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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年11月9日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

11月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(11/6終値)
前週末比
(10/30比)
日経平均 9,789.35 -245.39 -2.45%
NYダウ 10,023.42 +310.69 +3.10%
金利・為替 週末終値
(11/6終値)
前週末比
(10/30比)
長期金利 1.450% +0.045%
ドル/円 89.88  
ユーロ/円 133.44  

G20終了、出口を求めるのはまだ時期尚早

前週の総括

■売買代金低調、いっこうに盛り上がらない株式市場

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。日本市場の下落は日経平均株価が△2.45%、東証TOPIXも△2.31%、東証マザーズが△3.34%でJASDAQ総合が△1.38%と、米国市場のそれがNYダウでプラス2.97%、S&P500種でプラス3.20%、さらにナスダック総合が3.29%なのと見比べると、そのあまりの体たらくには愕然とします。そもそも先週の日本株式市場は、先々週末(10月30日)の米国市場が米国個人消費の動向に懐疑的になって急落したことを受けて週明けに下落したことから始まったわけですから、その米国市場が急回復するならば、せめて少しはともに戻すべきだとも思うのですが、米国の下げだけにつきあう日本市場の悪い癖が出てきてしまったようです。売買代金も週を通じて一度も1兆3千億円台を上回ること無く、週の平均が1兆2千500億円では、証券会社泣かせというより、そこかしこから「もう日本株ビジネスは駄目だ」というぼやきが聞こえてくるようです。最新の個人投資家サーベイ『楽天DI』でブラジル人気が急騰しているのとは真逆の流れとも言えます。

■注目の米国雇用統計は可もなく、不可もなく

 週末金曜日に米労働省から発表された米国雇用統計は、非農業部門の雇用者数の減少が前月比で19万人ということで、市場予想の17万5,000人よりも悪い結果となりました。またこれにあわせて当然失業率も上昇、10.2%と26年振りの高水準に達しました。ただ米国株式市場は寄り付き直後にこそ、この内容でやや弱含む場面も見られたものの、午後には切り返してプラスで終わっています。前日に発表された新規失業保険の申請件数が、予想よりも改善しているということを受けてNYダウは200ドル近く上昇していたわけですが、それを切り崩すことなく終了したということは評価すべき状況だと思います。

 失業率そのものが上昇傾向にあることは、非農業部門雇用者総数の対前月比の数字がこのところ改善してきているとは言え、それはあくまでもマイナスの世界で絶対値が減少していることを評価しているわけで、非農業部門雇用者総数自体は残念ながら現時点においても減少を続けているから、統計上失業率が上昇を続けていることは当然な結果です。ゆえに「米失業率10.2%に悪化−26年の高水準」とセンセーショナルな見出しが立っても市場は驚きません。

■雇用情勢については日本の方が問題

 過去30年以上を振り返ってみて(下記チャートをご参照ください)、今回の金融危機に絡む雇用統計では、対前月比のマイナス幅はあまりに大きかったことが特徴であり、現在鋭角的にボトムから回復してきたとは言え、まだ水面下であることだけ意識しておくべきです。ただチャートでみると、あと半年もしないで水面上に出てくるようにも見えます。米国の場合、これは景気回復のテンポに依存していると思われます。

 その点、むしろ雇用情勢の改善は米国よりも日本の方が問題かもしれません。昨年末、日本では「派遣切り」ということが社会問題になりました。前回も申し上げましたが、そうした世論に対する配慮はもとより、労働者派遣法改正法案により製造業への派遣禁止が実施されると、足元でも始まっている急激な生産の回復に対応するための機敏な対応に企業が二の足を踏む可能性が大だからです。結果として生産も伸ばせず、雇用も改善しません。

 現下のような経済環境及び不透明な、あるいは自信を持てない見通しの中では、企業経営者は固定費となる人件費より、変動費でまずは対応したいというのが、株主や市場関係者からも4半期毎に詰問されるのですから、当然と言えば当然です。現状、抱える正規社員に時間外(残業)で、可能な限り対応して貰った方が、余計なリスクは発生しませんし、また社員も手取りが増えるので喜ぶかもしれません。そうした印象を今期の決算説明の中で強く受けました。日本の社会慣習では、正規社員を雇用するのは簡単ですが、それを解雇するのは極めて難しいですから。


(作成:楽天投信投資顧問)

■東証1部の4.218%を占める企業の決算内容

 先週、トヨタ自動車(7203)の7−9月期決算の内容が発表になりました。同社は東証1部上場全1687社の時価総額で構成されるTOPIXの中で、単独で4.218%(11月6日現在)を占める超大企業ですから、その裾野の広さまで含めると、日本経済のある意味縮図であると言えます。つまり同社の先々が明るく見えるか、あるいは厳しく見えるかによって日本の状勢も変わるだろうということです。

 結論から言えば、印象は「ややポジティブ」という程度に留まったという感じです。個人的にはもう少し悪い可能性を危惧していましたので、その意味では安堵しています。

 まずポジティブなポイントを少し整理すると

  1. 上期営業損失が△1,369億円とIFIS予想△2,619億円を上回った
  2. 7-9月期では営業利益580億円と黒字化を達成
  3. 通期営業損失の見通しを△7,500億円→△3,500億円と上方修正した
  4. 連結販売台数計画を660万台→703万台と上方修正した

などが挙げられますが、気掛かりな点としては、

  1. ホンダ(7267)が下期の為替前提を1ドル85円と修正したにも関わらず、同社は90円であり、週末現在既にその水準を上回る円高(89.88円)になってしまっている
  2. 7-9月期の金融事業営業利益が+748億円で、本業の自動車事業は△168億円の営業赤字であること

などが挙げられます。

 もちろん、エコ・カーに対する技術力では、ハイブリッド・カーのみならず、燃料電池でも、電気自動車でも、あるいはディーゼル・エンジンまでも、その水準は間違いなく世界のトップであることは揺るぎないところですが、フル・ラインナップの自動車メーカーで、そのプロダクト・ミックスは米国志向の大型車よりであり、またホンダなどに比べれば、明らかに中国等の新興国での橋頭堡構築は出遅れているなど、基本的な部分での問題がまだあまりクリアになっていないという側面が気になっています。

 そして、トヨタ自動車及びそのグループの熱烈なファンのひとりとしては(私は同社とソニーに対してだけは、昔から格別な思い入れがあります)、この段階でF1撤退表明はして欲しくなかったと思っています。同じ止めるならば、なぜホンダより先に決断できなかったのか。この段階まで続けたならば、歯を食いしばってでも表彰台にトヨタの旗を立てるべき、そうできるようにもうひと汗かくべきだったのではないのかと思っています。

 それはF1が単なる自動車レースではなく、技術力を誇示できるエンジニアの戦いという側面が強くあるからです。ゆえに莫大な開発費用が掛るわけですが、昨年12月にレースのホンダとまで言われていた同社が撤退表明をした1年後になって続くとは、残念でなりません。収益の回復テンポで比較してもホンダの後塵を拝するように、意思決定の速度でも後追いとなるようならば、トヨタ自動車が大きくなり過ぎたことの弊害がそこかしこに表れはじめた兆候なのかも知れません。

今週のポイント

■じわりじわりとPERは低下している

 残念ながら、引き続き日本市場の明るい話題は探し難い状況が続いていますが、日経平均株価の下落度合いに比べて、明らかに日経新聞の朝刊でも確認できるPER(株価収益率)の下落度合いの方が加速しています。これはこの7-9月期決算の発表の過程で2010年3月期の通期見通しが上方修正されているから当然と言えば当然なのですが、高過ぎると言われ続けていた最も基本的なバリュエーション指標が低下していることは数少ない好材料だと言えます。

 ちなみに、9月末時点の日経平均採用銘柄の予想PERは39.6倍で、この時の日経平均株価は10,133.23円です。一方、先週末現在のそれは33.8倍まで低下しており、日経平均株価は9,789.35円です。指数の下落率が△3.39%に留まる傍らで、予想PERのそれは△14.65%に及んでいます。つまりその差の分だけは、株価の収益に対する割安度合いは高くなっているということです。この期間におけるNT倍率は11.14から11.20への上昇となっていますので、特に「日経平均株価がより売り込まれた」ということではありません。

 当然市場の目線は遠からずこの2010年3月期から2011年3月期にシフトしますので、その目線になった時にはバリュエーションで見ることの出来る銘柄も増えている可能性は大です。


(作成:楽天投信投資顧問)

<9月30日を100とした場合の、日経平均株価と同予想PERの変化をチャート化してみました。決算発表シーズンに入り、明らかに指数よりもPERの下落の方が目立っていることが分かります。>

■配当利回りも上がっている

 長期金利に上昇圧力が掛っているという話題が喧しくなってきていますが、週末現在の水準でも1.450%で、6月の1.550%はもとより、8月の1.460%をも下回ったままで推移しています。メガバンク勢の買いの手が引っ込んでしまっていることが原因といわれていますが、1.500%が窺えるようになると再び買い優勢(金利は低下)になるものと思われます。

 その一方で、株式の配当利回りの方は、8月には1.3%台にまで低下していた為、いったんは長期金利の水準を下回る局面を何度も示現しましたが、現在の配当利回りの水準は1.54%。すなわち長期金利の水準よりも高いことになります。

 この先10年間、途中の時価評価を気にしない資金で保有して1.45%の債券利回りを享受するか、「この先10年の間には、日経平均株価がせめて12,000円程度(約20%!)に値上がりすることぐらいは期待できるだろう、駄目でも配当利回り1.54%は取れる」という投資判断も理に適う状態にはなってきました。

■結論:状況は改善しているが、まだ出口は…

 オバマ大統領の来日がテキサス州フォート・フッド陸軍基地での銃乱射事件の影響で1日延期になったおかげで、日本は時間的な猶予を1日得たのではないかというのが考えです。普天間基地問題、インド洋海上給油問題など、日本が結論を出せないでいる政治問題は、中間選挙に向かって徐々に厳しい立場に追い込まれつつあるオバマ政権をかなりいらつかせていると思われます。

 米国で活躍している日本企業に対する多種多様な締め付け(自動車の欠陥指摘や独禁法問題など)という形でくるのか、ドル円政策(円高容認から推進)でくるのかはわかりませんが、少なくとも日本の外需型産業をいじめる色々なカードを米国は持っています。銀行の自己資本規制強化の流れもその一環かも知れません。90年代にもこうしたいじめはあったと記憶しています。

 国内の要因でも、税収の不足と予算膨張による国債増発など、資本市場を取り巻く環境は決して出口を求められるような状態にまで来ていません。寧ろ今は迷宮のど真ん中に居るような思いで居る資本市場関係者が多いです。こうした日本独自の現状を招いたのも政治ならば、これを打開できるのも政治なのですが、現時点は市場関係者のフラストレーションは溜まる一方のように思われます。

 最後に、先週末、かの有名な投資家ジム・ロジャーズ氏の話を聞く機会がありました。その中で大変印象的であった彼が勧めた日本の未来への処方箋は「早く家に帰って、子作りに励んで下さい」というものです。新興国を含めて世界を旅する投資家の目には、やはりこの少子高齢化の未来は決して楽観できるものではないようです。そして彼はこうも言いました「金融業界など早く辞めて、農業に就きなさい」と。ある意味、とても納得できるストーリーで、笑えない現実を突きつけられた気がしたものです。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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■オリンピック開催決定で注目を浴びるブラジル市場

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ブラジル連邦共和国の証券取引所に上場している株式に投資する。MSCIブラジル10/40指数(円ベース)をベンチマークとし、中長期的に当該インデックスを上回る投資成果を目指す。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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