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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年10月26日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

10月第4週

マーケット概況

株式 週末終値
(10/23終値)
前週末比
(10/16比)
日経平均 10,282.99 +25.43 +0.25%
NYダウ 9,972.18 -23.73 -0.24%
金利・為替 週末終値
(10/23終値)
前週末比
(10/16比)
長期金利 1.360% +0.030%
ドル/円 92.06  
ユーロ/円 138.17  

今の政治が最大の株価の上値圧迫要因だ!

前週の総括

■企業業績は明らかに回復傾向を示している

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価も、NYダウも、週を通じてみると狭い範囲での小動きに終始したという感じです。ただ、米国ではインテル(INTC)に始まったハイテク企業の7-9月期決算の好調の流れが続き、アップル(AAPL)も『iPhone』のみならずパソコン『マッキントッシュ』も順調、ネット検索大手のグーグル(GOOG)も最高益を更新するなどと良い流れが続いています。日本でも、東芝(6502)が半導体市況の回復や原子力発電の好調を受け営業黒字に転じ、ホンダも国内や新興国での低燃費車の好調を受けて営業黒字となりました。またパソコンの好調な足元を反映し、HDDのガラス磁気ディスクを作るHOYA(7741)も好調、アドバンテスト(6857)や東京エレクトロン(8035)も受注に回復の兆しが見えるなどの見通しが立ち始めてきました。しかし、にもかかわらず、日本の株価は上がらないという状態が続いています。

■為替は対ドル、対ユーロ共に円安に振れている

 株式市場の不安材料のひとつとなっていた為替動向ですが、週末の終値は対ドルが92.06円、対ユーロが138.17円ですから、ひと頃の80円台、120円台の円高が心配された状況とは違う展開になってきました。円高リスクはひとまずは後退したと思われます。

■ポピュリズムで借金漬けとなる日本の国家財政

 一方、政治面に目を向けると、2010年度予算の概算要求については、事態はより混迷の度合いを深め、結局は民主党のマニフェストに縛られた分だけ予算が膨張、新規国債発行額が「均衡予算主義」を取った47年度以降初めて税収を上回る50兆円規模となる可能性について藤井財務相が指摘するなど、日本の財政規律はどうなるのかといった状況が続いています。家計に置き換えて考えてみれば明らかですが、今までは借り換え分を含めて年収の範囲内に収めていたその年の借金を、年収を上回る状態にしようということです。この借金、いつになったら、そして誰(どの世代)が返すというのでしょうか?

■債券市場は冷静に、景気がかなり悪化することを織り込んでいる

 こうした国債の大量発行が予想されれば、本来ならば債券の需給悪化から長期金利に相当な上昇圧力がかかるはずですが、新発10年国債の週末レートは1.360%と1.24%台からは少し戻したとはいえ、引き続き超低水準に留まる不思議な事態になっています。ちなみに、今年日経平均株価が10,000円台を回復した過去2回の局面、すなわち6月12日と7月下旬以降では、前者が1.5%で後者が1.4%となっています。すなわち、債券市場関係者はいかに国債増発がなされようとも、需給悪化による長期金利の上昇よりは、景気悪化、もしくはデフレ・スパイラルに伴う金利の長期低位安定を見込んでいるということです。つまり、銀行は貸出先が増えずに、国債を買い続けるしかないという事態を計算に入れているということです。原油価格が先週のNY市場では一時80ドルを超えるなど、そうした意味でのインフレ懸念も考えられるというにもかかわらずです。そういえば、末端のガソリン価格は原油価格の上昇を反映しなくなってきています。

■日本の民営化の流れは終わってしまったのか?

 日本航空の再建問題も、結局は再び同社が国営航空に戻るということで決着しそうな勢いですが、日本郵政についても、社長交代人事を見ている限り、結局は再び「民から官へ」という方向に向かいだしたようです。退官後15年経とうが、20年経とうが「官僚出身」という事実には変わりなく、またあるべき正式な手続きを経ぬままに亀井郵政・金融相から次期社長人事が発表されるという、少なくとも日本の構造改革を評価して外国人投資家の資金が大量に日本に流れ込んだ状態とは真逆の状態に向かいつつあります。それが証拠に、残念ながら市場の売買代金は引き続き低調を極め、先週5営業日中3営業日は1兆2千億円台に留まるというこの低空飛行は、外国人投資家の資金などニュー・マネーが市場に入ってきていないことを裏付けています。

今週のポイント

■NT倍率が9週間連続で上昇している裏にあるもの

 以下のチャートでもご覧いただける通り、日経平均株価と東証TOPIXの相対的な関係を表すNT倍率(日経平均株価÷東証TOPIX)は引き続き上昇、週末ごとの比較では実に9週間連続で上昇し、先週末は過去一年間の最高値となる11.3998まで上昇しました。元よりこれを正常な動きと見る市場関係者は少ないと思いますが、市場のいびつな歪みはさらに進んでいるものと思われ、これが市場のボラティリティ低下(インプライド、ヒストリカルとも)とあわせて、大きな不安要因だと考えています。

 どうしてここ数回のこのメルマガでNT倍率の急騰のことを常に問題だとして取り上げているかといえば、現時点のNT倍率の水準がITバブルの頂点(2000年4月12日)ともほぼ重なる2000年4月24日、この日に行われた日経平均採用225銘柄中30銘柄の大幅入れ替え以降の最高値になるからです。すなわち、TOPIXに対する日経平均株価の割高感が最高だということです。


(出典:Bloomberg)

上段が日経平均株価と東証TOPIXの過去10年間の推移で、下段のチャートがNT倍率のチャートです。

■日経平均株価を牽引しているのは外需銘柄、内需関連が足を引っ張る

 東証全33業種についてのデータは本文最後に添付いたしますが、年初来の業種別株価指数の動きが対TOPIXでどの程度アウト・パフォーム/アンダー・パフォームをしているかを調べてみると、稼ぎ頭のトップは輸送用機器で+34.04%、最下位は再建問題に揺れる日本航空を抱える空運業で△36.92%となります。

 問題点を整理するために、代表的と思われる外需関連業種(輸送用機器、精密機器、電気機器)と内需関連業種(不動産業、証券・商品先物取引、小売業、その他金融業、保険業、銀行業)で年初来の動きをチャート化してみたのが下記のものですが、一目瞭然でこの間の内需銘柄の不振が見て取れます(参考までに海運業と空運業も示してあります)。またその開きは、9月上旬以降に急激に拡大していることが分かります。

 実はこの間、金融市場で何が起こっていたかといえば、為替が円高に振れる局面に入っています。先週末現在は対ドル、対ユーロ共にだいぶ戻して1ドル92.06円、1ユーロ138.17円となっていますが、1ドル88円台、1ユーロ129円台に突入する段階でも、外需関連銘柄と内需関連銘柄のパフォーマンス差の拡大は続いていました。これを端的に証明しているのがNT倍率の拡大ということになります。


(作成:楽天投信投資顧問)

チャートは、TOPIXに対する相対的なパフォーマンスを表しています。

■日経平均株価の個別銘柄の影響度を見る

 ただ実際には日経平均株価というのは、採用225銘柄の株価から計算される株価指数とはいえ、かなり個別銘柄の影響度が大きい特異な指数でもあるため、年初来の個別銘柄の動きも調べておく必要があります。(2009年については、株券電子化に伴う問題で年末年始に三井住友FG(8316)やみずほFG(8411)、あるいはNTT(9432)やJR東日本(9020)などの銘柄が取引不能になっているため、そのいびつ感を取り除くために、データの集計は1月5日(大発会)の終値を起算日として計算しています。業種別の動きについても、これに歩調を合わせるため、あえて12月30日を起算日とせずに計算処理しています。)

 プラス貢献度トップ10は第1位の東京エレクトロン(8035)から、ファーストリテイリング(9983)、TDK(6762)、ホンダ(7267)、アドバンテスト(6857)、ソフトバンク(9984)、京セラ(6971)、信越化学(4063)、ファナック(6954)、キヤノンと続き、ここまでで何とプラス貢献部分の55.42%を占めることになります。これらを含む上位20銘柄のうち内需に関わるものといえば、ファーストリテイリングとソフトバンクのみで、残る18銘柄は代表的な「外需銘柄」ということが出来ます。

 一方、マイナス寄与度のランキングに目を転じると、『iPhone』で勢いづくソフトバンクにシェアを奪われつつある感が強いKDDI(9433)を筆頭に、日本の小売業界ではファーストリテイリングの好敵手と思われるセブン・アンド・アイHLDS(3382)が3番目に顔を出します。ディフェンシブの代表格といわれる薬品株が揃って名を連ねるのは、指数のリバウンド局面では当然といえば当然ですが、プラス寄与度のランキングのように単一銘 柄で突出しているものはありません。

年初来日経平均株価プラス寄与上位20傑
(作成:楽天投信投資顧問)

年初来日経平均株価プラス寄与下位20傑
(作成:楽天投信投資顧問)

■外需頼みでの株価上昇には限界があるかも知れない

 すなわち、足元はやや円安に戻したとは言え、円高局面でもNT倍率を引き上げることに貢献する外需関連銘柄はかなり先駆してこれから本格化する7-9月期決算の好調や上方修正をすでに織り込んでいる可能性が高いということです。今週以降に発表される日本企業の決算内容は回復感を示すものが多く出てくることが期待されます。しかし、それによって株式市場全体が更に上昇するためには、NT倍率がさらに上に持ち上がることを想定しなければなりませんが、前提の置き方にかなり工夫をする必要があるように思われます。

■結論:政治が変わらないと当面は厳しい展開が続く

 この原稿執筆時点では衆院選での政権交代後、初の国政選挙となる参議院神奈川、静岡両選挙区の統一補欠選挙の結果は分かっていません。ただ、少なくとも現政権の経済政策に対して、8月の衆院選挙後、金融市場は好感する場面は一度も無いと言っても過言ではない状況下、少しは金融市場の動きに耳を傾けるような結果になって欲しいと思っています。そして逆にそうならない場合のリスクについて、かなり不安になっています。

 また普天間基地問題やインド洋給油問題など、防衛問題でも、来月のオバマ大統領の来日まで課題山積であり、株価が業績回復を評価して上値を追える展開になるには、もう少し時間がかかりそうだと思われます。その間に急騰しているNT倍率の修正があるとすれば、それは日経平均株価の年初来の上昇率がTOPIX並の水準に訂正されることを意味すると考えています。(10月23日と1月5日の終値同士の比較では、日経平均株価はプラス13.71%の上昇、東証TOPIXはプラス2.98%の上昇)

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

<業種別対TOPIX>
 
(作成:楽天投信投資顧問)

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪原油価格、先週のNY市場で一時80ドル超の高値≫

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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