※配信先の変更・停止は巻末をご覧ください。

楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年6月7日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

6月第1週

マーケット概況

株式 週末終値
(6/4終値)
前週末比
(5/28比)
日経平均 9,901.19 +138.21 +1.42%
NYダウ 9,931.97 -204.66 -2.02%
金利・為替 週末終値
(6/4終値)
前週末比
(5/28比)
長期金利 1.265% +0.015%
ドル/円 91.91  
ユーロ/円 110.00  

民主党新政権を市場は歓迎するのか?

前週の総括

■鳩山政権終了、首相交代で新政権へ

 この一週間の一番の話題は何といっても連立崩壊から首相交代へと繋がった政治の流れに尽きると思います。先週末、辞任を決断するまでに要した時間に比べると、それから新首相決定までの余りの早さには驚くばかりです。民主党はその野党時代に「首相の首を据え変えるだけでは駄目、衆院を解散して国民に信を問うべき」と当時の与党自民党に詰め寄っていたにもかかわらず、いざ自らが与党になってみると自民党の時と同じく、首相の首を据え変えるだけでした。さらに言えば、新首相となる新党首を決めるプロセスの中で、まったくと言って良いほど新党首・新首相が何をどう考え、どのような政権運営、そして国づくりを目指そうとしているのかが伝わってきていませんから、市場に流れているのは、ほとんど憶測ばかりに過ぎないままに週を終えています。故に、政治不信に傾いている市場が新首相を歓迎するかどうかはまだ解りません。新閣僚人事なども週明け早々にあっという間に決まるようです。

 これら政治動向を受けながら日経平均株価はこの一週間で約1.4%の上昇となり、株価は一見首相交代を歓迎したかに思われますが、この一週間で逆に日本円は売られています。ちなみに、日本の長期金利がやや上昇する傍らで米国長期金利は低下していますので、金利差縮小の中で円が売られた(本来円高になる動き)ことを、新首相が円安論者と市場が憶測しているからという理由付けだけで片付けるのは不安な気もします。株価上昇は円安が故に外需関連株が買われたからと見る方が無難であり、問題は円安の理由です。

■米国雇用統計は市場予想を大幅に下回る

 現地時間4日に発表された米国5月の雇用統計は非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)が前月比43万1,000人増加したものの、市場予想の中央値(53万6,000人)を下回り、また事業所調査に基づく民間雇用者数は5月に4万1,000人増にとどまり、増加幅は市場予想に13万9,000人届きませんでした。つまり国勢調査の為に政府に一時的に雇われた人が多いという意味です。ユーロ不安に市場が怯える中で、米国経済と中国経済が世界経済を牽引するエンジンとなることを市場は期待していますから、この雇用統計の発表を受けてNYダウは323ドル下落し10,000ドル割れの9,931.97ドルで終わりました。S&P500種株価指数も前日比3.4%安の1064.88となり、構成する500銘柄中497銘柄が下落しています。

 あわせて「Fly to Quality(質への回避)」の流れの中で低下傾向にある米国金利ですが、この雇用統計を受けて大きく下落(債券は買われる)、10年債利回りは過去約2週間で最大の下げとなり3.2023%となりました。

■中国経済も拡大ペース鈍化の兆し?

 中国物流購買連合会が1日発表した5月の製造業購買担当者指数(PMI、季節調整済み)は53.9と、前月の55.7から低下し市場予想をも下回りました。同指数が50を上回れば製造業活動の拡大を意味しますが、経済統計は中国製造業活動の拡大ペースが鈍化していることを示していると言えます。中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁はこれを受けて政策当局者は景気を注視すると述べ、さらに同指標には欧州債務危機による影響がまだ反映されていない可能性もあるとの見方を示したと報じられています。

 ただし、これは単純に市場にとってはネガティブな話かと言えば異なり、不動産バブルやインフレ懸念を伴う経済活動の過熱を抑えながら経済発展は続けたい中国政府にとってはある意味金融政策の方向性に従来と違ったベクトルを齎すものでもあり、金融引き締めに怯えていた市場には朗報とも言えます。

■欧州の不安は鎮火するどころか拡大するばかり

 ヨーロッパ発の悪材料がこのところ続いていますが、2008年に発生した信用危機でIMF(国際通貨基金)とEU、そして世界銀行から200億ユーロ(約2兆2,600億円)の救済融資を最初に受けたEU加盟国であるハンガリーから今度は狼煙が上がりました。ハンガリー政府の報道官が、同国のデフォルト(債務不履行)の憶測は「誇張ではない」と述べたことが背景で、逃避先としてユーロ売りスイス・フラン買いが膨らんだことにより、ユーロはドルに対して約4年ぶりに1ユーロ=1.20ドルを割り込んで1.1968で週末を終えました。またこれを受けて欧州ソブリン債のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ )は過去最高にまで跳ね上がり、ドイツやフランスのそれも上昇する状況となっています。

 本来、ハンガリーの通貨は『フォリント』でユーロを採用している訳ではありませんが、ギリシャ、スペインと火の手が拡がる中でEU加盟国の弱いところに火の手が飛び火していることを示していると言えます。結局ユーロは売られ、スイス・フランが逃避先として買い進められました。スイス国立銀行は5月19日以降、フラン売りユーロ買いの介入を行ってユーロを買い支えましたが、その努力は徒労に終わって無に帰したばかりでなく、それ以前よりも安くなってしまいました。スイス系金融機関の欧州圏向けユーロ建て貸出しの評価の為にもユーロを買い支えたい思惑がありますが、市場の流れには逆らえません。ちなみに、ギリシャ向け債権はフランス系40%、スイス系40%、その他で20%と言われていますからひやひやかも知れません。週末、フランス系銀行ソシエテ・ジェネラルのデリバティブ損失の未確認憶測が市場を飛び交いましたが、火のないところに煙は立たないとも言えます。

 
(出典:Bloomberg)

<スイス・フランとユーロの日足です。-----------------------5月下旬にスイス国立銀行は自国通貨売りのユーロ買いを行ってユーロを買い支えていますが、結局今回の問題で市場は逃避先としてスイス・フランを選び、一気に買い進まれてしまいました。>

今週のポイント

■新政権に期待しますか?

 辞めて行った人の非をいまさら責めたてても始まりませんが、70%を超える支持率で誕生した鳩山政権が、支持率20%を下るところまで低下し、わずか8カ月間余という短命に終わった事実は、鳩山元首相個人の才覚の問題としてではなく、政党として厳粛に受け止めて欲しいものだと市場関係者としては思わずにいれません。選挙対策内閣とまで言われてきた連立与党の一角が普天間問題で崩れ、それが引き金となって政権が崩壊しました。

 確かに首相と幹事長は「政治と金」の問題もあるということで辞任されましたが、もう一つの問題が残っていることを無視してはいけないと思います。それこそが日本の民間金融機関を弱体化させ国際競争力を奪うといわれている「郵政官営化」の流れの話ですが、その法案を今国会で強行採決して通過させるために、ろくな政策協議もしないままに新党首を急いで決め、そして新首相として擁立するやり方を市場は納得しない可能性が高いと思います。

 野党時代に主張してきたことを守り続けるべきだとは言いませんし、マニフェストに変に拘る部分が今回の政権崩壊の理由でもあるので、政権与党となった段階で変わることも大事だとは思いますが、「首相の首を変えるだけ」と非難してきた姿勢については、もう少し整合性を取って欲しかったと思います。

■財政再建議論が始まるのかどうかが問題の1つ

 先週初め、当社ファンドの再委託先であるフランスの運用会社のコムジェスト社の社長と欧州株運用責任者と面談し、最近の投資環境事情を議論した時のことですが、欧州各国の財政赤字を話す中で、彼らはすかさず日本の問題に触れてきました。つまり日本の公的債務残高の問題であり、また財政赤字も決して小さくないという話なのですが、ソブリン・リスクという問題が長引き、拡がるほどに日本のそれにより注目が集まるのは時間の問題だと実感しました。

 新首相は短い期間でしたが財務相として日本の実態を認識されたと思います。故に消費税の話なども出て来ているのだと思いますが、選挙対策内閣のDNAが残ってしまうとするならば、痛みを伴う歳出削減に踏み込むことなく、いたずらに歳入確保の増税議論が罷り通る可能性があります。高過ぎる法人税を引き下げて企業活動を刺激し、成長戦略の中で税収を上げるビジョンがない限り、単なる消費税引き上げは消費をさらに停滞させることはあっても刺激はしません。縮小均衡にならない財政再建議論をしない限り、少子高齢化の流れから抜け出られない(出生率がまた低下したのですから)日本の未来は明るくなりません。恐らくそれにはきちんと議論を尽くして痛みも覚悟しないと難しい話です。それができるかどうか、注目したいと思います。

■日米関係改善ができるのか?

 多くの報道で言い尽くされていますが、この9カ月間の大きな負債のひとつが日米関係の悪化です。朝鮮半島情勢が緊迫する中、有事の際に日本が現状できることは限られています。「自分の国を自分で守る」と前首相は最後まで言われましたが、現状の憲法9条の下である自衛隊という建てつけを変える話は、かなり際どい議論まで含む話です。そうした前提の中で米軍普天間問題があり、日本の安全保障があるのですから、日米関係の捉え方は単純な感情論だけでは成り立たないと言えます。その為には、少なくとも国家として米国との信頼関係はきちんと維持していかなくてはなりません。特定の政治家のスタンド・プレーの為にそれが危機に晒されるとしたら、それは国民を本質的にないがしろにした話です。新首相には大いに期待したいところです。

■使えば使うほど楽しい『iPad』

 いろいろと難しい問題がありますが、一方でこの一週間、『iPad』は使えば使うほどに楽しいITガジェットであることを実感しています。また(自慢して)見せる人見せる人誰もが異口同音に「これは素晴らしい。是非欲しい」と言われます。そしてその一方で、いかにHSPAの帯域を確保して繋いでいると言っても、やはり自宅のWiFi(無線LAN)環境で使うそれと、外出先で使うそれとでは速度に雲泥の差があり、正直、フラストレーションが溜まります。もちろん、無いよりは天と地との差ほど便利なのですが……。つまり「人間の欲望は後戻りしない」という話になるのですが、『iPad』のような機器の未来に大きな可能性を見出すとともに、ワイヤレス環境に大きなディマンドが生まれるはずだと思います。この分野が大いに注目される所以です。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪相場が動いた時がチャンス!値動き3倍を目指すブルベアファンド≫

■日本の株式市場に対して概ね3倍の値動きを目指す

楽天日本株トリプル・ブル、楽天日本株トリプル・ベアの詳細はこちら
楽天日本株トリプル・ブル

日本の株価指数先物取引および日本の短期公社債を主要投資対象とする。日本の株価指数を対象とした先物取引を積極的に活用することで、日々の基準価額の値動きが日本の株式市場の値動きに対して概ね3倍程度となることを目指して運用を行う。

ファンドの詳細・注文はこちら

楽天日本株トリプル・ベア

日本の株価指数先物取引および日本の短期公社債を主要投資対象とする。日本の株価指数を対象とした先物取引を積極的に活用することで、日々の基準価額の値動きが日本の株式市場の値動きに対して概ね3倍程度反対となることを目指して運用を行う。

ファンドの詳細・注文はこちら

 

PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

免責事項

本メールマガジンに掲載している内容はお客様への情報提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。最終的な投資決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、掲載している内容は予告なしに変更または廃止される場合がございます。必ず楽天証券のホームページなどで最新の情報をご確認のうえ、各サービスをご利用くださいますよう、お願いいたします。

リスクと費用について

投資信託は、商品によりその投資対象や投資方針、申込手数料等の費用が異なり、多岐にわたりますので、詳細につきましては、それぞれの投資信託の「目論見書」「目論見書補完書面」を必ずご覧ください。また、一部の投資信託には、原則として換金できない期間(クローズド期間)が設けられている場合があります。

■投資信託の取引にかかるリスク

■投資信託の取引にかかる費用

■金融商品取引法に係る表示弊社の取扱商品等にご投資いただく際には、各商品等に所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失を生じるおそれがあります。各商品等へのご投資にかかる手数料等およびリスクについては、楽天証券ホームページの「リスク説明」ページに記載の当該商品等の契約締結前交付書面等をよくお読みになり、内容について十分にご理解ください。

商号等:楽天証券株式会社
楽天証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号
加入協会:日本証券業協会、社団法人金融先物取引業協会

■楽天証券ホームページ
http://www.rakuten-sec.co.jp/

東京都品川区東品川4-12-3 品川シーサイド楽天タワー
カスタマーサービスセンター(平日8時-18時)
お手続き専用ダイヤル
0120-885-687(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3322(通話料有料)
各種商品に関するお問い合わせダイヤル
0120-41-1004(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3333(通話料有料)

Copyright © 2010 Rakuten Securities, Inc. All rights reserved.