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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年7月13日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

7月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(7/10終値)
前週末比
(7/3比)
日経平均 9,287.28 -528.79 -5.39%
NYダウ 8,146.52 -134.22 -1.62%
金利・為替 週末終値
(7/10終値)
前週末比
(7/3比)
長期金利 1.295% -0.020%
ドル/円 92.41  
ユーロ/円 128.91  

早期世界景気回復期の剥落、現実的な着地点を探す展開か

前週の総括

■円高に合わせて、株価下落

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。先々週、米国時間7月2日に発表された雇用統計を受けた米国株式市場の下落を即座には反映しなかった日本の株式市場も、それをきっかけに始まった「早期世界景気回復期待の剥落」に伴う為替変動などで週を通じて下落、週間下落率は日経平均株価でマイナス5.39%、TOPIXでもマイナス5.23%となりました。週の前半は大型株に比べてこのところ堅調だった中小型株は粘りを見せたものの、週末に向かって下げ足を速め、週を通じてみると東証マザーズでマイナス3.62%、JASDAQ総合でもマイナス2.14%となりました。

 一方、その原因となった米国市場の方は、雇用統計の発表を受けた直後にすでに値下がりしていたこともあり、今週は日本市場に比べると比較的穏やかな結果となっています。

■何を今更とも思いましたが…

 前述したとおり、先週の株式市場の下落要因は円高、さらにそのきっかけとなったのは「早期世界景気回復期待の剥落」と言っていいと思いますが、その元々の原因は2日に発表になった米国雇用統計です。添付は「楽天証券サービス開始10周年記念セミナー」(東京会場)で私が使ったプレゼン資料からの一枚ですが、5月の雇用統計発表時点までは順調に回復しているかに思われた非農業部門雇用者数のマイナス幅の減少が、6月のそれ(7月2日に発表)で再びマイナス幅が増加基調に戻り、これが原因で楽観論が消えたというのが市場コンセンサスです。

米国6月の雇用統計が問題だった

  しかし、かねてからこのメルマガでもお伝えしてきておりましたが、そもそも5月の雇用統計でさえ、「予想外に回復」といってもまだ非農業部門の雇用者数は34万5千人も減少しており、失業率自体は前月よりも0.5ポイント悪化の9.4%に達し、25年9か月ぶりの水準に悪化していました。ゆえに前月、これを受けて拡がった市場の楽観論の方に、ましてや利上げ観測まで広がるほどにまで高まった楽観論の方が的を射ていなかったとも言えそうです。

■景気動向一致指数、5月は0.9ポイント上昇

 内閣府が6日に発表した5月の景気動向一致指数によれば、足元の景気動向を示す一致指数が前月よりも0.9ポイント高い86.9になり、2カ月連続の上昇となりました。一致指数上昇の最大の要因は、生産の持ち直し、さらには製造業の所定外労働時間の増加や大口電力使用量の増加などが挙げられます。

 また企業や消費者の心理も改善し、消費者態度指数の3.1ポイント上昇は5カ月連続、中小企業の売上高見通しも3カ月連続で改善してきています。こうしたことの背景には、新興国でのデジタル家電の販売増などで、予想以上に日本の製造業に受注が膨らんできたことなどがあると思われます。新聞報道にもありましたが、電子部品の受注が急回復しているというのがその証左です。

 通常、今頃は米国のクリスマス商戦を睨んだ電子部品の発注が膨らむ時期ですが、携帯電話やパソコン向けチップ・コンデンサーや高周波部品の受注が中国や韓国から好調、またネットブックPC向けの各種部品が好調だということになると、米国需要の回復が見られるとより勢いのついた展開になることも考えられます。ハイエンド品に技術的な優位性を持つ日本の電子部品業界の動向はハイテク産業を見ていく上では欠かせないインディケーターであることは重要なポイントです。

■為替の動向が気になるが…

 週末NY市場での為替の終値は、上記の表に記載の通り対ドルが92.41円、対ユーロが128.91円と一気に円高が進んできています。トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の今期の想定為替の水準は3社ともドルが95円、ユーロが125円ですから、すでにドル・ベースでは糊代が無くなり、ユーロでもわずかしか残っていません。もちろん、ソニーなどの電機メーカーも同様な水準でベースを置いていますが、このところの変化率からするとユーロの円高度合いの方が大きく、対ユーロでの免疫力が問題になる局面に入ってきたとも言えます。例えば、ホンダなどは対ドル1円の変動による損益影響は120億円(営業利益ベース)ですが、対ユーロの1円幅では15億円の影響しかありません。一方、ソニーはこの逆で対ドルが10億円であるのに対し、対ユーロだと75億円にもなります。

 もちろん、主たる販売市場と製造拠点や調達先のアロケーションによる影響ということになるのですが、為替の影響により個々の銘柄の価格変動には跛行色が出てきそうです。ちなみに、先週一週間の為替の変動率はドルが4.05%の円高、ユーロが5.27%の円高と、ユーロの変動幅の方が大きくなっています。

■商品市況はファンダメンタルズにはプラスの方向へ

 実需20%の市場に投機的な資金がその4倍に当たる80%も流入しているとも言われる最近の商品市場は、「投資家のリスク許容度の回復」というストーリーで直近ずいぶんと値上がりしていましたが、足元は下落傾向にあり、原油価格もニューヨーク取引所の米国産標準油種(WTI)8月渡しは、前日比0.52ドル安の1バレル=59.89ドルで取引を終えています。原油価格の上昇は、例えば航空運賃に加算される燃料サーチャージやガソリン価格に影響を与えるため、個人消費に直結、ゆえにこの値下がりはファンダメンタルズには当然プラスの要因です。

 また1,000ドル乗せを目指すとも言われていた金価格も、むしろ反対に900ドル割れをも視野に入る913ドルまで下落してきています。


(出典:Bloomberg)

<今週のチャートは金価格($/OZ)の3年間分の日足です。-----下にも簡単に抜けそうもありませんが、かと言って1,000ドルを超えていく感じもかなり薄れたと思われます。>

今週のポイント

■GoogleがパソコンOSに参入するインパクト

 インターネット検索最大手のGoogleがパソコン用OS(基本ソフト)の世界に参入することが正式に発表されました。名称は『グーグル・クロムOS』。グーグル・クロムという名称では、すでに同社のサイトからWebブラウザが提供されており、逆にこのグーグル・クロム開発はWebブラウザのみとも言われていましたが、正式にOSとして開発するということが発表されました。検索エンジンに始まり、『Gmail』や『Google Map』など次々と新しい人気のサービスを無償で消費者に提供する同社のビジネスが、ついにパソコン市場の本丸、マイクロソフトの牙城とも言えるパソコン用OSの世界にまでは入ってきました。

■マイクロソフトは『Windows7』を10月に発売開始

 一方、現在もパソコン用OSの圧倒的なマジョリティはWindowsのマイクロソフトなわけですが、その牙城に喧嘩を売られて迎え撃つ形の同社も、この10月には『Windows Vista』の後継となる『Windows7』の発売を開始します。『Windows7』の基本はVistaのバージョンアップにあたるのですが、いまだに前世代のXPに高いニーズがある一方で、Vistaの普及が進まないという問題を解消するために、新OSとして市場投入されます。

 そのポイントのひとつは“軽い”ということ。最近パソコンの世界で販売を伸ばしているのは、デスクトップPCでもなければ、ノートパソコンでもなく、500ドル・パソコンとも呼ばれるネットブックPCです。ただネットブックPCでは、ハードウェアの高いスペックが要求されるVistaは搭載することができず、これがまたXPを延命させざるを得ない理由ともなっていました。つまり、言い換えると、『Windows7』はネットブックPCに搭載させることを願って市場投入される基本ソフトだということにもなります。まさにそこにGoogleがクロームOSを真正面からぶつけてきたということになります。

■クラウド・コンピューティングの関わり

 Googleが強力に推し進めているのがクラウド・コンピューティングの世界です。Amazon.comも実はクラウドの推進者です。こうした時代の流れの中で、旧来のパソコンの使い方、つまり高いスペック(処理能力の早くて高いCPU、容量の大きなHDDやメモリー)のパソコンを次から次へと買い換えて行く、という流れと逆行するかのようにネットブックPCの普及が進んでいます。「ネットブックPCじゃ、メールと簡単なネット検索ぐらいしかできない」というのが通り一遍なあら方の意見かもしれませんが「いえ、そもそもそんな高い処理能力を必要ないんです。」ということに気がついたユーザーに売れているのがネットブックPCです。その背景にあることこそ「クラウド・コンピューティング」の世界です。計算(演算)はクラウド“雲”の中で済ませるので、端末は入力と出力の装置さえ付いていれば良いということです。だからこそ、ここにGoogleが来たのは何とも面白いと思っています。

■結論:変化する前夜、値惚れは避けて見極めを

 今回の金融危機の震源地とされる米国では、5月の雇用統計の内容を改善傾向と受け止めて、いったん市場は年内に米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げする可能性までを想定するほどまでの楽観論に傾きつつあるかにも見えましたが、債券市場の動向などを見ていると、足元ではどうやら逆の絵を織り込みつつあるかに見えます。つまり景気は回復しないL字型、もしくはある程度回復はするけれど、すぐに腰折れして2番底を探りに行くと見るW字型のシナリオがコンセンサスになりつつあるかに見えます。それに合わせて日本市場も日経平均株価が10,000円台をつけた時のセンチメントとは、急に違ったものが支配するようになってきました。

 来週になると4−6月期決算の発表が本格化し始めます。1−3月期の企業収益が本当にボトムといえるのか、まだこの水準で企業収益はもたつくのか、多くの判断材料が提供されるのはこれからです。恐らく、またセンチメントの振り直しも起こるでしょう。

 そして都議会議員選挙の結果を受けて(原稿執筆時点はまだ選挙結果を聞いていません)喧しい議論が起こることは必定です。総選挙に向けて、市場は政治に何を求めるのか、ポピュリズムに走るのか、それともプライマリーバランスの改善方針など本質的な議論を求めるのか、短期投資、長期投資それぞれに真剣な見極めが必要になってくると思います。値惚れしない投資スタンスで状況を見極めて行くべき時と考えます。

 今週もいろいろなことがあると思われますが、素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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