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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年3月15日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

3月第3週

マーケット概況

株式 週末終値
(3/12終値)
前週末比
(3/5比)
日経平均 10,751.26 +382.30 +3.69%
NYダウ 10,624.69 +58.49 +0.55%
金利・為替 週末終値
(3/12終値)
前週末比
(3/5比)
長期金利 1.340% +0.035%
ドル/円 90.56  
ユーロ/円 124.69  

本当に日本の未来は大丈夫なのだろうか?

前週の総括

■売買代金の低迷は続いたままでは上昇も評価し辛い

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。前週末発表になった米国雇用統計への事前の注目度が高く、またその結果が市場予想を上回るものとなったため、週明けから大きく(チャート上で言うところの)窓を開けてスタートした東京市場ですが、その後は鳴かず飛ばずの状態が続き、週末にかけて円安に連動するかのように値を上げて終了しました。株価水準的には対前週末比で+3.69%も上昇したにもかかわらず、このようなトーンで解説せざるを得ないのは、やはり売買代金が一向に膨らまないからです。週末の金曜日こそ売買代金が2兆円に達しましたが、これは3月限日平均先物及び同オプションのSQ清算日に当たったという特殊要因(裁定ポジションの解消が行われるので、おのずと売買代金が膨らみます)があるからであり、これを除くとやはり1兆円と少しというのが通常売買に絡む売買代金に過ぎないからです。つまり積極的な株式売買の投資家が参加していないという現実を如実に表している結果だからです。

■市場はギリシャ危機収拾期待?

 先週の市場の動きで注目すべきは、ギリシャ危機からPIIGS(後述)問題へと発展して売り込まれていたユーロにやや反転の兆しが見えてきたことです。ユーロ誕生後の最大の危機とまで言われている最近の流れですが、欧州連合(EU)による重債務加盟国向けの支援通貨基金(EMF)の設立が検討されているという話があり、これをトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁も否定しなかったということがひとつの背景にあります。つまり、ギリシャ危機もこれで収束するという期待感がやや拡がっています。前週までユーロを最弱通貨として、ドル、円の順番で強くなっていた通貨ですが、先週はユーロがドルに対しても円に対しても強くなり、週末の取引では、対円ではドルが91円もつけて終値90.56円、ユーロが125円台もつけて124.69円となっています。こうした流れを全体に受けて株価も上昇したと言えます。

■ユーロ存亡の危機は終わっていないと見る

 そもそも世界史に多くの戦争の記録を残した欧州各国が、その各国独自の財政政策はそのままに金融政策だけを統一して通貨統合するという実験的な試みで始まった通貨ユーロの継続性が問われる局面だけに、今後の展開が注目を集めます。ただ私はまだ問題解決道半ばと思っています。

 ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャそしてスペインの5カ国の頭文字を並べてPIIGSと呼ばれますが、これらはBRIC’SやVISTAなど“前向き”に新興国をグルーピングしたような呼び方ではなく、EU加盟国の中で財政危機に瀕する国々に対する“後ろ向き”な呼び方です。これら国々に対して支援の手を差し伸べるとすれば、その財政的な裏付けの筆頭はドイツにならざるを得ないのですが、問題はそのドイツ国内世論の約7割が支援に否定的だということです。EMFが創設されてそれによるPIIGSなどへの支援が現実に可能になれば、今回のユーロの反転は本物の流れともいえるのですが、逆にドイツ世論が納得せずユーロから離脱するということにでもなれば、さらなる問題へと発展します。ここに来て、なぜ英国が当初よりユーロへの加盟を拒み、今なおポンドという通貨が狭いドーバー海峡を隔てて存在しているのか、その意味が解るような気がしてきました。

■米国経済は回復基調!?

 前週末の米国雇用統計もしかりですが、このところ米国で発表される経済統計には回復感が見られるものが増えています。確かにまだ“確実に”と言えるものではなく、先月の住宅関連統計や週末発表された3月ロイター・ミシガン大学消費者マインド指数(速報値)などではやや市場の予想を下回る結果が発表になってはいますが、一方、前週末発表になった消費者信用残高は増加に転じており、この週末米国商務省が発表した2月の小売売上高(速報値)は季節調整済みで前月比0.3%の増加とエコノミスト予想の中央値0.2%の減少を上回る結果となりました。今年は例年にない大雪に見舞われて“巣篭もり”が伝えられている米国ですが、それでもこの結果であり、またシアーズ・ホールディングス(ティッカー:SHLD)やメーシーズ(ティッカー:M)といった小売株が上昇していることも市場がその回復感を享受し始めている証しに思われます。

■中国の国家資本主義は凄い

 14日に閉幕した中国全人代(日本でいう国会に相当)ですが、スマート・グリッド(「智能電網」と書くみたいです)関連の投資に約50兆円をこの先10年間で投じていくようです。この金額の規模感をイメージするには、鳩山政権が初めて決めた日本の来年度予算案の一般会計総額が92兆2,992億円で、このうち政策的経費の一般歳出は53兆4,542億円といった数字を参考にしていただければと思います。一般歳出とは、社会保障、公共事業、文教及び科学振興、防衛、その他の政策的経費のことですから、この国の2010年度に行うほとんどすべてのことを賄える金額に相当するものということになります。こうした背景があればこそ、中国経済の発展にコミットしている企業の収益の回復が早いというのもよく解るというものですが、中国は社会主義国と言われていますが、現実には国家資本主義とも言えるもので、ある意味「やると言ったらやる」ものと言えます。

 一方、日本では中国のスマート・グリッド関連投資額に肉薄する新規国債発行額44兆3,030億円の借金が今年も発生します。もちろん、この中には国債の元利払いに充てる国債費が20.6兆円も含まれていますが、スマート・グリッドの様な将来世代のための地球環境などをも見据えたものというよりは、財源のあてなき“参院選向けのバラまき予算”という非難を受けても仕方のない項目が多いのも事実です。ちなみにこの国債費ですが、財務省が示したところによれば、13年度には27.9兆円と10年度から3割以上増加する見通しであり、新規国債発行額は12年度に52.2兆円、13年度に55.3兆円に膨らむとされています。歳入面で言えば、税収が11年度の38.7兆円から13年度には40.7兆円と裏付けされています。

■与野党ともに支持率低下の深刻さ

 このところ発表になる各種メディアの世論調査では、与党民主党の支持率低下が著しいのは事実です。政権発足時の半分以下になってきました。恐らくその背景には「政治と金」といった問題もあると思いますが、前述のような経済政策への世論からの不信感と言うのが大きいだろうと思います。ある意味、景気が素晴らしく良く、もし国民の一人一人が現状の生活に満足しているならば、首相が母親から毎月1,500万円貰っていようがいなかろうが、小沢幹事長の政治資金管理団体が何をしていようと、そうそう目くじらを立てる世論は起きないだろうとも思えるからです。その一方で、通常ならば与党の支持率低下の受け皿となるべき野党第一党の自民党も支持率が低下しています。つまり、政治全体に対して支持率が低下している、逆にいえば興味がなくなっている証拠であり、また、その結果として株式市場が、こうした国内政治材料にほとんど反応しなくなっているというのは本来極めて由々しき問題です。恐らく現在の株式市場では、国内ボトムアップ・アプローチ型の運用スタイルよりも、外国株を運用するかのように、外からの目線でトップダウン・アプローチをした方が良い結果が残せるように思います。それくらい、国内要因を無視し始めているように感じられてなりません。

 
(出典:Bloomberg)

<チャートはナスダック総合指数の1年間の日足です。--------あまりに綺麗な右肩上がりに思うのは、ハイテク好みの贔屓目でしょうか。とても強い、そういう印象で見てしまいます。>

今週のポイント

■本当に日本は大丈夫なのだろうか?

 3月14日の日本経済新聞朝刊1面に「銀行の国債保有最高?リスク基準超す地銀も」という見出しがついに出ました。恐らく楽観論・悲観論でいくつかの受け取り方があり、市場もこれを当面は問題視しないかもしれませんが、この記事の裏にあるのは日本の台所事情のとんでもない危機的な状況です。ギリシャやPIIGS問題よりも本来は深刻なはずだと私は考えています。

 ギリシャの財政赤字が深刻な状況で、5月以降に迎える国債の借り換えができずにデフォルト(償還不能)になるかも知れないというのが昨年末からの市場の一つのテーマであることはご承知の通りですが、どの程度その財政不安が深刻なのかという尺度を公的債務残高の対GDP(国内総生産)比という視点で捉えると、じつは、日本はギリシャなどの比ではなく世界で最も悪い状況にあるかも知れないという現実があります。単純に解りやすくイメージを説明すれば、借金残高(公的債務)の年収(GDP)に占める割合ということになりますが、渦中のギリシャが110%から120%であるのに対して、日本のそれは、すでに190%から200%になっています。つまり、ギリシャが年収の1.2倍程度に借金が膨らんだ段階で国際資本市場から「ギリシャは借金を返せるのか?」という議論が沸騰する一方で、日本はすでに年収の2倍近い借金を抱えており、そして先述のようにそれが減る見通しを持っていないということです。

 財政赤字で大変だ、と言われ、それが故のドル暴落説も語られる米国のそれは80%から90%です。つまり借金の残高は年収の範囲内に収まっており、さらに言えば、借金を減らしていくプラン(目標?)も現政権からすでに発表されています。ドイツや英国のそれは米国よりもさらにおおよそ10%は低い水準です。その一方で、日本は現在、返済財源のあてのない借金による消費をさらに増やす流れの中にあります。「アメリカ人は借金して消費をする浪費家タイプ」という批評を聞きますが、日本では国がそれだと言えます。

 そうした流れにも関わらず日本の財政赤字に対する議論が深刻にならない最大の理由は、いくら借金が増えても、それを鷹揚に貸し続ける人が日本国内にいるからということに他なりません。つまり、国債をいくら増発しようとも、1,200兆円とも言われる個人金融資産などがそれに応じるからということです。資本市場の本来的なリスク評価に晒されない、すなわち銀行預金や郵便貯金として預けられた資金が国債を買い続けるからということですが、今回の記事はこの件に対する警鐘をならすものと言えます。銀行は預金で集めた資金を貸出として運用することで利鞘を稼ぐというのが本来のビジネスモデルですが、景気の現状から貸出しが思うように伸ばせず、円資金の運用先としては最もリスクが低いと考えられる国債購入に回っているのが現状で、ポイントは、すでに地方銀行の中に国債購入可能額の枠を使い切ってしまったところがあるということです。その銀行は制度が変わらない限りもう国債残高を増やせません。

■日本国債を日本国内で消化しきれなくなった時……

 もし日本国債の新規発行分が国内で現在のように消化し切れなくなったとしたら、何が起こるのでしょうか?外国人投資家が日本人投資家と同じように「日本国債は安全な投資先だ」と思ってくれるのならば問題ありませんが、もしそうでないとしたら、債券の需給悪化からくる長期金利の急騰、そして現在のPIIGS問題が示すような通貨安が起こるかも知れません。

 「金利が上がれば預金金利が上がるから良い」とか、「円安は輸出企業にとってプラス材料」などというような暢気な論調になるとは思いませんが、中国全人代の内容が日々伝えられる中で見事なまでのコントラストをなしていたと考えます。人民元切り上げを迫られる中国と、日本の今とを比べると、いたずらに危機感を煽り立てるつもりはありませんが、正直、かなり日本の未来を心配したくなります。今はそうした流れが好転し、心配症の私の考えが危惧に終わることを願うばかりです。この流れに対する金融市場での自己防衛策は円資産を減らすことになってしまいます。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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