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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年5月24日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

5月第4週

マーケット概況

株式 週末終値
(5/21終値)
前週末比
(5/14比)
日経平均 9,784.54 -677.97 -6.48%
NYダウ 10,193.39 -426.77 -4.02%
金利・為替 週末終値
(5/21終値)
前週末比
(5/14比)
長期金利 1.235% -0.060%
ドル/円 90.01  
ユーロ/円 113.24  

ユーロ危機は長引くも、投資機会は広がっている

前週の総括

■日経平均株価は10,000円割れ

 この1週間の主な市場の動きは上記の表の通りです。前回は「欧州中銀(ECB)、劇薬を飲んだ次の打ち手は? ユーロ崩壊の危機」というタイトルでこのメルマガをお届けしましたが、ギリシャ問題に端を発したユーロ不安に明確な次の打ち手がやはり打ち出せないままに市場は混乱を極め、日経平均株価は2月10日以来となる10,000円割れとなって週を終えました。ひと頃は1,000pts乗せも期待された東証TOPIXも逆に900pts割れとなり、同様に東証マザーズ指数なども400ptsを割れ、いずれも今年2月以来の水準にまで低下しました。

 あわせて世界中の株式市場が混乱を極め、NYダウも大引けでこそ値を戻して終わったものの、週末21日の市場開始直後には安値9,919.28ドルと10,000ドルを割る場面もあり、一方アジア市場でも上海総合株指数がやはり21日の取引開始直後に2,500ptsを割り込む場面が見られました。世界の主要な市場で年初来のリターンがプラスになっているところは、これで、残念ながらなくなりました。

■ユーロ売りが止まらないことが最大の原因

 今回の世界的な株式市場混乱の最たる理由は「ユーロ不安」です。すでに問題はギリシャ一国の問題ではなくなり、ECB(欧州中央銀行)を中心とした統一通貨ユーロに対する信用不安であり、この問題に納得がいく答えを市場が見つけない限り「これで収束」という判断はなかなかできない状態が続くものと思われます。この間、ドイツがユーロ圏諸国の国債の空売り規制を実施すれば「まだ市場の知らない悪い材料があるらしい」と市場が怯え、米国で発表になった新規失業保険申請件数が市場の事前予想を上回れば「欧州問題がすでに米国経済にまでマイナスに波及し始めた」とネガティブ連鎖が続くあたり、市場が相当疑心暗鬼に傾いていることを証明しています。

■ドイツ語、フランス語、あるいはギリシャ語が解りますか?

 繰り返しになりますが、その根底にあるのがユーロ不安です。その払拭には相当な時間が掛かると考える理由は、かねてからの持論ですが、言葉の問題にあります。良くも悪くもユーロが過大評価されたり、今回のように不安心理払拭が簡単にいかなかったりする背景には、加盟16カ国のどこで、何が本当に起きているのかが極めて伝わり難い、あるいは理解し難いという根本的な問題があるということです。反対に米国ドルが常に多くの批判に晒されたりするのは、言語が英語(米語)で極めて情報伝達の透明性が高いからです。

 例えば、米国については大統領(オバマ氏)のみならず、国務長官(クリントン氏)や財務長官(ガイトナー氏)、中央銀行総裁(バーナンキ氏)の名前まで多くの金融市場関係者が知っています。そしていつどんな経済統計が発表され、だいたいのそれらの水準にまで言及することができます。米国の現在の失業率が9%台だということは、ほとんどの市場関係者が諳んじて言えるでしょうが、果たしてEU圏についてはどうでしょうか? 加盟の16カ国のどこまで解りますか? 日本の財務大臣や日銀総裁の名前についてもやや不安が残りますが、ドイツ、フランス、そしてPIIGS各国などのこれら要人の名前を諳んじて言える人は少ないだろうと思います。正直、私も自信ありません。ましてやその国々の経済統計など無理です。第2の基軸通貨と持て囃された頃は、逆にこの不透明さが幸いし、不信が高まった今は逆にこれが災いしていると言えます。ドイツ語で書かれた新聞、フランス語のWebページ、ギリシャ語のテレビ中継、どれひとつとっても私には意味不明です。それが最低英語に翻訳されるまでは。

■ユーロは売られ過ぎ反転、ただ円が買われるのは摩訶不思議

 19日に安値1.2144と対ドルで2006年4月の水準まで売られたユーロは、その後明確な理由がないままに「売られ過ぎ」というテクニカルな流れでやや反転しました。この時のユーロ/円は111円台でしたが、その翌日に米国経済指標のひとつとして毎週発表されている新規失業保険申請件数が市場の予想を下回ると米国株が急落、これを受けてユーロからのリスク回避先のひとつ米ドルも評価を下げ、これら2通貨に対して相対的に円が評価されることになり、米国株の下落に合わせて円高が進み、一時ユーロ/円は109.47円の高値を付け、同時にドル/円も88.97円という高値をつけています。これらが週末金曜日の日本市場をさらに圧迫し、寄り付き直後に一気に日経平均株価が10,000円の大台を割り込んで始まった原因となりました。ただ正直にいえば、為替という美人投票の中で今現在の円が票を集めていられる理由は前述の言葉の問題によるメリットが強い気がします。公的債務の対GDP比が2015年には250%になるとその突出ぶりをIMF(国際通貨基金)が指摘し、また格付け機関から財政規律の具体的な改善が見られない限り現状維持は難しいと指摘されているのですから。

■ドイツ議会はユーロ支援基金枠拠出を可決承認

 朗報と言えばドイツ議会が21日にユーロ支援基金枠への資金拠出を可決承認したことです。少なくとも同基金最大の資金の出し手はその準備が整ったことになります。21日にブリュッセルで開かれたEU(欧州連合)財務相会合後の記者会見では、トリシェ総裁自ら「素晴らしい意見交換ができた」と自画自賛ともとれるコメントを発したりしていますが、市場がどこまでこれらを評価するかは疑問が残ります。ただ、一方でギリシャ財務省が21日に発表した「1−4月財政赤字42%削減成功」という報は市場にとっては朗報かも知れません。これまで市場は貸し手側の合意と借り手側の努力の具体的実効性を求めていましたら、歳入の10%増加(法人税、燃料・アルコール・たばこ税の引上げ)と歳出の7.9%減少(公的部門の賞与及び社会保障費削減)によるギリシャの財政赤字前年同期比42%減少(目標35減少)との報は市場に1つの安心感を与えるだろうと思われます。歳出削減の1つが公的部門の賞与削減と給与ではない点が気掛かりでもありますが、同時にギリシャ国立銀行が20日にまとめたリポートによると、ギリシャ国民の脱税がなくなれば同国政府が計画する予算削減の約3分の1が達成可能との報もあり、やっと借り手側からの具体的な話が出てきたことは内容の是非はともかくとして一定の評価には値すると思います。

 
(出典:Bloomberg)

<日経平均株価の過去1年間の日足です。-----------------------大台10,000円を割れる時に大きな窓を開けています。そして下髭もあります。いったんは窓埋めをトライする可能性が高いと思われますが、もし下がり始めると下値目途を見つけ難いというのも偽らざるところです。>

今週のポイント

■企業決算は好調だったのだが……

 既報の通り、日本企業の2010年3月期決算の内容は充分に評価に値するレベルであったと思われます。これらに伴い、日経平均採用銘柄で算出している日経平均の今期予想PER(日本経済新聞朝刊で毎日発表されているもの)は週末の段階で17.01倍まで低下し、さらに言えば予想配当利回りも1.77%まで上昇とバリュエーション的な割安感は生まれつつあるというのがひとつの論点です。

 論点とした理由は、本来的にはこれらを普通に評価して株価はここで底値固めをし易い地合いになるのが普通なのですが、問題はこの予想収益の算出根拠である為替前提が相当にかけ離れたものになってしまっているということにあります。トヨタ自動車(7203)やソニー(6758)の前提為替はユーロが125円、ホンダ(7267)でも120円ということは前者の場合、すでに実勢と10円以上も乖離していることになってしまいます。ソニーの場合、これだけで営業利益が750億円以上も吹き飛ぶと単純計算することができますが、それを悲観論の中で市場が織り込もうとするのか、それともヘッジ比率なども踏まえた議論で時間稼ぎをしてくれるのか、いずれにしても前述のバリュエーションがそのまま適合できるものではないのは明らかです。

■ハイテクの流れはますます加速している

 しかしその件のソニーについて言えば、5月21日の新聞発表にもあった通り、Google(GOOG)と組んでのネットTV・携帯端末の共同開発の話が発表されています。これらがまさに今の時代の流れを加速させると期待を抱いていた話そのものであり、今回の提携話の標的でもある『iPad』で加速するApple(AAPL)との正面対決の狼煙だと思います。これは決して限られた市場のパイを奪い合う話でなく、パイそのものが拡大する話です。ハイテク産業の雄であるインテルはMPU供給でこの話の中に居ますが、もうひとつの雄であるマイクロソフト(MSFT)は蚊帳の外です。彼らも当然にしてここに着目しているのは明らかであり、新たなニーズの創造が始まっているのは確かな話です。

■トヨタもテスラと組むことに

 一方、トヨタも米電気自動車ベンチャー「テスラ・モーターズ」に5,000万ドル出資(約2%)することを発表しました。同社はシリコンバレーに本拠を置くベンチャー企業で高級電気自動車のスポーツカー「テスラ・ロードスター」を北米や欧州、アジアなどで販売している会社ですが、ハイブリッドで世界をリードしてきたトヨタ自動車がいよいよ電気自動車へも進出することは、中国市場の開拓で後れを取っている同社が環境技術の面で優位性をさらに進めていくひとつの戦略として高く評価できると思われます。

 余談ですが、注文から待つこと7カ月、納車後早2カ月近く経ったプリウスですが、乗るたびにその技術力に感心し、また運転が楽しくて仕方がありません。それは自動車ジャーナリストがよく記事にするような「箱根のワインディング・ロードを攻めた時の車の挙動が……」といった従来の運転の楽しさとは全く異次元のそれであることは言うまでもありません。以前、メルセデス・ベンツや多くのドイツ車のドアが閉まる際の音が「バスン」と重厚な音がすると讃えられ、日本車の小型車でさえそれに倣おうとする時があったことを覚えていますが、それに比べたらプリウスのそれは“驚くような軽い音”です。ただそれも内装材の質感と合わせて省燃費・軽量化のためのものと思うと全く違和感ない納得性があり、アクセルひとつの踏み方さえ変わってきています。すなわち走行中になるべくエンジンを回さないよう、強い加速を求めるような運転をしなくなったということです。正直今では走行中にエンジンが回ると「負けた」と思ってしまうほどです。当然、話題のブレーキの感じにも大変満足しています。重要なのは、このクォリティのハイブリッドカーを200万円そこそこで量産できたトヨタ自動車及びそのグループの技術力です。

 そして同社はテスラとの業務提携で電気自動車の世界にも一歩さらに踏み出すことになります。この世界もますます面白くなると思われ、ユーロ問題で市場が怯えている現在ではありますが、投資機会は今後ますます多くの分野で拡がっていると思われます。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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