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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年3月29日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

3月第5週

マーケット概況

株式 週末終値
(3/26終値)
前週末比
(3/19比)
日経平均 10,996.37 +171.65 +1.59%
NYダウ 10,850.36 +108.38 +1.01%
金利・為替 週末終値
(3/26終値)
前週末比
(3/19比)
長期金利 1.375% +0.015%
ドル/円 92.51  
ユーロ/円 124.06  

新年度入りを前に期待も膨らみつつあるが……

前週の総括

■年初来高値を更新、一時11,000円越え

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。3連休明けとなった市場は米国の中古住宅販売統計に回復感が見られないことや、再びギリシャ問題が市場のテーマになったことからくるユーロ安を受けて軟調な展開から始まりましたが、一方、年度末配当権利付き売買最終日となる週末に向かって配当取りの動きなどもあり上伸、週末には一時11,000円を超える場面も見られる展開となりました。売買代金も日を追うごとに尻上がりに増え、SQ取引日を除くと約一月半振りの1兆4,000億円台載せとなりました。

 週間の上昇率でみると日経平均株価の+1.59%に対して市場全体の動きを表すTOPIXは1.87%の上昇、逆に東証マザーズはわずかに+0.24%の上昇、JASDAQ総合指数でも+0.69%と主として大型株の方がパフォーマンスが良い結果となりました。

■米国住宅関連統計の不振が続く

 現地23日に全米不動産協会が発表した2月の米国中古住宅販売件数は季節調整済みの年率換算で市場予測の500万戸をわずかに上回る502万戸となりましたが、これで3カ月連続の前月改定値に対するマイナスとなりました。また翌24日に米国商務省が発表した新築一戸建て住宅販売件数も季節調整済みの年率換算で30万8,000戸とやはり前月の改定値を4カ月連続で下回るという1963年の統計開始以来の最低水準を更新しました。

 米国東部を中心に記録的な大雪に見舞われたからということが主たる理由とされていますが、前週に発表になった住宅着工件数や雇用統計も含めて米国景気の回復についてはやや肩透かしの感じになっています。足踏み状態に入っているのかもしれません。

■EU首脳会議とECBとの歩調が合わない

 なかなか決着がつきそうで付かないギリシャの財政危機問題ですが、25日にはEU首脳会議で独仏両国首脳がIMF(国際通貨基金)の活用を含む形で資金繰り支援することで合意したと伝えられましたが、ECB(欧州中央銀行)のトリシェ総裁が異論を唱える形で決着せず、これを受けてユーロは対ドルで1.32台まで下落する展開となりました。

 この問題、背景にあるのはギリシャを含むPIIGSなどのEU加盟国中の財政難を救えるのは独仏に限られるといった状況において、ドイツ国内の世論の約7割がこれに反対するなどの事情があるため、国内世論に配慮する両国首脳はIMFを絡めたいと考える半面、他のEU加盟国はIMFの介入をプライド的にも好まないといった感情的な議論が含まれているということのようです。EUだけで加盟国の財政難を救うとなると、どうしても独仏の負担が大きくなるのは自明の理であり、また両国の人たちにとっては「どうして自分たちが放漫財政を続けた国々を支えないといけないのか」という議論が起こるのも感情的にもよく解るといった気がします。

 仮にアジア圏での通貨統合という話が将来的に具体化することがあったとして、もし同じ立場に日本が立たされたら日本の世論だって「どうして自分たちの税金で」という議論は当然にして起こるでしょう。逆に日本が現在の様な財政規律の無い、プライマリーバランスをゼロにする指針すら示されないような放漫経営をした挙句に国債の借り換えができなくなったような時、中国や韓国などが簡単に支援に乗り出してくれると考えるのはかなり難しいだろうと想像するのと同じです。ゆえにIMFという国際通貨基金との共同歩調を取るということでリスク分散化したいにも関わらず、一方で「ヨーロッパ(EU)」というプライドが許さないということのようです。実に解りやすい話だとは思うのですが、どこかで誰かが妥協しない限り、この問題は容易に解決しそうな状況ではなくなってきていると思われます。ただ、歴史を紐解けば、欧州各国が手と手を取り合ってお互いを助け合ったという史実は極めて少なく、むしろ宗教上の問題だけではなく、王家の血筋(文化的背景)などを争ってきた事実が並ぶように思うのは、世界史の成績が悪かった私の誤解でしょうか?

■主要3通貨のバランスが変わってきている

 つい先頃までの状況で言えば、円、ドル、ユーロの主要3通貨の強弱感はこの順番で強い、つまり円が最強で次がドル、最弱がユーロと思われてきましたが、先週の動きを見ていると順番が変わってきています。ユーロが最弱通貨であることは現状も変わりませんが、円とドルの関係が逆転してきています。前回、日本の財政事情を債券市場が見透かし始めているという内容をお伝えしましたが、もし今回の順番の変化がこの問題に起因するようだとややシリアスな展開になることも考える必要があるかも知れません。日本がギリシャどころかジンバブエになるという兆しだとしたらという意味です。ただ日米の金利差で説明を付けようと思えば可能とも言えるため、債券市場の動きを深読みさえしなければ良いという論調もあります。

■10年度予算成立と郵貯限度額引き上げ

 前述の話ともリンクしますが、24日の参院本会議で可決した2010年度予算、マニフェスト公約に基づく農業者戸別所得補償制度など支出項目を増やした結果、一般会計総額が92兆2,992億円となる一方で、税収を遥かに上回る額の44兆円超の国債発行が必要なことは以前から申し上げている通りで、日本の財政規律はかなり緩んでいるという指摘を避けられないという認識を持っています。

 その傍らで国民新党を代表する亀井静香郵政・金融担当相が打ち出している郵政見直し策は、小泉郵政改革を否定し官業が再び民業を圧迫するという単純な議論の裏にあるのとは違う意図を深読みすることができます。すなわち、郵便貯金の限度額を引き上げることで、今後供給過剰となり消化難となることが予想される新規日本国債の発行を買い支える資金のファンドを作るというものです。日本の政府債務残高対GDP比が世界最悪の状況にあるというのは何度も申し上げていますが、にもかかわらず長期金利が急騰(債券が叩き売られる)したり、超円安になったりといった事態にならないひとつの理由は、日本国債の主たる買い手が国内機関投資家であるからです。

 しかし、一方で先日の報道にもあった通り、地銀の中にはすでに国債を買えなくなりつつある銀行もあると言われ、また公的年金のアセット・アロケーションの中でもすでに日本国債は67%も保有しており、ここから買い増すと言うよりはむしろ減らすか年金給付の為に売却するといった段階にあると思われます。国内株式への投資はすでに11%ととんでもなく低い水準で、もっと積極的な運用をした方が良いという議論がある中、その分のキャッシュを確保するために売却するアセットクラスといったら、やはり国債にならざるを得ない、つまり、実をいうと、買い余力はもうほとんどないということです。そうした事態の次善の策を考えているからとみるのは深読みのし過ぎでしょうか。あまり愉快な話とは言えませんが、債券市場、とりわけCTA(商品投資顧問)などが機動的に駆け回る債券先物市場などの最近の動きを見ていると、ややそうしたことも考えたくなるような展開が起きています。

 
(出典:Bloomberg)

<チャートは日経平均株価のこの1年間の日足です。--------一本調子にあがってきたとはとても言えませんが11,000円という節目を越えてきたことには、来期に向けて明るい兆しを感じなくもありません。>

今週のポイント

■自動車の再編が始まった

 報道によると日産自動車(7201)とルノーとの連合がダイムラー(DAI)と相互出資する方向で提携交渉が進んでいるようです。背景にあるのは電気自動車などの多額の開発資金が必要な環境対応技術の開発を協力し合うということのようですが、正直に言ってこの提携には違和感がある一方で、マツダ(7261)にプリウスのハイブリッド部品の提供などで提携したトヨタ自動車(7203)や、あるいは特に何も話題にはなっていませんが、自前でハイブリッド自動車も燃料電池開発も行っているホンダ(7267)には、むしろ分がある話だと思って見ています。

 ダイムラーとはご承知の通りドイツを代表する高級自動車メルセデス・ベンツの親会社であり、一度は米国クライスラーと1998年に合併し、2007年に合併解消した経歴を持つメーカーです。一方のルノーもフランスを代表する自動車メーカーですが、決して高級車というカテゴリーではなく、車格やサイズも日産車とは類似するものの、メルセデスとはかなり異なるラインナップの車を提供している会社です。その3社が緩やかに提携するメリットとは何だろうかと思っても不思議ではありません。
まず根本的にドイツとフランス、隣接するこの2つの大国は決して仲が良いとは思えません。また国民性も大きく違います。それを反映してかドイツ車とフランス車のテイストは明らかに違います。一例をあげれば、ドイツ車の足回りは日本車がお手本としてきた固い感じのものですが、フランス車のそれは俗に「猫足」と呼ばれるフワフワした感じのものです。全然、まったく真反対と言って過言ではありません。

 確かに開発費が嵩む電気自動車などの環境技術の開発だとは思いますが、駆動部分のプラットフォームに関わる技術であるため、おいそれと部品の共通化などできないだろうと思われます。またダイムラーの本社(ドイツ・シュツットガルト)にはクライスラーとの合併当時から何度も取材に行ったことがありますが、はっきりと彼らが言っていたのは「ベンツが向こう(クライスラー)の部品を使うことは有り得ない」というドイツ・クラフトマンシップの誇り高き自信でした。そういう文化が一朝一夕に変わっているとは思えず、緩やかな提携とは文字通り緩やかなものに終わるような気がしています。

 一方でそれでもこうした提携をしないとならないあたりに、いかに環境技術開発が遅れていることが各社首脳の頭を悩ませているかということを垣間見ることができ、トヨタやホンダの強さをあらためて認識することができます。

 トヨタはマツダにHV技術を供与するということは、そこを通じてフォード(F)とのパイプができます。それは、この分野で事実上独走状態のトヨタが米国でビジネスを続ける上で、かなり重要なピースを握る話なのではないかと穿った見方をしています。少なくとも直近のトヨタのリコール問題にはそうした米国世論の鬱憤晴らしのような側面があったと思われるからです。だからこれは面白い話だと思います。

■実質新年度入り

 先週末で年度内受渡しが最終となりましたので、今週から実質新年度入りします。今期も新たなスタートとなるわけですが、少なくとも2010年3月期予想をバリュエーションにしていた目線が2011年3月期に変わるだけ、日経平均の予想PERも週末の32.83倍から大きく低下するでしょう。割高さは薄れるだろうと思われます。

 今週に関して言えば、期末のドレッシングは期待しないまでも31日まではそう簡単に売り崩すものでもないと思われますので、92円台及び124円台で帰ってきたドルやユーロとの円安も手伝い、底堅く推移することが予想されます。ただ月が変わったらやや注意が必要になるかもしれません。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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