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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年11月2日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

11月第1週

マーケット概況

株式 週末終値
(10/30終値)
前週末比
(10/23比)
日経平均 10,034.74 -248.25 -2.41%
NYダウ 9,712.73 -259.45 -2.60%
金利・為替 週末終値
(10/30終値)
前週末比
(10/23比)
長期金利 1.405% +0.045%
ドル/円 90.10  
ユーロ/円 132.62  

米国経済回復に息切れのリスクが各市場に波及する

前週の総括

■7-9月期決算は政策後押しで予想通り好調だが・・・

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。先週から本格化した日本企業の7−9月期決算発表は、事前の大方の予想通り、上場企業の経常利益が2四半期連続で改善する状況が続いています。しかしながら、先月9月末時点と株価を比較してみると、日経平均株価が△2.41%の下落、市場全体の動きを示す東証TOPIXでも△0.82%となり、日本市場は総じてマイナス推移となっています。一方、米国市場に目を移すと、NYダウがわずかに45セントの上昇で±0.0%程度ですが、S&P500種は△1.97%、ナスダック総合指数は△3.64%の下落となっています。

 ちなみに10月同期間の他市場のパフォーマンスを調べてみると、上海総合株指数はプラス7.79%上昇ですが、投資資金の過剰な流入を抑制するため20日から海外からの送金に対して2%課税を導入したブラジル・ボベスパ株指数はプラス0.04%に留まり、インドのSENSEX指数は△7.18%のマイナス、韓国のKOSPI指数も△5.53%のマイナスという市場ごとの跛行色が強い展開となっており、総じて言えばダウンサイド・リスクへの意識が高まっているという気がします。

■米国の経済統計がまだら模様になってきた

 全世界協調で景気刺激策を取って経済金融危機を乗り越えようと取り組んできたフェーズが、豪州の利上げを皮切りに、ノルウェーも利上げをするなど、徐々に新しい段階に入りつつあるというのが現在の状況です。そうした中、世界景気回復の中心を為さねばならない米国の経済統計が揺れ始めたというのが株式市場のみならず、為替市場や商品先物市場でも不透明要因として急浮上してきた感じがあります。

 5四半期ぶりに米国GDPは市場予想を上回るプラスに転じたことを囃して米国株式市場は急騰したかと思えば、翌日には9月の個人消費支出が5カ月ぶりに前月比でマイナスなったとの発表を受けて急落するなど、まさにまだら模様の経済統計に一喜一憂する展開になってきました。

 もうひとつのまだら模様の代表的なものとしては米国の住宅関連の指標が挙げられます。例えば、市場予想に対して良かったか、悪かったかの単純比較で整理すると、今月発表になった住宅着工は駄目、中古住宅販売はOK、そして新築住宅販売は駄目、でもケースシラー住宅価格指数はOK、といった「どっちやねん?!」という感じだということです。こうしてサブプライム・ローンの震源地となった米国住宅市場については底を打ったという認識にやや黄信号が灯ると同時に、先週末は米国商業用不動産の見通しについてネガティブなものが注目を集め、これらを背景に多くの市場で巻き返しが起こったという感じです。

■ドル高、原油安、金利低下など

 米国経済の回復継続に対する安心感で形成されつつあった投資マネーのリスク許容度の上昇が、ドル・キャリー取引を通じて原油高などの商品市場の上昇を後押しし、また米国債金利の上昇という流れを作っていましたが、足元の状況を見る限りにおいて、それらは逆転してきた感じがあります。ドルの対ユーロのレートは、先々週末で1.5008でしたが、先週末現在1.4828とドル高になり、原油もNYマーカンタイル原油先物市場で取引されるWTIで見て先々週は81ドルを超える水準まで上昇していましたが、先週末の終値は77ドルまで下落しています。米国10年債の長期金利も、先々週末は3.490%でしたが先週末は3.3828%まで下落(債券が買われている)しています。市場は米国景気の回復基調に変化の兆しを見始めているように思われます。

■国内の債券市場にもやや変化がみられはじめた

 税収の悪化が懸念される一方で、民主党のマニフェストに従った国家予算の増加を支えるために国債の増発が余儀なくされるという認識の元に、国債の需給環境の悪化が長期金利のジリ高要因にある程度はなっていることが確かでしたが、ここに来て少しその勢いが加速してきた感じがあります。先週は新発10年債の金利はほぼ週を通じて1.4%で取引をされ、週末の終値は1.405%程度となっています。これはあくまでも“悪い金利の上昇”であり、こうした流れの中で住宅ローン金利などが上昇する(実際、長期金利連動の住宅ローン金利の引き上げが発表されています)と、国内の個人消費にもさらに悪影響を与えます。ただし、まだ今年の6月や8月の金利急騰局面よりは上昇していませんので、このあたりは注意をしてみて行く必要があります。6月と8月の時と現状の大きな相違は、前述の“悪い金利上昇”部分とは別に、景気回復見通しによる“良い金利の上昇”部分があるかないかです。当然、現状は後者の部分が無いため、1.4%で止まっていると言え、債券市場の人の声を聞く限りでは「買いに入るタイミングを待っている」とのことでした。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートは日本国債10年物の過去一年間の金利推移です。-------昨年末には1.2%を下回る場面もありましたが、その後は回復傾向に入りました。直近、10月に入ってからの1.25%からの急騰部分がまさに“悪い金利上昇”の典型部分だと思われます。>

今週のポイント

■明るい材料を探すことに苦労する環境が続く

 毎月末には弊社(楽天投信投資顧問)は投信投資顧問会社として「投資政策委員会」と呼ぶ、内外の株式や債券市場の投資環境を分析する会議を行いますが、残念ながら10月29日に開催した同会議では、明るい材料を探すことには相当苦労するような状況となったと感じています。

 先週はメディアの取材にお答えする形で、ホンダ(7267)やソニー(6758)の決算発表に対するインスタント・ビュー(発表直後にポイントをいくつか確認して、速報ベースでインプレッション(感触)をコメントするものです)を発表しましたが、足元の終わった期に対するそれは好印象ながらも、先々に対しても収益改善をコミットするようなコメントをし辛い内容のものが多かったというのが率直な実感です。

■製造業の苦悩を見る決算説明会

 週末にはアイシン精機(7259)の決算説明会へも足を運びましたが、やはり、どうしても通期の見通しやその先についてとなると、引き続きまだ慎重にならざるを得ないという経営側の感触がひしひしと伝わってきました。米国の「Cash for Clunkers」後の需要動向、あるいは日本国内でもエコカー減税後の動向などを懸念する感覚は強いようです。

 そんな中でひとつ気になったのは、製造業が労働力確保の面で従来とは違った苦悩を抱えているということです。それは期間工などの非正規雇用の労働者の取扱いです。正規雇用の定時就業時間のコストは固定費として認識され、それ以外の残業代や派遣などのコストは変動費となるわけですが、今年の1-3月などの厳しい環境での記憶もあり、企業側がそうした雇用に対して二の足を踏んでいる印象を強く感じました。つまり雇用の調整弁がうまくワークしていないということです。こうした流れが定着してしまうようだと、日本の製造コストの増加を引き起こす結果となり、それを回避するために、ますます日本の製造業の空洞化は進まざるを得ない結果になる可能性を感じます。

■結論:良い方向に向かっているとは・・・・、言い難い

 まだ国内企業の決算発表も出揃っておらず、また米国経済指標の発表も今週はISM製造業景況指数、同非製造業景況指数など、先月まだら模様のきっかけとなった経済統計の発表も行われることから、断定的に言い切ることはできませんが、シナリオとしては世界景気が2番底を見に行く可能性が高いという方の示現確率が高まってきているように思われます。

 ただ一方で、先週末に発表しました10月の『楽天DI』でも注目度が急上昇したブラジル市場のように、投資家の熱い視線を集める分野は多々あり、またそうしたエリアから世界景気を再浮上させるようなパワーが溢れてくる可能性を否定はできないと感じています。

 先週、ブラジル国営石油公社であるペトロブラス社の総裁の話を(2メートルも離れていない席で)直に聞く機会があったのですが、「足元は回復しましたが、先々は・・・」というような慎重論を言うトーンや、「これらのコスト削減効果の結果により・・・」といった血の滲むような経営努力という日常聞き慣れた世界とは全く異質の世界を垣間見ることができました。こうした世界に投資家の資金が向かうというのも無理からぬこととあらためて実感しました。(当然、そうした投資機会をチャンスと捉えた金融商品を運用会社として適時ご提供する当社の責務も痛感していますが・・・)

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪10月の楽天DIでも注目度が急上昇したブラジルへ投資≫

■金融取引税2%導入後も、引き続き注目を浴びるブラジル市場

HSBC ブラジル オープン
HSBC ブラジル オープン

ブラジル連邦共和国の証券取引所に上場している株式に投資する。MSCIブラジル10/40指数(円ベース)をベンチマークとし、中長期的に当該インデックスを上回る投資成果を目指す。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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