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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年5月17日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

5月第3週

マーケット概況

株式 週末終値
(5/14終値)
前週末比
(5/7比)
日経平均 10,462.51 +97.92 +0.94%
NYダウ 10,620.16 +239.73 +2.31%
金利・為替 週末終値
(5/14終値)
前週末比
(5/7比)
長期金利 1.295% +0.015%
ドル/円 92.47  
ユーロ/円 114.28  

欧州中銀(ECB)、劇薬を飲んだ次の打ち手は? ユーロ崩壊の危機

前週の総括

■劇薬(国債)を飲んだユーロ圏諸国の中央銀行

 この1週間の主な市場の動きは上記の表の通りです。先週の最大のトピックスはギリシャなど財政悪化に直面している国々の国債をドイツ、フランス、フィンランドなどの各国中央銀行が買い始めてしまったことです。市場では劇薬とも禁じ手とも言われていた手段です。これにより前週末5月7日には17.467%にまで急騰していたギリシャの3年国債(既報)の利回りは週明け10日には一気に7.733%まで急低下しました。この動きを横目で見ながら取引を開始した米国株式市場はNYダウが一時前週末比プラス454ドル高となる10,835.17ドルまで急騰、大引けでもプラス404.71ドル高となる10,785.14ドルとなり、表面的にはこの手法は大成功という印象を与えました。事実そういうコメントも多々見られました。

 ただ私が懸念していたのは(3月から毎週火曜日にレギュラー出演をしているニュース番組「E morning」(テレビ東京系 午前9時〜9時27分、同11時〜11時25分)でもコメントしましたが)、為替市場がこの件でほとんど反応しなかったことです。7日に対ドル(EUR/USD)1.2757で終わったユーロの水準が翌営業日10日にはしばし1.3095まで戻しますが長持ちせず、引けは1.2787とほとんど前週末比と変わらない水準まで再び売り戻されました。そしてこれを高値として先週のユーロは連日下落し、14日の終値は1.2359とリーマンショック後の安値さえ下回り、2006年4月以来の水準にまで低下してしまいました。

■債券を買えば当然金利は下がるが、為替市場は大きい

 中長期の金利は債券市場の取引で決まります。債券を買いたい人が多く、債券価格が上がれば金利は低下します。逆に売りたい人が多くて値段が下がれば金利は跳ね上がります。これ当然です。ギリシャ国債の話で言えば、格付けが下がり、ECB(欧州中央銀行)への担保として適格でなくなるかも知れないという不安が不安を呼び、ECBが例外措置を認めても買い需要がなく、売るに売れない状態が続きました。だから金利も17%台まで急騰していたのですが、それを「ユーロを安定させる」という、一般の投資とは別の意図をもった中央銀行が買いに行ったのですから値が戻したのは当たり前です。つまり管理相場で決まった金利だとも言えます。

 一方、為替市場はそうは行きません。ましてや第2の基軸通貨という幻想を持つ人も多い通貨であるユーロ市場は、幸か不幸か規模が大きいです。一部の中央銀行の意図で流れを変えられるほどに生やさしくはありません。その市場が「ただ強引に債券市場の動揺を抑えようとしても駄目」と見限っていることはこの動きから明らかでした。つまり例えて言うならば「しばらく出血を止めることはできても、根本的な治療(財政赤字の削減)をしないと単なる目先の対処療法に過ぎない」と見ているということです。ことこの段階に至って市場が求めているのは、実効性のある具体的なギリシャの財政再建計画とギリシャ国内世論の合意の明示です。ゼネストや暴動があるうちは、市場は納得しないでしょう。

 
(出典:Bloomberg)

<通貨ユーロの過去5年間の動きです。-----------------------週末の水準に水平線を引いてみました。リーマンショック後の水準を下回り、2006年第一四半期時点の水準に戻っていることが一目瞭然です。>

■フランス? ドイツ? ユーロ圏からの離脱の可能性

 先日、欧州の証券会社のアナリストが「ドイツがユーロ圏を離脱する」とのコメントを発表して話題になりましたが、この週末はフランスのサルコジ大統領が国内世論をまとめきれないドイツのメルケル首相に「ドイツがお金をだしてちゃんとギリシャを救わないと、フランスがユーロ圏を離脱するぞ」と脅しを掛けたという話で週を終えました。この報道が引き金になって再びユーロが急落、NY市場の株価も急落した形で週を終えました。いずれにしてもユーロ圏の1位と2位の経済大国(圏内救済時の最大に資金の出し手)がユーロ圏に留まるか、離脱するかで腰が据わらない状況になっていることは明らかなようです。

■峠を越えた決算発表、企業業績はポジティブ

 前回申し上げたように、トヨタ(7203)とソニー(6758)の決算発表を含め2010年3月期決算の発表は峠を越えました。まず全体感で言えば、先週よりもさらに日経平均採用銘柄で算出される予想PERは低下し19.45倍、これは2009年1月の水準ですからリーマンショック後に株価が急落したあとの水準と同等であり、バリュエーションの面からは相当に割安感が出ているものと思われます。ただ、為替の前提が先に発表になったホンダ(7267)がユーロを120円とし、スズキ(7269)が115円としたのに対し、トヨタもソニーも125円と現状よりもかなり円安水準で計算している点は市場の悲観論者に付け入るすきを与えてしまったと残念でなりません。

 でもこの混乱の最中にどんな決算見通しの発表を市場関係者は望んでいたのかという点で、決算発表を受けた後の株価動向には疑問を禁じえません。市場が間違っているというのではなく、初期リアクションの修正はあり得るという考えです。日本国内だけで純ドメスティックな影響しか受けないビジネスをしている企業ならばいざ知らず、トヨタやソニーのように日本市場よりも海外市場の売り上げの方が多く、当然にして為替変動にも非常に影響を受けるビジネスをしている企業の経営者にとって、今の時局で大風呂敷を広げることなど土台無理な話です。もしそれを期待していたとするならば、それを市場コンセンサスとするならば、それはむしろアナリスト予想の方がおかしいと思います。そして、通常市場はその過ちを正します。基本となる世界経済の状態が崩れないという前提は置かざるを得ませんが、市場はそこまで傲慢で冷徹ではないというのが私の理解です。

今週のポイント

■日本の政府債務膨張をどう見るか

 IMF(国際通貨基金)が14日に発表した先進29カ国のGDP(国内総生産)比でみた政府債務の規模によれば、2015年の日本のそれは250%になると言います。レポートの主旨は日本の酷状を指摘するものではなく、先進国のそれが2010年の97.8%から2015年には110.2%になるという問題を指摘するためのものですが、日本がその平均の2倍以上になるという点についてはどの時点かで市場が糾弾し始めるリスクを考えておいた方が良いだろうと思っています。

 ギリシャ問題や欧州の財政危機が日ごと世界市場を変動させる材料となるにつれ、ソブリン・リスクというテーマは身近なものになりつつあります。にもかかわらず日本市場のそれが話題に成り難いと錯覚している感じが強いのは「日本国債の94%は国内で消化されているから」というロジック一つでしかありません。確かに郵便貯金と簡易保険などが個人金融資産を掻き集め、またメガバンクでさえ法人向け貸出需要の低迷が続く現在においてはその資金の多くが日本国債を買い向かう資金になっているというのは事実ですが、それがいつまで続くのか、あるいは続けられるのかはシリアスに再計算をしてみる必要があります。

■ギリシャ問題が私たちに教えていること

 ギリシャ問題が明示している事実は、財政再建のためには国民の痛みを伴い、そしてそれを国内世論に納得させるには、それ相応な努力が必要だということです。ギリシャでは就労者の約3分の1とも言われる公務員の給料を10%カットしようとしたらデモが起こりました。増税をしようとしたらゼネストが行われることが決まりました。それを見て、資本市場は「ギリシャの財政改革は進まない」と見透かしてギリシャ国債を叩き売り、ユーロの信認を奪ってきました。EUが何を言おうと、ECBがどんな対策を打とうと、IMFがいくら支援をすると決定しても、市場は常にそれを見透かしてイエローカードを突き付けてきました。それが今のギリシャ問題の本質です。

 翻って日本、首相公約とも言える普天間問題の5月末決着さえ為しえない現政権が、こうした全国民に痛みを強いるであろう増税や本当の意味での歳出削減をできるのかと言えば、残念ながら素直に期待できますとは言い難いと思われます。むしろまた(参院選挙前などに)国債を増発して「(今の世代の)国民の暮らしが大事」とバラ蒔きをするかも知れません。その時、日本のソブリン・リスクは改善どころか、さらに悪化することが約束されます。

■日本が次のギリシャにならない方法

 残念ながら、凡庸な私には具体的な解決策をここで詳らかにすることはできません。消費税を引き上げ、法人税を引き下げ、移民の受け入れを積極化し、政府・国会をスリム化し、行政もスリム化するなどなど、ありきたりな意見は持ち合わせますが、即効性のある特効薬はなかなか見当たりません。ただひとつ言えることは子供たちの顔を見ながら「君たちの時代の日本にこの方がためになる」と本当に思えるかどうかという判断基準で政治に一票を投じるということでしかありません。もちろん自分自身が政治家の世界に名乗り出て「日本を変える」と気勢を上げる方法も奥の奥の手としてありますが……。

 逆にやってはいけないことは明らかです。それは日本のソブリン・リスクが表面化する前に国内円預金を引き出してドル預金に移すことです。確かに日本のソブリン・リスクが表面化すれば円は急落するはずです。それはユーロのこのところの動きを見ていれば明らかですから円からドルに換えるという方法は的を射ていると言えます。市場がいったん動き始めれば、それはあっという間に始まります。しかし、前述のように、日本の政府債務が世界で突出した状態であるにもかかわらず今が平穏で居られる理由は、円の預貯金を通じて国内機関投資家が日本国債を買っているからです。円の預貯金を取り崩して外貨預金に振り替えれば、日本国債を買う機関投資家の資金が減り始めます。一部の内の動きならば良いですが、その流れが日本の個人投資家のブームになったとしたら大変なことです。すなわち、それは物語の進行速度を速めるだけです。だからしてはいけないことなのです。

 民主主義、まずはその一票一票の重みで政治を変えるというのが現実的な対応かなと思います。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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