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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年12月27日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

12月第4週

マーケット概況

株式 週末終値
(12/24終値)
前週末比
(12/17比)
日経平均 10,279.19 -24.64 -0.24%
NYダウ 11,573.49 +81.58 +0.71%
金利・為替 週末終値
(12/24終値)
前週末比
(12/17比)
長期金利 1.150% -0.045%
ドル/円 82.90  
ユーロ/円 108.78  

2011年度予算案を市場はいつまで無視できるのか?

前週の総括

■国内投資家不在のまま2010年は暮れる

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価及び東証TOPIXは前週比わずかに下落、一方クリスマス休暇で市場休場となった米国市場は23日で取引終了となりましたが、対前週末比でNYダウが+0.71%、S&P500種が+1.03%そしてナスダック総合指数が+0.86%の上昇となって終わりました。単純にいえば米国市場は上昇するものの、日本市場はやや下落したというだけのことに見えますが、売買代金までを見ると日本市場の構造的な問題が年末この段階に来てもまだ続いていたことは明らかです。

 すなわち外国人投資家がまだ市場に参加していた12月22日(水)の売買代金は1兆3,000億円を超えたものの、不在となった翌営業日の24日(金)にはわずか8,824億円に落ち込んでしまったということです。これは今年に入って5番目に低い売買代金の水準です。今年に入って売買代金が1兆円を下回った日は15営業日もありますが、1月4日(7,079億円)、2月16日(8,415億円)、8月9日(8,758億円)、8月23日(8,811億円)に次ぐ水準ということで、いかに現在の日本市場が外国人投資家に左右されているかということが、この年の瀬にあらためて浮き彫りになりました。恐らく、このまま年内の取引が大きく膨らむことは考え難いだろうと思われます。

 もちろん、日本国内の投資家もクリスマス・イブが休日の狭間の金曜日になったことで休暇を取っていたとも言えると思いますが、この売買代金の低さはそれを踏まえても異常です。ちなみにリーマンショックの痛手がかなりまだ尾を引いていた2009年でさえ1年を通じて売買代金が1兆円を下回った日は6営業日、その内の4営業日は何と12月21日、25日、28日、30日と師走の後半から年末に掛けて集中していました。それに比べてまだ年内に4営業日も取引日を残すこの段階ですでに15営業日も1兆円割れとなる2010年の閑散さがいかに突出したものあるかということです。年間を通じた売買代金の平均値はその2009年が1兆4,073億円となる一方で、12月24日現在2010年のそれは約5%減少の1兆3,385億円に現状留まります。今週の残る4営業日がこの平均を上回る活況を呈したとしても、通年の売買代金の平均が2009年の平均値を上回ることは恐らく不可能だろうと思われます。


(出典:Bloomberg.)

<日経平均株価のこの1年間のローソク足チャートです。----------- よく見て頂くと解りますが、前日の市場動向に対して翌日が連動していない“窓あき”となっていることが異例に多いことが解ります。これが今年の大きな課題でした。>

■改革不在の予算案決定

 この1年間を通じて市場の見通しに強気なれたか、なれなかったかのポイントはいくつかありましたが、最後まで改善されることなくマイナス要因として足を引っ張り続けたものの代表が国内政治の状況でした。米国景気についても、南欧の財政危機についても、あるいは中国の金融引き締めなどについても、折に触れ交互に、または同時に市場の話題となりましたが、そのどれもが一方的にネガティブなマイナス要因となり続けたことはなく、悪い時もあれば良い時もあったにもかかわらず、国内政治要因だけは常にマイナス要因となり続けました。現時点において先々に強気な見通しを示している市場関係者と私のように引き続き弱気のままの市場関係者の大きな発想の違いは、この国内政治問題を悪材料として見続けているか、あるいは「市場はすでに状況が最悪であることを織り込み済み」と捉えているかの違いによるところが大きいと思われます。

■最悪の2011年度予算案

 そんな中、政府は24日の臨時閣議で2011年度予算案を決定しました。内容を見ると正直唖然とするようなものです。一般会計の総額は92兆4,116億円、歳入では税収が3兆5,310億円増の40兆9,270億円に回復しましたが、新規国債の発行額は44兆2,980億円と高止まりしたままです。2年続けて当初予算ベースで国債が税収を上回る異例の状況で国債依存度、つまり後世につけを残す借金依存の割合は48%と高水準を維持したままです。収入を上回る生活を借金で支えるようなまるで、“雪だるま式に借金している人と同じ発想”ということです。さらに悪いことに、その後世につけを残す借金依存の結果として何を政府が志向しているのかと言えば、12月25日付の日本経済新聞朝刊の社説「改革不在の予算案では日本はもたない」でも厳しく指摘されている社会保障関係です。国の政策経費の実に53%にまで膨らんだこれら社会保障経費にメスを入れないままに放置する政権の姿勢は、年金や医療、介護の給付を受ける今の人たちに痛みを感じさせないことを優先し、政権の延命だけをひたすら考えているだけの結果とも見てとれます。そのつけは今まだ投票権を持たないような後世に回ります。後世に残す借金で誰に良い顔をして目先の一票にしがみつこうというのでしょうか?

 また前回も申し上げましたが、このままの借金体質の先送り方式で国家財政運営が続くとすると、日本が財政問題から"次の南欧は日本"と国際資本市場に受け取られる可能性を否定しきれなくなります。もし、本当にそうなってしまって市場が動き出した時には、その速さはご承知の通り、すでにもう何をしても「Too late」なのです。悲観論者が「悲観的過ぎるよ」と非難されている内に手を打たないとならないのです。

■米国住宅市場にはやや回復の兆し

 米商務省が23日発表した11月の新築一戸建て住宅販売(季節調整済み、年率換算)は前月比5.5%増の29万戸と市場予想の30万戸をわずかに下回りましたが、前月比に比べると+5.5%と2カ月ぶりに前月比で上昇しました。 また全米不動産協会(NAR)が22日発表した11月の米中古住宅販売件数もやはり2カ月ぶりに前月比プラス5.6%と増加となりました。市場予想の平均値は472万戸だったため、こちらも季節調整済みの年率換算で468万戸では市場予想をわずかに下回った結果となっていますが、2カ月連続で続いた対前月比での減少傾向に歯止めがひとまず掛かったことはポジティブに受け止められると思われます。

 また11月の中古住宅価格は17万600ドルと、8月以来の上昇となりこれもひとつのポジティブ要因です。11月の中古住宅在庫は4.0%減少し371万戸、販売に対する在庫比率は9.5カ月と前月の10.5カ月から1カ月減少しています。

 現時点で市場が認識している内容は株価上昇などの資産効果で米国個人消費に改善の兆しはあるものの、引き続き労働市場や住宅市場に不安材料を抱えているのでまだ景気回復は安心できないというものですが、その内のひとつの住宅市場にやや光明が見えてきたのは好材料と言えます。

■ソニーが東芝から長崎半導体工場を買い戻した

 ソニー(6758)が長崎県にある東芝(6502)の半導体工場を買い戻すことを発表しました。セルサイドのアナリストの多くから「ポジティブ」という評価レポートが相次いでリリースされていますが、2008年にいったんはソニーがリストラの一環で東芝に製造設備を売却していた案件だけに、この買い戻しのインパクトはそれなりに大きいものと判断することができます。同工場は元々ソニーがPS3用に開発した「セル・エンジン」と呼ばれるグリッドコンピューティング(※)に対応した画期的な半導体の製造工場として誕生したものでした。それを今回、デジタルカメラなどに不可欠な画像センサーの製造ラインとして取得し、生産能力を一挙に2倍にする計画です。ソニーが9月に発表した投資計画では400億円の設備投資で月産6,500枚(300mmウエハ)の能力拡大ということでしたがそれでも需要に比べて生産能力が全く追いつかないという現状の中で、この案件がいかに効率的なものであるかが読み取れます。実はソニーが2008年にこの生産ラインを東芝に売却した時の価格は900億円です。これを500億円で買い戻し、さらに生産能力も飛躍的に高まるとしたら、久し振りに強かなソニーを見た思いがします。
※グリッドコンピューティング…ネットワークを介して複数のコンピュータを結ぶことで仮想的に高性能コンピュータをつくり、利用者はそこから必要なだけ処理能力や記憶容量を取り出して使うシステム。


(出典:Bloomberg.)

<円の対ユーロの一年間の動きです。----------- 週末に再び108円台にまで突入して来ました。ボラティリティの低下とともに、年末年始の株式市場への影響が気になります。>

今週のポイント

■2010年最後の1週間

 早いもので2010年も最後の1週間となります。今年の株式市場はもう少し良いものになるかと思っておりましたが、前述のように日本市場での国内投資家のプレゼンスは日毎に低下するという印象で、閑散な市場のままに年の瀬を迎えようとしています。

 今年の一つの問題点は、そうした中において国内投資家から見た日本市場のパフォーマンスと外国人投資家から見たそれがあまりに違うということです。その大きな要因は為替が円高に振れたことにありますが、円ベースで見た通常の日経平均株価指数の年間パフォーマンスは週末24日現在マイナスの△2.53%である一方で、ドルベースで見た価格騰落率は+8.64%とプラスと大きく乖離しています。たとえ同じ銘柄を見ていたとしても、利益が乗った状態に見えるのと、まだまだ評価損を抱えていると見えるのとでは、おのずとその次の投資判断が変わってきます。

 今回は為替による影響が大ということになると、外国人投資家から見た含み益は為替が円安に振れることで減ってしまうネガティブ要因ということになります。一方、円ベースで通常通りに投資判断をする国内の投資家にとって、指数の構成状況から見ても、円安により企業収益が恩恵を受ける日経平均株価などは円安がポジティブ要因となります。このように立場によってひとつの要因がポジティブにもネガティブにもとれるという特殊な状況で最後の1週間を迎えました。そして残念ながら、市場のプレゼンスは外国人投資家の方が高い状況ということが目下のところ明らかになっています。

■1,400兆円がいつまで財政赤字を支え、円高論と押し通せるか

 来年の注目材料のひとつはやはり為替動向になると思われます。為替動向が投資家によってポジティブとネガティブの表裏一体の関係である以上、その主導権を握っている側にとってどちらがよりポジティブに見えるかが勝負だと思われますが、為替動向については極めて不安定な状況となる要素を抱えて年の瀬を迎えようとしています。

 2010年1年間の為替市場の動向は、日本の国内事情というよりは、米国経済やその財政事情、あるいはギリシャ問題に始まった南欧諸国の財政事情などに左右されるユーロの事情で、その交換比率が"他力本願的に決まってきた"という印象があります。日本の財政事情が決して褒められた状況でないにもかかわらず、こうした状況下で事が運んだ理由のメインポイントは、日本の個人が抱える1,400兆円と言われる金融資産です。

 一方、日本の財政事情が改善する状況に向かっているかと言えば、少なくとも現時点では全く向かっていないと言えます。少なくとも24日に発表された2011年度予算案を見る限りにおいて、日本の財政事情は改善するどころか「霞が関埋蔵金」と呼ばれるわずかなヘソクリまでも食いつくして、さらに後世につけを回す形のばら撒き財政から脱却しようとする片鱗も見えません。鳴り物入りで大騒ぎした行政刷新会議の「事業仕分け」、メディア受けを狙った単なる人気稼ぎとしか思えないその成果はわずか3,000億円に過ぎません。これでは農家の個別所得補償制度に回される8,000億円の半分さえも調達できないのです。

 そしてリーマンショック後の異例の暫定的な大盤振る舞いと思われた国債の大量発行はなおも同水準で続きます。恐らくこのままでは来年1月に召集される通常国会での審議は難航を極めることは明らかであり、かつて米国であった政府予算が決まらずに行政サービスさえもおかしくなるというような事態と同じ状況が起こり得ないとも言えません。民主党政権は数合わせのための社民党との再連携や「たちあがれ日本」などとの連携を模索しているようですが、そうこうしている内に格付会社が日本の財政事情に駄目出しをするかも知れません。

 現時点、それでも日本は大丈夫と言い切る人たちの論拠は日本の個人金融資産1,400兆円です。それが日本政府の借金を賄うというのです。しかし日本の格付けはすでに現在でも決して高くはないという現実は直視しておくべきだと思います。有力格付け機関である米Moody’sのそれによれば、PIIGSと呼ばれる南欧5カ国の中のスペインよりも日本の格付けは1段階低く、すでにその下のイタリアと同水準です。同じく米S&Pの格付けでは、現時点がスペインと同じ格付けで両国ともに「弱含み」のステータス、格下げになればやはりイタリアと同列になります。つまり日本もPIIGSと一緒だということです。

 もし、国内個人金融資産1,400兆円が違う動きを見せ始めた時、今の「日本は大丈夫」と言う論拠は脆くも崩れます。その前に、政治がこの問題に道筋をつけないといけないのですが、残念ながら現政権の現状にはそれが見えません。個人金融資産の1,400兆円は60歳以上の世帯に集中している現実を考えれば、これはこの先その世代が取り崩して消費に回ることで自然減となること必定です。時間に余裕はない、それを市場が気づく前に対策が打たれるかが来年の大きな注目点になるように思います。

 今年1年も大変お世話になりました。来年が素晴らしい1年となることを念じて止みません。良い新年をお迎えください。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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