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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年5月10日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

5月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(5/7終値)
前々週末比
(4/23比)
日経平均 10,364.59 -549.87 -5.04%
NYダウ 10,380.43 -823.85 -7.35%
金利・為替 週末終値
(5/7終値)
前々週末比
(4/23比)
長期金利 1.280% -0.035%
ドル/円 91.58  
ユーロ/円 116.83  

悲観の中に投資チャンスを探す時

前週の総括

■ギリシャ、ギリシャ、ギリシャ

 GWを挟むこの2週間の主な市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価指数は5%、NYダウは約7.3%を超える値下がりとなり、年初来の値上がりを全て吐き出す結果となりました。主要市場の主なインデックス(株価指数)で年初来でプラス圏に留まっているところは少なく、とりわけ欧州株式市場のマイナスと中国・香港株式市場のマイナスが目立つ状況になっています。

 ただ一方で、日本市場でも市場全体の動きを表すと言われる東証TOPIXは年初来まだ+2.66%とプラス圏にある他、大証ヘラクレスに至っては+20.60%の上昇を維持しているなど詳細を見ると世界の株式市場が全滅したわけではありません。国別でみるとベトナムが+9.55%などアジア圏の国々に2桁近い値上がりを維持しているところがあり、また米国市場でも、例えばS&P中型株400種が+4.12%、同小型株600種も+5.43%と大型株を除くとまだプラス圏にあり、NYダウ輸送株20種も+4.84%となるなど回復感のある米国内需景気の恩恵を受ける指数などは上昇を維持しています。

 すなわち、このところの市場変動の最大理由がギリシャ問題であるということを証明しているということです。ただ中国株式市場については別の問題を議論しないとなりませんが、収束に向かうと一部市場関係者が楽観していたギリシャ問題はやはり簡単には終わらないという悲観シナリオ通りに推移していることを認めざるを得ません。

■市場はまだ嘲笑っている

 ギリシャ3年国債の週末終値は利回りで17.467%です。このメルマガでの一貫性を持たせるために10年債で話したり、2年債にしたりしないで、敢えて3年債(EUとIMF(国際通貨基金)が合意した財政支援の条件が3年固定金利の5%であるため)で話を進めていますが、NYダウが1,000ドル近い下落を演じたその翌日においてもまだ金利は上昇し、このところの高値となる水準で週末の取引を終了しています。ちなみに、初めて10%台を超えたのは4月22日であり、さらに4月初めは今となっては3分の1以下の5.7%前後に過ぎませんから、いかにこの間に市場が警鐘を鳴らし続けて金利が急騰したかがおわかり頂けると思います。すなわちIMFによる支援が決定したと報じられようと、EU財相会議で合意に達したと報じられようと、肝心要のギリシャ国内の世論が従来の放漫財政の付けを払うために悔い改めて緊縮財政による財政立て直しを納得した姿が伝えられない限り、市場は目先の延命策に過ぎないとそれらを嘲笑い続けているということです。

 
(出典:Bloomberg)

<ギリシャ3年国債の金利推移です。-------- ギリシャ問題が発覚する前の昨年10月頃までは2%前後で取引をされていました。その後、この短期間で金利が8倍以上に急騰したことが一目瞭然です。>

 NYダウが急落した翌日、東京市場も急落し、これらに関する緊急レポートの中でもお伝えした通り、EUやECB(欧州中央銀行)のみならず各国首脳や金融当局からその後いろいろと善後策が語られていますが、市場金利の動向を見る限り、シナリオは最悪の流れ(ギリシャ国債のデフォルト)の方に向かっていることを引き続きまだ示唆しているように思われます。全就業者のおよそ3分の1ともいわれる公務員給与の10%カットや大幅な増税をギリシャ国内が納得したことが解らない限り、すなわち単年度の財政赤字をGDP(国内総生産)の3%以内に収めるという無茶な財政改革達成の指針が可能であると示さない限り、格付け機関の登録制の議論をしようと、ヘッジファンド規制を掛けようと、市場はギリシャ国債のデフォルトに向かってひた走ると思われます。残念ながら、この原稿を書いている段階においてはその最悪シナリオで投資方針を構築せざるを得ないと思います。

■日本の政治も迷走続く

 ギリシャ問題とそれに伴う為替市場の変動があまりに大きいこともあり、国内政治の問題は日本国内市場にほとんど影響を与えていないように感じられますが、5月末にセットされた時限タイマーは休むことなく時を刻んでいます。すなわち「普天間問題」についてですが、現鳩山民主党政権の命運のカギを握ると言われる同問題の決着期日は5月末、いまだに解決の糸口が見えてくるどころか、より混迷の度合いを深めているということは極めて憂慮すべき状況だと思われます。現状、市場は国内政治問題にははっきり言って関心を示していない、あるいは無視しているような状態が続いていますが、これらが政局問題に発展する段階になったら、少なくとも外国人投資家はそれをポジティブな材料か、ネガティブな材料か判断してくると思われます。ソブリン・リスクの話題が日本に向かった時、それ(財政改革)に対応できるかどうか、外国人投資家の判断のポイントになるかも知れません。

 
(出典:Bloomberg)

<チャートは日経平均株価のこの1年間の日足です。-------- 先週は大きく窓開けをして株価が急落したことが解ります。「窓は埋めに来る」とよく言われますが、3月初めに開いてしまった窓を埋めに来たとこじつけることも。ならば早晩先週の窓も埋めるはず。>

■企業収益は上向き、バリュエーションも低下(約15カ月ぶり)

 日本国内においても2010年3月期の決算発表が本格化しているのはご承知の通りですが、市場の期待値が極端に高かった場合を除いて、大方の企業の決算内容は今まで発表されている企業を見る限りにおいて好調に上向きになっていることが窺われます。特に「半導体が足らない」と言われるほどに需要が高まっているハイテク関連企業の決算は好調であり、これらはおおむね予想の通りと言えます。競争が激化することや、あるいはITバブルの頃の教訓を踏まえて「二重発注がある」というような冷静な発言も聞こえてきますが、大きな右肩上がりの流れが始まっているというシナリオはまったく不変です。

 企業収益が上向きであることから、このところ株価バリュエーションの低下が顕著です。もちろん株価が下落したことの影響も少なからずありますが、週末現在の日経平均株価構成銘柄で算出される予想PER(株価収益率)は24.46倍です。この水準は2009年1月末の19.59倍以来の低水準で、この時の日経平均株価は7.994.05円ですから、この24.46倍という水準がいかに低いものであるかおわかり頂けると思います。恐らく、この先の株価変動を考えなくてもまだ決算発表とともにこれらは低下していくことが予想されます。好材料です。

今週のポイント

■まだギリシャ(南欧)問題は落ち着かない

 残念ながら、まだギリシャ問題は解決の糸口さえ掴めていないように思います。少なくとも欧米の市場参加者たちはそう考えているように思われますので、ここで安易なシナリオをご提案することはできません。流れとしてはユーロがまだ安くなることが予想され、日本市場のみならず米国市場についても引き続きダウンサイドのリスクがつきまとうと考えざるを得ません。また米国市場については、あまり日本国内の報道では見ませんが、4月20日にメキシコ湾で発生したBP(BP)が操業している原油掘削リグの爆発事故による原油流出がかなり深刻な問題になってきているようです。じつはこの2週間の間、NYのトレーダーから送られてくるメールにはギリシャ問題よりもこちらの話題の方が多かったぐらいです。ゆえに、火種はまだ他にもあるということで、楽観的なシナリオは正直書けずにおります。

■中国が3度目の預金準備率引上げ

 中国が5月2日に今年に入って3度目となる0.5%の預金準備率の引き上げを行い17%としました。これを受けて中国・上海総合株指数などが急落していますが、これについては前述のギリシャ問題の話などとは異なり、あまり悲観的な見通しを持ってはいません。この辺は先月中国・上海をこの目で見てきたからというところが大きく影響していると思われますが、高度成長期の日本同様に経済発展が著しく、多くの国民生活が豊かになって水準を向上させようとしている今の中国の段階と、1980年代末期の日本のように、生活水準はある程度まで上昇した段階で発生した不動産バブルとは自ずと状況が違うからです。そして根本的な問題として、一党独裁の共産党政治が描く長期ビジョンの国家発展という絵と、票稼ぎに走らざるを得ない政治体制のもとで行われるそれとは違うということです。中国政府はリーマンショック後の景気刺激策として行った4兆元の経済対策で市中に出回り、不動産価格の急騰の一助となった資金を回収する必要性があります。一方で、日本の10倍以上の国民を抱えて国を豊かにする責任があり、今ここで景気拡大を止めるわけにはいきません。ゆえにクラッシュはさせられない。行き過ぎた引き締めが何をもたらすか、は隣国の90年代で充分学んでいます。一部は現地取材でお会いした人からの受け売りですが、ゆえに短期的な調整で済むという見通しを持っています。

■トヨタとソニーの決算に注目したい

 今週は11日にトヨタ自動車(7203)、13日にソニー(6758)が決算を発表します。代わり映えのしないネームだと思われるかも知れませんが、外国人投資家にとって日本企業の代表的なものと言えばこの2つといっても過言ではありません。

 11日のトヨタ自動車、終わった期の決算数値も大事ですが、このギリシャ問題などを踏まえて、つまり為替見通しなども踏まえてどのような2010年度ビジョンを教えてくれるかということは要注目です。何せ、アメリカで叩かれ、中国では出遅れているのですから。また13日のソニーですが、今生まれ変わろうとしている勢いを感じさせてくれている流れを、このハイテク市場右肩上がりの流れの中でどう語ってくれるかに注目しています。10日はアップル社(AAPL)の『iPad』が日本でもいよいよ先行予約が開始されます。こうしたものに真っ向から勝負を挑めるのはソニーだと思います。数字だけではないものに期待したいと思っています。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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