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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年1月31日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

1月第5週

マーケット概況

株式 週末終値
(1/28終値)
前週末比
(1/21比)
日経平均 10,360.34 +85.82 +0.84%
NYダウ 11,823.70 -48.14 -0.41%
金利・為替 週末終値
(1/28終値)
前週末比
(1/21比)
長期金利 1.215% +0.010%
ドル/円 82.13  
ユーロ/円 111.78  

目先エジプト情勢に振り回される可能性大

前週の総括

■NYダウは12,000ドルを一時回復

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。引け値でこそ記録されていませんが、NYダウが2008年6月以来となる12,000ドルを26日水曜日にザラバで回復し、28日の寄り付き直後までその前後水準を維持しました。26日に行われた今後1年間の米国の施政方針を表明するオバマ大統領の一般教書演説は技術革新やインフラ整備など経済成長と雇用創出の促進に取り組んでいく考えを強調する一方で、より緊縮的な財政政策に踏み切ることもあわせて表明した市場に好感されやすいバランスのとれたものでした。前回ご案内したゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフ・イメルト会長兼最高経営責任者(CEO)を雇用競争力会議の議長に起用するなどの流れと合わせ、これらは昨年の米国中間選挙での与党民主党敗北が上手く米国経済の再生に生かされることの証左でもあり、これらを米国株式市場も好感している様子が窺えます。

■経済統計も好調さを取り戻している

 実際、米商務省が28日発表した2010年10〜12月期の米実質国内総生産(GDP、速報値、季節調整済み)は個人消費や輸出が好調で前期に比べて年率換算で3.2%増加となりました。これは6四半期連続のプラスということでもあり、10年1〜3月期以来の高成長ということも加わり、少なくとも市場が予想しているよりは好調なデータと言えます。また26日発表された2010年12月の新築住宅販売件数も季節調整済みの年率換算で32万9,000戸となり、前月の改定値に比べて17.5%も増加、これは市場予測平均の30万戸程度をも上回るなど、このところ米国の経済指標には景気回復が着実なものとなりつつあることが窺えるものが増えてきたように思われます。今週発表になる雇用統計が同様に確りしたものになれば、市場はより楽観的な見通しを強めて来るかも知れませんので要注目です。


(出典:Bloomberg.)

<NYダウのこの一週間の動きです。----------- 12,000ドルの節目で揉み合っている内に、エジプト情勢の市場の懸念材料として浮上してしまいました。>

■日本国債格下げの影響は軽微

 一方、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が27日に日本の長期国債の格付けを「AA(ダブルA)」から「AA−(ダブルAマイナス)」に1段階引き下げました。これは2002年4月以来、8年9カ月ぶりのことで同社は「財政赤字が今後数年にわたって高止まりする」ことを理由に挙げています。これにより日本国債の信用格付けはPIIGS問題として扱われる5カ国との比較でいえば、少なくとも4カ国(イタリア「A+」、アイルランド「A」、ポルトガル「A−」そしてギリシャ「BB+」)よりは上位ですが、スペイン(「AA」)よりは信用力が低いとみなされたことになります。すなわち財政状況の信用問題に揺れる国々とほぼ同類という扱いになったということです。信認が揺らいでいると言われるドルを支える米国では、大統領の一般教書演説の中でも緊縮的な財政政策により財政状況を改善していく危機感が謳われましたが、その米国の長期債務格付けは実際最上位である「AAA(トリプルA)」です。なかには「格付け会社が米国企業だから当然だ」とまで言い切る論法も散見されますが、英国、ドイツ、フランスも揃って最上位の「AAA」で、日本だけがその3段階も格下ということも為替市場を見ていく上でも注視すべき真実かと思われます。巷でよく言われるように「安全通貨として円が買われた」という講釈がこの先も本当に通用するのかということをいつも疑問に思っています。

■問題は認識不足

 週末28日、ダボスで行われた世界経済フォーラムではガイトナー米財務長官が日本の国債格下げ問題に触れ、その財政状況について「公的債務は確かに多いが、日本は貯蓄率の高い経済。主要な問題は将来の成長をどう確保するかだ」と語り、日本の状況に一定以上の理解を示してくれました。その発行残高の95%を現状は国内で消化しているということがその背景にありますが、そうした他国の要人発言がある一方で、国債の格下げに対する首相への質問で「そういうことに疎い」などと、確かに不意を突かれたのかも知れませんが、不用意な発言をされてしまう状況は極めて資本市場参加者としては憂慮すべき状況と言わざるを得ません。首相就任の前は財務相なのですから、市場が何にどう反応するかなど、脊髄反射のように体に刷り込んで欲しいものです。つまり一番の問題の根源はこうした認識不足にあるということだと思います。

■第177回通常国会が始まったが…

 24日より第177回通常国会が始まりましたが、すでに予想されたように冒頭から混乱の様相を呈していることは事実です。前述のガイトナー財務長官の指摘を引用するまでもなく、問題の本質は日本経済の成長を促すことにより歳入を増やして公的債務を減らすことだと思いますが、バラまきと批判される無駄の削減(歳出の減少)を議論することなく、消費税増税議論に焦点を意図的に移そうかとしてしまっていることに大きな問題を感じます。せっかくやや自信を取り戻しつつあるかに見える株式市場にとって、必要なことは国会の空転や政局議論ではなく、環太平洋連携協定(TPP)問題なども含めて、すべての政治家が票田の目先の意向におもねることなく「いかにこの国の将来の成長が描けるようになるか」ということに尽きると思われるからです。


(出典:Bloomberg.)

<日経平均株価のこの1年間です。----------- 10,500円を超えてくると心理的にもやや重さを感じるところです。もう少し後押しする好材料が出ないと上昇はまだ厳しいかも知れません。>

今週のポイント

■ソニーの新しい『PSP®』発表される!

 スマートフォンやタブレットPCの登場で活気づくモバイルの世界ですが、その主役は『iPhone』や『iPad』を開発したアップル(AAPL)であり、『Android OS』を作ったGoogle(GOOG)社であり、全て米国企業と日本人としてやや寂しい想いを続けていた世界ですが、やはりソニー(6758)が今後とても面白くなりそうな発表をしてくれました。

 28日の発表自体は子会社である株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)によるものですが、究極のポータブルエンタテインメント体験を提供する次世代携帯型エンタテインメントシステムとしてコードネーム『NGP』なる新型の『PSP』の発表がありました。発売は2011年末になる予定とのことです。ポイントは多々ありますが、最大のものはWi-Fi方式に加えて新たに3Gネットワークへのアクセスにも対応したことです。じつは「新しいPSP」と書きましたが、同社のプレス・リリースにはそうした表現は使われていません。「『PSP』および『PS3®』プラットフォーム上で実現してきた最先端のエンタテインメント体験をさらに進化させ、高品質なゲームの世界を現実に取り込みつつ、現実の体験と連動するような革新的な遊びを可能にします」とは書かれています。すなわち「次世代携帯型ゲーム機」とは一言も書かれていません。「次世代携帯型エンタテインメントシステム」と書いてある、ここが同社の本心が見える重要なポイントだと思います。

 確かに『PSP』は携帯型ゲーム機としてデビューしましたが、Wi-Fi方式によるインターネットへの接続や、その後に登場したGPSアダプターやワンセグチューナーなどにより、単なるゲーム機とは違った発展を遂げています。事実、私の高校生の息子の例を引き合いに出すまでもなく、電車の中や街角でゲーム以外の利用方法で『PSP』を使っている人を始終見かけます。この点において、常に比較対象となる任天堂の『DS系デバイス』とは今後さらに微妙に住む世界が違ってくるのかも知れません。すでに利用世代のボリュームゾーンはかなり異なっているのですから。

■『Android』向け『PlayStation®Suite』

 あわせて同社は現在爆発的に普及し始めている『Android OS』搭載携帯型端末(つまり 『Xperia™』や『GALAXY』、あるいは『IS03』などのスマートフォン)向けに、プレイステーションの世界を提供する『PlayStation Suite(プレイステーション スイート、PS Suite)を発表しました。同社プレス・リリースを引用すれば「目まぐるしく進化・多様化するモバイル環境の中で、携帯電話やスマートフォン、タブレットPCといった様々な携帯型端末上でカジュアルにゲームを楽しむユーザーの皆様が加速度的に増加」とあり、まずはプレイステーション系のゲームから配信が始まるようです。元々は『iPhone』や『iPad』により創出された市場ですが、最近の『Android OS』搭載携帯型端末の拡がりは爆発的なものがあります。それらがいかに企業収益を後押ししているかは、最近の新聞報道などでもご承知の通りです。しかし、『PlayStation Suite』から配信されるのはずっとゲームだけなのでしょうか?

■新たな形態(スタイル)のデバイスとなるかも知れない

 タッチパネルにすべてを委ねるスマートフォンやタブレットPCが爆発的に普及する一方で、ゲームのコントローラーに由来する操作機能を持った携帯端末というのは極めて面白い立ち位置になると思います。そしてこのコンテンツを配信する『PlayStation Suite』を利用すれば、物理的に考えても、当然のことながら配信可能なコンテンツはゲームに限りません。映画や音楽、何でも可能なはずです。また『NGP』には同社の表現するところの「究極の没入感」を味わうために、位置情報の為のGPSに加え、前面と背面にそれぞれカメラを搭載するほか、ジャイロ(※)、加速度、電子コンパスなどありとあらゆるセンサーが内蔵されているようです。ちょっと考えただけでもワクワクするような使い勝手が想像できませんか? そしてこうしたものに必要不可欠なものと言えば、組み立ては人件費の安い国に流れるとは思いますが、まず多くの部分でハイエンドの電子部品であることだけは確かです。それは日本の得意とするところであり、裾野は想像する以上に拡がるかも知れません。
※ジャイロ…「ジャイロスコープ」とも呼ぶ。物体の角度や角速度を検出する計測器。カーナビや自動運転システムなどで用いられている。

■突然のように拡がった暗雲はチュニジアからエジプトへ

 日本の国債格下げも、国会のごたごたも、現状の経験則からいえば市場は見て見ぬ振りを続けてくれると思われます。ネガティブトーンで言い出したら、正直、限りがありません。また利上げの可能性とその影響に怯える中国市場も2日から8日までは春節(旧正月)により休場となるため、市場を閑散とさせる要因にはなると思いますが、逆にネガティブな材料を持ちだすこともないだろうと思われます。

 しかし、チュニジアで昨年末から始まった一連の暴動はついにエジプトにまで飛び火し、再び中東の安定が地政学的リスクとして話題を集めています。エジプト情勢の緊迫化に伴う中東地域の不安定化への懸念が問題なのですが、実際にスエズ運河が閉鎖されるようなことが現実のものとなると原油価格の急騰など不測の事態へと繋がりかねません。地図で確認されることをお勧めしますが、チュニジアの位置とエジプトの位置、中東だけでなく、地中海を挟んで欧州にも波及し易い位置関係の暗雲です。単純に「『Facebook』などのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)がデモ参加の呼び掛けに利用された」というような話題だけで片付いてくれればいいのですが、30日(日曜日)午前現在、簡単には終息しそうにはない状況にあるようです。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪NYダウ、2008年6月以来となる12,000ドルを回復!≫

■ダウ工業株30種平均株価(NYダウ)(円ベース)の連動を目指す!

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ダウ工業株30種平均株価(NYダウ)に採用されている米国の主要な株式30銘柄(採用予定の銘柄を含む)への投資を行い、ダウ工業株30種平均株価(NYダウ)(円ベース)と連動する投資成果を目指して運用を行う。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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