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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年10月13日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

10月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(10/9終値)
前週末比
(10/2比)
日経平均 10,016.39 +284.52 +2.92%
NYダウ 9,864.94 +377.27 +3.98%
金利・為替 週末終値
(10/9終値)
前週末比
(10/2比)
長期金利 1.280% +0.030%
ドル/円 89.77  
ユーロ/円 132.25  

辛うじて週末は日経平均株価で10,000円を回復したが…

前週の総括

■NT倍率がさらに上昇している

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。先週末の日経平均株価の終値は16円ほど辛うじて10,000円の大台を回復して終わりました。しかし実態面で捉えるとTOPIXは900ptsを回復していないままの897.83ptsであり、過去2回のメルマガでも指摘させていただいているNT倍率(日経平均株価÷TOPIX)の水準は11.1562とさらに上昇(10月2日11.1263倍、9月25日11.1264倍)していますので懐疑的です。ちなみに、前回の倍率でTOPIXから逆算する日経平均株価は:
   897.83pts「10月9日TOPIX終値」×11.1263倍「10月2日NT倍率」
となりますので、答えは9,989.52円となります。さらに言えば、過去一年間の同倍率の平均値は10.4404(2008年10月14日〜2009年10月9日、242立会日平均)となり、それから計算される値は9,373.70円となります。慎重論過ぎると思われるかも知れませんが…。

■海外株高につられ、ハイテク株が健闘

 先週一週間の上げ幅のうち284.52円のうち183.92円が週末9日の分になります。日経平均株価が採用銘柄225銘柄で計算されていることはご存じのことと思いますが、9日の内訳で計算すると、貢献度上位の1割にも満たないわずか20銘柄でその約60%にあたる110.38円の変動を説明できます。そしてその20銘柄のうち、ファーストリテイリング(9983)とファナック(6954)そしてホンダ(7267)を除く17銘柄がすべて、いわゆる「ハイテク株」ということになります。ハイテク株が注目だということはかねてから申し上げてきた通りですので、特段の違和感はないのですが、東証TOPIX、すなわち市場全体の変動を表すと言われている指数の伸びがNT倍率の高騰に示されるように立ち遅れることに市場の問題点を感じます。売買代金も少しは増えてきましたが、週の平均が1兆4千億円というレベルでは、とても活況とは言えません。

■ハイテク関連に好材料が続く

 先週ハイテク関連には好材料が続きました。まず週初に米半導体工業会(SIA)が8月の世界半導体市場の伸び率がプラス5%になったと発表しました。これは前回の緊急レポートでもご案内した通り、半導体世界最大手のインテル(INTC)がネットブックPC向けに提供しているAtomなどのMPU(Micro Processing Unit)を中心に、好調を続けているからです。デスクトップだろうが、ノートブックだろうが、あるいはネットブックだろうが、MPUだけでパソコンが組み立てられるわけではなく、当然それに付随する電子部品関連が好調です。

 通常はそれらパソコンと名のつくものには必ずメモリーが載りますから、DRAMが販売増となります。そしてDRAM市場で覇者になるためには、最先端技術を積極的に取り入れ、同業他社よりも一歩進んでコスト削減をすることがDRAMメーカーには求められますが、その面でエルピーダメモリ(6665)がサムスンに先行して45nmの量産ラインを年内にも立ち上げると発表しました。300億円から400億円の設備投資ということになりますが、東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)などの株価はこうした報道に後押しされていることは間違いありません。

 通常、パソコンの記憶媒体といえば、メインはハードディスクドライブ(以下『HDD』)で、少なくとも1台のパソコンに1台のHDDは搭載されています。最近はHDDに代わってフラッシュメモリーを搭載したフラッシュ・ソリッド・ステート・ドライブ(Solid State Drive、以下『SSD』)をその読込速度の速さからデスクトップPCでも起動ドライブ(OSをインストールするドライブ)とするパソコンもありますが、主流は圧倒的にHDDです。

 そうした流れを反映して、10月7日の新聞報道にもありましたが、例えば日本電産(6594)のHDD駆動装置用精密小型モーターの出荷台数は7-9月期に前四半期に対して2割増えたとか、TDK(6762)の作るHDD用の磁気ヘッドの受注額は1割伸びたなどと市場に伝えられています。こうした流れが日経平均寄与率の高い値嵩ハイテク株を引き上げることでNT倍率が上がっています。

■中国政府は本気かもしれない

 国慶節(中国の建国記念日)に伴う大型連休が明けた9日、上海総合株価指数が急騰しました。報道によれば、中国当局が金融商品などの売却益に対する税金を課す制度を一時的に撤回したそうです。原稿執筆時点(10月12日午前11時)の上海総合株価指数はプラスを維持しています。中国政府の株価対策は本気かも知れません。どこかの国も取り組んでくれるとありがたいとのですが…。

■米国市場も連騰している

 オバマ大統領のノーベル平和賞受賞は株価には関係ないと思いますが、米国の株式市場においても、NYダウは10月7日に一休みしていますが、S&P500種もナスダック総合指数も10月2日より5連騰となり、この間の上昇率は4.51%と4.45%となっています。先々週末発表の雇用統計を受けて市場はマクロ景気の回復感に半信半疑になりつつありましたが、5日に発表された米サプライマネジメント協会(ISM)の非製造業景況感指数が前月比で2カ月連続の上昇、市場予想も上回り1年振りに好不況の分かれ目となる50を超えたことが市場に好感されたものと思われます。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートは米国ナスダック総合指数の1週間分の日中足です。---- ハイテク株といえばナスダック、きっとシリコンバレーは明るくなりつつあるのだと思います。>

今週のポイント

■製造業、主要事業の黒字化は嬉しい話だが…

 日本経済新聞10日朝刊の1面の見出しは株式市場関係者にとっては耳触りの良いものだったと思います。不景気な話や不透明な話が多い中で、日本の主たる製造業の主要事業で黒字が戻ってきたというのですから喜ばしい限りです。

 ただここで敢えて皮肉を言えば、そうした産業の多くが世間一般に言われるところの「外需型産業」で「内需型産業」ではないということです。当然エコ関連もありますが、少なくとも国内の景気回復が新政権の経済政策の後押しによって進み始めたという内容のものではありません。中国需要であったり、ハイテクの立ち直りであったりという内容ばかりです。年度途中の予算カットや一旦停止は、病み上がりの病人に対して、「主治医が変わりましたので治療方針をすべて見直します。新しい方針が出るまでは点滴も中止します」と言っているようなものではないのでしょうか。

 そして気掛かりなのは、多くの企業経営者達が先々を楽観視していないことです。「足元は回復の兆し」と言いながらも、「これが長続きするかどうかは慎重にみている」というトーンですから、世界の株式市場の上昇に日本だけが取り残されていってしまうのは仕方のないことかも知れません。今こそ政治がリーダーシップを取って、企業経営者が少しは前向きに設備投資を考えられるようにでもしないと、この国の景気回復はL字型にすらならないかも知れません。

 「ユニクロ(ファーストリテイリング)」には個人的にはお世話になっています。あれだけの品質の商品を、あれだけ安く提供してくれれば、消費者としては有難い限りです。たくさん愛用しています。「ニトリ(9843)」も同様です。気が付くと、我が家のいろいろな所に同社の製品があります。安くて良品質ということは良いことです。しかし、そうした流れがどんどん加速することが日本経済全体で見た時に良いことなのかどうかは疑問が残ります。GDP(国内総生産)の7割とも言われる個人消費の絶対額は間違いなく落ちるわけですから。円高と海外の安い労働力に支えられた価格破壊を進めながらもこの国の国力を高めるためには、片手で高額品の消費がどんどん増えるか、人口増が続いて全需要を伸ばさないことには維持できません。米国や中国と日本の決定的な違いは、日本だけが人口減少の国だということです。それも急速に高齢化が進んでいます。

 目先の耳触りの良い話だけ聞かされて、後世に負債を付け回すのだけは止めて欲しいと、株式市場の動きだけ見ていても強く感じてしまう今日この頃です。

■結論:米国企業の決算に注目

 残念ながら国内発の好材料で株価が大きな上昇局面に入るとはなかなか考えづらい、というより、国内発で好材料が出るのかが疑わしいです。しかし、世界の動きは違ってきていると思われます。世界景気は間違いなく回復過程に入ってきたようです。株式投資の観点からいえば、全体論のマイナスの話をするよりも、ポジティブな材料があるところに資金を振り向けるというのが現実論だと思います。

 その意味では、『CEATEC JAPAN 2009』を見てきたから言うわけでもありませんが、やはり技術的なイノベーションが進んでいるハイテク産業に突破口を見出すのが近道だと思います。そうした意味でも、13日に発表になるインテルの決算には注目しています。足元の状況が良いことは明らかなのですが、この先について、技術的なロードマップとは別にどのようなビジネス・ビジョンを市場に伝えてくれるか期待しています。そこからの波及効果は日本企業にとってもたくさんあると思われます。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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