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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年12月13日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

12月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(12/10終値)
前週末比
(12/3比)
日経平均 10,211.95 +33.63 +0.33%
NYダウ 11,410.32 +28.23 +0.25%
金利・為替 週末終値
(12/10終値)
前週末比
(12/3比)
長期金利 1.185% -0.020%
ドル/円 83.95  
ユーロ/円 111.02  

減税継続の米国、バラまき続ける日本

前週の総括

■ブッシュ減税継続を好感した市場

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価もNYダウも一週間の変化率という意味では小幅なものとなっていますが、大きなイベントが米国でありました。先の米国中間選挙でオバマ民主党政権が共和党に大敗を喫するという結果になったのはご承知の通りですが、これにより最も注目され市場が期待していたのがブッシュ政権時代に始まり、今年末を持って期限を迎えるいわゆる「ブッシュ減税」が継続されるか否かでした。従来のオバマ民主党政権の立場からすれば富裕層優遇と言われた共和党政権の施策の代表であるこの減税策は、財政悪化に苦しむ米国政府にとって真っ先に取止めたい政策の一つでしたが、そうすることによる個人消費の落ち込みを市場は最も懸念していました。

 ただ中間選挙でオバマ民主党が大敗したことで、議会運営のためにも大統領は共和党に妥協せざるを得ないという見方が支配的になりました。これが中間選挙でオバマ政権が大敗したことを市場がネガティブに受け止めなかった理由のひとつですが、実際に大統領が減税を1年延長するのか、2年延長にするのか、はたまた継続しないのかということは当然最後まで確かではなく、2年間の延長が決まって市場はそれを好感して受け止めたということです。これを受けた市場は欧州危機の問題で押し返されましたが、いったんは90ドルを超える上昇を示しました。

■反対に富裕層を締め付ける日本の民主党政権

 一方、日本の政府税制調査会は9日、サラリーマンの給与所得控除の対象を年収1,500万円部分までとし、それを超える部分は対象外とする方針を固めました。米国のブッシュ減税継続を景気刺激に効果的と資本市場が評価した流れとは全く逆行するものです。

 問題点はいくつもあります。まずこの発想の基本が(健康保険や年金問題などとも根っこは一緒ですが)、「取りやすいところから取る」というものだということです。先の参議院選挙の時に間接税である消費税の増税問題はあまりに唐突に提議されたために世論の反論を買い政権基盤が揺らぎました。支持率低下に悩む菅民主党政権としては当面再提議し難いテーマとなってしまったのでしょう。ならばということで、最も取りやすい給与所得者に皺寄せして帳尻を合わせようという発想に見えます。ただ残念なことに日本の人口動態ピラミッドを見れば明らかですが、日本の労働人口、すなわち給与所得者は年々減少するということに議論の余地はなく、間接税の議論をしないで直接税の増税を続ける限り、全ての面で世代間格差は広がるばかりです。今の日本、どの世代が一番裕福かはご承知の通りです。

 日本経済の現状認識の中で景気回復のために何をしなければならないかと言えば、個人消費を停滞させずに伸ばさないとならないということがあります。なぜなら、日本のGDP(国内総生産)の60%は個人消費だからです。ただ例えば今回のこの給与所得控除の廃止により捻出される歳入は、議論百出の子ども手当などに使われます。しかし子ども手当(月額1万3,000円)を受け取った家庭の4割が、手当を子どもの将来のために貯蓄していることが7日、厚生労働省の初の調査で明らかになりました。つまり本来消費に回るはずであった資金が、子ども手当となることで貯蓄に回ってしまうということです。誤解のないように申し上げれば、子ども手当自体は少子高齢化に悩む日本にとってはまさに必要な施策です。ポイントは、その歳入確保をする方法が違うということです。現在の日本の金融資産の偏在状況を見れば、どこからそれを本来確保すべきか、すなわち、どこの消費を喚起し、どうやって世代間格差をなくすべきかということは明らかです。

 ただしそれは都市部の有権者の浮動票(サラリーマンが多い)には受けますが、当選可否に執着する議員や政党が得票に対する安心感を得られる団体、例えば環太平洋パートナーシップ協定(TPP)加入に反対するような団体とは異なります。また世代別有権者層という意味では、人口動態ピラミッドで確認できるように労働人口から外れた大票田からは反発を買う政策になるはずです。米国では富裕層優遇と言われたブッシュ減税が2年間延長されたことを景気回復に有効だとして市場は好感しました。それは富裕層の所得は消費に回るからです。米国ではGDPの70%が(日本では前述60%)は個人消費が占めると言われますが、個人消費というエンジンが動いてこそ、景気が回復し、所得が回復し、そして歳入が増えます。米国中間選挙は米国民がこれを望んだことを示し、日本政府はこれとは反対の決定をしたということです。

■幻となったSQ値、10,420.74円

 3カ月毎の先物とオプションの同時SQですが、今回はSQ清算値が当日につくことがない「幻のSQ」となりました。清算値は10,420円74銭ですが当日は高値が10,373円70銭であり、安値が10,194円27銭とかけ離れた水準となっています。ザラバ中から市場では話題になりましたが、どうやら裁定業者の一社がSQでのポジション清算に失敗したことで、取引開始以降に慌てて損失を最低限に抑えるように解消させたということのようです。日中足を見ても午前9時半以降のそれはまるで株価に蓋をされたように抑え込まれています。実はこうした「幻のSQ」となってしまった場合、それが当面の上値を抑える蓋になってしまうという経験則があります。市場の過熱感を示すテクニカル・データと合わせ、嫌なものとなってしまったのは事実です。


(出典:Bloomberg.)

<NYダウの一週間の日中足です。----------- ブッシュ減税延長が決まった朝は11,450ドルまで株価はいったん高騰しています。欧州リスクの再燃で押し戻されますが、週末には11,400ドル台を回復しています。>

■米国長期金利の高騰

 ブッシュ減税の延長が良い話ばかりではないかも知れないという点もあります。それは長期金利が週初の2.9%台から3.3%台へと急騰している点です。この解釈についてはいく通りかのことが考えられますが、ひとつには減税延長による歳入不足から米国財政赤字の改善に時間が掛かるというものです。短期金利の方は米連邦準備制度理事会(FRB)が緩和姿勢を続けているため上昇しませんが、長期金利については債券市場の需給が決めるため、先々の米国財政を気にする向きほど債券を売っているという見方ができます。

 またその一方で、減税延長による景気回復を読んでいるという前向きな見方もできます。現在、世界中が過剰流動性相場ということになりますが、景気回復による将来のインフレを見込んで長期金利が上昇しているというものです。原油をはじめとする商品市況は明らかに強含んでおり、インフレの可能性を否定できない状況にはなっています。ただ印象としては、この後者の理由によるものと考えています。


(出典:Bloomberg.)

<米国10年国債のこの一週間です。----------- ブッシュ減税延長のネガティブな側面は財政赤字の拡大懸念にあるとも言われています。10年長期金利は2.9%台から3.3%台へと上昇しています。>

今週のポイント

■クリスマス休暇突入

 先週末の午後には早いもので外資系の友人達からクリスマス・カードが届き始めました。それもいわゆるEメールによるもので、来週から2週間のクリスマス休暇となりますとの挨拶を兼ねています。日系企業で頑張る身としては、年に何度か感じる「外資系は良いなぁ」という瞬間ですが、すなわちこれが「今週から外人投資家が減る」というシグナルです。考えてみると、サンクス・ギビング(感謝祭)で休み、さらにクリスマスで休むので、随分と休みが多いなとも思われるのですが、それだけ年末の市場動向というのは、外国人投資家占有率が高くなればなるほど、それに合わせた需給関係を考慮してみていかないと錯覚を覚えることがあります。逆に彼らは、年末年始は1月1日しか休みませんので。


(作成:楽天投信投資顧問)

<日経平均株価の推移と騰落レシオです。-----------------------赤線が騰落レシオを示していますが、ご覧いただける通り、直近はかなりな過熱感を示すものとなっています。>

■テクニカルな過熱感はかなりなもの

 あまりテクニカル指標は気にしないタイプですが、直近の騰落レシオの上昇についてだけは触れておかないとなりません。2010年4月に日経平均株価が11,000円を超えて来た頃のそれよりも大幅に上回る水準にまで騰落レシオが高まっています。つまり市場にはテクニカルにかなり過熱感があるということです。「幻のSQ」と併せて、株価の上値追いがこのまま続くとはなかなか考え難い状況です。

 また週末に発表になった中国の消費者物価指数(CPI)が市場予想を大きく上回り2年4カ月ぶりの高い伸びを示したことで、準備預金率の引き上げに留まらず、中国が利上げする可能性を高めたことも株式市場にとってはネガティブな要因として働く可能性が高いと思っています。

■日本にも電子書籍の波が押し寄せるか

  12月10日(金)、ソニー(6758)とシャープ(6753)が揃って電子書籍端末の販売を開始しました。私も早速ソニーの『READER PRS-350』を購入しましたが『iPhone』も『iPad』も持つ者の実感として、これは流行りそうだと思っています。購入したのは文庫本サイズの物ですが、軽いということと、目に優しく見ていて疲れないというのがポイントです。また本に品切れがないというのも今後のことを考えると嬉しい限りです。全8冊などという連続小説を読んでいる時に途中で手元に次巻がないことほどイライラするものはありません。電子書籍にはそれがないし、次巻を鞄に入れて持ち歩くことが当然のことながら重量的な負担がありません。『iPad』を片手に持って、電車の吊り革につかまることは事実上不可能ですが、この重さなら普通にできます。むしろ片手でめくれるので便利です。

 (上記の写真は私が購入した『READER』です。私の名前を下に刻印してあるのが見えるでしょうか? それにしても、プリインストールの本が『アップルのCEO』とは、洒落が効きすぎている気がします)

 ただ残念ながらまだ購入できる書籍が限られているというのと、欲しい本を探しにくいといのが難点です。日本の場合、音楽もそうですが著作権の問題でなかなかこうしたものが上手く行かない。例えば、司馬遼太郎さんなどの小説はまだありません。一刻も早くこうしたものも電子書籍化して欲しいものです。またややコンテンツの値段が高い気がします。コンテンツの電子データだけならばもっとかなり安くできるはずです。活字離れが言われる現代ですから、こういうことこそ、文部科学省に積極的に動いて貰いたいと思うのは私だけでしょうか?本の探しやすさについては、これは早晩改修されると期待しています。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声"(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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