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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年4月12日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

4月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(4/9終値)
前週末比
(4/2比)
日経平均 11.204.34 -81.75 -0.72%
NYダウ 10,997.35 +70.28 +0.64%
金利・為替 週末終値
(4/9終値)
前週末比
(4/2比)
長期金利 1.385% +0.030%
ドル/円 93.81  
ユーロ/円 125.78  

※ 米国は4月1日との比較

喉に刺さった魚の小骨のようなギリシャ問題

前週の総括

■為替に振り回され続けたこの1週間

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。前週末、久方ぶりに非農業部門の雇用者数が大幅プラス(162千人)になったことを伝えた米国の雇用統計を米国株式市場が織り込まぬまま(2日は休場)に日本市場は月曜日を迎えたため、手掛かりとなるのは為替だけという展開で先週は幕を開けました。2日に午前中だけ取引をし、2009年6月以来の4%台を視野に入れた米国債券市場(詳細は前回をご参照)の動向を見ると、少なくとも市場参加者は米国景気の回復を確信し始めたと読めることからネガティブ・リアクションは起きないだろうとの想像は容易でしたが、週を通じて気掛かりなテーマとなり続けたのはギリシャ問題です。

 米国景気回復から米国長期金利の上昇及び年内の利上げ見通し確度の上昇などを受けて米ドルが強含み、投資家のリスク許容度の上昇を受けて資源国通貨が買われるなどの流れができつつもありますが、一方でギリシャ問題が蒸し返される度に信用リスクに市場が目を奪われるため、日替わりで為替市場のトーンが変わるというような展開に株式市場も振り回され続けた一週間であったと言えましょう。ギリシャ問題(後述)はそう簡単に決着しないというのが私の見通しであり、少なくとも来月一杯は喉に刺さった魚の小骨のように微妙に気になる材料となり続けるものと思われます。

 
(出典:Bloomberg)

<この5日間のドルとユーロの日中足です。-----------ご覧頂けるように、木曜日に1.3282まで対ドルで売り込まれた後、週末に向かって前週末比変わらずの水準近くまで買い戻されています。この背景にあるのはギリシャ問題の燻り。いかに市場がこれを気にしているかが明らかです。>

■ギリシャ問題は簡単に解決しない

 再三取りあげているギリシャ問題ですが、簡単には決着しないという見通しは従来通りであり、また当面は「解決⇔再燃」という繰返しを続けて市場を揺さぶると考えています。突き詰めると理由は簡単で、経済構造(工業国か農業国か、産業国か非産業国かなど)も文化も、すなわち経済ファンダメンタルズが違う国々がそれぞれに独自の中央銀行を持ったままで、あるいは財政政策はそれぞれに決める一方で、金融政策だけを揃えて通貨統合するというユーロの大実験にはそもそも大変な無理があり、その綻びの修正ができるか否かという挑戦の一端がギリシャ問題に他ならないからです。目先は5月末までにギリシャが国債の償還や借り換えに必要な200億ユーロ(約2兆5,100億円)をきちんと調達できるか否かが焦点であり、これが確実に実施されるまでは市場は安心しないものと思われます。市場が与えているドイツ国債とギリシャ国債の利回りスプレッドは、それぞれ10年国債として、すでに442bp(4.42%)と1999年のユーロ導入以来最大となっています。それだけ信じていないということです。長期金利が上がってきたと言われている米国の10年国債が4%前後ですから、丸々そのぶんが上乗せになっている感じと言えば、442bpという水準の意味が感覚的にも捉えやすいかと思います。

 今問題になっているのは独仏が中心となってギリシャ支援をする時にIMF(国際通貨基金)が一緒に支援するということで決まったという話が、折に触れ蒸し返され「決まった⇔決まっていない」を繰り返すことです。幾つかのストーリーがあるのですが、(1)ギリシャが単独問題を解決できる、(2)独仏が支援するにはIMFの支援が前提、(3)EU内だけで支援するのでIMFの介入は不要、といった異なる考えがギリシャ・サイドの要人を含めていろいろなところから聞こえてきてしまうということが揺れる原因です。

 IMFが介入してくればギリシャ政府に対してはより一層の緊縮財政措置が求められ、これによりギリシャのリセッションはより深刻化するという見立てがある一方で、そうした厳しい自助努力もしようとしない他国に対して、自国の資本で支援するのは不当だと考える国々(世論)があるのは理の当然であり、通貨統合ユーロの理念がこれらをまとめきるか、厳しい現実をいったんは目の当たりに(デフォルト)しないとならないのかということだと思います。ただ後者の選択が為された場合は、ギリシャの次は何処だというドミノ倒しが始まることも自明であり、ユーロと言う大実験の終了が次の話題になる可能性をもはらんでいます。

■中国が貿易赤字に

 中国の3月の貿易収支が6年振りに赤字になりました。米国ガイトナー財務長官が急遽外訪予定を変更して中国に立ち寄って人民元相場の問題を議論した直後だけに、この先の人民元の動き方には注意をしたいところです。「人民元が不当に安い水準でドルに実質的に固定されているがための中国の強さ(米国の弱さ)なので、人民元を切り上げて欲しい」というのが米国側の主張ですが、単月とはいえ貿易収支が赤字となったことで、中国政府としては「元の価値を高めても不均衡是正にはならない」という主張を裏付けることができた形になります。ただ、これは季節的な要因によるもの(輸出業者の労働力不足)と言うのが背景にあり、この発表に先立ってガイトナー長官が訪中していることから、人民銀の切り上げという流れは引き続き続くものと思われます。

 人民元切上げの必要性は、中国のインフレ抑制にもなるという見方も人民元切り上げ観測を後押しします。円に置き換えてみると解りやすいかも知れませんが、円安は輸出企業にとってメリットなる一方で、円高は輸入物価の押し下げ効果があり、原油を中心に輸出国家から輸入国家へと変貌した中国にとって、人民元が安いことは必ずしもプラス効果ばかりではなく、人民元を切り上げることで輸入物価を下げることは、同国のインフレ抑制策として有用と言うことができます。

 
(出典:Bloomberg)

<チャートは原油価格WTIの2年分のチャートです。-------- 最近あまり議論されることは無いように思いますが、原油価格がじわじわと上がってきています。円安も加わると末端価格は再び上がり始め、個人消費に影を投げ掛けるかも知れません。注意が必要です。>

今週のポイント

■インテルの決算に注目

 今週から米国企業の第一四半期決算の発表が始まりますが、今週の私の一番の注目は“世界半導体最大手”のインテル(INTC)のそれです。世界半導体最大手という枕詞では同社の性格がいまひとつ浮かび上がってきませんが、ご承知の通り、インテルの主たる製品はMPUと呼ばれるパソコンの頭脳部分です。原則としてパソコン1台にMPU1個が標準で、その市場シェアは約80%にまで達していますから、同社のビジネストレンドを見ることで、世界のパソコン市場の動向を見ることができます。

 Atomと呼ばれるネットブックPC用のMPUが登場して同社の収益を押し上げ始めたのは2008年夏からですが、当時の株式市場の注目度合いは低かったにもかかわらず、ネットブックPCというセグメントは今では堂々たる世界市場を築き上げ、そうした流れとスマートフォンの流れがあるからこそ、『iPad』のような製品の立ち上がりがとても順調だという循環を生んでいます。日本電産(6594)や村田製作所(6981)に代表されるような日本の電子部品各社が通常の季節循環とは異なる受注の勢いを持っているのもこうした流れが背景にあるからです。

 そのインテルの決算発表はこれから先のハイテク業界の流れを見ていく上で極めて重要な情報源であり、直接に同社を投資対象と考えるか否かという判断をする以上に注意深く見ていく必要があります。設備投資や研究開発の方向性も大事ですが、どのセグメントに力を入れていくかを見ていく必要があると思います。

■今週も外部要因に振り回される

 売買代金が一時の超低迷時に比べると回復してきたことは朗報です。市場がこの水準からもう一段上がっていくためには、やはり消去法的に出遅れ感からだけ買われるのでは難しく、ある程度は積極的に日本株を評価する投資資金が流入してくることが必要です。その意味においては、売買代金低迷の底は2-3月で打ったようにも見てとれ、この先の回復に期待をつなぎたいものです。

 とはいえ、米国企業の決算発表が始まる一方で、日本企業は決算発表前のクワイエット・ピリオドに入るため、発信される情報は減少するはずです。国内政治の問題は、市場の大勢は無視している状況が続いており、すなわち経済・政治共に国内発の材料で市場が動くことは少ないと思われます。しばらくは市場の過熱感を覚ます日柄調整というのがベストシナリオです。

 その一方で、ギリシャ問題をはじめとする海外発の要因で為替が変動することで株価は上下に動くと思われ、ダウンサイドで11,000円の底堅さを試す展開があるかも知れません。ただそれでも力強いようであれば、市場は次のステージへと進むことができると考えています。ちなみに、現状はNT倍率やボラティリティの水準から何か嫌な予感を示唆するものが出ていません。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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