものは何かないのかと考えた時、真っ先に挙げられたのが「クラウド化」の流れの加速です。すべてを一瞬で破壊するような地震や津波に襲われた時、もしITシステムがクラウドを利用しているものであるならば、再びそこにアクセスできる環境さえ整えば元に戻れるという特徴は、企業や地方自治体のみならず個人でもその利便性を強く感じたものです。だからこそ、その直後から関連企業には問い合わせが殺到していました。

 しかしソニー(6758)の個人情報漏えい問題は、残念ながらこの前向き流れに一気に急ブレーキを掛けさせました。いかに堅牢なシステムを構築しようとも、悪意あるハッキングから守る術がないのかも知れないという論点です。企業や地方自治体が利用を進めたいと思っているものの中には、極めて多くの個人情報が入っています。金融機関などの場合、それは個人情報そのものだと言えなくもありません。

 同社の個人情報漏えい問題については専門機関などが詳細な分析を進めていますが、現時点ではソニーのセキュリティが際立って脆弱だったという結果にはなっていません。だとすると、同社の知名度が高いということ自体が問題だったということに成りかねないのですが、ならばクラウド化の流れにいったん大きく水が注されたことは事実です。現状はまだ全容は掴めておらず、混乱はしばらく長引きそうな印象です。

■商品市場の混乱

 WTI原油先物など商品市場が値を崩し、一部には商品バブルの崩壊とも言われているとは前回お伝えしましたが、米国がQE2、すなわち量的金融緩和を終了するという話から過剰流動性が商品に回らなくなるという連想があることは事実です。しかし一番の理由はニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)を運営するCMEグループが相次いで先物の証拠金率を引き上げていることが原因と思われます。完全にバブル化しているという言われ方もしてきた商品市場ですが、ここにきてその調整ムードはかなり強く、リスクマネーの動きに大きな変化がでてきているように思われます。


(作成:楽天投信投資顧問)

<主な金属の商品市況です。----------- 銀が急騰し、そして直近急落していることが明らかです。これで見る限り、金価格の変動は穏やかなものです。>


(作成:楽天投信投資顧問)

<主たる原油市場の商品市況です。----------- やや一旦は落ち着きを取り戻した印象ですが、原発反対の流れが加速すれば、再び化石燃料の需給はタイトになることは明確ですから、コストプッシュ要因として目が離せません。>

今週のポイント

■日本の資本市場、資本主義の真価が問われる

 最大の問題は「公共性のあるインフラ企業」と判断される日本企業への投資が、今後も外国人投資家の評価目線で魅力的なものと捉えられるのか、あるいは通常の経済学上のアプローチ手法で企業価値などの分析を継続することに意味があると考えて貰えるのかということです。なるほど日本国債の消化は国内で95%を賄っているのかも知れませんが、株式市場はそうではありません。その意味においても、政府は民間企業の経営への介入はグローバル・スタンダードに照らして、あるいは法的根拠に照らして正当なものでなければなりません。中部電力(9502)・浜岡原発の停止や、金融機関への東京電力の債権放棄要請などは、こうした点で明らかに行き過ぎだと言わざるを得ません。少なくとも最低限の議論とその法的根拠に関する情報開示がなくてはならないはずです。

■内閣総理大臣は、直接選挙の大統領とは違う存在

 少なくともこの国は民主主義であり、資本主義であり、決して独裁国家でも社会主義でもないはずなのですから。プライベートな生活を含めた個人情報も交えて、充分な情報開示と公開討論(競合相手との政策論争)を経て直接選挙で選ばれた米国大統領などと違い、日本の内閣総理大臣はあくまでその時々の与党の代表者に過ぎないのですから、少なくとも与党としての政党内での充分な議論と意思統一の事跡は残されていないとなりません。政治主導の名のもとに首相や官邸の独走が許されるのであれば、この国の行く末は大変恐ろしいと思わざるを得ません。

■資本市場とは何か

 企業にとって資金調達の手法はいくつもありますが、株式(資本)によるもの、社債によるもの、そして銀行融資によるものとこれら債務にはすべて返済順位が法律で決められています。資本の部にしても、優先株式、普通株式、劣後株式とルールがあり、これらが守られてこそ民主主義下の資本主義が成り立ち、資本市場が世界の投資家にとって投資対象となり得ます。もしある時、そのルールが国家権力により「あの話はなかった事にする」と突然変更される市場だとしたら、そこに投資することはどれだけのリスクを抱えるのでしょうか? 少なくともそういう海外市場があったとすれば、日本の機関投資家はそこへの投資は躊躇するはずです。私が投資判断をする立場なら当然にして中止します。

■銀行株への投資は安全か

 今回示された「原発の停止要請」や「東電への債権放棄」というのは、今後多くの公共性を有する企業の経営方針やそれらへの債権・債務の関係にも適用される可能性を示唆しています。少なくとも現時点の根拠開示ではそう受け止めざるを得ません。例えば首都圏で大きなダメージが発生する事態が生じた場合、例えばJR東日本(9020)や私鉄各線はどうなるのでしょうか?通信回線の場合はどうなるでしょうか?そうしたことまで考えると、公共性を有する企業へ融資を行っている銀行の株式価値評価は、それらがすべて突然にして不良債権化するリスクを加味して計算せざるを得なくなります。すなわちそれは「不可能」ということです。今の日本の状況を理解しない訳ではもちろんありません。しかし日本一国の問題で片づく話ではなく、国際社会に向けた情報開示、アカウンタビリティという面も充分に考慮された対応をしないと、この国の資本市場は鎖国したも同然になります。

■東京電力は上場している意義がない

 正直、ここまで国が関与する企業となってしまった今、東京電力が上場を現状のままで続けることの意義はあまりに希薄だと思います。恐らく社債発行も不可能な状況になると思われます。政治的に公的年金基金などで買うように要請がなされれば別ですが、通常の投資判断ではクレジット的にすでに難しいでしょうし、恐らく調達サイドとしてもコスト的に見合わないだろうと思います。やはりJALがそうであったように、米国ではあのゼネラル・モーターズ(GM)がそうであったように、やはり“上場株式会社”としてのあるべき行程を進み、早く再復活をする道を探るべきなのだと思います。それが強いては日本の資本市場のシステムを世界の投資家が信頼する流れへと続くものと確信しています。政治介入のし過ぎは、日本の資本市場のレピュテーションを引き下げるだけであり、それらはすべて回りまわって国民にコストとして跳ね返るはずです。

 今週も頑張りましょう。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪トヨタ自動車、2011年3月期の連結決算を市場が好感≫

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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