※配信先の変更・停止は巻末をご覧ください。

楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年9月27日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

9月第4週

マーケット概況

株式 週末終値
(9/24終値)
前週末比
(9/17比)
日経平均 9,471.67 -154.42 -1.60%
NYダウ 10,860.26 +252.41 +2.38%
金利・為替 週末終値
(9/24終値)
前週末比
(9/17比)
長期金利 0.995% -0.075%
ドル/円 84.22  
ユーロ/円 113.60  

内憂は内憂のまま、でも外患は米国から改善の兆し

前週の総括

■米国市場から完全に取り残される日本

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価が金額で△154.42円、率にして△1.60%の下落となったのとは対照的に、NYダウは金額で+252.41ドル、率にして+2.38%の上昇と対照的な動きになっています。ハイテク株の比率が高いナスダック総合指数に至っては数値で+65.61pts、率にして+2.83%とさらなる上昇となっており日米の景況感(回復感?)の差が際立ってきています。

 ただ実際のところは、米国景気だけが株価の乖離が示すように単独で回復するという図式は描き難く、事実先週発表された米国の住宅関連統計などもまだまだ良し悪しまばらな状況であり、むしろ為替の動向、政治の動向、中央銀行の金融政策などといった問題の方が先週の動きには大きく関わったと思われます。取り分け為替の問題が大きく影響していますが、その証左としては、為替介入のあった前週の日経平均株価が+4.19%の上昇であるのに対してNYダウは+1.39%と日本が逆に際立って上昇していること、先週金曜日午後1時過ぎに“為替介入か?”と市場が感じた動きが見られた段階で株価が9,600円超までおおよそ170円もわずかな時間で急騰したことなどが挙げられます。

 政治の問題については、米国オバマ民主党政権も中間選挙に向かって野党共和党の攻勢著しく、決して安定的な政権運営をしているとは言えませんが、むしろその緊張感が株価には好材料となっています。これは中間選挙年のアノマリーとしても言えることで、中間選挙年では1950年以降、この時期から翌年の株価が上昇するという伝統があります。その一方で日本の場合、民主党代表選挙が終わり、菅改造内閣が始動したとは言うものの、尖閣諸島問題に起因する中国漁船衝突事件などで日本の外交手腕の稚拙さが露見するだけでなく、鳩山前首相が「私なら温家宝首相と腹を割って話し合えた」などと早くも同党が代表選挙後に挙党一致体制に回復していないことが明らかになるなど、全く安定感を欠き、決して政治が株価にプラス材料となる要素を示していません。

 また中央銀行の金融政策についても、米国では先週21日に開かれたFOMC(米連邦公開市場委員会)で議長が「必要とあれば追加の金融緩和の用意がある」と強調したことが奏功して金利低下と株価上昇を促進した一方、日本では長期金利の低下は見られるものの、日米金利差が主眼となっている為替動向をコントロールし切れずに介入効果も一週間で剥落するような状況となっているからです。為替介入については、日銀は財務省の決定に従って実務を担うだけではありますが、米国FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策や口先介入に比べるといかにもまとまりがついていないように思われてなりません。


(出典:Bloomberg.)

<ドル円のこの一週間のチャートです。-----------------------介入効果が剥落していく中で、24日午後1時過ぎの動きはファインプレーに一瞬は感じられましたが、結局は84円台前半まで押し戻されて終了してしまいました。>

■米国市場は4週連続の株価上昇

 米国株式市場はNYダウが10,860ドルと今週も上昇して終了しました。この水準は4カ月振りの5月上旬の水準に匹敵するものです。8月のインテル(INTC)の売上見通しの下方修正などを受けて「パソコン需要鈍化」などとマイナス要素が喧伝されるハイテク関連ですが、実際の株価の動きで観るとハイテク株のウェイトが高いナスダック総合指数は先月末対比+12.64%の上昇とNYダウの+8.44%やS&P500種の+9.47%をも凌ぐ上昇となっています。実はその渦中のインテル社の株価でさえ+9.95%の上昇とナスダック総合指数には及ばないものの、米国市場全体の動きを象徴するS&P500種よりも上昇しており、市場の期待感の高さを表していると思われます。

■アップルが世界第2位の企業になった

 その象徴的な出来事と思われるのが『iPhone』や『iPad』で評判のアップル(AAPL)の時価総額が世界第2位になったという事実です。週末現在の同社の時価総額は2,671億ドルとペトロチャイナ(中国石油天然気集団公司、現地コード:0857)の2,655億ドルを上回りました。因みに世界最大の時価総額の企業は米国の石油会社エクソンモービル(XOM)社で3,144億ドルもありますが、アップルが第2位の企業になったというのは、「『iPad』が世界を変える」とかねがねお伝えしてきた身としては何とも感慨深いものがあります。ちなみにマイクロソフト(MSFT)は2,144億ドル、グーグル(GOOG)は1,684億ドル、インテルは1,081億ドル、日本で断トツに大きな時価総額のトヨタ自動車(7203)でさえも1,253億ドル(24日終値、1ドル84.22円で換算)ですから、いかにこの数値が大きなものであるかは明らかであり、後述しますが、その意味するところは多くのインプリケーションを投資家に与えてくれていると思います。


(出典:Bloomberg.)

<アップルの一年間の日足です。------------------『iPad』や『iPhone 4』での躍進が止まらない同社の動きを象徴していますが、重要なポイントは『iPad』も『iPhone』もパソコンやネットワークとの協調があってこその存在だということです。>

今週のポイント

■日本の最大のリスクシナリオが政治であることは不変

 14日の民主党代表選挙の結果を受けて、菅直人民主党代表が主導する菅改造内閣が始動しておよそ2週間、来月1日召集予定の臨時国会からすでに波乱の展開となることが予想されます。すなわち衆参捻じれ国会を上手く運営して2010年度補正予算案を取り纏めていかなくてはならないこの時に、中国漁船衝突事件という格好の野党からの攻撃材料が提供されているからです。本来、この2010年度補正予算案については景気対策としての色彩が強いことから今国会での与野党協調が期待される(野党が反対し辛いため)ところでしたが、むしろ新政権を追い詰める好機とばかりに中国漁船衝突事件での与野党対立の方が先鋭化する可能性が高くなったと思われます。さらに言えば、野党の攻めに対して与党民主党が一枚岩になれるかと言えば、前述の通り鳩山前首相が視察先の京都市内で記者団に対し沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚島)沖で中国漁船衝突事件に対する政府対応について「私だったら事件直後に、この問題をどうすべきか中国の温家宝首相と腹を割って話し合えた」などと政府の対応を批判したと伝えられている始末ですから、与党の分裂さえあり得ます。

 本来、その対応がいかなるものであったとしても、代表選挙後は挙党一致で政権を盛り立てていくと言っていた小沢前幹事長支持派なわけですから、黒のものも白と言い包めるがごときの団結が期待されるわけですが、事前の予想通り、すでにそれが絵空事であったことが明らかになってきています。当然、野党側はここで一気に攻め込むというのが定石ですから、補正予算取り纏めの遅れ、すなわち景気対策の遅れなどが危惧されます。ただ、もしそのまま解散総選挙というような流れになれば、短期的にはともかくとして、中期的にはその方が外国人投資家も好む日本の変化が起こるということでポジティブな材料となる可能性もあります。いずれにしても政治が現在の最大のリスクシナリオであることには変わりありません。

■普天間問題と中国漁船衝突事故、外交問題は喫緊の課題

 普天間問題の混乱が始まってから間もなく1年が経とうとしていますが、物語は進展するどころか、解決の糸口さえ見出せないままに放置され、この間に日米関係は悪化、その隙を狙って中国が動き出したというのが背景にある大きな流れです。普天間問題は沖縄という首都からは遠い“地域の問題”という次元では済まない話だと申し上げてきた理由はここにあり、まさに危惧していたことが悪い方に実現してしまった感じを強く受けています。感情論のポピュリズムには訴えやすいテーマですが、国防や領土問題が絡むこの問題はワイドショー的な題材として取り上げて解決を図るようなものではなかったということです。

 レアメタルの対日輸出禁止などに象徴される日本経済への影響は民間レベルでの努力を全て水泡に帰す懸念さえあり、それこそ"政治主導"での早期解決を図って貰いたいものです。ニューヨークで行われた前原外務大臣と米国クリントン国務長官と初会談で、米国側から漁船衝突事件に関連して「尖閣諸島は日米安保の対象だ」という発言が出たのは、米国側の普天間問題をも含む一連の日本側の対応に対する苛立ちの表れでもあると同時に、同問題の解決をも含む糸口の提供とも読めます。この機に乗じて両問題の解決が図れれば菅政権の安定は望めるでしょうし、失敗すれば政治の混迷という国内問題では済まない状況へと発展していく可能性すらあります。一時も早い外交問題の解決が望まれます。

■『iPhone』も『iPad』も単独では存在し得ないものです

 「『iPad』を買ったらパソコンは要らないの?」とよく聞かれます。「Wi-Fiモデルと3Gモデルとどっちがお得?」と聞かれることもあります。また「ケータイとスマートフォン、どっちを買うべき?」という質問もよくあります。そしてそれらに対する私の答えはいつも千差万別、というか相手によって変わります。

 その最大の理由は『iPad』も『iPhone』も、パソコンやネットワーク・インフラと無縁で単独には存在し得ないからです。取り分け『iPad』はパソコンなしではその本来の価値を充分に味わえるとは言えず、また現在の通信インフラのレベルでは宝の持ち腐れ、高速無線LANと組み合わせてこそ意味があるということです。

 最も単純な話がどちらも端末としてのストレージ容量は最大でも64GBしかないということです。パソコンのHDD容量が500GBや1TB、最近では2TBなどと巨大化している流れに比較するといかにも貧弱です。ただそれが現段階では充分でもある理由は、パソコンと『iTunes』と言われるアプリケーションを通じて常に同期して使われるもの、つまり必要な時に必要なものを転送して使う前提だからであり、またクラウドの中で処理をさせた結果をネットワークを介して送受信して使うことを前提としているからです。この点を理解しておかないと、『iPad』や『iPhone』がパソコンの需要を奪っているだけという構図にしか見えてこないはずです。

 確かにネットPCなどと比較すると価格的にも類似であるため一時的にそうした現象は起こるあるいは起こっているかも知れませんが、前者の理由によりパソコンも必須であり、後者の理由によりネットワーク・インフラの拡充も必須です。例えば、動画を『iPad』や『iPhone』で観られるファイルに変換するにはどうしても高性能なPCが必要ですし、『iPad』や『iPhone』の限られたストレージ容量では、すぐにアプリがいっぱいになります。ゆえに、これらが先行して売れることこそ、続いて起こるパソコンやネットワーク・インフラ需要の先行指標だということです。だからこそアップルの時価総額が石油という伝統的な産業インフラの企業と伍して戦って世界第2位に躍り出た訳ですし、このインプリケーションは大きいと思っています。マクロの統計データには表れてこない大きな流れの変化を捉える事こそ、株式投資の醍醐味だと思います。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪ナスダック総合指数は先月末対比+12.6%の上昇≫

■ナスダック登録銘柄に投資する注目ファンド

野村アセットマネジメント 米国NASDAQオープンA・Bコースの詳細はこちら
米国NASDAQオープンAコース【野村アセットマネジメント】

NASDAQ登録株式に投資を行う。成長性、収益性、安定性等を総合的に勘案し選択した銘柄に投資を行う。NASDAQ総合指数(円ヘッジベース)をベンチマークとする。原則として、為替ヘッジを行う。

ファンドの詳細・注文はこちら

米国NASDAQオープンBコース【野村アセットマネジメント】

NASDAQ登録株式に投資を行う。成長性、収益性、安定性等を総合的に勘案し選択した銘柄に投資を行う。NASDAQ総合指数(円換算ベース)をベンチマークとする。原則として、為替ヘッジを行わない。

ファンドの詳細・注文はこちら

 

PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声"(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

免責事項

本メールマガジンに掲載している内容はお客様への情報提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。最終的な投資決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、掲載している内容は予告なしに変更または廃止される場合がございます。必ず楽天証券のホームページなどで最新の情報をご確認のうえ、各サービスをご利用くださいますよう、お願いいたします。

リスクと費用について

投資信託は、商品によりその投資対象や投資方針、申込手数料等の費用が異なり、多岐にわたりますので、詳細につきましては、それぞれの投資信託の「目論見書」「目論見書補完書面」を必ずご覧ください。また、一部の投資信託には、原則として換金できない期間(クローズド期間)が設けられている場合があります。

■投資信託の取引にかかるリスク

■投資信託の取引にかかる費用

■金融商品取引法に係る表示弊社の取扱商品等にご投資いただく際には、各商品等に所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失を生じるおそれがあります。各商品等へのご投資にかかる手数料等およびリスクについては、楽天証券ホームページの「リスク説明」ページに記載の当該商品等の契約締結前交付書面等をよくお読みになり、内容について十分にご理解ください。

商号等:楽天証券株式会社
楽天証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号
加入協会:日本証券業協会、社団法人金融先物取引業協会

■楽天証券ホームページ
http://www.rakuten-sec.co.jp/

東京都品川区東品川4-12-3 品川シーサイド楽天タワー
カスタマーサービスセンター(平日8時-18時)
お手続き専用ダイヤル
0120-885-687(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3322(通話料有料)
各種商品に関するお問い合わせダイヤル
0120-41-1004(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3333(通話料有料)

Copyright © 2010 Rakuten Securities, Inc. All rights reserved.