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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年8月2日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

8月第1週

マーケット概況

株式 週末終値
(7/30終値)
前週末比
(7/23比)
日経平均 9,537.30 +106.34 +1.13%
NYダウ 10,465.94 +41.32 +0.40%
金利・為替 週末終値
(7/30終値)
前週末比
(7/23比)
長期金利 1.055% -0.010%
ドル/円 86.47  
ユーロ/円 112.97  

もっともらしく森を語るより、木を見るチャンス

前週の総括

■やっぱりマクロに自信が持てない

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。「行って来い」に成ってしまったとも受け取れる一週間でしたが、それでも為替水準が前週末対比で大きな変動が無いにもかかわらず株価水準は約1%上昇して終わっていることを評価すべきだと思われます。日経平均株価は週央にはザラ場で一時9,760円を回復する場面さえありました。対ドルで88円台、対ユーロで114円台まで円安が進んだからでもあり、一方その後それが再び円高に押し戻されると株価が下落したという為替にばかり左右される市場という印象を抱きがちですが、週末対比で見る限り株価は為替変動にかかわらずに上昇しており、これはピークを迎えた日本企業の決算発表内容を受けたものと評価すべきと考えます。

■主力電機メーカーの決算は好調

 ソニー(6758)、パナソニック(6752)、あるいは村田製作所(6981)やTDK(6762)、さらには日本電産(6594)など主力電機メーカーの決算発表が相次いで今週行われました。これで日本企業の決算発表は峠を越えました。市場が不安がっていた4−6月期決算の内容についてはいずれも素晴らしい内容だったと評価できると思います。1ドル95円、1ユーロ130円といった決算見通しに使われていた為替水準も1ドル90円、1ユーロ110円といった現実的な水準に引きなおされ、それでもなお通期見通しを上方修正する企業があるなど、市場の悲観論のベースをことごとく覆すような内容が発表されています。こうした内容の集大成が週末対比で為替変動はほとんどないにもかかわらず株価が上昇している要因だと思われます。

 特徴はいくつか挙げられると思いますが、1.新興国市場を中心に薄型テレビの需要が市場予想を上回る拡大を遂げていること、2.スマートフォンや『iPad』のような新しいタイプのネット端末市場が極めて好調に成長していること、そして3.通常のデスクトップ・タイプのパソコンでさえ法人需要を中心に勢いよく伸びていることなどが挙げられます。これらの検証は明確に半導体需要などに現れています。

■半導体や電子部品の需要動向から多くが見えてくる

 まず整理しないとならないのは、半導体と一言で言っても、主としてパソコンの一時的な記憶書き込み用として使われるDRAMから、スマートフォンや携帯用音楽プレイヤーなどの主記憶装置として使われるフラッシュ・メモリー、そしてパソコンやスマートフォンの頭脳として機能する演算用半導体と複数あり、それぞれの需給動向が教えてくれるものは違うということです。演算用ロジック・プロセッサーについては、さらにハイテク機器の主たる頭脳となる、たとえばインテル(INTC)が生産しているようなものと、車のECU(エンジンコントロールユニット)などに使われるカスタムIC(※)などに分けても良いかも知れません。そして現在の共通項は、すべてが足らないということですが、どこで何がどう足らないか、なぜ足らないかなどで、その先がいろいろと見えてくるものです。STマイクロ社の供給能力不足から日産自動車(7201)の生産ラインが止まってしまったことは周知の事実ですし、DRAMメーカーやフラッシュ・メーカーの工場がフル稼働状態で、生産能力を増加させる設備投資判断が相次いでなされていることはご承知の通りです。
※「カスタムIC」…特定の用途・製品のために特別に設計や製造された半導体チップのこと。

 一方、パソコンといえば、主たる記憶装置はなんと言ってもまだまだハード・ディスク・ドライブ(HDD)が主力であり、その勢いは一時期あった「HDDはフラッシュ・メモリーを利用したSSDに置き換わるのではないか」という一部市場関係者の悲観予想を嘲笑うかのような状態が続いていますが、そのHDDの主力部品であるスピンドル・モーターの世界トップ企業(シェア80%を超えます)である日本電産の永守社長の鼻息を知れば、この世界がまだまだ拡大期にあるということを感じることができます。

 それはMLCC(積層セラミック・コンデンサ)で世界トップを走る村田製作所などの決算などを見ていても同様です。個別企業の投資判断については本稿で触れるものではなく、それらから見えてくる業界全体の流れについて申し上げているのですが、市場が景気の二番底懸念や欧州の金融機関問題などを気にしているのとはまったく別の次元で大きな時代のうねりが始まっています。森のことばかりに木をとられていると、せっかくの投資収益を上げるチャンスを逃してしまうと思われてなりません。

■認識の違いが生じる原因

 たとえば『iPhone』や『iPad』を作っているアップル(AAPL)や日本電産の決算内容、言い換えればスティーブ・ジョブズCEOや永守社長のコメントを聞いた時に受け取る人によって認識の違いが生まれる最たる理由は「ユーザーか、ユーザーでないか」ではないかと思います。薄型テレビなどについても同様だと思います。従来のブラウン管テレビと比較して、テレビを観るという効用だけで言ったら薄型テレビに買い換える理由などなく、しいてはその需要見通しにたいして強い絵は描けないかも知れません。ましてや3D映像については、テレビコマーシャルでも2D放送では再現しようがなく、それは映画館で観た人の「ちょっと気持ち悪くなった」というようなネガティブ評価の方に足を引っ張られるかも知れません。

 『Windows 95』が発売された時、世の中の流れに乗り遅れるという強迫観念からパソコンを購入したために「何の役にも立たない。個人には不要だ」と言ったコメントをする人をたくさん見た気がします。スマートフォンや『iPad』も同じかも知れません。「電車の中で、片手で持って電子書籍代わりに読むには重過ぎる」と評したコメントを見たことがありますが、おっしゃるとおり電子書籍として開発された『キンドル』などと比べたら重過ぎて役には立ちません。ただ私は前述の永守社長が言われた「『iPad』がHDDを搭載する日が必ず来る」というコメントの方に一票を投じます。それは全く違った用途を提供しているからです。多少は重くなるかも知れませんが、HDD搭載により記憶容量が大きくなることを私は望みます。ちなみに私の『iPad』ですが、私が利用していない時はほとんど小学生の娘が独占的に使っています。

 
(出典:Bloomberg)

<ドル円為替の1年分の日足です。-----------------------昨年11月から8カ月振りとなる円高水準にまで円が買われました。にもかかわらず株価が持ち堪えたことは高く評価できると思います。>

今週のポイント

■市場が気にするのは米国経済統計か?

 森に気を取られずに、木を見ましょうと申し上げても、市場全体はまだしばらくは森の方に注目しているのだろうと思います。その一番の注目が今週末に発表される米国の雇用統計です。先週米商務省が発表した米国の2010年4−6月(第2四半期)の実質国内総生産(GDP、速報値、季節調整済み、年率)は前期比2.4%増に伸びが鈍化し、市場の予想(2.6%増)も下回りました。貿易赤字の拡大や個人消費の伸び悩みが影響したとのことですが、経済全体の約70%を占める個人消費は1.6%増加と、前四半期の1.9%増からさらに減速し、雇用回復の遅れが家計の支出を抑えていることが明らかになっているからです。

 雇用統計発表前の水曜日にはその前哨戦となるADPによる民間の雇用関係の数値が発表になります。これは給与明細の作成を受託している民間企業がその動向を雇用統計発表前に公表するため、米国雇用統計に注目が集まっているこの数カ月、特に市場の注目を集めるデータのひとつになってきたものですが、前述の理由から米国景気の先行きをみたいと思う市場には格好の評価材料になるものと思われます。

■ISM景況指数も発表されます

 日本市場のマクロデータよりも米国のマクロデータが市場の関心を集めていることに違和感がないわけではありませんが、月曜日には米ISM製造業景況指数、水曜日には米ISM非製造業景況指数が発表になります。景気転換の先行指標であり、前者は製造業300社以上の購買担当役員にアンケート調査を実施して作成されます。50を上回ると景気拡大、逆に50を割り込むと景気後退を示唆しているとされ、4月が60.4、5月が59.7、6月が56.2とこの3カ月間一貫して低下してきています。

 前述の雇用統計に神経質になっている現下の状況で、週明け早々からこれらISM景況指数が市場予想を割り込むようだと、米国長期金利の低下が加速され、対ドルでの円高が加速されることになるかもしれません。また当然にしてこれらは米国株式市場にとってはネガティブな話であり、株価の下落も併せて起こりうると思われます。

■やっぱり木を見るべきです

 先週の株価下落の要因のひとつとして、パソコン用グラフィック・チップの世界最大手であるNVIDIA(NVDA)の決算見通しが芳しくなかったというのがありましたが、これこそ市場が今のテクノロジーの流れに混乱していることの大きな証左だと思います。同社は世界最大手のグラフィック・チップのメーカーであるとはいえ、元カナダのATIがAMDに買収されて以降は実質的に唯一の専業メーカーであるともいえます。そして現状のパソコン用グラフィック・チップの市場は、インテルがその機能をチップセットや、あるいはMPU自体に取り込む流れの中で縮小状態にあり、ある意味では厳しくて当然と言えます。これは日本でその半導体パッケージを受注している電子部品メーカーの動向にも如実に現れており、技術ロードマップ上は当然わかっていた話です。ただそれを受けて市場がネガティブ・リアクションを起こしたということは、まだまだ多くの誤解があるということのように思われます。つまりまだまだ市場が非効率であるということで、そこに投資収益をあげるチャンスがあります。是非、個々の木の成長度合い(決算内容)を確かめて、森を見ず、木を見る投資を考えていただけたらと思います。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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