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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年10月12日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

10月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(10/8終値)
前週末比
(10/1比)
日経平均 9,588.88 +184.65 +1.96%
NYダウ 11,006.48 +176.80 +1.63%
金利・為替 週末終値
(10/8終値)
前週末比
(10/1比)
長期金利 0.855% -0.100%
ドル/円 81.93  
ユーロ/円 114.19  

マクロに期待は持てずとも、『CEATEC』では夢が見られた

前週の総括

■円高抵抗力がついた?

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。週末NY市場の為替の終値は15年4カ月ぶりの高値となる81円93銭、週の半ばにはすでに前回6年振りの為替介入時に財務相が防衛ラインとコメントした82円台に突入していましたが、株価の方は底堅く推移し対前週末対比でみると+1.96%の上昇となる9,588.88円で終わりました。週末金曜日は対前日比で約100円安となりましたが、このところ市場が最も気にしていた為替動向が円高に進んだにもかかわらず、この水準を維持したのは上出来と言えるかもしれません。

 ひとつには米国市場の株価が堅調だったことが挙げられます。週末に米国雇用統計の発表を控えて神経質になりやすい状況ではありましたが、米連邦準備制度理事会(FRB)によるさらなる金融緩和期待から株価は堅調に推移し、週末終値はNYダウが11,000ドルの大台を回復して引けるような堅調な流れにつられてしっかりしていたと思われます。

■売買代金が増加傾向になってきたが……

 このところ頻繁に1兆円割れにもなり低迷を続けていた株式売買代金ですが、2010年度下半期入りしたことが後押ししているのか堅調です。週明けの月曜日こそ1兆2,000億円台でしたが、週央には1兆7,444億円にまで膨らみ、週末のオプションSQの1兆5,000億円をも上回る勢いとなってきたのは良い兆しと言えます。ただ一方ではそれだけ戻りの過程で「やれやれ売り」の板が厚くなるということを意味しているともいえ、この先の需給関係は必ずしも好ましい状況とは言えないことを示唆しています。テクニカル的にもSQ精算値の9,692.73円を当日につけない「幻のSQ値」を残してチャート上ダブルトップを形成してしまった感が強く、6日に開けた9,538.35円から9,567.00円の間の窓を埋めるようだと今週は上値の重さを意識した展開が始まる可能性を否定できません。


(出典:Bloomberg.)

<日経平均株価の1年間の日足です。-----------------------短期的にはダブルトップとなってしまった感じが強いかも知れません。>

■日銀がゼロ金利と量的金融緩和を発表、しかし円高阻止はできず

 先週の大きなトピックスは日銀が4年ぶりにゼロ金利政策を発表し、あわせて5兆円規模の資産買い取りも決定したことです。ゼロ金利政策は2006年7月以来で、これを物価上昇が1%程度になるまでは続けると発表しました。つまりデフレを抜け出すまでは金利を上げないという意思表示ですが、併せて発表された資産購入計画はETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)という価格変動リスクにより日銀のバランス・シートを傷める可能性の高いものをも購入対象に含めるという内容です。

 これはFRBの追加金融緩和期待から進む円高ドル安に対する対抗処置という意味合いが大変強いのですが、いったん後手後手に回ってしまった日銀の対応は為替市場の速度に追い着いているとは言えず、結局は円高を阻止することはできずに週を終えました。さらには単独で行った前回の為替介入後の国際的な批判に配慮してか、前回財務相が防衛ラインと表明した82円台をすでに突破しても、今回は期待された為替介入が見られず、結局は81円に突入してしまうなど、今のところ円高阻止に向かっては術がないという印象が強くなっています。次なるポイントはやはり市場最高値となった79円75銭となるのかも知れません。ただし、対ユーロでは一時115円台も付けるなど円安になりつつあり、これが株価の下値を支えています。

■米国の雇用環境は改善せず、追加の金融緩和期待膨らむ

 週末発表された注目の米国雇用統計は引き続き米国の雇用環境が改善していないことを明らかにしましたが、これを市場はむしろFRBによる追加金融緩和へのお墨付きと捉えて株価を上伸させる要因となりました。

 米労働省が8日に発表した9月の雇用統計によると、非農業部門の雇用者数は前月比で95,000人の減少となりました。市場の予測はBloomberg.の調べによると中央値が5,000人の減少であり、かなり予想以上の悪化となっています。前月が57,000人の減少であったことを考えると再び悪化傾向に入っているとも言えます。これは財政赤字に苦しむ地方自治体を中心に政府部門の雇用が悪化したことが主因とも言われ、斑模様が続く住宅市場の状況と合わせて米国経済回復の足取りの重さを象徴しています。

 しかし、これらはすでに「必要ならば、さらなる追加緩和の準備がある」と発せられたFRB議長のコメントを支援する形となり、市場はFRBがさらなる金融緩和に動くきっかけになるとむしろ好感した形になっています。これが米国株高を誘い、一方ではドル安の要因となりました。

■政治の混乱にひとまず市場は目を瞑っている

 先の与党民主党の代表選挙で、菅首相とその座を争った小沢元幹事長がついに政治資金規正法違反容疑で強制起訴されるという異常事態になりました。もし民主党代表選挙で小沢氏が選ばれていたら、現職の首相が起訴される事態となっていたわけで、その真実の行方は別としても、事実は極めてシリアスな状況にあったと言えます。外国人投資家が最も嫌う要因の一つがそうした首相逮捕などの政治スキャンダル、政情の不安定さであり、そうした事態が回避できたことに安堵した市場関係者も少なからず居たものと思われます。

 しかしながらこの強制起訴が始まったばかりの臨時国会中に行われ、野党の矛先が一気に予算審議よりもこちらに向かったことは、停滞する日本経済にとって目先はマイナス要因です。ただそれでも先週の株価は堅調で、日本の通貨も買われる状況にあったということは、いかに市場が政治に対して無関心であり、不信状態がそもそも続いているかの証明と言えます。これは決して好ましい状態ではありません。金利差と欧米市場の動向だけに条件反射しているということに他ならないからです。


(出典:Bloomberg.)

<ドル円為替の1年間の日足です。-----------------------2兆円を投じたと言われる為替介入の跡が妙に虚しく感じられます。円高が止まりません。>

■長期金利は低下、2003年6月下旬の水準

 日銀のゼロ金利政策や追加の量的緩和政策を受けて長期金利の水準が引き続き低下しています。水準的には2003年3月にりそな銀行に公的資金注入が決まって極端な超低金利からの回復が始まった直後の2003年6月と同等です。しかしこの水準になってもなお金融機関の国債購入意欲があまり衰えないというのは、民間企業の資金需要のなさの裏返しでもあり、メガバンクの増資需要(通常に業務純益が上がると見通せれば、バーゼル問題があっても資本ニーズは膨らまないはずです)と併せて解決すべき日本経済の課題の一つです。

今週のポイント

■為替はどこまで円高になるのか注目

 先週は円高が進んでも株価は堅調に推移しましたが、週末のNY市場で円が81円台に入ったまま終わっていることから、今週はこの円高がどこまで行くのか、それを見ながら株価がどこまで持ち堪えられるかが注目材料となります。当然、G7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)でも話題になった各国の通貨安競争の問題を踏まえて為替介入をするのか、しないのか、為替介入が仮に行われたとして円高が止まるのかどうかが注目されます。このところの円高は、まさに米国の追加金融緩和期待に裏打ちされたドルの全面安ですから、日本側の対応よりもドル安が是正されるかどうかに掛かっています。

 その面では、米国がコロンブス・デーによる休場明けとなる12日に発表される9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録の内容に注目が集まります。また13日の米国の貿易収支、14日のミシガン大学消費者信頼感指数といった米国経済の現状を占う上で市場が注目する経済統計の発表は流れが変わる転機となるかも知れません。ただ中間選挙を控えて苦戦が伝えられるオバマ民主党政権としては、是が非でも景気浮揚を印象付けたいところですから、多少良いデータが発表になっても市場の金融緩和期待に水を差すことはあまり考えられません。すなわち、円高を止める方法は限られているということでもあります。

■マイクロソフトが見た夢、今年の『CEATEC』で見られた夢

 先週、千葉県の幕張メッセで行われた『CEATEC JAPAN 2010』は見所満載でもあったこともあり、基調講演のスケジュールの関係などで2回も足を運ぶことになりました。初日は「電気自動車が切り拓く『自動車の次の100年』」」と題して行われた三菱自動車工業(7211)代表取締役社長の益子修氏の講演を聞いたのですが、かねてより注目し、申上げてきた通りの流れがこの業界で起こっていることをあらためて確認した形になりました。すなわち日本の自動車業界の環境対応技術が世界をリードすることになるというものですが、電機やITの国際見本市である『CEATEC』で自動車業界が基調講演を行うということが、とてもシンボリックな意味を持っていると思います。スケジュールの都合で日産自動車(7201)などの講演は聴くことができませんでしたが、恐らく同様な印象を持ったであろうと思います。

 そして金曜日には 『2010年代のパーソナルコンピューティング』と題して、インテル(INTC)、マイクロソフト(MSFT)、東芝(6502)、SONY(6758)、パナソニック(6752)、富士通(6702)、NEC(6701)の計7社の代表によるパネルディスカッションを拝聴してきましたが、それ自体の興味深さもさることながら、マイクロソフトのプレゼンテーションで使われたVTRには感動ひとしおでした。

 それはGPSが搭載されたスマートフォンを使って家族が連絡を取り合いながら旅行先の動物園内で待ち合わせをしたり、それを撮影した映像を実家のリビングの大型フラットパネルTVの前で寛ぐ老夫婦(祖父母)にリアルタイムで送り、TV画面上のメッセンジャーでそれが伝えられると、その映像を切り取って瞬時に脇のフォトフレームに転送したりするというような内容なのですが、最初それが始まった時「どこかで見たような気がするな」と思いました。種明かしは簡単、以前シアトルのマイクロソフト本社を企業調査で訪問した時に観たVTRそのものだったのです。じつはそれは今から10年も前になる2000年のことです。つまり今現在の世界の状態をマイクロソフトは10年前にすでに夢見て予想していたということになります。そしてそれを信じた自分も決して誇大妄想狂ではなかったことが証明されました。

 今現在マイクロソフトが見ている夢も一部公開されたのですが、今年のCEATECで賑わっているブースの多くが確実にその方向へ向かっていると感じることができました。きっと2020年あたりに今回と同じ経験をするのだろうと思います。「実はこれ、2010年に作成されたVTRです」という種明かしとともにという意味です。

■スマートフォンなどはまだ夢の途中のひとつの断片に過ぎない

 今年の『CEATEC』の呼び物のひとつは各社が『iPhone』に続けとばかりに投入するスマートフォンであり、『iPad』に続けと投入するタブレットPC類などのスマート・デバイスの類いですが、これらは次の10年のドラマの始まりにおけるひとつの断片に過ぎないと思われます。

 同時にLTE(Long Term Evolution ※)などのまもなくサービスが開始される次世代通信サービスなどのワイヤレス・インフラ関連を展示するブースも多々ありましたし、当然のことながら3D映像関連などもかなりな大盛況となっていましたが、しかしながらそれらはまだまだ有機的に結びついているとは言えません。一方で、ITガジェットとなる前の段階を支える電子部品などのコーナーでは、自動車関連技術との関わり合いや、医療技術関連の先端技術などが賑わっていましたが、これらともまだ点と点でしか繋がっていないというのが印象です。
※Long Term Evolution…世界中で近日サービスの開始が見込まれている携帯電話の高速データ通信規格の一つ

 こうしたものが有機的にアプリケーションとして繋がり、そしてクラウドなどが生かされる時、まさに今の段階では未来ドラマにしか映らないマイクロソフトなどの夢が実現しているのだろうと思われます。そしてその中心で日本の高度な製造技術は必ずや強みを発揮すると考えます。電子部品のブースがここ数年で見たことがない活況を呈していたように思うのは、決して私の錯覚ではないと信じています。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声"(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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