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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年8月10日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

8月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(8/7終値)
前週末比
(7/31比)
日経平均 10,412.09 +55.26 +0.53%
NYダウ 9,370.07 +198.46 +2.16%
金利・為替 週末終値
(8/7終値)
前週末比
(7/31比)
長期金利 1.430% +0.015%
ドル/円 97.56  
ユーロ/円 138.37  

夏枯れ相場の中に希望は見えるか?

前週の総括

■市場は先に4-6月期決算を織り込んでいた

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価の一週間の上下値幅は約200円という狭いレンジに終始しました。週明けのNY市場が、ISM製造業景況感指数が改善したことなどを好感して上昇したことを背景に、4日(火曜日)の寄付きは高く始まりましたが、これがこの週を通じた高値を形成する場面となり、その後はだらだらとどっちつかずの展開となっています。お盆休みを前に、機関投資家が積極的なポジションを取ることを控えたこともあるかと思われますが、売買代金も1兆4千億円台と低調なものとなっています。

■トヨタの決算はnot so badという感じか

 今週大きく注目されていたのは、前回のレポートでもお話しした通り、トヨタ自動車(7203)の決算です。1社で東証1部の時価総額4%以上を占める上に、先に決算を発表したホンダ(7267)や日産自動車(7201)が黒字となれば嫌が上にも市場の期待値は膨らむというものです。

 しかし残念ながら4日の引け後に発表された同社の決算内容は、ロイター通信社の取材に対して私もフラッシュ・コメントを発表しましたが「悪くはない、でも市場が期待したほどには良くはない」という感じで、これを材料にして年初来高値を更に更新していくには力不足という感じは否めませんでした。少なくとも、今期売上見通し16兆8千億円の企業の営業損益の上方修正部分が1,000億円では物足りないと言わざるを得ません。

 もちろん、内容的にはいろいろと評価すべきポイントはあり、さすがトヨタ自動車と言える部分もあります。為替の見通しも09年7月以降を1ドル95円から90円へ変更しています。一般的に同社のドル感応度は営業損益ベースで300億円と言われていますので、これだけで1,500億円の減益要因ですが、一方でユーロに対する見通しを125円から130円へ変更していますので、こちらは300億円から400億円の増益要因となり、あわせると1,100億円から1,200億円は前提変更による余裕を持たせたことになります。

 しかしながら、市場参加者の強気なアナリストの中には、10年3月期が会社予想の通期赤字決算に反して黒字化するとのものもある中で、この内容は多くの楽観論を後押しはしないというのが私の考えです。

■米国雇用統計は改善

 米国労働省が7日に発表した7月の雇用統計は、6月に一旦トレンドが逆戻りしたかにもみえましたが、再び改善傾向に戻り、非農業部門の雇用者数の減少が24万7,000人となりました。前月はこれが44万3千人まで膨らんだため景気回復期待に冷や水を差す結果となりましたが、週末発表されたこの内容は米国経済の先行きに光明を灯すものと思われます。

 実は前日までに発表になっていた前週の新規失業保険の申請件数が改善傾向にあったので、失業保険の継続受給者数は減らないものの、今回の雇用統計については若干改善するだろうとの読みはありました。ただ実際に失業率が1年3カ月ぶりに0.1ポイント改善し9.4%になったことを示されると、米国株式市場も安堵感からNYダウも前日比で180ドル以上買い戻されるなど、市場には再び景気回復期待が高まってきた感じを覚えます。

■週末はドルが買われた

 これを受けて週末のNY市場ではドルが買われ、それまでの1ドル95円前後の水準から一気に2円以上円安ドル高が進み、週末の終値は97.56円となっています。同様に、同じタイミングでドルは対ユーロでも買われ、1ユーロが1.435ドルの水準から一気に1.420を上回る水準まで買われ、こちらも引けは1.4183ドルとなっています。これらから換算される1ユーロは週末138.37円となります。

■トヨタの決算にあてはめてみると…

 ここで前述のトヨタ自動車の今期見通しにこの為替水準をあてはめてラフな計算をしてみると、ドルが7.56円の円安、ユーロで8.37円の円安となりますから、1円当たりの営業損益へのインパクトを、ドルが300億円、ユーロが65億円としても、前者でプラス2,258億円の増加、後者でプラス544億円増加、合算すると2,802億円相当の円安メリットということになります。シカゴの日経平均先物9月限の終値は10,635円、週明けはこの水準を意識したところから始まりそうです。

■S&P500、ナスダックともに台替わりをしました

 前週初めからですが、S&P500種の週末終値は1,010.48pts、ナスダック総合指数の終値は2,000.25ptsと、ともに久方振りの台替わりとなります。添付のチャートでも明らかですが、S&P500種でもこの水準は昨年リーマン・ショック後の市場急落局面時の水準で、先行しているナスダック総合指数には遅れていますが、東証で言うならTOPIXにあたる全体指数がこの水準まで戻したことは評価して良いように思います。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャート1枚目はS&P500種のこの1年間の日足です。---- 昨年10月のもみ合った水準の上に出てきた感じです。>


(出典:Bloomberg)

<今週のチャート2枚目はナスダック総合指数のこの1年間の日足です。---- こちらは既に昨年9月末の水準をキャッチアップしようかという勢いで来ています。>

今週のポイント

■バリュエーションの議論はまだ片付かない

 前回、4日発表のトヨタ自動車決算に注目と記し、また市場がもたつくリスクとしては同社の決算が市場の期待に肩透かしとなるような内容となることとも記しましたが、残念ながら良い方へは話は向かわなかったという見方をしています。つまり、もうしばらくはスカッとした青空の中での運用と言うよりは、時々夕立も想定しておいた良いという感じでしょうか。急激に空が真っ黒になってドシャーと酷い土砂降りになることはないと思いますが、今回の4-6月期決算発表内容では、日本企業の収益状態は1-3月期が予想通り底になったことは明らかだと思いますが、そこから急回復するイメージは中々描きにくく、従って、週末現在で40.83倍(日本経済新聞記載の日経平均採用銘柄今期予想ベース)になると言われる株価バリュエーションの正当性を証明することはできそうにありません。

■クラウドに関する記事が増えてきました

 一方、電子部品などの好決算(といっても、絶対値ベースで絶好調というわけでありませんが)を受けてなのか、最近は徐々にですがクラウド・コンピューティングの話を取り上げるメディアも増えてきたように思います。

 現状でクラウド・コンピューティングを突き詰めていくと、グーグルとアマゾンにほぼ主人公が限定されているように見えてしまうため、株式市場関係者にとっても今一つの認識になるのかもしれませんが、そのデータセンターひとつとってみても、日本のそれと米国のそれとは桁違いに大きさが違い、またその中に収容されるサーバーなどの機器は、アッセンブルされた状態では日の丸の旗は立っていないかもしれませんが、中のパーツ・レベルに落とせば当然のように日の丸の旗だらけだということは、再認識して損はないと思います。

 当然、クラウドに繋がって使う各種デバイスについても、同様なことが言えます。そしてもっと大事なことは、いま私たちはおおよそこの20年間でマイクロソフトの作った常識(インテルも加担していましたが‥)が大きく変わるかもしれない新たな変革期に居るのかもしれないということです。そう思うと、投資家としてのみならず、かなりワクワクとしてしまうものです。

■結論:欧州だけはやはり気にしておきましょう

 もし夏の夕立のようにまっ黒な雲が広がっていきなり夕立が来るようなリスクがあるとすれば、それは欧州なのかもしれません。かねてから狼少年になる可能性覚悟で欧州のリスクを唱えていますが、欧州系金融機関の決算内容を見ていても、そのリスクだけは気にしておいた方が良いと考えています。投資銀行部門の収益に依存することは出来ても、やはり中東欧向けの不良債権増加、失業率の上昇の状況は、米国に比べて欧州が今回の景気後退の荒波からの脱出に完全に周回遅れになっている現状を浮き彫りにしていると思われます。

 ただその一方で、中国はバブルが指摘されるほどに景気が急回復している状況のようです。今や世界最大の自動車市場であり、すべての面において世界景気のリード役を期待される状況ですが、総量規制もなく景気刺激策を継続する当局の意思は相当強いように思われます。

 良い材料は段々出てきています。誰も居ないと思われるお盆の頃こそ、案外と何かの変化が現れるかもしれません。今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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