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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年7月26日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

7月第4週

マーケット概況

株式 週末終値
(7/23終値)
前週末比
(7/16比)
日経平均 9,430.96 +22.60 +0.24%
NYダウ 10,424.62 +326.72 +3.24%
金利・為替 週末終値
(7/23終値)
前週末比
(7/16比)
長期金利 1.065% -0.020%
ドル/円 87.46  
ユーロ/円 112.90  

市場の疑心暗鬼はいつまで続くのか?

前週の総括

■日本国内の話は気にしない! 気にしない??

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。週を通じて終わってみると日経平均株価の水準は前週末対比わずかですが22.6円値上がりで終了しました。ただ週の半ばの雲行きは相当怪しく、週末に欧州銀行監督委員会が発表するストレス・テストの結果に気を遣いながら、まずはバーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言(詳細は後述)に委縮するという展開となりました。その22日には日本でも信越化学(4063)を皮切りに主要企業の決算発表が始まりましたが、主として市場の目線は欧州の動向や米国経済の動向に集まっていたという感じです。

 その最たる理由は為替変動にあります。前週にはドルで88円台、ユーロで113円台にまで円が売られる場面があったものの、先週はドルが86円台半ば、ユーロは110円台にまで買われてしまったからです。日本経済自体が“強い”という認識がある時は「円資産を買うために円が買われている」という理解から、円高は株高要因になりますが、現在のように日本経済自体に“黄信号”あるいは“赤信号”が灯りそうだと思われている時は、やはり日本市場にとっては円安が好まれるようです。これは国内需要が衰退している中で、いかに国富を増やすかと言えば、やはり外需に頼るしかなく、それは円安の方が、影響が大きいと市場が理解しているからです。

 先週も参院選挙後の捻じれ国会の対策として、民主党が国民新党との連立の枠組みを確認し、社民党との連携も模索するなどの政権与党の政局運営に対する報道が諸々ありましたが、基本的に市場はこれらについては相変わらず無関心であったように思われます。

■バーナンキ・ショック

 21日のNY市場はアップル(AAPL)の大幅に市場予想を上回る好決算や、あるいはモルガンスタンレー(MS)やウェールズ・ファーゴ(WFC)などの米銀の好決算で強含んで始まったにも関わらず、バーナンキFRB議長の上院での議会証言が始まったのを受け急激に失速、日中足でみるとアイガーの北壁のような形で急落して終わりました。それは議長が「We recognize that the economic outlook remains unusually uncertain.(われわれは、経済の見通しが引き続き異常なほど不透明だということも認識している)」と議会証言したことが市場に伝わったからなのですが、日本に限らず現在の資本市場がいかに疑心暗鬼に陥っているかを端的に表したものと思われます。同日までに発表になったS&P500種に含まれる企業の決算発表は約100社でしたが、そのうちの75%以上が好決算を発表しているにもかかわらず、FRB議長のちょっとした発言が市場の猜疑心に更に火をつけるのですから、ちょっと異常なメンタリティーになっているような気がします。

 ただ議長発言の趣旨は「経済対策について、万策尽きているわけではないですよ」というどちらかと言えば景気の二番底懸念を抱く市場に対して「やれることはまだあるから大丈夫」と言いたかったもののようなのですが、「unusually uncertain(異常なほど不透明)」という部分が必要以上にクローズアップされてしまったようです。

■日米金利差縮小がドル円の円高要因

 これを受けて市場は当然にして利下げなどを考え、米国債券市場は急騰(金利は低下)、米国10年債金利は2009年4月以来となる2.85%台にまで急低下しました。米国金利の低下につられる形で日本の金利も低下するのですが、日本の10年債金利は冒頭の表にもあるようにすでに1%割れをも展望する水準にまで低下しており下げ代が少なく、結果日米金利差は直近6月末の安値を下回りついに1.7%台に突入しました。これを受けた為替市場ではひとまず円が買われるということになり円高が加速、気がつけば昨年11月末の高値まであと一息というところまで来てしまいました。当然対ユーロに対しても円高です。円を買う積極的な理由はないとしても、金利差縮小から相対的には均衡状態は円金利が上昇したことになり、円が買われるという流れができているようです。

■アップルの好決算、信越化学の好決算

 『iPad』に続いて『iPhone 4』もトラブルを抱えながらも販売を伸ばし、素晴らしい決算を20日に発表したアップル(AAPL)ですが、このインプリケーションは非常に大きいと考えています。先日行われた世界最大の半導体関連イベントであるセミコン・ウェストでのアプライド・マテリアルズ(AMAT)のコメントの中に「『iPad』の搭載する半導体の量は、ハイエンド・ネットブックPCより60%も多い」というものがありました。世界中で『iPad』が大ブームになっていることはご承知の通りですが、その製造元であるアップルの決算内容はこの先の見通しを悲観しがちであるアナリストの予想を一掃するに充分な内容であったと思われます。つまりそうした製品が売れているということです。

 その半導体の原料と言えばシリコンウェハーとなるわけですが、22日に発表された信越化学の決算はまさにその300ミリ・ウェハーのフル生産が続いていることを明らかにしました。同社は一方で米国住宅市場の動向に左右されやすい塩ビ事業なども手掛けており、ハイテク市場の見通しにポジティブになり切れないアナリストらの見通しは絶好調とは評価してくれませんが、半導体はアプリケーションとして需要が高まっており、現実にその生産もシリコンウェハーの段階からフル稼働と言うことがあらためて証明された話だと見ています。

 こうした話があるからこそ、世界最大の半導体ファンダリー企業である台湾のTSMCは先日主要2工場の生産能力を年末までに2割増強すると発表したわけです。勿論、ラインで使われるのは300ミリ・ウェハーによる最先端製品の生産ラインで回路線幅が28ナノ以下となるものを予定しています。こうした流れが全てインテル(INTC)の決算発表以降、すべてひとつのストーリーの中で繋がっているのは、見ていて気持ちの良いものです。

■米国住宅市場は底値り状態

 注目の米国マクロ経済の状態を推し量るもう一つの材料として、住宅関連の統計がありますが、米商務省が20日に発表した6月の米住宅着工件数(季節調整済み、年率換算)は前月比5.0%減少し54万9,000戸と、2009年10月以来の最低水準となりました。ただ市場予想は57万4,000戸であったこと、一方で、住宅着工許可件数が増加したことなどを受けて、今後の住宅建設の回復が示唆されたと市場は受け止めたようです。

 また全米不動産業者協会が22日発表した6月の中古住宅販売件数(季節調整済み、年換算、以下同じ)は前月比5.1%減の537万戸となり2カ月連続のマイナスとなりましたが、市場予想の中央値は510万戸だったためこれもまた市場が好感する内容となっています。

 
(作成:楽天投信投資顧問)

<日米金利差とドル円為替。-----------------------日米の金利差がドル円動向の大きな説明要因であることは一目瞭然ですが、直近は特に金利差との相関が高まっています。>

今週のポイント

■ストレス・テストの結果は市場が一番望む結果になった

 市場が最も先週注目していたのは欧州銀行監督委員会が発表するストレス・テスト(健全性審査)の結果でしたが、23日に発表された内容は審査対象となった91行中7行が不合格という、予想(期待)された内容としてはベスト・アンサーになったように思います。不合格行の資本不足は全体で35億ユーロ(45億ドル)となり、大手行はすべてテストを無事通過しました。不合格となったのは、スペインの中小銀行5行に加え、ドイツの国営不動産金融ヒポ・レアル・エステート、ギリシャ農業銀行の計7行です。

 すでにアナリストの間では審査の厳格性に対する疑問が浮上したりしていますが、まず大手行に不合格がでた場合、そしてまったく91行中に全く不合格がなかった場合などを想定すると、適度にダメ出しをした感じの今回の結果は恐らく最善の結果となったと思われます。どんな結果がでても市場全部を満足させることは今回の状況では不可能なことであり、疑心暗鬼に囚われている市場にとってはこれで良かったという意味です。

■日本企業の決算発表が始まりました

 前述の信越化学を皮切りに日本企業の決算発表が始まりました。ポイントは4−6月期の決算内容よりも7−9月期や今期通期の見通しに関わる為替インパクト、あるいは景気回復速度の減速が市場の関心を集める中で、どの程度まで企業側がそれらを織り込んで、もしくはそれらを払拭するような見通しを出してくるかだと思います。

 市場全体のPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった伝統的かつ最も基本的なバリュエーション指標は相当に株価が割安になっていることを示しています。大幅減益などの発表が続くようであれば、これらの数値が修正されてしまうことになりますが、特殊要因を除けば全般はそう大きく市場をネガティブに驚かすような数字はでてこないと考えています。むしろ、疑心暗鬼に陥って猜疑心満々の市場に対して、緩やかに安心感を与えてくれるようなものが出揃うのではないかと思っています。

 その背景の一つは前述の半導体関連の一連の流れなどにあるわけですが、今年のこの猛暑は国内の個人消費にとっても恵みを与えてくれるはずです。事実、エアコンの売り上げはうなぎ上りです。つまり外需関連だけでなく、内需関連でも注目できる材料がでてくるのではないかということです。ただひとつ不安材料を上げるとすれば、株式の市場売買代金が引き続き低調なままであるということです。この状況が続く限り、日本市場は個別に動けるというよりは、引き続き海外要因を気にしながら動向を考えなくてはならない展開が続くものと思われます。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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