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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年5月9日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

5月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(5/6終値)
前週末比
(4/28比)
日経平均 9,859.20 +9.46 +0.10%
NYダウ 12,638.74 -171.80 -1.34%
金利・為替 週末終値
(5/6終値)
前週末比
(4/28比)
長期金利 1.140% -0.060%
ドル/円 80.63  
ユーロ/円 115.45  

※ 米国市場は2011年4月29日との比較

諸々事情が変化、要注意!

前週の総括

■バリュエーション急騰

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。5月第1週はゴールデン・ウィークの谷間にあたり日本国内では実質2営業日しかありませんが、4月最終週(25日〜28日)から始まった2011年3月期決算発表の本格化を受けて、いったんは市場に楽観論が拡がる展開となりました。ゴールデン・ウィーク前に決算を発表した主力企業のそれは、市場が身構えていた程には震災によるマイナス影響が反映されておらず、むしろ過度な悲観に傾くことへの警戒感を長期の連休前に想起させ、ポジションをニュートラルに戻す流れが「買い戻し」に繋がったという印象を受けています。その結果、連休最初の谷間の営業日となった5月2日には、震災後初めて日経平均株価が10,004円とわずかながら大台を回復させる場面も見せました。しかしながらバリュエーションで見ると、同日の日経平均株価の株価収益率(予想:連結ベース)で15.81倍と3月の月中平均の14.95倍、4月の月中平均の14.28倍をともに大きく上回る状況となっています。ちなみに今年の2月中旬以降、米国景気の回復の流れに乗って市場にやや強気なトーンが漂っていた頃の水準が16倍強ですから、この15.81倍という数値が震災後にもかかわらず、かなり楽観的なバリュエーション水準に戻していることを示していると言えます。

■米国景気の回復楽観論がいったんは消えかけたが…

 先週注目の経済統計のひとつは、週末発表の米国雇用統計でした。リーマン・ショック後の高値を更新し続け、5月2日には2008年5月以来の水準となる12,876ドルまで回復したNYダウに冷や水を浴びせたひとつの要因が、新規失業保険申請件数が市場予想を上回る増加など雇用環境の悪化への不安でしたから、先週末発表の4月の雇用統計には弥が上にも注目が集まりました。結果は、非農業部門の雇用者数の増加が市場予想の18万5,000人を大きく上回る24万4,000人となり、市場に安堵感が戻りました。ただし失業率に関しては前月の8.8%から9%へ再び上昇しているのですべてにわたって青信号という訳ではありません。とはいえ、市場の懸念が払拭されたことは確かです。

■原油価格急騰から急落へ

 このところ激しい値動きを見せているものの代表格といえるのは原油価格です。2日に113.52ドルを付けたWTI原油先物の週末終値は97.18ドル。これは週間ベースで約2年ぶりとなる大幅安で、4月29日につけた2008年以来の高値113.93ドルから約15%の下落となっています。中東情勢の緊迫化などを背景にこのところ値を上げてきた原油価格ですが、国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン氏の死亡をきっかけに急激に反転した形に成っています。これを受けて商品相場全般に調整が強まり、ロイター/ジェフリーズCRB指数なども大きく下落、一部には商品相場のバブルが弾けたとの声も聞かれています。


(出典:Bloomberg.)

<ロイター/ジェフリーズCRB指数の2009年初めからの推移です。----------- 2010年5月以降加速して上昇してきた同指数ですが、一気に崩落した感じが見て取れます。>

■ユーロが対ドルで過去1年で最大の下げ

 東日本大震災以降、ギリシャ問題をはじめとした欧州信用リスク問題について日本市場ではあまり注目材料として取り上げられない感じもあるため、あえてこのメルマガでは継続して警鐘を鳴らしてきました。そんな中、先週はついにギリシャがユーロ圏から脱退するという観測が拡がったことをきっかけに、ユーロが対ドルで過去1年間において最大の下げを演じています。対円でも、ゴールデン・ウィーク前の4月28日には121.04円を付けていたのが先週末終値は115.45円と大きく円高に振れています。一様に当局筋がその内容を否定しているので目先の脱退自体はないと思いますが、その真偽は闇の中(火のないところに煙は立ちません)であり、少なくともギリシャの債務再編など状況は風雲急を告げているということだと思われます。PIIGS諸国などがユーロ圏脱退ドミノを始める可能性は常に考えておくべきリスクです。


(出典:Bloomberg.)

<ユーロの対円相場のこの1年間です。----------- かなり値動きの荒い動きとなっています。>

今週のポイント

■多くの面で楽観論には早過ぎる

 前述の通り、先週はゴールデン・ウィークという特殊要因を挟んだ需給関係の中で、国内市場はむしろ慎重論を諌めるような展開となりましたが、連休明け後の市場は決算発表の第2ラウンドを迎えながら、多くの環境変化を織り込んでいく上値の重い展開になると予想しています。基本的に私は引き続き慎重論(弱気)ですので、2日に日経平均株価が、連休の谷間とはいえ、10,000円の大台を超えたことにかなりの意外感を持って見ていました。

 決算発表にあわせて来期予想ベースの株価収益率(PER)は徐々に上昇(利益水準は下方修正)しており、同水準が現状発表分まですでに15.81倍にまで高まったことがその何よりの根拠です。今週から発表が行われる企業収益で、2012年3月期が現在の予想に織り込まれているものよりも上方修正となるものは残念ながら少ないはずです。ともすれば、ガイダンスを発表できない企業もあるはずです。これは最近のリビジョン・インデックス(上方修正銘柄の比率から下方修正銘柄の比率を引いた値)の動きからも明らかです。要因としては震災のダメージ(直接的な被害及びサプライチェーンの寸断による影響)があり、そして円高があります。その結果、株価が現状と同水準に留まったとしても、自動的に株価収益率は上昇するのが理屈であり「日本株の割安・出遅れ感」を主たる理由として向かっていた投資資金があるとすれば、当然にしてブレーキが掛かるはずです。

■原発問題は慎重に議論をして欲しい課題

 政府が突然発表した中部電力(9502)の浜岡原子力発電所の全面停止要請については正直驚きを持って聞いています。中部電力も7日に臨時取締役会を開催してその要請を受けるかどうかについて議論をしたようですが、あまりに唐突であり、法的根拠も何もないがために現時点(7日夕刻)では対応を決めかね、取締役会としても継続審議としたようです。独占状態のインフラ企業の一つとはいえ、あくまでも民間企業ですからこれは当然です。

 東京電力(9501)の福島原子力発電所の現状を鑑みれば、また浜岡原子力発電所の地形的な状況をも踏まえると、ある意味ではこの原子炉を止めるというのは当然の流れと見るべきなのかも知れませんが、3月11日の震災前までは国を挙げて推進していた原子力発電の流れを唐突に方針転換する意思決定を、首相の独自判断で充分な審議・議論もなく行われている印象が拭えず、多くの経済的なインパクトなどを考えるともう少し政府として慎重な議論をオープンな場で行って欲しかったと思われてなりません。むしろ、このタイミングで性急に原子炉を停止しないとならない何かを政府筋だけが掴んでいるのか、あるいは現政権特有の政治的なパフォーマンスに過ぎないのかも知れないと訝しんでしまいます。

 前回も触れましたが、3月11日以前の段階ですでに渦中のギリシャの状況に比べても、公的債務の対GDP比率など世界中で頭抜けて惨憺たる状況になっていた日本の財政状況に、今回とどめを刺すかのように震災復興費用の負担が発生してしまったことは衆目の一致するところです。まさに我が国の財政破綻は“今、そこにある危機”そのものと言えます。「国内で95%は国債を保有しているから大丈夫」などという楽観的なシナリオは、団塊世代などの預金が消費に回り始めた段階ですぐに破綻するというのも残念ながら受け入れるべき事実です。

 しかし未曾有の被害を齎した今回の震災復興を、国として行うというのは当然であり、また状況によってはそれが経済全体にプラスの効果をもたらすことができるかも知れないのも事実です。しかし、議論をきちんと整理して行わなければ、単なる“ポピュリズムのばら撒き財政”となることも否定できず、その場合は単なる社会インフラのコスト増として日本経済の全体の成長力を阻害する要因にもなりかねません。それは断固として阻止せねばならない事態です。民主党政権誕生後、「できる」と言っていたマニフェストの内容の多くが、店晒しになったままの中で、安易な口約束は将来に禍根を残すだけなのですから。原発補償と東京電力の問題も含めて、可及的速やかに、されど極めて慎重にオープンな議論をして欲しいものだと思います。電力料金の値上げにしても、増税にしても、安易に背負い込める程にこの国の国庫にお金はもうありません。

■ソニーの情報漏えい問題は何とも痛い

 もうひとつの悩ましい問題がソニー(6758)の情報漏えいの問題です。もちろん個社としての同社のセキュリティ対策の甘さや、レピュテーション低下などを含めた損益ダメージの議論もしなければなりませんが、一番危惧されるのは「セキュリティ過敏症」が社会に起こることです。ネット社会が当然にして抱えている問題として、前向きな姿勢の中でこの問題が処理されていけば幸いですが、弾みがつきかけていたクラウド化の流れの阻害要因とも成りかねないと考えています。

 今回の震災で流されてしまった住民基本台帳などのデータが、もしクラウド上にストレージされていたら、仮説の行政事務所が立ち上がった段階で全てが元に戻ったはずです。当然それは民間企業のそれにも、個人の思い出の“デジカメ写真”のデータなどにも同様なことが言えます。地元の金融機関の口座情報などもそうかも知れません。

 しかし、これら全てに共通なのが「個人情報」というキーワードです。クラウドという考え方は特定のデータセンターの場所に依存しないことが大きな魅力の一つであり、それがゆえに特定の地域なり、データセンターが被害を受けてもデータを保持できるということになるのですが、物理的にインターネットに繋がっている以上、意図的な故意のハッキングによる情報漏えいリスクを、完全には排除できないということも事実だということを明確にしてくれました。

 ファイアーウォールの世界最大手であるチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ(CHKP)を取材した折、「どんなに堅牢な金庫を作っても、絶対に破られないことはない。常に悪意を持った金庫破りの先手を打つことが鍵」という話を聞きました。まさにその話を地で行ったような今回の事件ですが、この問題の影響や推移についても、もうしばらくは慎重なスタンスで見極めて行きたいと思っています。

 今週も頑張りましょう。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪ユーロが対ドルで過去1年で最大の下げ≫

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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