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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年8月31日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

8月第5週

マーケット概況

株式 週末終値
(8/28終値)
前週末比
(8/21比)
日経平均 10,534.14 +295.94 +2.89%
NYダウ 9,544.20 +38.24 +0.40%
金利・為替 週末終値
(8/28終値)
前週末比
(8/21比)
長期金利 1.310% -0.050%
ドル/円 93.61  
ユーロ/円 133.90  

国政選挙前週は国内要因を無視した市場だったが…

前週の総括

■年初来高値更新するも、素直には喜べない

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価は週半ばの26日には予想(8月14日のザラバ高値10,630.38円、引け値10,597.33円が目先の高値になった可能性が高いという考え)に反して、年初来高値をザラ場、引け値ともに、わずかですが更新し、一週間の騰落率がプラス2.89%となりました。市場全体の動きを表すTOPIXは日経平均株価ほどには上昇せず2.32%、さらに中小型株の東証マザーズは0.57%、JASDAQ総合も1.58%とプラスながら日経平均株価が最大の上昇率となっています。

 ただ残念ながら、この背景にあるのは国内要因、すなわち本日(原稿執筆は8月30日)行われる国政選挙の結果への期待感、あるいは選挙後の新政権の経済運営により景気が浮上することを囃しての株価上昇ではなく、米国市場の動向につられたとみるのが、いくつかの理由によって妥当だということです。

■国内市場参加者(機関投資家)が醒めている

 先週末に楽天マネーサービスにアップした原稿にも書きましたが、極めて国内の市場参加者、とりわけ機関投資家と呼ばれる人たちの動向が醒めており、そして緩慢です。これは私が横に繋がる人的ネットワークでヒアリングした結果からというよりも、この一週間の東証の売買代金を見れば、いかに市場が閑散としているかということが分かります。

 先週、売買代金が1兆4千億円を超えたのはわずかに1営業日です。それもわずかに98億円程度超えただけで、残る4営業日は1兆3千億円台、平均1兆3,241億円にしかなりません。この水準はおおよそ今年の1月や2月に匹敵するもので、市場の回復局面では、今年でも2兆円前後まで膨らんでいます。今年の年初来高値を付けに行った26日はわずかに1兆3,768億円、いかに先物等に振り回されて指数だけがスルスルと上昇した状況かは、この数値だけ見ても分かるというものです。

■長期金利が反応していない

 投開票前ですが、市場が織り込んでいるのは民主党の圧勝、それも単独過半数の議席を獲得というレベルを超え、衆議院で議決をひっくり返すことができると言われる330議席をも獲得するというレベルのものです。

 国民の大多数が支持する新政権の誕生を、市場がその獲得票数が示すほどに熱狂的にみているのならば、当然背景には景気回復という読みがあり、それを囃して株価が年初来高値を更新したと見ることができますが、景気動向に最も論理的に反応すると判断される債券市場が決める長期金利が低位安定、少なくともこのところ上昇する株価とは反比例するかのように低下しています。

 もちろん、各党のマニフェストを読んで、民主党政権になれば財政積極策ではなくなるので、その意味において国債増発が抑えられて債券需給悪化からの悪い長期金利の上昇が想定されないことによる低位安定というロジックも無いことはないですが、それを言うには絶対水準が低すぎると思われます。少なくとも、米国市場で景気回復を見越した米国債券市場の直近の反応の仕方と比較すると、債券市場は景気回復を全く織り込んでいないと言えます。ならば日経平均株価はなぜ上昇したのか?

■米国市場が9,600ドル台を一時回復するまで上昇

 先週は、先々週末(8月21日)のNYダウ終値が中古住宅販売統計などの結果を受けて9,500ドル台を回復してきたことを受けて始まりました。月曜日の上昇はまさにその結果と見ることができますが、26日は添付のチャートが示す通り、上海株式市場が3,000ptsを回復するかの勢いで値を戻す過程でもありました。さらに言えば、現地25日に発表された代表的な米国住宅価格指数であるS&Pケース・シラー住宅価格指数によると、主要10都市平均で米国の住宅価格は前月比で+1.4%と2カ月連続の上昇となったことが市場に伝えられ、NYダウはさらに9,600ドルの大台を一時回復して東京が始まりました。

 そしてその晩のNYでは、前週発表の中古住宅販売に続いて新築住宅販売が市場予想を上回る9.6%増という結果になり、住宅価格とあわせて米国の住宅市場がおおむね底打ちから反転に入ったという認識が広がり始め、さらには耐久財受注もプラス4.9%増と市場予想の平均3.2%を大幅に上回る結果となり、懸念された個人消費にも安心感が出てきました。そしてこの結果、NYダウは引け値こそまだ越えていませんが、25日に続き27日そして28日と9,600ドルの大台を突破する展開になっています。日経平均株価はこれらに先物がつられたとみるのが妥当な気がしています。

■約29億ドル刺激策、“Cash for Clunkers(ポンコツ車)”終了

 “Clunkers”すなわちポンコツ車を燃費の良い車に買い替えると現金補助をしますという米国での補助政策が$2,877.9Mを使い切って終了しましたが、この恩恵を受けてなんと690,114台の“Clunkers”が道路から消え去りました。米国運輸省(Department of Transportation)が発表した統計によると、7-9月期の米国GDPを0.3%から0.4%は押し上げる効果があったとし、一方で結果としては日本車と韓国車がより多くの恩恵を得たことが分かります。車種で見ると、米国SUVの代名詞とも言える「Ford Explorer」や「Jeep Grand Cherokee」、あるいは「Ford F150」と呼ばれるライトトラックが売られ、「トヨタ・カローラ」、「ホンダ・シビック」、同じく「トヨタ・カムリ」が買われたことが分かります。

 以下に示す一覧はその買い替えの内訳をカテゴリー別に示したものです。Passenger Carというのがいわゆる乗用車。一方、Category 1-3 Truck(トラック)と分類されていますが、これがまさに大きさで仕分けされたSUVです。これにより平均燃費が3.85km/l(58%)も改善したと謳われ、雇用増加にも大きく貢献したと発表されています。

 ただこれがこの先の米国消費者の一般的な行動の傾向を長く示すものなのか、すなわち、米国消費者は大型のSUVを諦め続け、小型のPassenger Carを永続的に嗜好するのかといえば、私はその答えは「NO!」だと思います。まず間違いなく車の大きさはどこかのタイミングで大きくなるはずです。私には、どうしてもあの大柄の平均的な米国人が「カローラ」や「シビック」のサイズに喜んで乗り続けるとは思えません。日本国内では大柄に属する私でさえ、あの国に行くと縦にも横にも“並”(洋服を買いに行けばサイズのラインナップですぐわかります)なのですから。そしてまた、いろいろな意味で、彼らのライフスタイルにもそれは合わない、ある無理を強いることになるからです。

 ただ今はそれを我慢させてでも小型に乗り換えざるをえない背景もあり、つまり逆にいえば、そこに物凄い技術者が克服すべき消費者ニーズがあるということです。1970年代のオイルショック以降の車型の変遷を見れば、それも歴史が証明するところです。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートは上海総合指数の1週間の動きです。---- 上下は150pts程度で落ち着いてきました。日経平均株価が高値を付けた26日は上海市場も上昇していました。>

今週のポイント

■新政権に期待すること

 景気対策、雇用対策、年金改革、医療制度改革など、世論が口にする新政権へ期待することは様々です。失業率が最悪な状況にあり、こうした数値を見れば「雇用を確保しろ」という意見が増えるのは当然ですし、大量の年金世代が増えることを思えば、年金の給付の方に意見を言う口の数が増えるのも事実です。ただ、日本の財政が置かれた状況は、米国のそれを非難できるような状態では決してなく、最悪な状態に向かいつつあります。いつの世もそうですが、誰もが自分の立場で、まず自分の目線を是として意見を言います。これは仕方のないことだとも思います。

 でも、当楽天グループのトップである三木谷浩史の近著『成功の法則 92ヶ条』の中にも「上に立つ者はより高い目線から全体を俯瞰するもの」と企業のトップマネジメントとしてのあり方が何度か触れられていますが、政治の世界もその意味では同じだろうと思います。人気取りのポピュリズムに走れば、必ずどこかに皺寄せがいきます。それが逆三角形の人口動態ピラミッドで示される投票権のない子供たちや、まだ生まれてきていない未来世代であるべきではありません。現役世代や年金世代には耳に痛い政策でも、すべき時はしないとならない。そしてその厳しい判断をするトップを、その参謀たちは励まし、支えて行くのが本筋だということです。自民党は土壇場でその乱れを国民に見せてしまったがゆえ、急速に求心力を失っていったという面があるかと思います。新政権には、決してそうならないことを願うしかありません。

■結論:事前予想の通りなら、市場は大きくは動かない

 この原稿の執筆時点(投票当日の午前中)では、選挙のすう勢は分かりませんので、予想で書くしかありませんが、特に事前の世論調査等の結果、すなわち民主党が圧勝するという結果に選挙が終わるならば、恐らく市場は大きなリアクションを今回はしないと考えています。いわゆる、結果については「織り込み済み」ということになりましょう。

 しかし、もし予想外に民主党の票が伸び切らず、過半数は獲得するも必ずしも民主党単独政権として安泰という状況にならないようであれば、今後の動向などに対して市場はやや慎重な展開になるかもしれません。

 また新政権が来年度予算の見直しに当たって時間がかかるような展開になれば、それはそれで市場はナーバスな反応をするかもしれません。いずれにしても選挙結果を見つつ、慎重な対応をすべき時と思います。少なくとも日本にとって初めての二大政党による政権交代の可能性を秘めた国政選挙結果を追うわけですから。必要に応じて、臨時コメントなどを発信させていただくつもりでおります。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪9,600ドル台を一時回復!底打ちから反転か。引き続き、NY市場に注目!≫

■NYダウに採用される米国主要株式に30銘柄に投資!

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ダウ工業株30種平均株価(NYダウ)に採用されている米国の主要な株式30銘柄(採用予定の銘柄を含む)への投資を行い、ダウ工業株30種平均株価(NYダウ)(円ベース)と連動する投資成果を目指して運用を行う。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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