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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年8月16日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

8月第3週

マーケット概況

株式 週末終値
(8/13終値)
前週末比
(8/6比)
日経平均 9,253.46 -388.66 -4.03%
NYダウ 10,303.15 -350.41 -3.29%
金利・為替 週末終値
(8/13終値)
前週末比
(8/6比)
長期金利 0.980% -0.075%
ドル/円 86.19  
ユーロ/円 109.93  

日本は何もしない、何もできないと、市場は笑っている

前週の総括

■注意深く見守るだけ?!

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。残念ながら、今週も当然の如く日本の金融市場は国内要因ではなく、海外要因で振り回されました。週初10日に発表された中国7月の貿易統計で輸入が予想を下回る伸びに留まったことなどを受けて中国市場が軟調になると市場はまずこれを反映し、次に米国FOMC(連邦公開市場委員会)の結果を受けて右往左往し、続いて米国の貿易赤字の増加に驚いたと言えます。この間、日銀は金融政策決定会合を開きましたし、首相や閣僚からかなり時期を逸したとはいえ口先介入らしきものがありましたが、市場はほとんどその内容については無視したという感じです。現状では「何もできないだろうし、しようとしないだろう」とあたかも見透かしているかのようです。それはドル安容認による輸出倍増計画などを高々と掲げる米国オバマ政権の市場動向に対するコミットメントに比べると、別荘で静養したままだった首相や「注意深く見守る」と発言しただけの財務相の動きとを比較すると明らかであり、市場は円高を阻止するような「円売り・ドル買い」の為替介入などまず間違いなく行われるはずがないと高を括っているからです。後述しますが、円高が続く限り、日経平均株価は構造的に上昇しません。

■FOMCは景気回復鈍化を示唆

 さて、FRB(米連邦準備制度理事会)が10日に開いたFOMCの会合では、新たな景気浮揚策として、償還される政府支援機関債や住宅ローン担保証券(MBS)の元本を米国債に再投資することが決定されました。声明は「経済の回復ペースは当面、これまで予想されていたよりも緩やかなものになる可能性が高い」といった内容で、いわゆる実質的な金融緩和政策の継続と、意味合い的にはこの先もさらなる景気回復の鈍化を認める状況があれば、さらなる金融緩和に動く準備があるとの意思表明となっています。これにより米国10年債利回りは10日の時点で2.74%まで低下して2009年4月以来の低水準となり、週末の終わりベースではさらに低下して2.6716%となっています。

■東証1部売買高今年最低、売買代金は今年3番目

 冒頭申し上げた海外要因に振り回されたということを如実に証明しているのが、今週初め月曜日の株式市場の売買高です。外部要因に振り回されて、株価指数だけがフラフラと動いています。前週末に発表になった米国の雇用統計が市場の予想を下回ったこともあり、市場の注目は完全に週明けから開催された米国FOMCの決定事項へと移っていた結果、月曜日の東証1部の売買高はなんと12億5,400万株、売買代金は今年下から数えて3番目となる低水準の8,758億円になりました。確かに、今は夏休みです。分散されたお盆休みを取る人も増えています。しかしこの低水準は「夏枯れ相場」なんて暢気なことを言っていられるような水準を遥かに超える(下回る?)と思われます。市場から聞こえてくるのは「為替動向を見極めたい」というものばかりでした。

■円84円台は15年振りの高値

 市場の大方の予想に違わず、FOMCでさらなる金融緩和が発表され、またさらに日銀の政策決定会合では何も具体策が発表されず、政府筋からも前述の通りほとんど音無しの構えが続くと、為替市場は「円売り介入はあり得ない」とばかり円買いが進み、その水準は15年振りの高値となる84円台へと突入しました。一時付けた高値は84円72銭です。さすがにこの水準に来ると為替市場自身に高値警戒感も強まり、また口先介入などが多少見られたことからドルの買い戻しが入り、週末の終値は86.19円となっています。

 ただ一方でユーロが対ドルで再び下落基調となりました。前週末の1ユーロ=1.32ドルの水準から週末は1.28の水準までユーロが売られています。これは第1に米国の景気回復の鈍化が世界経済の見通しを悪化させたことで、より安全な通貨としてユーロよりドルが買われたという背景があります。第2に、ギリシャが7四半期連続でマイナス成長を記録するとともに、スペインのECB(欧州中央銀行)からの7月の借り入れが過去最大だったことなどが再び欧州不安に燻らせ始めたということが言えます。結果、対円でもユーロは下落、週末の終値は109.93円となっています。ソブリン債リスクへの懸念が再燃してくると、再度市場は嫌な思いをしないとならなくなりそうです。

 
(出典:Bloomberg)

<ドル円の日足です。-----------------------昨年11月末の水準を下回って円高をつけたことが見て頂けると思います。この水準は15年遡ってみないともうありません。いったんはドルの買い戻しが入っていますが、その持続性には疑問符が付きます。>

今週のポイント

■円高は善か? 悪か?

 「自国通貨が強くてなぜ経済が弱くなるんだ?」という質問を頂くことがあります。「輸入物価が下がるのだから良いじゃないか」という話もよく聞きます。夏休みに海外旅行に行く人にとって、円高は最高のお餞別です。企業利益が出ても所得の分配(要するに給料)が上がることはまず期待できないのだから、せめて円高で物が安く買える方が良いというなるほどと思わせる意見を聞いたこともあります。「通貨が弱い国に明日はない」という議論は当然承知しています。

 しかしながら今の株式市場は基本的に“円安待望論”が多いのが事実です。今年の初め、菅首相が財務相就任当時に「円は95円程度が望ましい」というようなことを言われて円安が進んだ頃は株価も上昇し回復基調を辿りました。一方、ギリシャ問題が深刻化するのに合わせて円高が進むと株価が下がりました。欧米が積極的に自国通貨安による輸出振興で外需景気による国内景気回復を図ろうとする煽りで円高が進む昨今、株価は9,000円割れを真面目に議論せざるを得ない状況になってしまいました。今の株式市場は明らかに円安を望んでいます。通貨は強くあるべきか、否かという学問的な議論をする前に、リアルタイムの今の株式市場は事実として、円安で買われ、円高で売られています。

■日経平均株価は構造上、円安に強く、円高に弱い

 「釈迦に説法」の方もいらっしゃるかと思いますが、日経平均株価指数というのは構造上(ダウ式平均株価の計算方法)特殊な性格を有します。企業サイズというよりは、採用銘柄個々の株式価格(理論額面換算後)が指数への影響度を高める指数です。ちなみに、現在日経平均株価に一番影響度が高い銘柄はファーストリテイリング(9983)、ユニクロの会社です。日経平均採用銘柄は225銘柄ありますから、均等な影響度を持っているとすればひと銘柄のそれは約0.44%です。一方、同社のそれは一社で5.62%と12.8倍もあります。

 2番目に影響度が高い銘柄はファナック(6954)で4.2%です。以下、京セラ(6971)の3.35%、ソフトバンク(9984)3.23%、ホンダ(7267)2.44%などと歪なまま続きます。ちなみに上位50銘柄の指数インパクトは合計で65%になります。日経平均株価の変動率の半分は上位わずか30銘柄の動きで説明できます。このように日経平均株価は特殊な株価指数ということが言えるのですが、東証TOPIXにしても、多少の乖離はあるにしても、定量分析などによる特殊な機関投資家のパフォーマンス測定のニーズを除けば、「おおよそ一緒」の動き方をしていますから、特殊だといっても「当たらずしも遠からず」の日本経済の動向を示す大事な株価指数だということができます。

 実は前述の50銘柄の中で、薬品株や不動産株など、おおよそ「円安メリット」とは無縁と思われる銘柄は16銘柄あり、その16銘柄による日経平均株価への影響度は約19%に過ぎません。つまり残りの34銘柄はやはり外需関連銘柄であり、それらで指数全体の45%以上の価格支配力があります。つまり良いか悪いかの議論の前に、日本を代表する株価指数の構造自体が「円安で上昇し、円高で下落する」ようになっているということです。

■景気が良くなるには株価は上がるべき? 下落するべき?

 馬鹿馬鹿しいと思われるかも知れない議論ですが、日経平均株価がこの先「8,000円台、7,000円台…」と下落して行っても景気は回復するでしょうか? 「景気の気の字は気分の気」とも言われますが、古今東西、株価が下がって景気が良くなったという話は聞いたことがありません。株価が上がり過ぎて景気過熱やバブルが発生したという話は探すまでもありません。ならば株価を上げるには、というより株価が上がるには、今より円安になる必要があります。少なくとも株価が景気回復にネガティブな印象を与えない水準に戻るまでは、円安になる必要があると思われます。

■日本が円高に耐えうる構造になるのは可能か?

 かつて日本が80円を超える円高に見舞われた時、企業は多くのことを学び、円高対策を打ちました。一番簡単な方法は貿易を円建てにして、為替変動分は全て輸出相手に飲んでもらうという方法です。商品に特別な優位性があり、相手がこちらの言い値で買ってくれるものを作っている企業ならばそれが可能です。いわば「金ならなんぼで出すから売ってくれ」というものやサービスであれば、ということです。しかし今の日本にそんなものがあるかといえば、かなり厳しいです。

 急な為替変動に対する即効性ある対策ではありませんが、海外生産に切り替える、現地化を進めるという方法があります。そして当然これが一般的で言い尽くされた議論ですが、海外現地生産が進めば進むほど、日本での雇用が減少し、また現地生産分はGDP(国内総生産)には反映されませんから「世界第2位の経済規模の国だった」という歴史はどんどん遠い昔のものになっていきます。ゼロの数がひとつもふたつも少ない人件費の国で生産したものと互角に戦いながらも為替差損を飲み込む方法を国内で構築するのは至難の業です。

■ここからは国策としてどうするかです

 米国はドル安を容認して輸出倍増計画を進めています。欧州危機と呼ばれたなかでドイツやフランスが着実なGDP成長を前四半期遂げたのは、ユーロが安かったからです。また、今は世界の「SAMSUNG」ブランドとなった韓国三星電子の成長ドライバーが通貨危機以降のウォン安であることは誰もが認めるところです。

 「協調介入ができない単独介入ならば効果がない」などと言いながら「何もしない」であろうことを市場は見透かしているからこそ、まるで悪戯っ子がちょっかいを掛けるかのように円高を弄んでいるかに見えます。「86円でも大丈夫なら、85円でも? ならば84円も?」という風に、です。

 債券市場からは「金利が上がるような話」が出てくることはまずありません。なぜなら、それは債券が売られることだからです。日本の財政状況がどうであれ、今は景気悲観論を並べていれば安心して債券が買える状況が続いています。ただ長期債をこれ以上買えるかといえば、相当に糊代がなくなってしまっています。週末の新発10年国債の水準は0.980%と直近の安値をさらに下回っています。つまり債券市場参加者(機関投資家)は安心して債券を買って週末を迎えたということです。中途半端に債券が売られて日本の金利が上がり、日米間の金利差がなくなってさらなる円高になるよりは余程良いと思いますが、だからこそ、今ここで手を打てるのは、政府・日銀しかありません。市場動静を見極めて的確に動いて欲しいと切に願っています。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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