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楽天証券ニュース[マーケット情報] | 発行:2010年7月5日 楽天証券株式会社 |
株式 | 週末終値 (7/2終値) |
前週末比 (6/25比) |
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日経平均 | 9,203.71 | -533.77 | -5.48% |
NYダウ | 9,686.48 | -457.33 | -4.51% |
金利・為替 | 週末終値 (7/2終値) |
前週末比 (6/25比) |
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長期金利 | 1.095% | -0.050% | |
ドル/円 | 87.76 | ||
ユーロ/円 | 110.28 |
この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。今週は週明けから世界的に株式市場がドスンと下がる展開から始まりました。前週末にカナダ・トロントで行われたG8での議論を市場が多くの面で肩透かしを食ったと受け取った点もありますが、ひとつには欧州側が金融機関向けのストレステストの結果いかんによっては公的資金の注入も検討しているというほどに「欧州系金融機関の実態は悪いのか」と思ったことや、一方ではG20の議論として各国が財政再建への歩調を合わせることで、景気拡大よりも財政再建への道が優先されるという思いが強まったということがあります。
財政再建自体は決して悪いことではありません。ギリシャ問題を引き合いに出すまでもなく、世界各国が自国の財政状態をリーマン・ショックなどで傷んだ状態を修復し健全な状態することにより、市場の抱える大きな不安である「ソブリン・リスク」がなくなり正常化するからです。しかしそれは景気回復の為の金融緩和などの各種刺激策よりも財政再建を優先するということになりますから、下手をすれば景気が回復しないどころか失速、あるいはあらたな金融危機の発生と言う話につながりかねません。これを市場は嫌気して価格形成が始まったというのがこの週の流れです。
またこと日本に関して言えば、そのG20の首脳宣言として「2013年までに少なくとも財政赤字を半減する」という数値目標が明記されたのですが、日本は現状の財政状況が先進国の中で突出して悪いことを勘案されて「例外扱い」とされるという情けない話となりました。ただ、日本はこの例外扱いを適用される代わりに、15年度までに基礎的財政収支の赤字をGDP(国内総生産)比で半減、20年度までに黒字化するという国際公約を受け入れることになりました。これは結構重い話かもしれません。現状の政府案である名目成長率を1%台後半とする前提で話を進めると、基礎的財政収支の赤字は現状の30.8兆円から2015年で21.8兆円にしかならず約5兆円の不足が生じるからです。この5兆円の不足分を歳入増と歳出減で埋め合わせないとなりません。
いつの間にか7月11日の参議院選挙の争点が消費税増税の話にすり替わり、それも野党自民党10%案に与党民主党が突然同調したことにより「消費税引き上げは所与のもの」という感じになりつつあります。もちろん、与党民主党の小沢前幹事長は民主党のこの転身ぶりを招いた執行部を公然と批判し、また先頃まで連立政権の枠内に居た社民党も消費税引き上げを反対していますが、大勢は前述の通り消費税引き上げを所与のものとして進んでいるかに思われます。すなわち歳入増です。とはいえ、この歳入増分がそのまま基礎的財政赤字の削減につながるかと言えば、法人税減税の話(歳入減)も同時にあり、また首相の掲げる「第三の道」の考え方によれば社会福祉政策も拡充される(歳出増)ため、より大きな歳入増を見込むか、あるいはまだ俎上に上がっていない歳出減の話が出てこないと国際公約を達成するのは不可能になってしまいます。
しかしこうした背景があるにもかかわらず、日本円が対ドルでも対ユーロでも強く(円高)推移する一週間であったことは正直不思議でなりません。財政状況の現状に鑑みて「例外扱い」された国の通貨がなぜ強いのか。背景にはもうひとつ、金利差の縮小が上げられます。上の表で示す通り、日本の長期金利も1.145%から▼0.050%となる1.095%まで低下しましたが、米国の長期債金利は3.1070%から▼0.130%の2.9770%にまで低下しました。週末はやや戻してのこの水準で、7月1日は2.8793%にまで低下しています。これらは後述する通りの先週発表された各種米国経済統計が米国の景気回復速度の陰りを示すものが多かったことと、週末に発表になる雇用統計を控えてリスク許容度が落ちたことにより「質への逃避」がより強まった結果と言えます。いずれにしても、今までよりも日米の金利差が縮小したことで円の買い戻しが進んだということです。ドル円は最高値では86円台にまで入っています。
前週は住宅関連統計が押し並べて市場の期待を裏切ったことにより米国経済回復の陰りを市場は感じ始めていましたが、今回は更に消費者信頼感指数、ISM製造業景況感指数、ADP及び雇用統計が市場予想を下回る結果となったため、市場には更に米国景気への弱気論が台頭してしまいました。NYの知人のトレーダーから「Oh what an ugly market!! No place to hide except the bond market!」というメールが送られてくるほどで、週を通じて株式市場は下落、NYダウで▼4.51%、S&P500種で▼5.03%、そしてNASDAQ総合株価指数は▼5.92%の下落となりました。日本市場の下落率の方がもっと悪いですが、一時は利上げの話も出るような状況に思われていた米国経済ですからNYのトレーダーの気持ちも解るというものです。
ただ、ちょっと冷静に見ないとならないと思われるのは、それら経済統計自体の数値がある程度悪かったということよりも、この週はお化け屋敷を歩いている心境に近かったということです。どういう意味かと言うと、ギリシャ危機問題以降注目が集まった欧州の信用不安問題から、ここしばらくは米国の景気減速に市場の視線が変わってきていました。その渦中において週末7月2日に最大の出し物である“米国雇用統計”の発表が控えていたからという意味です。5カ月続いた非農業部門の雇用者数の増加傾向がマイナスになる可能性まで取り沙汰され、まさにADPの統計ではそれが殆ど裏付けられるようになり、誰もが「そろそろ本命が出るぞ、出るぞ」とビクビクした気持もピークに達していたということです。お化け屋敷は「出そうだなぁ」と思う時が一番緊張するではないですか。そして週末、その雇用統計が発表になりました。おまけに週明け月曜日は米国独立記念日の関係で市場は休場となるため、3連休前の大型統計の発表ということです。
内容は事前、というより直前の市場予想(▼約10万人)に違わず非農業部門の雇用者数(季節調整済み)が前月比▼12万5000人というものになりました。理由は前月まで雇用者数の増加を押し上げていた米政府の国勢調査の為の臨時雇いが終了(22万5000人の減少要因)したということが主たるものですが、チャートにするとちょっとがっかりするシェープとなってしまいます。
ただこれを受けたNY市場の反応はNYダウが▼46ドル安、S&P500種が▼4.79pts安、そしてNASDAQ総合指数が▼9.57pts安とさらなるドスンはなかった、というよりむしろ引け前に一度は前日にプラスの水準まで戻しているというのは注目に値します。NYダウの場合で、日中の安値は前日比で▼118ドル安まで下落していたのですから。こんな状況下ですから、3連休間にやや引けで売られるのは許容範囲です。まさにお化け屋敷でいうところの、出る出ると思っているその直前までが一番怖くて、そして実際のそれを見ると「なーんだ」となるのと同じ現象だとも言えます。市場はまさにその試練をこの週、乗り越えたということができるように思います。
(出典:Bloomberg)
<米国NYダウのこの1年間の歩みです。-----------------------確かに勢いがなくなりダウントレンドに入ったという見方ができなくはありません。ただ、直近の日足が2日間とも下髭を残す展開となって大物の経済統計(雇用統計)が終わったというのは、ひとつの安心材料でもあります。>
ご承知の通り、来週11日(日曜日)は第22回参議院選挙の投票日になります。国民の大きな期待を背負って始まった民主党政権が誕生からわずか9カ月で首相交代をせざる得ない事態となり、さらには「4年間、消費税は引き上げない」とマニフェストに謳っていた前言を翻して「超党派で議論して消費税引き上げを検討する」と変わった与党民主党政権への民意の反映という意味でも注目される参議院選挙が行われます。結果は全く予想できません。ただ正直な話、民主党が勝とうが負けようが、株価に大きな変動はないかも知れません。というより、あまりのドタバタの中で参議院選挙になってしまい、また民主党のマニフェストも自民党のそれも、あまり大差のない状況になってしまった今、どちらに転んでも市場が大きな転機を迎えるとは考え難くなりました。逆に言うなら、市場は政治に何も期待しない状態が再び訪れてしまったということです。民主党が大敗して、その流れから衆院解散総選挙というような流れができるならば、多くの意味で政治が活性化することを評価する外国人投資家も増えるように思いますが、多少の捻じれ国会になる程度ならば予想の範囲、民主党が過半数をやはり握るような結果になっても、市場はそれを想定の範囲内と受け止めるように思われます。ただ、いずれになるにしても、選挙前という現実は市場の様子見を強める材料にこそなれ、その期待値でどちらかに振らす要因には成り得ないと思います。
久し振りに小泉元首相の「小泉節」あるいは「小泉劇場」を、7月4日に国技館で開催された『楽天証券サービス開始11周年記念投資セミナー』で聞くことができました。その講演内容は随所でフムフムと頷かせる場面あり、なるほどと感じさせる素晴らしいものでしたが、何より感激してしまったのは、その場に居なくてもそれをなんと『iPad』で、なおかつリアルタイムで観ることができたということです。昨年は私も講演者として会場におりましたが、今年はこの原稿を書きながら自宅で拝聴させて貰いました。試してはおりませんが、恐らく『iPhone』などのスマートフォン、つまりWebブラウジングが可能な機器ならば会場に居なくてもそれができたであろうと思われます。自宅内の『Wi-Fi』環境ならば動画もスムーズに音声などもコマ落ちすることなく生の臨場感をそのままに楽しむことができました。
注目すべきポイントはふたつ。1つ目は放送局の重装備がなくてもインターネットを通じて私設のこうした放送(ネット配信)が手軽なものとなってきたということです。これらはすでに企業の決算説明会や株主総会でお馴染みのものでもありますが、最初の頃は理論上可能でも、コスト面で、あるいは送受信双方のインフラ面で課題が多く、あまり手軽なものとは言えませんでした。2つ目はそれを『iPad』のような機器で、ワイヤレスで観ることができるということです。つまり、パソコンの前に拘束されるのではなく、自分の居る場所にそれがついてくるということです。ただ、残念ながらワイヤレスという環境についてはまだ多くの課題を残しています。環境によってはまだコマ落ちや音声の中断といった状況になりかねませんから。
ただ間違いなくこの方向に人間のニーズは向き始めたということです。無線LANの環境があるところならばできることが、屋外やあるいは無線LANの環境レベルによってはできないということに段々と人々は不満を募らせるはずであり、またそれを満たそうとする技術やサービスはどんどん市場に投入されていくはずです。そのひとつが今年後半にも始まるはずの『LTE』などの3.9G世代の携帯通信でしょうし、すでにサービスに供されている『WiMAX』などです。
さる6月21日、米国でAT&TとVerizon WirelessがWBA(Wireless Broadband Alliance)に加盟したことが発表されました。そのインプリケーションについては次号のブログの方でご紹介予定ですが、前述のLTEの話とはまた違った流れも同様なニーズの元に始まっています。市場は年初来の安値を更新するような状況ではありますが、面白い流れへと続くマグマの胎動は始まっていると確信しています。
今週も素晴らしい一週間になることを願っています。
≪相場が上がっても下がっても収益のチャンス≫■日本の株式市場に対して概ね3倍の値動きを目指す |
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楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。
※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/
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