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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年2月22日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

2月第4週

マーケット概況

株式 週末終値
(2/19終値)
前週末比
(2/12比)
日経平均 10,123.58 +31.39 +0.31%
NYダウ 10,402.35 +303.21 +3.00%
金利・為替 週末終値
(2/19終値)
前週末比
(2/12比)
長期金利 1.330% +0.005%
ドル/円 91.52  
ユーロ/円 124.60  

出口が見える米国、出口の見えない日本

前週の総括

■中国市場休場で売買代金が激減

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価の水準論だけ言えば、18日(木)には前週末対比で243円高となる10,335.69円まで上昇する場面もありましたが、週末終値は前週末対比わずかに31.39円高となっています。しかし内容を吟味すると、まず売買代金の極端な激減を憂います。確かに週初は中国本土(春節)及び香港市場、そして米国市場(プレジデンシャル・デー)と揃って休場となりましたが、月曜日と火曜日はともに売買代金は1兆円に届かないばかりか火曜日は9,000億円にも届きませんでした。ちなみに、昨年末大納会は9,291億円、今年の大発会が7,080億円ですから、この火曜日の8,415億円というレベルがいかなるものかご推察いただけると思います。すなわち、つい先頃まで「世界第2位の経済大国」と驕っていた我が国日本の株式市場が、まったくと言って良い位に独自の主体性ある材料で上下しなくなってしまったということです。それが証明されました。

■もはや世界をリードしない(できない)日本

 1980年代後半に流行った映画で『ウォール街』というのがありました。マイケル・ダグラス扮するところの大物投資家と、チャーリー・シーン扮する駆け出し証券マンが“生き馬の目を抜く”と言われる世界の金融中心地ウォール街で見せるドラマでしたが、その中で「東京のマーケットをチェックしろ」とか「東京市場は上がったから…」というようなセリフが普通に出てきます。すなわち往時の東京市場、日本の株式市場には海外市場に影響を与える主体性があったということです。しかし、先週の日本市場を見ている限り、情けない位に主体性がありません。別に先週それが初めて明らかになったわけではないので、あらためてそれを強く実感させられる1週間だったということなのですが、この問題は何とかしないといけないと思います。

■16日EU財務相理事会がギリシャ財政再建計画を承認

 現在の市場の3大テーマは、1.ギリシャに始まった南欧の諸国の財政危機問題、2.中国預金準備率引き上げに見る今後の中国政府の金融政策、そして3.トヨタ自動車(7203)のリコール問題といったところです。その中でも最大材料となる1.ギリシャ問題に対し、16日に欧州連合(EU)財務相理事会は財政再建計画を承認し、必要な支援をしていく姿勢を明確に示しました。これが好感され、米国市場をはじめ、日本市場も今年に入って最大の値上がり幅となる市場急騰を演じてくれました。

 ただこのギリシャ問題、まだまだ状況は長引きそうで問題の根は深いと言わざるを得ません。その理由は欧州の主たる国々の金利状況を調べてみると良く解ります。まず一つ目は、欧州連合(EU)というひとつの経済圏として統合されたとはいえ、実際の金融財政状況はバラバラで、それを統一していくことは極めて難しいということです。言い換えれば、異なる国家財政問題を抱える国々を、ひとつの金融政策運営の縛りの中で統合しようというユーロの試みの困難さと綻びを表面化してしまっているのが今のギリシャ南欧問題だということです。

 例えば、2年債の金利推移を調べてみると、経済的な主役とも言えるドイツとフランスのそれは、ほとんど区別がつかないほどに同水準で連動して動いています。一方、問題のギリシャはと言えば、昨年の秋、ほとんどリーマン・ショックの傷が金融市場で騒がれなくなったわずか2カ月間程度だけ一緒に動いていますが、ドバイショック以降で再びギリシャ問題が浮上してからまったくかけ離れた水準で推移する状況続いています。現状、ドイツやフランスが1%前後であるのに対して、ギリシャのそれはまだなんと5%(!)を超えています。

 
(作成:楽天投信投資顧問)

 今月初めには金利急騰の勢いは7%に迫るもの(ギリシャ国債を叩き売る動き)を見せましたが、まずは欧州連合がギリシャを支援するということが話題になって以降5.1%台まで急低下(買い戻し)しました。しかし残念ながら先週16日の財務省理事会が財政再建計画を承認したとの発表を受けた後、再び5.5%に戻してしまっています(売り直し)。ちなみに、週末ドイツ国債2年物の終値は1.086%です。債券市場という信用リスクに対して敏感な市場の参加者たちには、いかにギリシャ国債がドイツやフランスなどに比べて格段に不安がられているかということが良く解ります。同じ欧州連合という経済同盟にありながら、わずか償還まで2年間しかない国債に対する信用リスクがこの結果になっているということです。さらに言えば、現下の金利水準はリーマン・ショック直後に欧州系金融機関の信用問題が話題になった頃の水準よりもさらに高いということです。せめて3%台にまでは戻ってこないと、この問題はまだ長引くと思わざるを得ません。

■米国は公定歩合を引き上げた

 一方、米国では18日に公定歩合の引上げが発表になりました。ギリシャ問題解決の可能性を受けて今年最大の上げ幅で上昇した日本市場は、今度は米国の公定歩合引き上げ報道を受けて下落しました。先週1週間休場だった中国本土市場が月曜日から再開されるかという思惑があったとはいえ、米国の利上げ報道、それもFFレートの誘導レンジではなく公定歩合の話でその週の上げ幅のほとんどを吐き出すというのは困ったものです。

 バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は声明で「金融政策の変更を示すものではない」ということを発表しており、これが直ちに米国が金融引き締めに入ったり、FFレートの誘導目標を変更したりといった金融政策の変更を意味するものではありません。正直「いまどき公定歩合の話か?」と思ったものですが、これはそれ自体の変化と言うよりFRBのスタンスのベクトルが少なくとも「危機対応→金融緩和」という状況から“平時”へと変わったということを明らかにしたものだと受け止めています。すなわちこれはポジティブな話です。

 米国経済がまともな回復過程に入り、金融危機に端を発した経済危機を完全に乗り越えて再び成長段階に入ったということとなる前に、FRBは出口戦略を取らないとなりません。市場は昨年来、雇用統計や各種経済統計を見ながら幾度となくそのチャンスを窺ってきています。その存在自体は形骸化した感の否めない公定歩合ではありますが、それを引き上げたことで少なくともあるメッセージを市場には送ったものと考えます。株式市場がこうした問題にボラタイルに反応しやすいのは致し方ないですが、米国市場の債券市場を見る限りにおいて、週末は2年債、5年債そして10年債とも発表直後の金利急騰分の一部を吐き出し(債券が買われる)ています。すなわち落ち着いているということです。

 
(出典:Bloomberg)

<チャートはNYダウの1年間の日足です。--------1月中旬から始まった南欧諸国の財政危機問題で一度は下落した米国株式市場ですが、再び75日移動平均線を上回る水準にまで戻してきています。>

今週のポイント

■中国本土株市場がカムバック

 週明けから上海株式市場などの中国本土株市場が再開されます。先週末の米国市場の終わり方を見ていると、米国公定歩合の引き上げについてはネガティブ評価よりも、前述のようにポジティブな評価が多いという印象を受けていますが、中国市場における預金準備率の引き上げの織り込み方については月曜日に開いてみないとまだ解らないというのが本当のところです。ただ前回お伝えしたように、これも金融引き締めを意図すると言うよりも、日本で言うなら年末年始のジャブついた流動性を回収するというような技術的な側面が強いと考えていますので、もしこれらを受けて市場が下押しするような局面があれば、それは投資の好機到来と言えるのかも知れません。

 先週、知人の紹介で中国の方とお話しする機会がありました。上海のご出身で、日本と上海の両方でビジネスをされている方なのですが、小1時間の面談の中でいろいろと中国の最近の動向をお伺いすることができました。かねてより中国はインサイダーとアウトサイダー、すなわち中国ローカルに人脈が有るかないかでビジネスを行う上でも、情報一つ取る上でも大きな違いが生じると言われていますが、この方はまさに前者に属するソースです。

 話は多岐にわたりましたが、この場でお伝えしておきたいのは、中国経済の成長はまだまだ始まったばかりであり、そう簡単にはまだまだ終わりそうもないということです。全体を通じて強く残った印象は、やはり中国を理解するためには、中国の尺度で物事を捉えないと駄目だということです。私たちはどうしても開国された島国日本が欧米のスタンダードで成長する過程で身に付けた尺度で物事を図りがちです。よく言われることですが、歴史的に見ても、欧米のそれとは異なるのが中国の文化であり発想です。中国の資本主義は国家資本主義でありその流れは加速しているが、その一方で日本はますます社会主義化しているという指摘はその通りだと思いました。何か根本的に自国の経済発展に対するエネルギーの違いを感じてしまいました。

■トヨタ社長の米国・公聴会には注目

 なかなか終息する兆しを見せないどころか、ますます拡大しているように思われるトヨタ自動車のリコール問題、あるいは品質問題ですが、いよいよ24日にトヨタ自動車の豊田章男社長が米国議会の招聘を受けて公聴会に出席します。社長自ら公聴会に出席するということ自体は、相当アナリストなどの市場関係者やメディア等には従来なかった好印象を与えているものと思われます。その傍らで、今度は『カローラ』のステアリングに対する調査が入ることが米国で発表されました。事態はより混迷してきたように思われます。

 これをトヨタ自動車単独の問題として捉えるのはおかしく、“株式会社日本”の大きな問題として政治も早く動いて欲しいと思うのですが、見えている限りは捗々しくありません。19日の新聞報道にもありましたが、大和総研の試算によるとトヨタ車のリコール問題の影響で実質GDP成長率は0.1〜0.2ポイント低下すると言われています。過日ご紹介しましたが、同社の時価総額がTOPIXに占める割合は単独でも4%前後あり、直近の痛手だけでも3兆円以上の喪失となりました。公聴会を通じてどういう議論が展開されるのか解りませんが、いろいろな意味で国益を損なう可能性は高く、この問題については真剣に注視していきたいと思います。

 今週も国内発の主体的な市場動向になるとは考え難いですが、今後の市場動向や投資環境を見ていく上で重要なポイントなる外部材料が多々ありますので、それらをしっかりと押さえて今後の投資機会を精査することとしたいと思います。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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