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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年8月9日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

8月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(8/6終値)
前週末比
(7/30比)
日経平均 9,642.12 +104.82 +1.10%
NYダウ 10,653.56 +187.62 +1.79%
金利・為替 週末終値
(8/6終値)
前週末比
(7/30比)
長期金利 1.055% ±0.000%
ドル/円 85.51  
ユーロ/円 113.56  

“米雇用13万人減”、市場予想を下回ってしまった今後

前週の総括

■米国雇用統計待ちの1週間

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。一言で言うならば、先週1週間は週末発表された米国の7月“雇用統計待ち”の1週間でした。上下の値幅はわずか約250円(後述)、米国のISM製造業景況感指数、同非製造業景況感指数、6月の個人消費支出動向あるいは民間ADP雇用統計などの発表を受けて為替が変動するたびに上下に振らされる展開になりましたが、結局は週末の雇用統計を見るまでは極端にどちらかにポジションを傾けることなく終わったという感じです。

■市場の事前予想よりも悪かった雇用統計

 さて、その米国7月の雇用統計ですが、市場のコンセンサスは非農業部門の雇用者数は対前月比で約6万人の減少(直前予想はもう少し悪いデータもありました)が予想されていましたが、蓋を開けてみると残念ながらその2倍を超える13万1,000人の減少という結果になりました。対前月比がマイナスになるのは2カ月連続であり、4月、5月のそれらの数値がいかに米政府の国勢調査のための臨時職員の数で下駄を履いていたのかが浮き彫りになった形です。

 これを受けて週末の米国市場では来週開かれるFOMC(米連邦公開市場委員会)でさらなる金融緩和措置が発表になるのではないかとの思惑も手伝って債券市場が急騰、10年債利回りが前日比△0.0845%となる2.8166%まで低下、2009年4月の水準まで逆戻りとなりました。さらに問題は2年債金利で、これは対前日比で△0.0243%となる0.5056%となり、すでに6月末からリーマン・ショック後の超金融緩和時のジャブジャブな状況(0.6%台半ば)を下回っていましたが、さらにそれが加速した形になっています。ITバブル崩壊、『911同時テロ』などを受けて同金利は2003年6月まで低下する時がありましたが、その時の水準が1.08%ですから、いかにこの水準が超低金利なのかがお分かり頂けると思います。少なくとも、私の情報端末で検索できる1980年代まで遡ってもこんな状況はありません。

■ISM製造業景況感指数などには明かりも見え掛けていたが…。

 2日に発表されたISM(米サプライマネジメント協会)製造業景況感指数は市場の大方の予想(54.2)に反し55.5と前月比プラス0.7ポイントなる好数値となり、さらに4日に発表された非製造業景況感指数も前月比プラス0.5ポイントとなる54.3となり、市場はホッとした印象がありました。好不況の分かれ目は50であり、両統計ともそれを7カ月以上上回っているからです。

 ただ一方で3日に米国商務省が発表した6月の個人消費支出は年率換算で10兆2,745ドルの前月比変わらずと振わず、米国GDP(国内総生産)の約70%を占める個人消費が盛り上がりに欠けることが市場の上値を抑えると、主にその源である雇用情勢を見極めたいというムードがさらに週末の雇用統計への注目度を引き上げたということができます。今回雇用統計が市場の予想を下回ったことで、今週行われるFOMCへの注目は弥が上にも高まったという感じです。

■欧州系金融機関の収益は好調だった

 市場の予想に反してというと失礼かも知れませんが、先週のサプライズのひとつは欧州系金融機関の決算発表が予想以上に好調だったということです。2日に発表された英銀最大手のHSBC(HBC)の2010年1−6月期決算は前年同期の2倍に膨らみ、同じく英ロイズ・バンキング(LYG)は1−6月期が2009年1月以来の黒字化、一方仏銀行大手のソシエテ・ジェネラルは2010年4−6月期純利益が前年同期の3.5倍、BNPパリバの2010年4−6月期の内容も前年同月比の31.2%増とギリシャ問題に端を発した「欧州金融危機」は何だったのか? という内容となっています。

 あわせてEU、ECB(欧州中央銀行)及びIMF(国際通貨基金)が5日に発表したギリシャの財政赤字削減プログラムの進捗状況は「全体として力強いスタートを切った」ということのようです。事実ギリシャ財務省の発表による2010年1−6月期の同国の財政赤字は対前年比で45.4%と減少で、3カ月毎に見直されるEUとIMFによる資金供与の第2弾向けの環境も整ったという状況です。これだけ見ると、昨年来大騒ぎをしたギリシャ問題とは何だったのかと逆に思ってしまうほどですが、現時点で発表されている欧州関連問題はかなりポジティブな方向です。

 これを受けて5日のECB理事会ではユーロ圏16カ国に適用する政策金利は年1.0%と据え置くことが決められ、トリシェ総裁をして「7−9月期の経済指標は予想よりもいい」とまで言わしめています。先月発表になったストレステストの結果については半信半疑な市場ですが、取り敢えずは突っ込む場所がなくなったという感じでもあります。

 
(出典:Bloomberg)

<米2年国債の過去2年間の利回り推移です。-----------------------2008年のリーマン・ショック後に一気に金利は低下していましたが、10年債金利と違って既にその水準を下回っています。にも拘わらず、最近はそれがさらに低下しています。>

■トヨタが黒字転換!

 米国でのリコール問題などでマクロ環境以外にも逆風の中を進んできたトヨタ自動車(7203)が4日に発表した4−6月期の連結決算の内容は1,904億円の黒字となりました。前年同期は778億円の赤字ですから、同社がこの1年間にどれだけ体質を変えてきたのかという苦労が感じられます。先に発表になった米国での新車販売台数では米国勢が軒並み市場予想を下回る状況で苦戦を強いられていましたから、なおさらそう感じると言えます。

 さらに言えば、市場がこうした輸出企業の見通しの中で一番嫌がっている為替見通しについても、ドル円については90円で据え置きとなっていますが、ユーロに関しては125円を112円と実勢よりも円高水準に設定し直しています。それを受けても11年3月期業績予想を売上ベースで3,000億円の引上げ、純利益も300億円従来予想から引き上げた3,400億円としているところに注目したいと思います。

今週のポイント

■円高は進むのか?

 日本の株式市場の参加者がいつの間にか当然のように米国経済のマクロ・データを気にするようになってしまったことに疑問を抱く方は少ないのかも知れません。でも日本の雇用統計の内容よりも米国の雇用統計の内容の方が詳しい市場関係者の方が多いというのが偽らざる私の実感です。昨今、米国マクロ・データの発表を受けて株価や為替が動くと「投資家のリスク許容度が増えて(あるいは低下して)」という枕詞とともに解説されるよく意味の解らないことが多いですが、その答えは為替にあり、理由は金利が動いて日米の金利差が変動するからです。

 
(作成:楽天投信投資顧問)

<チャートは日米の2年債金利の金利差とドル円を比較したものです。小難しいことを言うまでもなく、為替がこの金利差で動いていることは一目瞭然です。>

 最近の情勢を一番解りやすく解説するのは日米の2年債金利の金利差のチャートかも知れません。金利差と言ってもFFレートの様な政策金利から、10年債国債の金利や超長期金利などまでたくさんの種類がありますが、2年国債の金利をプロットして日米の金利差を計算し、その動きと為替の変動を重ね合わせると、少なくともこの4カ月間の動きは驚くほどに重なり合います。

■日本の金利に下げ余地はないが、米国にはまだある

 日本の金利は先週10年債金利が7年振りに1%を下回るなどと言う状況で、これ以上引き下げる余地はなく、一方で政治の方で日銀法の改正までしてインフレ・ターゲットを導入すべきなどというおかしな議論まであるぐらいですから、少なくとも物理的にも(政治的にも?)これ以上は金利を引き下げる余地は限られています。しかしその一方で、米国金利にはまだその余地が残されています。

 その金利を変動させる要因は景気全体、すなわち諸々のマクロ・データです。その最たるものが先週末発表になった雇用統計です。これを受けて今週のFOMCではさらなる金融緩和措置が発表になる可能性が高まってきました。

 日本の金利は前述のように引き下げる余地はありませんが、米国金利はさらに引き下げられる余地があり、そうなれば自ずと金利差がさらに縮小し円高に向かうことになります。もしそうなれば、多くの企業が決算見通しの前提為替を円高に修正し直したといえども、ここからさらなる円高水準はまだ織り込めていないと思われます。週末に2年債金利はさらに低下していますので、今週気になるポイントのひとつです。

■なぜ日本だけ円高を容認するのか?

 ギリシャ問題で揺れた欧州の景気が予想ほどに悪くなさそうなのも、米国政府が目指している政策も、ともに共通項は「自国通貨安」です。EU圏全体のGDPに占める割合でいえばわずか3%であるギリシャの問題をきっかけにユーロが叩き売られた恩恵を、ドイツのダイムラーやBMWなどと言った代表的な輸出産業はたっぷりと享受し、高収益を計上しました。ドルが売られることに米国政府は慌てていないどころから、ドル安にして外需で国益を増やそうとしているからです。

 ちなみに、サムソンに代表される韓国系企業が一躍世界のトップ企業群に躍り出てきた一番の理由は「ウォン安」です。自国通貨安で体力をつけ、市場を席捲するまでに至りました。あるいは法人税の優遇だということは市場関係者の間では常識です。そうすることで企業収益が上がり、賃金と雇用が増え、当然法人税収が増えます。

 一方、日本は円高が進めば、輸出系企業の収益は上がらず、企業の海外移転は進み、その結果雇用は減り、賃金は下がり、税収も減ります。減りゆく法人税収を前に税率の引き下げを逡巡すれば、さらに企業の海外移転は加速します。円高で輸入物価が下がるというものの、海外の安い労働力で生産した製品の輸入ならば、日本の雇用は減り、当然GDPは下がり続けます。円高は長い目で見た理想論としては国益に適うものなのかも知れませんが、欧米諸国や韓国の実例が教えてくれるのは外需がリードする景気回復の仕組みです。日本の人口は再び減っています。少子高齢化が進む限り、また世代会計(払う税金・社会保険料と生涯を通じて受け取る社会保障)の世代間格差が広がる限り(60歳以上+4,000万円、40代以下はマイナス、20歳未満は△8,000万円)、この国の内需拡大(国民が安心して消費を増やす)に期待するのは難しいと思います。

 菅首相が財務相就任当時は円安論者でもありました。ただ最近はそれも鳴りを潜め、円高に対するメッセージは何も聞こえてきません。人気の政治家からは日銀法の改正までしてインフレ・ターゲットを導入すべきというような議論まで聞こえてきます。もし日本だけが金利を上げる方向にでも動いた場合、前述の金利差の議論を見るまでもなく、さらなる円高が進みます。当然株式市場は株価下落という結果でそれに報いるのでしょうが、それでさらに金融資産が目減りし、消費もさらに落ち込み、景気が失速することは目に見えています。今、政治がすべきことは明確なのですが、それをできそうな状況でないことが何とも歯痒い状況です。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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