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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年10月19日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

10月第3週

マーケット概況

株式 週末終値
(10/16終値)
前週末比
(10/9比)
日経平均 10,257.56 +241.17 +2.41%
NYダウ 9,995.91 +130.97 +1.33%
金利・為替 週末終値
(10/16終値)
前週末比
(10/9比)
長期金利 1.330% +0.050%
ドル/円 90.90  
ユーロ/円 135.48  

ユニクロだけが支える日経平均株価のいびつ

前週の総括

■TOPIXはわずか0.35%しか上昇していない

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。円高、JAL問題、そして来年度予算概算要求の肥大化など、日本株式市場を取り巻く環境は決して良いわけではないにも関わらず、先週の日経平均株価だけを見れば株式市場は上昇したかに見えます。しかし、市場全体の動きを表すと言われる東証TOPIXはわずかに3.12ポイント上昇しただけであり、また東証マザーズ指数においては4.82ポイントの下落(△1.09%)となるなど、その実態は日経平均株価の表面から伝わるものとは大きく乖離しています。NT倍率も11.3825倍とこのところの同倍率の急騰をさらに加速させる流れとなりました。この歪みは正直言って見過ごせません。


(出典:Market Speed)

頑張るユニクロ、直近の安値は9月2日。この日からの日経平均株価の下落は272.50円(△2.59%)、一方終値ベースで同社の値上がりは4,480円(41.33%)にもおよび指数貢献度はプラスの181.70円。もし同社がなければ同期間の指数は454.20円の下落となっていたことになります

■ユニクロ(ファーストリテイリング)の一本足打法

 先週一週間の上げ幅241.17円のうち85.983円がファーストリテイリング(9983)の上昇分2,120円からに依存しています。次がトレンドマイクロ(4704)の10.951円、その次がファナック(6954)で7.706円、アドバンテスト(6857)が7.300円、日立建機(6305)の6.489円と続きます。上位数銘柄で全体の大勢を占めるという論点はよくありますが、ご覧の通り、1銘柄で指数全体の35.65%を占めた結果というのは、あまりにいびつなものと言わざるを得ません。225銘柄で構成される以上、本来的な1銘柄の貢献度は平均0.44%(1÷225銘柄)であり、その他の指数が低調なのでなおさらです。

 ひとつ言えることは、機関投資家のポートフォリオで、同社をいかに取り扱うかでパフォーマンスが大きく違ってきているということです。だからこそ、当月に入ってから同社の株価がもう一段噴き上がったと言えるうがった見方もできます。

■年金基金の四半期報告の影響

 機関投資家の運用資金の大きな部分を年金基金が占めます。そして多くの運用会社が運用成果の四半期報告を年度の各四半期ごとに行い、パフォーマンスをレビューし、そして今後の運用方針を説明します。業界では当然の認識ですが、年金基金側はその報告を受けて、各運用会社への資金の割振りや継続か解約かなどの判断をします。

 年金基金の日本株部分のベンチマークは、通常は東証TOPIXであり、運用会社はこれをアウトパフォームすることが求められます。逆にいえば、絶対リターンはマイナス%の結果でも、ベンチマークにさえ勝っていれば問題とされないということも言えます。ただ問題となるのは現下の状況のように、NT倍率が上昇するような局面です。

 メディアの論調がそうであるように、株価が「日経平均株価が○×期間ぶりに10,000円の大台を回復!」などと見出しを書きたてれば、普通は「株も上がっているのだな」と思ってしまいます。ただ、年金基金などのように広く分散されたポートフォリオの場合、遥かにその連動性はTOPIXに近く、日経平均株価の水準から受ける印象とは乖離します。

 なので、ある意味、昨年リーマンショック後の10月からの日経平均株価の急落局面(11,000円水準から7,000円前半まで)はそうした資金の運用サイドにとっては楽だったとも言えます。この間のNT倍率は10.5倍前後から9.5倍割れまで急低下していますので、日経平均株価ほどベンチマークとなるTOPIXが下落しておらず、ファンドの絶対リターンは言われるほど傷んでおらず、さらにちょっとだけ銘柄を入れ替えてあれば、あるいはキャッシュ比率を指定アロケーションより少しだけ高めにしておけば、ベンチマークを容易にアウトパフォーム(指数ほどには下がらないこと)できたからです。

 しかし、今回は違います。TOPIXの水準はおおよそ900ポイント前後に貼りついたまま、NT倍率だけが上昇しています。それもある特定の銘柄がかなりの部分で貢献しています。つまり前回と逆で、日経平均株価の戻りの印象ほどにパフォーマンスが改善していないということです。もし貴方が機関投資家のファンドマネジャーで、この現実の中で、大事なクライアントに現状説明と今後の見通しを話す立場だとしたら、その銘柄の取扱いをどうされますか?「御社(貴方)のファンドにはどうして○×は入っていない(組み入れが低い)のですか?」と質問されるのですから。今の市場展開にはそうした要素がかなり濃厚に含まれていると思われます。

■インテル、JPモルガン、ゴールドマンなど好調

 「インテル(INTC)の決算に注目しています!」と前回もお伝えしましたし、緊急レポートでも『CEATEC JAPAN 2009』での基調講演からそのポイントをお伝えしたつもりでおりますが、予想に違わず、抜群の結果を残してくれました。決算速報もお伝えしましたが、まだまだ市場は同社のビジネスの現状、さらに言えばハイテクの現状を織り込み切れているとは考えていません。それはインテルほど日本国内では知名度はないですが、同社の決算発表後に続いたアルテラ(ALTR)やザイリンクス(XLNX)といった半導体企業の好決算がそれを裏付けています。

 金融機関ではJPモルガン(JPM)やゴールドマン・サックス(GS)が予想以上の好決算を発表しています。週末に発表になったバンク・オブ・アメリカ(BAC)の決算は市場の予想を裏切り、水を差していますが、全体感としては復調の兆しは強いと考えてよいと思います。

■国内要因にポジティブなものはあまりない

 ただし、国内要因に目を向けた時にはポジティブなものはあまりありません。外部要因で国内株が上昇したような見方をしてしまいがちですが、実際の指数への貢献度合いを分析すると、上記のような米国要因に連動して上昇すべき銘柄は芳しいパフォーマンスを挙げていません。

 しいてあげるならば、円高が一服してドルが90円台、ユーロが週末に135円台に戻したということが挙げられますが、ファンダメンタルな要因でポジティブなものは先週あまりありません。むしろ来年度国家予算の概算要求が、前政権の時よりもさらに膨らみつつあり、国債の需給悪化を招きかねない状況を市場が気にし始めた点がマイナス要因となる可能性すらあります。

 また原油価格が再び騰勢を強めており、週末のNY市場でのWTI原油先物12月限月の終値は78.53ドルとなっていることを危惧しています。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートはWTI原油先物のこの一年間の日足チャートです。---- 年初の安値からはすでに2倍以上に価格は跳ね上がっています。これが債券の需給悪による長期金利の上昇などと相俟ってインフレの芽とならないことを願います。>

今週のポイント

■米国企業決算と日本企業の決算への期待値

 今週も米国企業の決算発表が続きます。ミクロではその内容を受けて、日本企業の決算にどの程度期待が膨らむのかということに注目しています。現地時間23日の寄り前にはマイクロソフト(MSFT)が決算を発表します。その前日22日が『Windows 7』の発売日となりますので、弥が上にも期待は高まります。TDK(6762)が先週発表した決算では、ハード・ディスク・ドライブ用のヘッドが好調で4四半期ぶりに黒字に転換していました。ただどうしても、いまだにこの先の見通しは不透明だとまだコメントされてしまいます。ひとつの論点としては、『ネットブックPC』をどう見るかによると思われますが、そこに資源投下したACER(エイサー、2353 TT TWD)のシェア拡大と、出遅れたDELLとの明暗に、この問題の答えは出ているように思われます。

■結論:国内で楽観はし難いが、世界は前を向いて動いている

 引き続き、残念ながら国内発の好材料で株価が大きな上昇局面に入るとはなかなか考えづらいです。また日米欧の国債の需給悪化による悪い金利上昇の可能性などが債券市場や為替市場から喧伝されてしまっている現状で、ファンダメンタルの好材料が国内から出てくるとは考えにくいです。

 ただ足元での地殻変動は確実に起こりつつあるのもハイテク企業の決算動向などを見る限り明らかであり、こうしたものから徐々に期待感が醸成されて、市場が前向きに物事を捉えるようになれば転機が訪れるかもしれません。ただ、基本的な理解として、株式市場の現状水準はTOPIXで900ポイント前後という認識に立って見ていた方が良いと思われます。

 今週は『東京モーターショー』が開催されます。環境対応のコンセプトカーなどが各社から発表される予定ですが、2020年25%温暖化ガス排出削減のリアリティがどの程度か、ひとつのイメージを掴むことができるかと思います。この辺からの情報発信も注目していきたいと思います。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪原油価格,年初の安値からは既に2倍以上に高騰≫

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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