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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年11月29日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

11月第5週

マーケット概況

株式 週末終値
(11/26終値)
前週末比
(11/19比)
日経平均 10,039.56 +17.17 +0.17%
NYダウ 11,092.00 -111.55 -1.00%
金利・為替 週末終値
(11/26終値)
前週末比
(11/19比)
長期金利 1.190% +0.120%
ドル/円 84.09  
ユーロ/円 111.34  

楽観すべきではない、リスクは高まっている

前週の総括

■ボラティリティが低下

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価は週を通じて終値ベースでは10,000円台をキープしましたが、ザラ場の高安が最大で250円程度、終わりベースではわずかに75円幅と極めて狭い範囲での取引となりました。これは日本のカレンダーでも23日が祝日で休場だったことにもよりますが、米国が25日はサンクスギビングデー(感謝祭)で休場、これにあわせて先週そのものが休暇シーズンであったため市場参加者が減少したということが大きな要因だと思われます。それを証明するかのように売買代金も低調、週末26日の東証第一部の売買代金はわずかに1兆円程度という低水準でした。本来ならば日経平均株価が「やれやれ」とも思われる10,000円台を回復したわけですからもう少し膨らんでもいいはずだと考えています。

■リスクに鈍感な日本市場、敏感な海外市場

 一方、そのサンクスギビング・デーの当事者である米国市場は下落、NYダウで前週末対比約1%の値下がりとなる11,092.00ドルで取引を終えました。週央には欧州危機の再燃及び朝鮮半島情勢の緊迫化を嫌気して11,000ドルを割り込む場面も見られましたが、市場の予想よりも堅調な個人消費の回復や、投資対象としての「質への逃避」などもあり、米国資産の価格が回復するという流れを作っています。

 我が国の隣国、韓国と北朝鮮の間で緊張感が高まり、さらにはこれを受けた米韓の軍事合同演習のため黄海に米国海軍空母が派遣されるという問題に対して米中間の緊張までも高まる中、日本市場は多少値下がり、10,000円台を割り込む場面も見られたものの直ぐに回復しました。これを評価して日本市場の出遅れ感や回復を指摘する声も聞かれますが、海外市場の地政学的なリスクに対する感応度とはかなり隔たりがあるように思われます。例えば首相官邸でのリアクションが「祝日だから」ということで初動が遅れるなどということは正当な主張とは思えません。平和ボケと言ってしまえばそれまでですが、総じてこの問題に対する日本の反応は暢気なものに思われます。週末金曜日に米国市場が下落した要因のひとつは、間違いなく北朝鮮が26日に再度砲撃(演習と言われていますが)を行ったことにあるのですから。


(出典:Bloomberg.)

<米国10年国債の利回り推移です。--------------------追加金融緩和が発表されて以来上昇傾向にあった長期債利回りですが、朝鮮半島問題などにより買戻しが行われています。>

■欧州金融危機は収まっていない

 アイルランドが国際通貨基金(IMF)とEUに金融支援を正式に要請したことでいったんは市場も楽観しかかった欧州問題ですが、一向に収まるどころかポルトガルやスペインなど南欧諸国に問題が拡散する方向にあります。さらに週末にはS&P社が、アイルランド政府が国有化したアングロ・アイリッシュ銀行の長期カウンターパーティー格付けを従来の「BBB」から6段階も引き下げて「B」に指定するなど、むしろ流れは加速していると言えます。S&P社はこの他にもアライド・アイリッシュ銀行とアイルランド銀行、アイリッシュ・ライフ・アンド・パーマネントの長期カウンターパーティー格付けも1段階引き下げ、優先債と劣後債も格下げしました。南欧諸国の問題では、スペイン10年債の独国債に対する上乗せ利回りが週末の取引でユーロ導入後最大に拡大しています。背景には決済機関のLCHクリアネットがアイルランド国債取引の追加必要証拠金を引き上げたことが、多重債務国の国債保有リスクを更に顕在化させたということがあります。

■ユーロが売られ、安全資産への逃避として買われた米国資産

 こうした流れを受けてユーロが対ドルで安値を切り下げています。まだギリシャ問題が喧伝された6月頃の水準である1ユーロ=1.2ドル割れという水準に比べれば高いですが、米連邦準備理事会(FRB)による追加金融緩和観測が高まって安心感が世界的に広がった頃の状況からすると様変わりというのが偽らざる状況です。直近の1.42程度の水準まで戻したところ(11月初め)から1.32という水準にまで押し戻されています。

 また安全資産としての米国資産が再び見直される状況になっており、11月15日にはいったんは2.95%以上まで売り込まれた米国10年国債ですが、足元では再び26日終値は2.86%程度まで買い戻されています。一方で日本国債についてはこうした海外市場の流れとは関係なく先週の長期金利は一貫して上昇、残週末対比では+0.120%となる1.190%にまで上昇して週末を迎えています。結果、日米金利差は前週末、前々週末の1.8%水準から縮小、先週末の水準は1.6%レベルへとなっています。最近の動向からするとこれは円高に振れてもおかしくない状況なのですが、何か違う力が働いているとも見て取れます。


(出典:Bloomberg.)

<ユーロの対ドル相場の一年間です。-----------------------欧州問題を市場が気にしなくってから1.42台まで回復したユーロでしたが、流れは変わったように思われます。>

今週のポイント

■侮るなかれ、朝鮮半島問題

 一番の問題は政府のこの問題に対する危機意識が高くないように思われることです。当然世論や国内メディアも同様ですが、ひとつの理由としては国境線を身近に見たことがない人が日本では多く、戦後世代が増えたことで「他国との紛争」という意識が芽生え難いということなのかも知れません。同様なことを「911同時テロ」の時の日米世論の違いにも感じたことがあります。

 例えば、有事発生から米韓合同演習を速やかに決定して、動き始めた米国政府のそれと比べると日本政府の状況は本当にこの政府で大丈夫なのかと思わせられます。メディアの論調も違います。その一方で、国会答弁で管首相は初動時「テレビで情報収集をしていた」と明言されました。確かに米国の小説などでは米国中央情報局(CIA)の情報収集よりもCNNのカメラの方が先に行くなどと揶揄することはありますが、米国大統領が「CNNを観て状況判断している」とは決して言いません。さらにはそうした有事が勃発している時に、正確な情報を掴めてもいない状態で国家公安委員長がのんびりと宮中行事に参加しているというのはいかがなものかと。国会での答弁の後に「専門の情報網で状況把握をしていた」と訂正されていますが、あの時もし北朝鮮が今度は日本に向けてミサイルを発射していたら、どれだけ速やかに迎撃態勢を日本政府は取れたのでしょうか? それこそ本土に着弾するのをテレビで観てから官邸に閣僚が集まるのでしょうか?

 昨年、普天間問題と米国との日米安保協定の問題は、単に沖縄に存在する米軍基地の問題という地域問題ではないと危惧していたことが現実になりつつある気がしてなりません。ならばこの国の金融資産は安心して買えるのでしょうか? 日本の長期金利の上昇(国債が少なくとも買われていない)や日米金利差縮小ながらも円安(円が売られる)という流れと結びつけるのは短絡的だとは思いますが、慎重論派としては今ここで「出遅れ感」ということだけでポジション・リスクを拡大する気にはなれません。

■問責決議案が可決された

 26日夜には仙谷由人官房長官、27日未明には馬淵澄夫国土交通相の問責決議案が参院で可決されました。問責決議は衆議院の不信任案のように内閣総辞職などを迫って民意を問うような法的拘束力はありませんが、官房長官に対する問責決議案が可決されるというのは極めて異例な事態です。これにより国会が空転するのは必定、この先の来年度予算審議や法案審議などが混乱を極めることは明白です。支持率低下が著しい民主党菅内閣の次の一手は何かを注視していきたいと思います。

 昨年の民主党政権誕生以来、日本株は低迷を続けていますが、その原因のひとつはこうした政治の状況にあると思われます。賛否両論いろいろあることは承知していますが、少なくとも小泉政権が構造改革を打ち出した時は、国家財政の基本であるプライマリー・バランスも改善する流れが確認できましたし、少なくとも構造改革で日本が変わるということに期待した外国人投資家の資金を日本に呼び込むことができました。株価は7,000円台から14,000円台まで2倍以上に回復しています。

 一方、子供手当てと扶養控除の問題だけでなく、普天間問題、鳩山前首相や小沢前幹事長の政治と金の問題(小沢前幹事長の抗告は先週最高裁で棄却されました)、尖閣漁船衝突問題の実態解明(これも国境紛争のひとつです)、メドベージェフ大統領が訪問した北方領土問題など、問題は山積のままです。問題解決の糸口さえ掴めていないままにこの状態が長引くことは、やや回復の見え始めた日本経済にとって再びダメージを与えかねないどころか、長期的に日本の国益を守ることができるのか疑問が生じます。個別銘柄をボトムアップに評価すれば良いところもたくさん見え始めたようにも思いますが、現状ではそうした個別のアルファを取りに行く前に、日本経済全体のベータ・リスクが高すぎるというのが目下の投資環境への基本的な判断です。

 ただ念のため申し添えれば、私は業界の中では相当に稀な悲観論者だそうです。最近取材をしていただいた記者の方にそう言われました。
今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声"(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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