※配信先の変更・停止は巻末をご覧ください。

楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年11月8日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

11月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(11/5終値)
前週末比
(10/29比)
日経平均 9,625.99 +423.54 +4.60%
NYダウ 11,444.08 +325.68 +2.93%
金利・為替 週末終値
(11/5終値)
前週末比
(10/29比)
長期金利 0.930% +0.010%
ドル/円 81.27  
ユーロ/円 114.04  

想定通り米国市場は年初来高値を更新したが日本はどうする?

前週の総括

■FOMCの結果でドル安進まず一安心

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。米国市場については年初来強気見通しを維持して来ましたが、途中ギリシャ問題などで欧州リスクが顕在化したことが足を引っ張ったためご心配をお掛けしましたが、やはり想定通り中間選挙のあったこの週をもって年初来高値を更新して来ました。選挙年のアノマリーは今回も有効だったということです。

 またその一方で、日経平均株価も先週一週間で4.6%もの急伸長を見せました。同株価指数の一目均衡表を見て頂ければ明らかですが、前週末に最も薄くなった雲を貫いて下抜けてしまった形になっていましたが、これでまた雲の上に飛び出てきました。背景にあるのは先週2日と3日に行われた米FOMC(連邦公開市場委員会)であり、また2日に行われた米国中間選挙の結果と見ることができます。

 すなわち前者も後者もほぼ市場の想定通りの結果となったため、これらの結果を受けてドルが売られる、すなわち前週末に80円30銭台で終わりこのまま80円割れも必至と思われていた為替市場の動きが、むしろやや円安に振れるようなサプライズのない展開となったからということです。市場はFOMCの結果を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)がさらなる金融緩和に踏み込むことまでは予想し織り込んでいましたが、もしその規模が市場のコンセンサスよりもさらに大きなものであった場合には一気にドルが売られて1995年に付けたドル円の最高値79円75銭を抜くリスクを強く意識していたと言えます。しかし実際に蓋を開けてみれば市場が予想し、織り込んでいた規模とはそう乖離しなかったことで、そうした流れを見越して作られていたショート・ポジションが買い戻されて市場の上昇を後押ししたと思われます。

■米国中間選挙の市場への影響

 2日に行われた米国中間選挙の結果は市場の予想通り、下院ではオバマ大統領の所属政党である民主党が歴史的な大敗を喫して過半数を失う一方で、上院に関しては危惧されたような事態にはならず引き続き過半数を維持という市場予想のベストなシナリオ通りに着地したという感じです。「捻じれ国会」と聞くと日本の閉塞感漂う現状のそれと同じような政治的膠着状態になることを予想される方も多いかと思いますが、米国では全くそうではないということができます。

 確かに二院政議会の過半数政党が異なるという意味においては日本のそれと同一ですが、米国政治の歴史上、逆に捻じれていない状況の方が少ないという事実があります。また近いところではクリントン政権時代、大統領所属政党である民主党は上下両院ともに過半数を失い、大統領はその難しい議会運営の中で米国を1990年代後半の繁栄(ITバブルとも言いますが…)へ導いています。すなわち2大政党政治による民主主義が成熟し、なおかつ大統領制という政権与党の代表がほぼ自動的に(国民の真意を反映せずに)首相になるという日本の状況とは大きく異なり、これでもきちんとワークするということです。

 さらに言えば、大統領就任後1期目の中間選挙で大統領所属政党が過半数を失うというのも米国史上の慣例です。すなわち新しい大統領は国民の期待を一身に背負って誕生はするものの、事実としては理想と現実のギャップは大きく、どうしてもなかなか言った通りのことを実現することは難しい。また既得権益などをひっくり返すようなことをしなければならない場合、当然それなりな軋轢が生まれます。結果としていったんは大統領就任当時の興奮は冷め、厳しい成績評価が最初の中間選挙では行われます。ブッシュ前大統領は珍しくこの伝統通りにならなかった例なのですが、それは『911同時テロ事件』があったおかげでむしろ大統領への求心力が高まっていたからと言えます。米国のある世論調査では、オバマ大統領の人間的な人気は衰えていないものの、景気への不満が高くて政権への支持率が低下しているという結果が出ています。このあたりも日本の現状とは大きく異なると言えそうです。

■ブッシュ減税などが継続されるかどうかに注目

 ここから先、オバマ大統領は上下両院の過半数を制していたからこそできた金融規制法案や医療保険制度改革法案の可決の様な強引なことはさすがにできなくなります。そして最初に歩み寄りを求められるものは、この年末で期限を迎えるブッシュ減税が「廃止」かそれとも「延長」かの決断です。年収25万ドル以上は除くというような条件を残すかも知れませんが、現状の雲行きとしては景気刺激のために減税を延長することは不可避になったと思われます。

 また今回の選挙でその存在感を著しく高めた茶会党の主張なども無視できません。茶会党(ティー・パーティ)は政党ではありませんが、共和党内のひとつの勢力として存在感を高めており、彼らが一番求めているのがオバマ民主党政権の目指す大きな政府と正反対の小さな政府です。そして市場はどちらかと言えば小さな政府が好きであり、財政均衡を目指すような方向性の方がドルにとっても価値を高める方向に作用します。


(出典:Bloomberg.)

<日経平均株価(ドルベース)の一年分の日足です。-先週、大きな窓を二つも開けながら、しかし年初来高値が見える水準まで戻ってきたというのが外国人投資家の実感のはずです。>

■市場の想定を遥かに上回る10月の雇用統計

 米労働省が5日発表した10月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比15万1,000人の増加となり市場予測の平均6万人を大きく上回りました。また前月の値も4万1,000人減と速報値の9万5,000人減から上方修正されています。このうち、政府関連機関を除く民間部門の雇用者は10月に15万9,000人増で4月以来の最大の伸びとなり、これまた市場予想の8万人増を大幅に上回っています。ただ失業率自体は引き続き9.6%台と高い水準を維持しており、難癖をつけるとすればここになるかと思います。

 今回の中間選挙で話題の中心となったのは基本的には米国経済の回復速度の遅さです。これが「CHANGE」を期待した国民の望むほどではなかったということがオバマ大統領への厳しい採点結果として出てきたわけですが、その中心にある問題は雇用問題です。しかし、一面では選挙が近づくほどに現政権批判の為の悲観論醸成という流れもあったのではないでしょうか? 市場が言うほどには悪くなくなってきているという結果が出たのが今回の雇用統計の様な気がしています。


(出典:Bloomberg.)

<NYダウの1年間の日足です。---予想通り、文句ない形で年初来高値を突き抜けました。大きな大陽線が立っています。>

今週のポイント

■中国との関係悪化を懸念する

 前述の通り、日本市場に影響する大きなファクターである米国の現状はベストではないとしても悪くないというのが現状認識だと思われます。だからこそ株価は上昇しています。その一方で、現在の日本経済にとってもうひとつの大きな存在感となっている中国との関係がお世辞にも良いとは言えない状況になっていることが気掛かりです。国会での予算審議の雲行きが怪しい中で、もうひとつの大きなリスク、外交問題が噴出してしまいました。

 5日に発覚した動画投稿サイト『You Tube』に投稿された尖閣諸島沖で起こった海上保安庁の巡視船と中国漁船との衝突事件撮影ビデオの漏えいは、日中両国の国民のみならず、世界中に配信されたことによって今後大きな問題となって来ることは必至です。決して論点は「情報漏えいは国家公務員法違反容疑で告訴・告発が可能かどうか」、あるいは「調査から捜査へ切り替える判断を数日内にしないといけない」という悠長なレベルの問題ではありません。今回、このビデオ映像の漏えいがインターネットを伝わって拡がっていくスピード感に全く政府が追い着いているとは思えず、すでに多くの人が一度は政府が「隠蔽」しようとした映像を実際に観てしまったという次元で考えないとなりません。

■動画が次から次へと複製されていったのを目の当たりに

 『sengoku38』という名前で当初投稿された映像を観た関係者は、それを単に削除すれば何とかなると思ったかも知れません。しかし、いったんネット上に公開されてしまった情報は、それを完全に削除することは不可能だということをもし知っていれば、ここでも初動が違っていたかも知れません。その情報セキュリティ管理の危うさを今回の件はあらためて明らかにしました。私が観ていた間だけでも、それを「保存しろ」という書き込みとともにダウンロードする人たちが数多くあり、そしてそれを再びサイト上にアップするという状況がありました。確かに最初の『sengoku38』という人の投稿はあっという間になくなっていたようですが、この動画をネット上で検索することは、その後も難なくできました。5日の昼過ぎには、当初6本に分けてアップされていた動画を一本にまとめたものさえ確認できましたし、何本目の何処を観れば衝突シーンがあるかといった解説付きのものもありました。そして気がついたら『CNN』のWebニュースにも貼り付いていました。もう消し去って隠すなんてことは、到底無理ですし、これが例え仮に国家公務員法違反として告訴できるとしたとしても、むしろこの重要情報をそもそも隠蔽しようとした政府とどちらが正しかったのかという世論も必ず続いて起こるものと思われます。

■問題は日中両国の国民がどう感じたのかということ

 どちらに非があるにせよ、日本の海上保安庁の巡視船の後部側面と後部に対して中国漁船の船首が2度にわたって衝突しているのは事実でした。これは動かし難い事実です。となれば、どうしてそういう状況になったのかがきちんと説明されない限り、これは何れの国の人にとっても納得が如何ない釈然としないものとして刻まれてしまったはずです。車同士の衝突事件でも「急ブレーキを踏んだ方が悪い。いや、前方がぶつかっている以上、そちらの前方不注意だ」といった議論が延々と続き、保険会社などが仲裁に入ってやっと収めるぐらいですから、領有権を言い争っている海上において国籍の異なる船が衝突したとなると、そう簡単に決着するとは残念ながら思えません。そして日中関係が今後悪化することがあれば、間違いなく日本経済にとってそれは好ましい結果を招きません。

 ただでさえ支持率急低下で厳しい政局運営が続いている菅民主党政権ですが、あらためて別の正念場が訪れたと考えるのは私一人だけでは無いはずです。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪相場が上がっても下がっても収益のチャンス!≫

■日本の株式市場に対して概ね3倍の値動きを目指す

楽天日本株トリプル・ブル、楽天日本株トリプル・ベアの詳細はこちら

・日本の株式市場が上がると予想するなら

楽天日本株トリプル・ブル

日本の株価指数先物取引および日本の短期公社債を主要投資対象とする。日本の株価指数を対象とした先物取引を積極的に活用することで、日々の基準価額の値動きが日本の株式市場の値動きに対して概ね3倍程度となることを目指して運用を行う。

ファンドの詳細・注文はこちら

・日本の株式市場が下がると予想するなら

楽天日本株トリプル・ベア

日本の株価指数先物取引および日本の短期公社債を主要投資対象とする。日本の株価指数を対象とした先物取引を積極的に活用することで、日々の基準価額の値動きが日本の株式市場の値動きに対して概ね3倍程度反対となることを目指して運用を行う。

ファンドの詳細・注文はこちら

 

PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声"(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

免責事項

本メールマガジンに掲載している内容はお客様への情報提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。最終的な投資決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、掲載している内容は予告なしに変更または廃止される場合がございます。必ず楽天証券のホームページなどで最新の情報をご確認のうえ、各サービスをご利用くださいますよう、お願いいたします。

リスクと費用について

投資信託は、商品によりその投資対象や投資方針、申込手数料等の費用が異なり、多岐にわたりますので、詳細につきましては、それぞれの投資信託の「目論見書」「目論見書補完書面」を必ずご覧ください。また、一部の投資信託には、原則として換金できない期間(クローズド期間)が設けられている場合があります。

■投資信託の取引にかかるリスク

■投資信託の取引にかかる費用

■金融商品取引法に係る表示弊社の取扱商品等にご投資いただく際には、各商品等に所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失を生じるおそれがあります。各商品等へのご投資にかかる手数料等およびリスクについては、楽天証券ホームページの「リスク説明」ページに記載の当該商品等の契約締結前交付書面等をよくお読みになり、内容について十分にご理解ください。

商号等:楽天証券株式会社
楽天証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号
加入協会:日本証券業協会、社団法人金融先物取引業協会

■楽天証券ホームページ
http://www.rakuten-sec.co.jp/

東京都品川区東品川4-12-3 品川シーサイド楽天タワー
カスタマーサービスセンター(平日8時-18時)
お手続き専用ダイヤル
0120-885-687(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3322(通話料有料)
各種商品に関するお問い合わせダイヤル
0120-41-1004(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3333(通話料有料)

Copyright © 2010 Rakuten Securities, Inc. All rights reserved.