※配信先の変更・停止は巻末をご覧ください。

楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年9月6日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

9月第1週

マーケット概況

株式 週末終値
(9/3終値)
前週末比
(8/27比)
日経平均 9,114.13 +123.07 +1.37%
NYダウ 10,447.93 +297.28 +2.93%
金利・為替 週末終値
(9/3終値)
前週末比
(8/27比)
長期金利 1.145% +0.050%
ドル/円 84.31  
ユーロ/円 108.73  

国内要因には期待しない、でも外部要因には期待できる

前週の総括

■非常に気掛かりな日本の長期金利上昇

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。円高・株安対策として日銀が追加の金融緩和策を発表しようが、菅首相がエコポイントの延長など経済対策を発表しようが、あるいは米国ISM製造業景況感指数が改善して米国株が上昇しようが、さらには注目の米国雇用統計で民間部門の雇用者数が予想以上に増加しようが、ドル円の為替水準は週末終値で84.31円。前週末の85.23円に比べるとさらに1円以上の円高で一週間を終えました。

 それでも株価の方は前週末対比で1.37%上昇して9,000円台を回復しましたが、週初に市場が政府日銀の円高・株安対策への期待で上昇した水準には及ばず、月曜日のザラバ高値9,280.70円からは170円近く安い水準での取引終了となりました。

 その一方で明確に水準を変えたのが日本の長期金利です。日本国債新発物10年債の利回りは1.145%、この水準は約2カ月前の7月9日以来の水準であり、これが円高の流れが止まらない大きな要因になっています。すなわち、最近の為替市場の流れが日米の金利差に相関している面が強いことは何度も申し上げてきましたが、米国の同じく10年債利回りが8月12日前後の水準までしか戻していないにも関わらず、日本のそれがより世界経済の回復に期待感の強かった時期の水準にまで戻してしまっていることで、円高の流れが変わらないでいます。


(出典:Bloomberg.)

<日本国債10年債の利回り推移です。-----------------------長期金利が急騰し7月上旬の水準にまで戻っています。民主党小沢前幹事長の代表選正式立候補表明で一気にそれが加速している様子が見て取れます。>

■小沢前幹事長立候補で、財政赤字拡大に怯える債券市場

 このところの10年債利回りの推移チャートを見ると一目瞭然ですが、それは経済マクロデータや株価動向に相関しているというよりは、民主党の代表選騒動の動向に極めて連動しているように見えます。確かにこの間には国債入札のタイミングなどもあって需給が傾き易かったという割引材料もなくはありませんが、それよりもまず小沢前幹事長が代表選に出馬する意向を伝えた段階でひと段階の金利水準の跳ね上がり(多くの債券運用担当者が慌てて債券を売った結果です)があり、一旦いったんは鳩山前首相の仲介で出馬見送りかと思われた段階でやや低下し、そして9月1日の正式立候補で止めを刺すように急騰(売りそびれ組が慌てた)したという図になっています。

 ちょうど一年前の衆議院選挙で与野党が逆転し、民主党が政権与党となった以降も日本の財政赤字は減るどころか増え続け、国債の発行残高は増える一方です。今やGDP(国内総生産)に対する公的債務の比率は世界一(つまり借金漬け世界一)です。それでも、やっと財源に見合う歳出に変わろうかという矢先に、再び財政拡大論の小沢前幹事長が民主党代表選に立候補したことで、債券市場は再度国債の増発が行われ需給悪化が起こることを懸念しています。事実、小沢前幹事長は財源の一つのアイデアとして無利子非課税国債(無利子の代わりに相続税が掛からない国債)などを提唱し始めており、債券運用の担当者からは「当面、国債は買えないよ」という声が聞こえてきています。これが長期金利の上昇をもたらし、強いては円高の流れが止まらないという流れに繋がっています。追加の金融緩和策や経済対策よりもある意味「効いている」と言えます。

■米国経済は悲観論がやや後退し始めた

 一方、市場の見方は悲観的過ぎるだろうと思っていた米国経済の状況ですが、それを裏付けるような内容が今週は幾つか確認することができました。最初は1日に発表された8月のISM製造業景気指数ですが、市場の悲観予想に反し結果は56.3と前月の55.5から上昇し市場を好感させました。50を超えていれば拡大基調です。これを受けてNYダウは254ドルの上昇となりました。

 さらに新規失業保険の申請件数がわずかに予想を下回ったり、小売業の既存店売上高が好調だったりなど悲観論を後退させたものもありますが、やはり注目は週末3日に発表された8月の米国雇用統計でした。非農業部門の雇用者数は前月比で市場予想の10万5,000人減少を下回る5万4,000人減少に留まり、また民間部門の雇用者数は市場予想の4万人増加を上回る6万7,000人増加となっています。米国のGDPの約7割を占める個人消費の動向はやはり雇用に掛かっていると言われますが、この面について市場予想は悲観的過ぎたことが明らかになったことは朗報だと思われます。

 ただその一方で8月の非製造業景況指数は51.5と前月54.3から低下、市場予想の53.2よりも悪く、週末の米国株式市場の伸び悩みへと繋がりました。ただ米国市場の株価はこれで4連騰となり、S&P500種の1,104.51ptsという水準は8月11日の水準です。米国市場については、株価水準と債券金利水準が殆ど同じように動いていると言えます。ちなみに、日経平均株価の同時期の水準は9,500円台です。


(出典:Bloomberg.)

<米国S&P500種平均の1年分の日足です。-----------------------米国の株式市場の水準は米国債券の利回り水準の変動状況と同じく8月初旬の水準となっています。>

今週のポイント

■国内要因は悲観的、外部要因に期待する

 残念ながら、現在の「民主党代表=日本の次期首相」を決める民主党代表選の状況を見ている限り、円高対策についても、株価対策についても、しいては総合的な経済対策についても多くを期待することはできないというのが市場関係者の共通見解だと思います。知己を頼って多くの市場関係者と話をしていますが、これ程までに皆が一様に呆れて諦めている状況というのも、過去にそうなかったかなと思います。

 9月14日には次期民主党代表、すなわち日本の首相が誰になるかが明らかになりますが、この代表選を通じて民主党内の意思疎通、意見交換が進み、その後の政権与党の内部事情が一気に好転し、新代表の下で挙党一致体制になるとは如何な楽観論者でも言い得ないだろうと思います。すなわち、その後に代表選の結果を受けての揺り戻しなり反動がもう一度必ず起こるということです。

 冒頭、現下の円高の主たる要因が日米の金利差にあり、その片側である日本の金利水準の決定に小沢前幹事長の代表選出馬があるということをお伝えしましたが、にもかかわらずこの議論が与党内で進まずに延々と永田町式議論しか進んでいないことに苛立ちさえ覚えます。正直、私はかなり弱気です。国内要因からだけ考えると、円高の流れは79.75円の95年の最高値を目指していると予想することは難しくなく、当然その場合の日経平均株価の8,000円割れは想定線です。ただし、そうなれば当然国内世論もさらに厳しくなるでしょうから、ポピュリズムに敏感な人たちの態度は変わってくるだろうと思います。

 ただ米国のマクロ情勢に対する市場の認識は徐々に変わりつつある状況にあり、また11月の中間選挙を控えて、大統領が切れるカードは限られているとは言えオバマ政権が何らかの景気刺激策を出してくることは明らかです。それを受けて、米国金利が上昇することが出来れば、日米金利差の拡大を通じて円高の流れが止まり、株価も回復してくるという他力本願的な発想をすることは可能です。1950年以降、中間選挙の年の米国株式市場を紐解くと、4月がピークで9月下旬がボトムになって切り返しています。今年もここまでは正にその流れですから、そうした歴史とも符合できる状況です。

■ハイテクの流れは加速している

 『iPad』や『iPhone 4』登場のメディアの熱狂もひと段落してきた感じですが、利用実態の方では徐々に使い方が浸透してきて、描いている良い方向に流れが進んでいるように思われます。この分野に関しては、引き続き私は強気です。

 特に『iPad』に関しては当初の出荷が遅れるような状況が一段落し始め、利用する人が徐々に増えている状況がそうさせている面と、やはり『iPad』向けの専用アプリの数がどんどん増えていることがその理由として挙げられます。当初は予約をしてもなかなか手に入らないため実際に使ってみないで評価せざるを得なかったり、仮に実際に手に入っていたとしても『iPhone』用のアプリをサイズ拡大して使うというその場凌ぎ的なものが多かったりしたせいもあり、結局「『iPad』は重たい電子書籍か、『iPhone』の大きい中途半端な存在」的な理解が多かったように思います。ゆえに、あの大きなタッチスクリーンや『Apple A4』という新しいプロセッサーの能力などを実際に享受することができていない視点が多かったと思います。

 ただ先日も「あれってWi-Fi専用のアプリでしょ?」という会話を電車の中で耳にすることがありました。私が贔屓目で観ているからということで少し割り引いて聞いて頂くべきと思いますが、これは『iPad』などを取り巻くハイテク業界の今後の動向を見ていく上で、極めて重要なキーワードです。この会話、普通の若いグループ(どこかのエンジニア風でもなく、アキバ系オタク風でもないという意味)の会話でした。これはワイヤレス通信環境に関する話なのですが、要するに「これって面白い『iPad』用のアプリなんだけど、無線LANのように高速通信でないと使い勝手が悪いよね」という意味です。この流れが加速することこそ、LTE(Long Term Evolution ※)などの今後の発展のメインドライバーとなり、事実これらが今の米国シリコンバレー系の企業の業況に表れ始めています。
※ Long Term Evolution・・・世界中で近日サービスの開始が見込まれている携帯電話の高速データ通信規格の一つ

 例えば、楽天ブックスの『雑誌チラ読み』というAPP(アプリケーション)があります。これは雑誌のページを一部そのまま見ることができ、気に入ればそのまま雑誌を購入することができるし、その雑誌の中で取り上げられている商品を楽天市場での購入に簡単につなげることもできるというものですが、この手のものの肝は、いかにストレスなく素早くコンテンツが画面上に展開するかです。リアルな雑誌のページをめくるがごとくにデータをやり取りするには、やはり通常の3.5Gの携帯帯域ではフラストレーションが溜まり、無線LANの環境下でその素晴らしさを体感できます。『ビューン』という雑誌や新聞の閲覧用ができるAPPは当初からそれを公然と諦めて「Wi-Fiネットワーク経由のみで利用可能です」と3.5G携帯通信環境下での利用を認めていません。こうした流れが通信トラフィックの莫大な需要を掻き立てます。

 需給ギャップという見方でいえば、この世界だけは今はまったく供給が追いついていません。もしかすると、インフラが供給するトラフィックが、コンテンツが要求するものに追いつかなくなったのは初めてかも知れません。ブロードバンド普及初期、市場の懸念は「キラーコンテンツは何か?」と真面目に議論するほど、その関係はオーバー・サプライ(供給過剰)だったのですから。

 マクロ的に見ると明るい話がないように思われますが、テクノロジーの流れには大きく変化があると考えています。今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪円安への反転を期待し、外貨建てMMFへ投資!≫

■少額でグローバル投資! 10通貨単位から買付可能!

米ドル建てMMF(ゴールドマン・サックス米ドルMMF)
米ドル建てMMF(ゴールドマン・サックス米ドルMMF)

マスターファンドに投資することを通じて、高格付けの米ドル建て短期金融商品に投資し、米ドルベースの元本と流動性を確保しつつ最大限の収益の獲得を目指します。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)より「AAAm」、ムーディーズから「Aaa/MR1+ 」とそれぞれ最高位の格付けを取得しています。

ファンドの詳細・注文はこちら

ユーロ建てMMF(ニッコウ・マネー・マーケット・ファンド)
ユーロ建てMMF(ニッコウ・マネー・マーケット・ファンド)

ユーロ、豪ドル、カナダ・ドル、ニュージーランド・ドル建の短期証券で運用し、好利回りを目指します。質の高い金融市場証券に投資することにより、元本を維持し流動性を保ちながら、好収益を得ることを目的とします。

ファンドの詳細・注文はこちら

 

PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声"(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

免責事項

本メールマガジンに掲載している内容はお客様への情報提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。最終的な投資決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、掲載している内容は予告なしに変更または廃止される場合がございます。必ず楽天証券のホームページなどで最新の情報をご確認のうえ、各サービスをご利用くださいますよう、お願いいたします。

リスクと費用について

投資信託は、商品によりその投資対象や投資方針、申込手数料等の費用が異なり、多岐にわたりますので、詳細につきましては、それぞれの投資信託の「目論見書」「目論見書補完書面」を必ずご覧ください。また、一部の投資信託には、原則として換金できない期間(クローズド期間)が設けられている場合があります。

■投資信託の取引にかかるリスク

■投資信託の取引にかかる費用

■金融商品取引法に係る表示弊社の取扱商品等にご投資いただく際には、各商品等に所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失を生じるおそれがあります。各商品等へのご投資にかかる手数料等およびリスクについては、楽天証券ホームページの「リスク説明」ページに記載の当該商品等の契約締結前交付書面等をよくお読みになり、内容について十分にご理解ください。

商号等:楽天証券株式会社
楽天証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号
加入協会:日本証券業協会、社団法人金融先物取引業協会

■楽天証券ホームページ
http://www.rakuten-sec.co.jp/

東京都品川区東品川4-12-3 品川シーサイド楽天タワー
カスタマーサービスセンター(平日8時-18時)
お手続き専用ダイヤル
0120-885-687(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3322(通話料有料)
各種商品に関するお問い合わせダイヤル
0120-41-1004(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3333(通話料有料)

Copyright © 2010 Rakuten Securities, Inc. All rights reserved.